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364話 多次元総合会議 会場までの移動編

前回のあらすじ「前日譚」


*しばらくの間、日曜日の投稿はお休みしますので、よろしくお願いします。

―翌日「笹木クリエイティブカンパニー・敷地入口付近」―


「うわー……ここからでも分かるほどの人混みだね」


「しょうがないでしょ? これだけニュースで騒ぎ立てた国際会議が今日開幕だもの。欠席する予定だった国も一転して参加したり、いくつかの国は首相が直接来ているみたいだもの」


「何か大事だね」


「実際に大事でしょ」


「あ、うちらに気付いたッス」


「凄いフラッシュなのです……!」


「まぶしいのう……」


 僕の家の蔵の異世界の門(ニューゲート)からグージャンパマを経由して、笹木クリエイティブカンパニーにやってきた僕たち。今、一緒にいるのはレイス、泉とフィーロ、そしてマグナ・フェンリルのマナフルさんの4人である。


「けど……王様達と一緒に行かないで良かったの? しかも会場に先に向かっているけど……」


「会場で到着したグージャンパマの皆さんを出迎えるのが私達の仕事よ。私達とグージャンパマの代表がどれだけ親密かをアピールするためのね」


「……お主、いつもと口調が違うが?」


 マナフルさんが、先ほどからの僕の喋り方に遂ににツッコミを入れる。笹木クリエイティブカンパニーに来るまでは普通に話していたのに、いきなりこの口調になれば当然の反応だろう。


「妖狸は女性扱いなの……今日はそのような扱いでお願いしますね」


「ふむ……分かった。そのように計らうとしよう」


 余計な質問はせずにそのまま了承するマナフルさん。そして、僕たちは笹木クリエイティブカンパニー敷地の入口へと到着する。


「妖狸が来たぞ!」


 笹木クリエイティブカンパニーに敷地の入口に設置されている門の前から報道陣の方々がこちらに向けてカメラのシャッターを切る。すると、その近くで警備中の警察が割って入り、門から報道陣を引き離していく。


「お疲れ様です! どうぞお気をつけて!」


「ありがとう」


 敷地入口の警備をしている警備員に挨拶をする僕。この警備員は笹木クリエイティブカンパニーの社員ではなく、アザーワールドリィから来ている方でオリアさんの部下らしい。そのため、僕たちの素性を知っている。


「少し肩の力を抜いて下さいね?」


「分かっています。この後、来られる方々の前では、笑顔で迎えられるように頑張りますので」


 ぎこちない笑みで敬礼をする警備員。果たして、この後それが出来たかどうかは……グージャンパマの代表の警護に当たるカーターたちから聞くとしよう。


「妖狸と妖狐だ!」


「キャー! 妖狸ーー!!」


「こっち向いてーー!!」


 敷地入口の門を抜け歩道に出る。そして、今回の国際会議の会場であるコンサートホールに向かって進んでいく。その道の反対側では、仮設のフェンスが設置されていて、一般の方々がこちらを見て歓声を上げている。


「賑やかッスね」


「そうだね」


 見物人の中から僕たちの名前を呼ぶ声が多く聞こえる。中には動画として撮影をしているグループもいたりして、動画サイトでこの光景を現在配信中なのだろう。


 ちなみに警備に当たっている警察官はそれには深く追求せず、この国際会議自体を邪魔するやつがいないかを見張り続けている。


「しかし……こんな地味な登場でいいんッスか?」


「フィーロの言う通りなのです。他の参加者達はあんな風に車で来ているのです」


 レイスがそう言うと、今日は一般車が進入禁止になっている車道を、国旗が取り付けられた1台の高級車が通り過ぎていく。


「それもありだけど……私達の場合はアピールも兼ねているの。多くの人たちに、今回の国際会議を注視してもらわないとね」


 2人に説明しながら、お淑やかに会話をすることを心掛ける僕。どこで会話を聞き取られるか分からないので気が抜けない。


「いや、元々はそっちじゃないの妖狸?」


「あら、口に出てたかしら?」


「いや……何となく。何かそう思っているだろうな……って」


 そう言って、笑みを浮かべる泉。僕が強く反論できないからって、からかわないで欲しい。


「それより……こんな田舎町にこんな物が出来るなんてね……」


「そうだね……高級マンションっていうよりリゾートホテルって感じかな」


「そうかもしれないね」


 僕たちの目の前にある高層建築。今回の国際会議の会場であり、今後グージャンパマからこちらに来て研究している方々の住居ともなる大型複合施設である。敷地内には一棟の大型ビルとコンサートホールが建っており、大型ビルは1階から5階まではホテルとグージャンパマで発見された物の展示会場として利用され、5階から10階の屋上までは住居スペースとなっている。そして……今回の国際会議はそのビルに隣接する大型のコンサートホールである。


