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395話 報告と相談……それと連絡 その2

前回のあらすじ「あっちこっちに通達中……」

―「ショルディア夫人邸宅・庭園」―


「初めまして。ビシャータテア王国の王サルディオ・ホワイト・クレーンが娘のユノ・クレーン・ホワイトと申します。薫の婚約者になります」


「魔国ハニーラスの王グロッサル・アーデルク様が娘のリーリア・アーデルク。薫の母とは従姉妹の関係だ。その子供が一国の姫様と結ばれたとなれば我々としても喜ばしいことだ」


「薫からリーリア様の事を聞いていましたが……こう横に並ばれると、姉妹にも見えますね……」


 ユノに言われて、僕とリーリアさんは互いに顔を見合わせる。リーリアさんは僕より凛々しさがある美人に見える。


「男性なのに私より美女だがな……」


「褒めているつもりだと思うんですが……僕としては嬉しくないんですよね」


「ふふっ!」


 僕とリーリアさんのやり取りを見て、ユノが小さく笑う。僕が様々な女装させられていることを知っているユノ。きっと、僕とリーリアさんの見た目が逆だったなら、昌姉と泉にもう少し男性っぽい服を着せられていたのだろうと思っているのかもしれない。だが、僕はその事には触れず、楽しそうに話している2人の様子を眺めるのであった。


 という事で……今、僕たちがいる場所だが、ショルディア夫人のお庭にあるガゼボである。あの後、どうするかを菱川総理に話してみた結果、この場所に連れてくる事になった。その後、母さんの所で一泊し、今日の朝、リーリアさんとオラインさんを車に乗せてここまでやって来た。


「しかし……我々の国とは全然違うな。ここまで来るのに、動く鉄の箱に乗って、とてつもなく綺麗に整備された街道を高速で進む……途中に寄った店も見たことが無い代物ばっかりで驚きの連続だった……」


「分かります。しかも、こちらの世界は遊ぶだけという施設も数多くあるんです。後はこのような道具もありまして……」


 そう言って、ユノがスマホを取り出す。これは魔石を動力にした通信魔道具МT-1ではなく、ユノのための普通のスマホで、婚約者としてこちらのいる事が多くなるだろうユノに、僕がプレゼントした物である。


「素晴らしい……この書かれている文字を読めるようにするこの魔道具もだが、魔法を全く使わないこの技術力も素晴らしい……それで、今映っているのも遊び道具なのか?」


「はい。これはゲーム機と言って、コントローラーというのを使って、中央にいるキャラクターと呼ばれる物を動かすんです。物語のようなものがあれば、純粋な作業を可愛い見た目のキャラクターを眺めながら繰り返したり、これだとロボットというキャラクターによる高速戦闘を行って、この星の真実を調べるというゲームだったりしますね」


「そんな物が商売になるのか……いや、それが成り立つほどに平和という事か……」


「この地球全土という訳ではないですが……この日本は他と比べたら平和ですね。他にも……」


 そう言って、ユノとリーリアさんは2人してスマホの画面に釘付けになる。


「あれほど女の子らしい姫様の姿を見るのは……久しぶりじゃのう……」


 すると、僕の近くで2人の様子を見ていたオラインさんが、そう言って微笑んでいる。あっちではずっと魔族との戦闘が続いているため、一国の姫であるリーリアさんはオシャレして友達と出掛けるとか、何かしらの趣味に没頭するという事が出来なかったらしい。


「あ、かわいい……いや!? 私はもっと凛々しく、優雅な……」


「あら、いいじゃないですか? 私も可愛い物が好きですよ? そこは性別も、どんな地位も関係ないですから」


「そ、そうだな……」


 そう言って、目をうっとりさせながらスマホの画面を見るリーリアさん。一体、何を見ているのだろうか……。


「私が着たら……こんな風になるんだな……もっと、濃いめの色がいいかもしれないが……」


「ああ……そうですね。薫用に淡い色で仕立てられた服ですから、リーリアさんの場合はもっと濃いめの方が……」


「僕のコスプレ写真を、許可なしで見せないでくれないかな!? てっきり、可愛い動物とかを見てるかと思ってたよ!!」


「だって……自分と似ているモデルがいるなら、それを見せた方が早いじゃないですか。リーリアさんも、自分が同じ服を着たら、どんな風に見えるか想像しやすいと思いますし。ですよねリーリアさん?」


「ああ。おかげでイメージしやすかった。久しぶりにそのような衣服を着てみたいと思った……が、今は一刻も早く戻らないといけないしな……」


 リーリアさんの明るい表情が、一気に暗い物になる。一国の姫であり、歴戦の戦士である彼女にとって、自分がぬけぬけとゆっくりしている場合じゃないと思っているのだろうな……。


「あらあら……私抜きでどんな内緒話をしているのかしら?」


 すると、そこにメイドを連れたショルディア夫人がやって来る。


「ありがとうございます。このような場所を提供してもらって……」


「いいのよ。魔国のお姫様がやって来たというのに、全くもてなさないのは失礼だもの……それにしても、あなたの隠していた事ってこの事だったのね」


 そう言って、僕とリーリアさんを交互に見るショルディア夫人。リーリアさんと僕の関係は伝えていないのだが、リーリアさんと僕の見た目がかなり似ているのを見て、色々と察したようだ。


