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357話 追跡開始

前回のあらすじ「助っ人ゲット!」

―翌日「魔導研究所クロノス・会議室」―


「……ということで、マグナ・フェンリルのマナフルさんの協力を得られました」


「「「「やり過ぎ!!」」」」


 昨日のやり取りを話すと、3日前と同じ会議の参加者たちから一斉に全員からツッコミが入る。


「あの一帯を氷漬けにする気か!?」


「でも、今回の件で彼女ほど適任もいないんですけど……」


「確かに。素早く標的に接近し、一瞬にして凍らせる……これなら、相手が爆破テロを狙ったとしても不可能だろうな」


「その前に、マグナ・フェンリルの嗅覚ならヘルメス達のねぐらを嗅ぎ当てることが出来そうなんだけどな……」


 カイトさんの意見に、ああ……。と皆から声が漏れる。カイトさんの言う通りでマナフルさんならそれが容易にできるだろう。彼女の嗅覚は、フェンリル戦直後にアオライ王国の王都にいた僕たちを探し当てることが出来るほどである。不審者が着ていた光学迷彩服を彼女に嗅がせれば、すぐにヘルメスの潜伏地まで案内してくれるだろう。


「……そういう訳で、明後日、来る予定なので早速やってもらいますね」


「あ、ああ……その際にはミリーにも手伝ってもらうよ」


「私も組織のメンバー数人を連れてくる」


「自衛隊は動かせないからな……こちらは地元警察に動いてもらうか。これで一番の問題を回避できそうだな」


「しかし、当日の警備に関しては3日前と変わらずにサーモグラフィカメラは設置しておく。また、当日の警備員数名には小型のサーモグラフィカメラを持たせるからな」


「よし! 地球組は明後日のヘルメスの捕縛準備を。グージャンパマ組は国際会議に向けて、当日の警備の割り当てなどを決めておくように!」


 カイトさんのその言葉で会議は終了する。僕は直哉たちに軽く挨拶してから、明後日の準備のために家に帰るのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―2日後「イスペリアル国・領事館 玄関前」―


「うーーん……!!」


 マナフルさんを迎えるために領事館で1泊した僕とレイス。帰り支度をえ領事館の外に出る。春の陽気を含んだ日の光を浴びながら僕は背筋を伸ばす。レイスは僕の横で大きな欠伸をし、まだ眠いのか目を擦っている。ポカポカ陽気なので、もしかしたら僕の頭の上で二度寝をするかもしれないな。


「待たせたかのう」


 僕たちが領事館の玄関前に立っていると、その領事館の壁を華麗に飛び越え、その白い毛皮をなびかせながらやってきたマナフルさん。朝の光でその毛皮が煌めいていて、女王の風格を漂わせている。


「いえ、僕たちもちょうど準備が済んだところですよ」


「マナフルさんの方は大丈夫なのです?」


「問題ない。特に持ち込む物も無いからのう」


「じゃあ、さっそく出発でいいですか?」


「うむ。構わぬ。さっそく案内せよ」


「では……」


 僕とレイスはマナフルさんを連れて、地球に戻るために、まずはイスペリアル国からビシャータテア王国へと転移魔方陣を使って移動する。


「うむ? 薫か」


 ビシャータテア王国の転移魔方陣のある建物から出ると、王様と護衛のカーターたちと鉢合わせした。


「おはようございます。これから会議ですか?」


「ああ。いよいよ記念すべき国際会議への出席だからな。しっかり準備をしなければな……で、そちらの聖獣が」


「マグナ・フェンリルのマナフルさんなのです」


「マナフルじゃ。その会議を邪魔する五月蠅いハエ共を蹴散らしてやろう」


「はははは! 聖獣様が守って下さるなら心強い! 薫……頼んだぞ」


「はい」


 王様はそう言って、転移魔方陣のある建物へと入っていく。カーターとサキも僕たちに軽く挨拶して、その後に続いて入っていってしまった。


「うむ……あの王様はなかなか見どころがあるのう。あのわがまま女王よりしっかりしていて……腹の内を見せない。王としての風格がある」


「べた褒めですね」


「まあのう……で、あの義父とは上手くやっているみたいじゃのう」


「まあ……彼女のお父さんですからね。というより……マナフルさんってそういう話に興味があるんですか?」


「うむ! これでも長生きしているのじゃ。人の色恋沙汰という物は、聞いてて面白いからのう……そうじゃ。オルデ女王の色恋沙汰を教えてやろうではないか! 色々、やってるからのう……知っておいて損は無いぞ?」


