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386話 潜入……しますか?

前回のあらすじ「戦闘シーン省略」

―「ソーナ王国・夜光石採掘場」―


「これは……入り口ですね」


「しかも、人工物だぜ」


 セイレーンに先導してもらって、やって来た怪しい入り口。セイレーンが湖の水を操作してくれているおかげで、湖の底の入り口が上からはっきりと見る事が出来るのだが、人2人分の横幅を持つ入り口の周りは特に扉とかは無く、入ってすぐに階段になっており、さらに下へと下りる事が出来るようだ。


「この入り口……少し不自然ですよね? 扉も無いし、すぐに階段なんて……」


「恐らく、ここには建物があったのではないでしょうか?」 


「地下室の階段って事っスね。でも……ここって何の施設ッスか?」


 湖の底にぽっかりと開いた地下へと続く穴。この先には一体何があるのだろうか……ソードシャークの討伐後だが、心身ともに全然余裕だし……ここはやっぱり。


「とりあえず……帰ろうかな」


「何を言ってるの薫兄!? ここは調べる一択でしょ!?」


「いや……ユノのための誕生日プレゼントのために来たからさ。さっさとドルグさんたちに夜光石を渡さないと……」


「私としても、そちらを優先して欲しいですね……我が国のためにも」


「それは……ユノちゃんのためにも、そちらを優先したい……かな。かなり名残惜しいけど……」


 苦渋の選択を迫られ、苦虫を噛むような表情を浮かべる泉。地下の謎のダンジョン探索をしたい、けれどユノの事を思うと、プレゼントの事を優先したいのだろう。


「どうするんだぜ?」


「カシーさんたちに調べてもらうよ。他の賢者さんにも頼んでくれるだろうし……こっちにいる自衛隊や米軍の人たちがも調べてくれるよ。その後にでもここに来ればいいんじゃなかな。それに……夜光石を使って服を作りたくないの?」


「それは……作りたい! セイレーンもだけど、ユノにもすぐに作らないと!」


 先ほどとは打って変わって、ダンジョン探索よりユノの方を優先しようとする泉。いいデザインでも思いついたのだろうか? 少しばかり気になるが、とにかくここにいる全員が帰るで一致したことだし、後処理をしなければ。


「ってことで……シーエさん。この辺り一帯を凍らせてもらっていいですか? 僕たちはカシーさんたちに連絡と、シーニャ女王に調査のご協力をお願いしてくるので」


「それはいいですけど……凍らせてもいいんですか?」


「ここら辺は採掘現場から外れている場所らしいので、問題無いそうです」


「分かりました。シルフィーネで水が入ってこないように念入りに凍らせておきますよ」


「お願いします」


 その後、入り口が再び浸水しないように周囲の水を凍らせ、ここに誰も立ち入らせないように採掘場の作業員に話しをしてから、僕たちはここを後にする。冒険者ギルドに戻ってみると、ギルドマスターが夜光石をしっかり用意してくれており、さらに泉たちのために小さい夜光石も準備してくれていた。


 その後、こっちのことはカシーさんたちに丸投げして、僕たちはユノのためのプレゼント作りに勤しむのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―翌日の夕方「魔法研究施設カーンラモニタ・ドルグとメメの専用工房」―


「うむ! いいんじゃないかのう?」


「うわ……凄いねこれ。今更だけど、ここまでハッキリ色の変わるアレキサンドライトって高価じゃないの?」


「……査定してもらったら、Sランクでサイズも大きいから数千万は下らないだって。それを指輪とイヤリング、後はネックレスの3つに分けて使ってるしね」


「これ……完全に薫兄の誕生石であるアクアマリンが霞んで見えるかも」


「つまり……薫がユノの尻に引かれるという事を、暗に示唆してるんッスね」


「そう考えると……深いのです」


「無いから。そんな意味は無いからね……?」


 出来上がった装飾品に変な難癖をつけられたので否定する。最初は指輪だけと思っていたら、ドルグさんとメメ。それに泉たちも加わってデザインの話をしていたら、いつの間にか装飾品一式を作ることになっていた。


「ふぁああ~~……まさか、一睡もしないで作っちゃうなんて思っていなかったよ……」


「ははは! 色々案が出たからな! 職人としては気になって眠気が来なかったな!」


「ですね! これらの装飾品に合わせて、ドレスを調整出来て私達も満足ですよ! きっと、ここまで豪華な一式はそうそう無いと思いますよ!」


「あれ? ドレスって1日で作れたっけ?」


 今更、気付いたのだが、この前のパーティードレスも、大分前から準備をしていたはずである。つまり、この出来上がったドレスも同じ期間掛かっているはずである。


「それは私が今度のパーティー用として、泉に依頼したからです」


 あまりにも早すぎるドレス作りに不思議に思っていると、そこに制服姿のユノが部屋にやってきた。鞄を手に持っているので、学校からの帰りに寄ってくれたのだろう。


「しかし……これは力作ですね」


「そう褒められると嬉しいッスね!」


「だね! 徹夜で作った甲斐があったよ!」


 出来上がった品を見て、そのあまりの出来栄えに、喜ぶより驚きの表情をするユノ。ビックリさせられて良かった……。


「いや!? 今じゃないんだけど!?」


 誕生日当日にサプライズしようと思ったのに、これでは意味が無いじゃないか!?


