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356話 強力な助っ人

前回のあらすじ「超人スキルで不審者を撃退」

―不審者を捕えてから翌日「魔導研究所クロノス・会議室」―


「驚いたな……まさか、魔石無しでこれほどの物を作れるなんて……」


 カイトさんがタイツ男が着ていた周囲の風景に同化する光学迷彩機能を持つスーツを見て感心している。現在、僕はクロノスで開かれている不審者改めヘルメスのメンバーへの対策検討会議に参加している。他の参加者は賢者さんたち一同と、直哉にカイトさん。後は自衛隊と米軍の隊員がそれぞれ1名ずつ、それとオリアさんも参加している。


「スーツと同じ素材で作られたサバイバルナイフを入れるフォルダーに、目を隠すための特殊なゴーグル……このスーツの機能を起動させるにはこのゴーグルのところにあるスイッチを押すことで、これらが起動し、また、このゴーグルで得られた画像を送信することも出来るハイテクな暗視ゴーグルだね」


「素晴らしいな……あっちの世界にはこれほどの技術があるんだな……」


「そうなんだが……この技術力は一般に広まっていない、この私やカイトも知らない技術だ。恐らく、米軍や自衛隊も知らないだろうな」


 その言葉に、自衛隊と米軍の隊員が頷く。


「こんなのがあったら、とっくの昔に実装されているだろうね……それこそ、ミリーが薫の蔵に潜入した時にでも……」


「そんなの使われたら、堪ったものじゃないですね……不意打ちで絶対に負けていたと思いますから……」


「「「「……」」」」


「……なんで、皆黙るのかな?」


「……いや、それは無いと思って」


「これを着ていた奴と同じように物音で気付いて、攻撃はしなくても鵺で大楯を構えて、攻撃から身を守ることはすぐに出来そうだしな」


 直哉の言葉にここにいる全員が頷く。そこまで強くは無いはずなんだけどな……。


「薫……いい加減、自分がどれだけ常識からかけ離れた超人で美人なのかを認めるのです」


「変なことを言わないでよレイス……」


「それで、弱点とかあるのか? これを使用されたら今度の国際会議の警護がかなり難しくなるのだが」


「いくつかある。1つはそこの薫がやったように物音は消せない。条件次第にはなるがそれで隠れているのが分かる。後は匂いとかも消せないな」


「つまり、あくまで消せるのは姿だけという訳か」


「それと、サーモグラフィにも引っかかるかな。だから、ホールのある施設の出入り口に温度センサーを設置するだけでも、かなりの対策になるかな」


「なるほど……しかし、とっさに対応する事は難しそうだな」


「そうですね……」


 僕とオリアさんはこの問題に唸ってしまう。今回の場合、来賓客への被害が出る前に、いかに侵入者を発見し迅速に対応できるかに掛かっている。出来れば、誰にも知られないうちに……。


「もっと手っ取り早い方法は……これを着ていたヘルメスの日本での拠点を叩くことだね。奴らを一網打尽にして、そこにあるこれらを全て回収する」


「その方法が一番手っ取り早いな……」


「……あれ? カシーさん。シャドウの方々って姿を消せましたよね? それの対策とかで魔法や魔道具とか……」


「無いわ。彼ら曰く、魔法でも無いし、魔道具に似た謎の技術らしいわ。それと、アレは姿を消しているじゃなくて、どこか隠れているだけよ」


「そうなんですね……」


 姿を消している訳では無いのは残念だが……それより魔法でも魔道具じゃない謎の道具って……一体、どんな技術なんだろう。それはそれでとても気になるんだけど……今はそれどころじゃないか。待てよ?


「じゃあ、シャドウの方々を警備に派遣できませんか? そんな事が出来る彼らが入れば百人力あんですが……」


「それは……要相談かしら」


「だな。クルードとハリルに訊かないとな……で、他の国の奴らはどうだ?」


「それは……」


「うーーん……」


 各国の賢者たちが唸る。ビシャータテア王国以外にもシャドウのような諜報機関が存在する。そして、その優秀さは引けを取らない。そんな彼らも日夜、自分の国のために秘密裏に働いているのだ。そう簡単に持ち場から離れることは出来ないだろう。


「とりあえず、そこは後で各国で議論してもらうとして……他に案はあるかな……?」


「他にか……」


 カイトさんに他に無いかと訊かれ、考えるがいい案は無い。


「獣人の方々……嗅覚の優れた者達を派遣しましょう」


「オアンネスにもいるぞ。水中の方が得意だが……外でも問題なくいけるぞ」


 各国の賢者さんたちから提案が出る。獣人からは犬や猫のような嗅覚が優れた獣人が来るのだろう。オアンネスからは……鮫やピラニアのような血の臭いに敏感な者が来るのだろうか? そもそも、魚は匂いで獲物を嗅ぎ分けられるという研究成果もあるらしいから、全く予想外の人が来るかもしれないな……。


「確かに……それが現実的な案だな」


「そうだな。こちらもサーモグラフィカメラを至急準備するとしよう」


「そうしたら、今日の所はこれでお開きにして、すぐさま行動に移しましょう。それで3日後の同時刻に出来ることと出来ないことを発表しあって、策を練る感じで……薫とレイスもいいかな?」