「「ぜひ、お願いします!!」」


 マナフルさんからの提案に飛びつく僕とレイス。そんな願ってもない好機を逃す手はない。


「あやつに苦労しているようじゃのう……そうしたら」


 異世界の門(ニューゲート)のあるカーターの邸宅に向かいながら、オルデ女王の恥ずかしい話を仕入れていく。また厄介事に巻き込まれた時には、これで脅すとしよう。


「あ、薫兄だ」


「おはようッス!」


 マナフルさんと話しながら、大通りを歩いていると泉たちと出くわした。


「おはよう」


「おはようなのです。2人はこれからどこへ?」


「ユノが着るスーツの仕上げのためにフロリアンへ向かうところだよ」


「午後にはユノに着てもらう予定ッス。一緒に来るッスか?」


「ううん。これから、マナフルさんと一緒にヘルメスの奴らを捜す予定だから……」


「うちらも行った方がいいッスか?」


「大丈夫だと思うのです。他にも色々な人たちが手伝ってくれるのです。ミリーさんやオリアさんとか」


「それなら安心ッスね」


「でも……ユノの彼氏さんには一度見てもらいたいな……」


 ニヤニヤしながらこちらを見る泉。ユノのスーツ姿を拝みたくないの? と訴えかけてくる。


「分かったって……晩御飯を作って待ってるから、ユノと一緒に来てくれる?」


「いいよ! それじゃあまた後でね!」


 泉はそう言って、フィーロと一緒にフロリアンへと向かっていった。3人も来ることだし、今日はカレーにでもしようかな……。あ、でもスーツ姿を見せるって言ってたし……匂いのキツイ物は止めといた方がいいか……。


「薫。私達も行くのです」


「あ、うん」


 レイスに言われて、カーターの邸宅に向けて歩き出す僕たち。2人と会話をしつつ、今日の晩御飯は何にしようか考えるのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―数時間後「笹木クリエイティブカンパニー・裏口」―


「これなんですけど……どうですか?」


「ふむ……」


 ミリーさんが持ってきた、ヘルメスのメンバーが着ていた光学迷彩服の臭いを嗅ぎ始めるマナフルさん。


 地球に戻ってきた僕たちは、妖理の衣装に着替えてから笹木クリエイティブカンパニーにやって来た。集合場所に行ってみると、2台の車の横にオリアさんとミリーさんの2人、そしてオリアさんの部下である4人の男女がいた。


「これより任務を開始する。奴らのアジトの発見を最優先。状況次第では突入して奴らを一網打尽にする……気を引き締めろ」


「「「「はい!」」」」


「それで……どうなのかしら?」


 ミリーさんが今回の作戦の要である、マナフルさんの嗅覚で奴らのアジトまで辿っていけるのかを、マナフルさん本人に尋ねる。


「ちょっと待て……」


 マナフルさんは光学迷彩服に向けていた鼻を、今度は空に向けて匂いを嗅ぎだす。一度、周囲の匂いを嗅いで、そこからある一定の方向へと絞っていく。


「……こちらから、これに似た匂いがするのう」


 マナフルさんが西の方角を振り向く。


「しかし……少しばかり距離があるのじゃ。もう少し、近寄らないと流石に分からんのう」


「話に聞いていたけど……凄い嗅覚ね」


「ああ、おかげで我々の仕事が減って助かる……これより、西の方角に向けて車で移動する。先頭車両は私とミリー、そして妖狸とレイスとマナフル。お前達は2台目で、私達の後に続け」


 オリアさんが、そう指示を出すとオリアさんの部下の人たちは置いてあった道具を持ち、車へと乗車していく。


「妾は走ってもいいのだが?」


「こちらだと不自然に見えるので、一緒に車に乗っていただければ助かります。マナフルさんが来たと知られれば、追いかけている奴らが慌てて逃げるかもしれないので」


「それだったらしょうがないかのう。まあ……車という物に乗って移動するというのも、なかなか面白いからいいのじゃが」


 そう言って、マナフルさんが先頭車両へと乗っていく。それを見て僕たちも乗車していく。


「これより移動を始める」


 スマホで2台目の人たちに連絡するオリアさん。それを横で聞いたミリーさんが車を出発させる。


「妖理。橘署長に連絡をしておいてくれ」


「分かりました」


 僕はスマホを取り出して、橘さんへと電話を掛け始める。今度の国際会議には王様、そしてユノも出席する。その安全を確保するためにもここで阻止させてもらうとしよう。


―クエスト「アジトを発見せよ!」―

内容:ヘルメスのメンバーが潜伏するアジトを見つけ、隙あらば奴らを一網打尽にしましょう。なお、夕方には泉たちが家に来るので、それまでにケリを付けましょう。

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