「驚かそうとしてくれた薫には悪いんですけど……まあ、予想してましたから。それに、私の物と周囲にアピールしたいなら、私の協力が必要じゃないですか?」


「うっ!?」


 考えていた指輪を渡す一番効果的なタイミング……僕がそれを計るつもりだったが、ユノがやってくれた方が一番なのは確かである。というより……何で僕が指輪を渡そうと知っているのだろう? 王様が喋ったのだろうか?


「さっそく尻に引かれてるね薫兄」


「泉! 変な事を言わないの!」


 僕がそう言うと、途端に室内に笑いが起きる。誕生日当日、どういう気持ちで僕は挑めばいいのやら……。


「失礼します」


 僕を除いた皆が笑っている中、今度はシーエさんとマーバが部屋に入って来た。


「お疲れ様です。ユノの護衛ですか?」


「それはシャドウの面々が今もやっているので違いますよ……私達が来たのは薫さん達に大至急の依頼を頼むためです」


 ニッコリと笑みを浮かべるシーエさん。その笑みはどこか違和感があり……変な感じがする。


「面倒な依頼ですか?」


「ええ……賢者もお手上げの案件です」


 賢者……はて? 彼らなら昨日、僕たちが発見した施設の調査をしていたと思うのだが……。


「『施設内の魔獣の群れに歯が立たないので駆除をお願いします!』だそうです」


「マジですか?」


「至って真面目ですよ?」


 各国が代表する魔法使いである賢者が、魔獣に歯が立たないとはどういうことだ? そもそも、カシーさんとワブーのペアならほとんどの魔獣を倒せるはず……あ。


「カシーさんたちって……今回は待機ですか?」


「当たり前だぜ! 施設で爆発魔法を使えねえぜ?」


「でも……他の属性を持つ賢者がどうにか出来そうなのです。召喚魔法もあるのです」


「それに……自衛隊や米軍とかの銃火器を持った人達もいますよね?」


「レイスと泉の質問はもっともなんだが……その銃火器の効き目も悪いみたいで、出来れば薫達にお願いしたいらしいぜ」


「……うん? 泉たちは違うの?」


「私個人としては来て欲しいんですが……対する魔獣が少し難がありまして……」


「一体、何が相手なんですか? チョットやそっとじゃ怯みませんよ私。何せフェンリルやドラゴンとか……」


「直哉が言うには、ゾンビらしいぜ」


「……」


 マーバのその一言に、泉がフッと黙り込んでしまう。そして、レイスとフィーロ、それにユノもその魔獣名がどんな奴のなのかを悟って、あまりよろしくない表情を浮かべている。


「……シーエさん! 頑張ってください! 僕、応援してますから!」


「最低でも薫とレイスは連れてこいと言われてるのでお願いしますね!」


「嫌ですよ! ゲームならともかくリアルはお断りです!!」


 ゾンビ……ゲームならともかく、リアルとなればグロテスクな見た目と腐敗臭でこちらのSAN値がゴリゴリと削られていくのは間違いない。しかも、接近戦で戦ったら何か変な汁が掛かるかもしれないのだ。そんなのはお断りである。


「それと、直哉さんからの報告では、ただのゾンビでは無いそうです。だから……お願い出来ないでしょうか」


「……やらないとダメ?」


「『感染する訳じゃないから安心しろ』とも言ってましたね」


「……分かりました。明日の正午からでいいですか? 徹夜して眠いので」


「ええ。そちらの都合に合わせるだそうです。泉さん達は……」


「行きますよ。色々、嫌ですけど……第一発見者ですし。そもそも、あの施設が何なのか気になりますから」


 泉の意見に、僕とレイス、そしてフィーロも頷く。泉たちも今回の探索は、今までの探索とは違うのを何となく感じているのだろう。


 グージャンパマの生物は地球から種を持ち込み、それを魔石の力を使って品種改良した存在である。つまり……今回、施設に現れたゾンビは大昔に人間を改造した存在のはずである。しかし、昔この大陸を制していたコーラル帝国はあらゆる種族を尊重しており、そこには人間も含まれている。そこから察するに……あそこは非合法の実験をしていた建物の可能性がある。


「……グージャンパマの闇の部分に触れることになるのかな」


「恐らくね。どうする? やっぱりやめとく?」


 僕が泉にそう訊くと、泉は首を横に振って強く否定するのであった。

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