「……バレますかね?」


「当たり前よ。あなたがご両親をオラインさんに合わせた理由……お姫様とあなたの間には血縁関係があるんじゃなくて?」


「……ご名答です」


「あっさり認めて良かったのです? まだ、誤魔化せる事が可能だと思うのです」


「隠し通す気は無いよ。それに魔国までの帰る手段が無い以上、しばらくの間、リーリアさんにはこっちに滞在してもらう事になるし、その間に多くの人の目に触れるからね……」


「まさか、あなたの祖母が魔国ハニーラスの王家と関わりのある人物とは……ビシャータテア王国はどう判断しているのかしら?」


「既にお父様にはお伝えしております。それだから、私と薫のこの婚姻も王家同士の大変極めて重要な物と把握しております」


「……我が父上も聞けば同じ判断だろう。我が従姉妹の息子……叔母の持つペンダントを所有し、叔母の生き写しとなれば、すぐにでも魔国の貴族として迎える可能性がある……な」


「魔国ハニーラスはそこまで閉鎖的な国ではないのかしら?」


「隣国が夜国ナイトリーフだけなのだが、そことは魔族との共同戦線を結んでいるし、関係も悪くはない……そもそも別大陸と関わるとなると、危険な魔獣のいる海を越えなければならず、そのような技術が我が国に無いのが原因だな……かなり昔の時代にはあったらしいけどな」


「なるほど……こちらには飛空艇があってね。それを使用して、あなたの祖国に送りかえせないか検討中なの……あちらに行ってしまえば、魔族との戦闘になるかもしれないから、その準備もしないといけないし……薫? あの件をリーリアさんには話したかしら」


「……レイス以外まだです」


「そう」


「薫? 何かあったのですか」


 ユノに訊かれ、僕は少しの間を空けてからゆっくりと話し始める。


「……先日、魔国ハニーラスのある大陸に大きな魔力反応があって……恐らく、魔王アンドロニカスが復活したんじゃないかってマクベスが……」


 それを聞いたユノたちが驚いた表情を浮かべる。突然の電撃発表……こうなってもしょうがないだろう。


「……やっぱり向かうのですか?」


「そうだね……休むなんてダメですよね?」


「あなた達が最大戦力なのよ。休まれたら困るわ……あなた達の意思を無視する形になることに申し訳なさがあるけど……ね」


「待ってくれ! その情報は確かなのか?」


「『異常な量の魔力量を感知しただけで違うかもしれない』って話もあったんだけど……ただ、無視するのは危険。現地に向かって調査する必要があるって」


「そ、そんな……そうしたらすぐにでも……」


「残念ながらすぐには無理よ。何の準備もせずに人を向かわせる訳にはいかないわ……戦士なら、その意味が分かるわよね?」


「くっ……!」


 苦虫を噛むような表情をするリーリアさん。ショルディア夫人の言っていることは正しい……が、それを素直に受け止められないのだろう。


「リーリアさん。今日はしっかり休んで……明日、魔国ハニーラスのために少し外出しませんか?」


「薫、それはどういう意味だ?」


「戦うだけが全てじゃありません。戦術、戦略……それに兵站。後は敵の情報を精査する事も大事です。そこで、明日は魔国ハニーラスの戦線を維持するために、食料や薬などを購入しませんか? お代はこっちが持ちますので」


「しかし……それでは薫たちに負担が……」


「ここで負ければ、世界が終わる……なんてリアルな話だからね。ここで出し惜しみするのは馬鹿な話です。もし、気になるようなら……魔王アンドロニカスを倒した後にでも、それに似合った報酬をもらえればいいですよ」


「薫の言う通りなのです。それに、リーリアさんがこっちがどれほどの技術力を持つ世界なのかを知っておけば、いざという時の打開策を閃くのに役立つと思うのです」


「レイスの言う通りで、あちらの魔道具では無理な技術でも、こちらでは可能な技術とかもあるはずですから、ぜひともお出掛けをしましょう」


「うーん……それはそうだが……」


「お話はそこまでにして……こちらが用意したお菓子をどうぞ。あちらではなかなかお目に掛かれないんじゃないかしら」


「……お菓子」


 ショルディア夫人がそう言うと、タイミングを計ったかのように、お菓子とお茶を用意していくメイドさん。リーリアさんはそれを見て、唾を飲み込んでいる。


 この場所に来るまでの間に、車に乗って移動中は暇だろうと思って、サービスエリアで購入したお菓子を食べてもらっている。その際に、非常に喜んで食べていたので、きっと目の前にあるお菓子にも期待しているのだろう。


「いや……私がここでゆっくり……」


「はいはい……ここは素直に受け取っておきましょう。何せ……僕も食べた事のない位の高価なお菓子ですし……」


 スーパーで買うようなお菓子じゃなく、明らかに、職人が手間暇を掛けて作った高級洋菓子店で売っていてもおかしくないケーキが5種類ほど並んでいる……そのどれもが食べるのがもったいないほどに綺麗に盛り付けられている。


「あらあら……今日はシェフがぜひとも試食して欲しいって作った試作品よ。だから、リーリアさんにはぜひとも味の感想を教えて欲しいの。それもこちらでは立派な仕事よ?」


 ニコニコと笑みを浮かべてながら話すショルディア夫人。試作品を出したというのは本当なのだろう。その方がリーリアさんにとって都合がいいだろうと読んでいるのは流石である。


「オラインさんも一緒にですよ」


「は、はい……ご相伴に預かります!」


 その後、シェフが作ったケーキの試食が始まる。最初は戸惑っていたリーリアさんも周囲の空気に流され、出されたケーキに舌鼓を打つのであった。

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