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397話 その頃……

前回のあらすじ「ちなみに、リーリア姫はカレーにご満悦のもよう」

―薫達が買い物している日と同日「イスペリアル国・聖カシミートゥ教会 会談の間」サルディア王視点―


 朝から始まったこの大事な会議……いよいよ魔王アンドロニカスが復活するという報告を受けて、各国の代表達が頭を悩ませている。


「1週間か……短い、短すぎる」


「ここにいる全員がそんな気持ちだ……とりあえず、自国の軍の配置変更に警備強化……それと、冒険者ギルドにも協力を仰ぎたい」


「冒険者ギルド、グランドマスターとしてもちろん協力させて頂きます。この後、各ギルドに緊急依頼として発注するように伝えておきます」


 冒険者ギルドのグランドマスターであるゼシェルがそう宣言すると、ここにいる各国の冒険者ギルドの代表者達はその発言を聞いて、この後について各国の代表達と相談し合っている。我が国のギルドマスターも、『有名なパーティーに指名依頼として発注する』と提案をしたので、それを了承する。


「各国の賢者総動員……後はどれだけ人員を省けるか……困りものですね。薫に頼んでユニコーンに協力を仰げないか訊いてもらいましょうか……」


「ずるいですね~……それなら私の所はフェンリルを……」


「止めておけよ? どうせ、またカチコチに凍らされて風邪を引くだけだろうしな……」


「喧嘩を売ってるのですか~……?」


「以前にあったことを言ったまでだが?」


 ヴァルッサ王がそう言うと、オルデ女王がヴァルッサ王を睨み付ける。ヴァルッサ王はそれに意に介さず、今度はこちらへと視線を向ける。


「で、サルディア王はどうすんだい?」


「こちらは……騎士団の隊長と副隊長の2人を出す。後は数名の騎士を2人に選出してもらうとしよう」


「自国の防衛がきつくなるのでは?」


「それはそうだが……娘の婿が最前線で体を張る以上、王家として支援を怠る訳にはいかないからな」


 我はそう言っておく。これも理由の1つで間違いないが……他にもある。今回の戦いは、間違いなく総力戦になるだろう。そして、魔王アンドロニカスと互角に戦える相手となれば薫達ぐらいである……彼らにもしもの事があれば、それは世界の危機につながる……。


「負ける訳にはいかない……この先の未来のためにもな」


「そうか……ところで、もう1つ。魔国のお姫様と薫が似ているのは……何故だ?」


「……知らん。何の話も聞いていないからな」


 表情を変えずに嘘を吐く。まだ言えない……薫の祖母が現魔国の王の姉だったとは……! それを言った瞬間、魔国の王家と繋がりが出来るとなれば、各国からの視線がとても痛い物になるだろう……。


「何かあれば……薫が伝えるだろう」


 そう言って、我はこの場を乗り切るのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―薫達が買い物している日と同日「とあるVR空間」ある幹部の視点―


「リーリア姫……絶対に薫と血縁関係あるだろうこれ?」


「他人の空似……にしては出来過ぎだよな」


 私の目の前にいるビップの2人が報告書を見ながら会話をしている。ショルディアから送られてきた報告書……そこには魔国ハニーラスの王の娘であるリーリア姫の写真が写っている。それは薫をもっと凛々しく、少し男らしくした感じの女性であり、薫とはまた違った美女である。


「ショルディアからの報告には血縁関係があるのかどうかは……記載が無いな」


「調べている最中なんだろう。とりあえずが報告待ちだな」


 そう言って、話を締めて次の話題に入る2人。それを聞いた後、再度この報告書を確認する。確かに載っていない……が、以前にオラインという魔物に家族と一緒にお見舞いをしたという報告があった。その行為に何があったのか疑問だったのだが……このリーリア姫の姿を見て納得する。


 しかし……ビシャータテア王国のお姫様と婚姻関係であり、両世界の交流に必要な重要人物であり、さらには魔国ハニーラスの王族の血筋がある……。


「あの時……一番最初に挨拶をしたのは間違いなかったな」


 あのパーティーでの自分の選択は間違いなかった事に、私は心の中でほくそ笑むのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―夜「薫宅・居間」―