「建物が出来ていくのを見てはいたけど……こう改めて見るとデカいね」


「そうね」


 泉と僕が立ち止まって出来た施設を眺めていると、他の3人もじっくりと建物を観察し始める。


「これが異世界の建築技術ということか……面白いのう。あっちでは見られない光景じゃな」


「高くてもお城ぐらいなのです」


「確かに……これより大きい物っていったら山とかになるッスね」


「でも……浮島に建てられたデメテルと比べたら、まだまだな気もしちゃうんですよね……」


 建物を見てそれぞれ感想を述べる僕たち。ふと、僕たちの横を新たに1台の高級車が通り過ぎていく。


「今のって……菱川総理?」


「そうみたい」


 窓ガラスから顔が見えたので間違いないだろう。とりあえず、僕たちも徒歩でコンサートホール側に作られた敷地入口から大型複合施設の敷地内へと入っていく。そのままコンサートホール前の玄関に行き、そこで待っていた菱川総理と合流する。


「お、来たな面妖の諸君」


「お久しぶりです菱川総理」


 会ったところで、僕たちはそれぞれ菱川総理と挨拶を済ませる。


「それで、どうしてここで待っているんですか?」


「何、これからあの中へ入っていくんだ。私が付き添った方がいいだろう?」


 そう言って、コンサートホールのエントランスに視線を向ける菱川総理。コンサートホールのエントランス付近はガラス張りになっていて、中がどうなっているのかが見えるのだが、すでに来られている各国のお偉いさんたちの視線が僕たちの方へ向けられていた。


「動物園の動物になった気分……かな」


「私は……猛獣の檻の中に入れられる餌の気分ね」


「はははは……まあ、仕方ないだろう。グージャンパマの代表達はこれから来るしな。その前に君達と会話をしたい人物で一杯なんだよ」


「そこで、私達がガードする形ね」


 すると、そこにショルディア夫人が護衛と一緒にやって来る。


「あなた達と顔を合わせたい人物は、こちらで選んであげるから、その人達には挨拶して頂戴」


「どんな人達ッスか?」


「大国のお偉いさんに、大口の出資者……そんな方々よ」


 つまり、組織の幹部クラスという事か。ソフィアさんも偉い立場だが、今回ある人物たちはショルディア夫人と同等クラスなのだろう。


「でも……この会議に出席されるなら、私達が挨拶する方達って政治家ですよね」


「そうよ。で、今回の会議の出席者なのだけど、事の重大性を理解している国は信頼できる側近、またはその国の首相が直接来ていたりするわね……まあ、欠席している国もあるみたいだけど」


「独裁国家とかなら、普及して欲しくない技術ですもんね」


「ええ。まあ、そんな国はほっとけばいいわ……長々と話してしまったわね。そろそろ中で、お話をしましょうか」


「そうですね」


 ショルディア夫人、菱川総理たちと一緒に大型ホールのエントランス内に入る。周囲を確認すると、付き人を横に待機させたまま、立ち話しをしている首相達のグループがあったり、付き人と何やら相談しているグループがあったのだが、僕たちが来たことを知ると、話を止めて視線をこちらに向けてくる。

 

「一瞬で静かになりましたね……」


「当たり前だ。今回の国際会議……他次元総合会議をすることになった起因の4人が来たんだからな」


「それに、あなた達は各国が対策に困っていたヘルメスを半壊させた集団のリーダー格でもあるのよ? あなた達と御贔屓にしたい人物ばかりよ」


「いつの間にリーダー格に? 名乗った覚えはないんですが?」


「面妖の民が大活躍する際に、必ず君達が登場するだろう? 妖理とレイス譲は国会にも出席しているし……それと、赤鬼に氷鬼、比良と呼ばれている彼らに命令を出しているのは君だからな? 覚えが無いか?」


「あ、ああ……確かにしてますね。スパイダーやクラーケンを捕える時とかに……」


「そういう事だ。っと……」


 すると、話を切り上げ、こちらに近づくグループ。その顔に見覚えがある……確か大国の大統領だな。


「あなた達。ご挨拶していただけないかしら?」


 そんな事を考えていたら、自己紹介をするようにと、ショルディア夫人から振られたので、僕たちはその集団に自己紹介と軽い談話をするのであった。

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