「zzz……」


「晩御飯が出来るまではそのまま寝かせてあげて下さい。後、これ」


 僕は枕代わりに使ってもらうために、タオルをオラインさんに手渡す。


「ありがとうなのじゃ……よっと」


 オラインさんはテーブルに突っ伏して寝ているリーリアさんの頭に素早くタオルを挟み込む。起きるかと思ったが……寝息を立てて、熟睡している。


「こんな風にゆっくり眠っているのは久しぶりじゃろうな……あっちでは王族としての立場があって、このように人の目を気にしない場所がなかなか無かったじゃろうし……」


 リラックスして寝ているリーリアさんの姿を優しい目で見るオラインさん。1日中、見慣れない場所を歩き回って疲れてしまったのだろう。


「こんばんはー!」


「来たッスよー!」


 すると、玄関の方から泉とフィーロが大声で挨拶をする。僕は居間から顔を出して、口に人差し指を当てて、静かにするようにと2人に合図する。


「あ、誰か寝ていた?」


「リーリアさんが寝ているんだ」


「それは失礼したッス」


 2人が居間に入り、寝ているリーリアさんの姿を見る。


「本当に薫兄にそっくり」


「そうッスね……寝ている姿は特に……」


 僕とリーリアさんを見比べる泉とフィーロ。そこでフィーロが何かに気付いたような素振りをして、そのままオラインさんへと顔を向ける。


「どうしたのじゃ?」


「いや~……雪山で薫の素顔を見た時に、『姫様にそっくりじゃ!?』って驚かなかったなと……」


「儂ら魔物も微弱じゃが魔力を感知出来るのじゃ。日常だとそれで人を判別したりするのでな……それだから、姫様に似た別人だと思っていたのじゃ。魔物はそっくりさんが多いからのう……。後は薫がリーリア姫とそっくりじゃと言わなかったのは……まあ、薫のためじゃな」


「僕のため?」


「『お姫様とそっくりで美人じゃな!』って、言われたらどんな気持ちじゃ?」


「とても……複雑です」


「薫が男だと知って、何か女と勘違いされて苦労してたからのう。だから言わなかったのじゃ……衣食住で世話になっておるしな」


「あはは……」


 まさか、そんな気を使われていたとは……。他にオラインさんに気を使わせていないか心配である。


「ちなみにですけど……魔物の人達ってどれくらい似てるんですか?」


「うーーん……ユノ姫様の国の聖獣フルールの各個体が分かるか……という位じゃな」


「そうなると、何かあっちに行った時に『誰がどいつで、こいつは誰?』みたいなことになりそうだね……失礼のないようにしたいけど……」


「まあ、気にせんでも大丈夫じゃよ。それはお互い様じゃからのう」


「というと?」


「魔物っていうのは他種族でな……人間に近い種族なら薫たちの見分けが付くのじゃが、遠い種族じゃとよく分からないらしいのじゃ。魔力の感知する力もあったりなかったり……って事で、よく間違えられる事が多いのじゃ。中には腕にバンダナを巻いたり、耳にイヤリングを付けたりして見分けが付くようにしたり……後は髭などが生える種族だったらそれで区別が付くようにしたりする者もいるのじゃ」


「へえー……あ、ちなみに魔族と魔物の違いは分かるかな?」


「私達は完全に分かる。あいつらの魔力は桁違いじゃからのう。じゃが……薫達が分かるかといわれたら難しいのじゃ」


「それは……かなり厄介だね。同士討ちは避けたいから、私たちは混戦している場所は避けた方がいいかな」


「もしくは、その判別が付く儂らのような奴を連れていくかじゃな……」


 今回の戦いは同士討ちの危険もあり、なかなか難しい戦いになるな……あ。


「直哉に相談してみようかな。何か用意してくれるかも……チョット連絡してみる」


 僕は居間を出て、廊下で電話を掛け始める。電話はすぐに繋がり、直哉に今の話をしたところ『すぐに準備をしてやる。不眠不休でやれば、数も用意できるだろうしな』と言って、快く引き受けてくれた。電話が終わって、居間に戻ると寝ていたリーリアさんが起きていた。


「すまない。うっかり眠ってしまった……」


「気にしなくていいですわ。ここは戦地から離れた場所ですし、体を休める時に休めるのは必要ですよ。もし、皆が戦っている時に自分が休んでることに罪悪感とかおありなら、明日は薫と手ほどきしてみてはどうですか?」


「薫と……?」


 リーリアさんがそう言って、僕を見る。起きた直後のせいか、ぽけーとした表情だったが、徐々にその言葉の意味に気付いていく。


「そうか。あのアクヌムに勝つほどの実力者に手ほどきしてもらえるのか……確かに、それは一理ある」


「僕で良ければ……でも今は晩御飯にしましょうか。レイス、手伝ってくれる?」


「もちろんなのです」


「なら、私も行きます。泉はリーリアさんに()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「うん。分かったけど……何か含みが無いかなユノ?」


「気のせいです!」


 そう言って、僕と一緒に台所へと付いてくるユノ。その数分後、泉もアンジェの孫だと知ったリーリアさんの驚きの声が家中に響くのであった。


「起きた時に話してなかったの?」


「その方が面白いですからね」


 小悪魔のような笑みで、ユノは僕の問いにそう答えるのであった。

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