「はい。僕も何かいい案が考えてみます」


「同じくなのです」


 ここで会議はお開きになって、それぞれ持ち回りの仕事に戻ったり、ヘルメスの対策のために報告に行ったりへと会議室から出ていく。


「あ、薫……一応、言っておくが……無理に君が案を出す必要は無いからね?」


「え……でも……」


 人が少なくなった会議室でカイトさんが話しかけてくる。今回の会議には僕も妖理として出席する。しかも、警護に当たるのだから他人事ではない。


「君たちは当日の警護に当たるだろう? そのための準備に専念してくれればいい。むしろ、音で見えない敵を捕らえられる技術を持つ薫がいるだけで、これほど心強い味方はいないよ」


「要は……当日に体調を崩されては困る。しっかり体調を整えて万全の状態で当日を迎えてくれ」


「うーーん……分かった」


 カイトさんと直哉の提案に、僕は渋々、返事をするのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―会議から2日後の夜「イスペリアル国・領事館 食堂」―


「と言われてもな……困っちゃいますよ」


「お主も真面目じゃのう……小娘、お替り」


「はい。味付けはどれにしますか?」


「醤油という物をベースにしたタレじゃったか? それで頼む」


「分かりました。雪野ちゃん」


「はーーい! すぐに焼くよ!」


 マナフルさんがあみちゃんにステーキのお替りのオーダーをして、それを聞いたあみちゃんがステーキを焼いている雪野ちゃんに伝える。あみちゃんもステーキに一緒に載せる青のりを塗した皮付きジャガイモと、焼いた人参を皿に盛り合わせていく。


 会議から2日経った今日の夜。マナフルさんが食事をしたいと予約を入れていたので、あみちゃんと雪野ちゃんに頼んで、ステーキを振舞ってもらっている。ちなみに今日のお代は、自分に挑戦しに来たフェンリルの牙と爪を持ってきた。


「同じマグナ・フェンリルではなくて、フェンリルが王座を狙って挑戦するなんてことがあるんですね」


「よくあることじゃよ。本来はどちらかが死ぬまで戦うことが多いのじゃが……そやつときたら、命乞いをしてきてのう……それならと詫び代に自分の抜けた牙と爪を持ってこさせたのじゃ。そうすれば、ここで馳走を食べれるからのう」


「ふふ♪ 薫から話は聞いてます。すっかり常連さんだって」


「今日は口うるさいトカゲもいないからのう……ゆっくり出来ていいもんじゃ」


 ライバルでシルバードラゴンのハクさんがいなくて上機嫌のマナフルさん。あみちゃんたちと一緒に領事館に向かっている最中に、偶然出会ったユノと楽しくお喋りをしている。しかし……お泊りセットを持っていたし偶然ではないよね……もしかしたら、シシルさんが教えたのかも……。


「あ! ユノ。今日の護衛ってシシルさん?」


「はい。そうですけど……」


「晩御飯を食べるか聞いた方がいいかな? いいお肉を焼いているから凄く我慢しているんじゃないかな……」


「確かに……これだけの暴力的な匂いなら納得なのです」


 小さく切られたお肉を食しながら、僕の意見に納得するレイス。その口元に青のりが付着していたりする。


「そうですね……シシル!」


 ユノがそう呼ぶと、礼儀正しく食堂の入り口から入ってくるシシルさん。


「話を聞いてましたが……よろしいので?」


「薫がいいと言ってるんですから、ここは大人しくご相伴に預かるべきですよ」


「では……お言葉に甘えて」


 シシルさんは静かに席に着き、雪野ちゃんにオーダーをする。ポピュラーなステーキソースを頼んでから、こちらに顔を向ける。


「ありがとうございます薫様」


「お気になさらず。それで、どうです? 今度の国際会議から人手は出せるでしょうか?」


「陛下とユノ様がご出席しますからね。ハリル様は無理ですが、私を含めた4名で当たる予定です。他の国々は不明ですが……」


「そうですか……」


 まあ、そんなところだろう。ハリルさんたちが来ないのは王国の防衛面から考えてしょうがないし、むしろ、それだけの人数をこちらに省いてくれて大助かりである。


「薫。その護衛に必要な条件というのは……つまり、耳が良くて、鼻が利いて、さらに素早く相手を仕留める技術がある者だったらいいんですよね?」


 すると、ユノが何か思いついたような表情を浮かべる。


「いるの?」


「はい……こちらに」


 ユノはそう言ってマナフルさんを見る。その視線に気付いたマナフルさんは、前足で顔を洗うのを止めて口を開く。


「なるほど……それは妙案じゃのう。妾もあちらの世界というのが気になるのじゃ。ちゃんとした謝礼を用意してくれるなら考えてやってもいいぞ?」


「謝礼……今回みたいに料理でいいですか? 今日はお肉だったので、今度は海の幸でも……」


「分かったのじゃ。妾も手伝ってやろうではないか」


「え? ……はい。お願いします」


「交渉成立! 良かったですね薫!」


「そ、そうだね……」


「協力を得られて良かったのです」


 そこで女性陣たちで話がにぎやかになる。この食堂で唯一の男である僕は静かにあることを考えてしまう。そう……過剰戦力ではないかと。


「そうしたら、あちらに滞在するのです?」


「それもいいのう。旅行気分で楽しそうなのじゃ」


「でしたら、色々準備が必要ですね」


 マナフルさんのあちらでの滞在、そしてお泊りが決まっていく……。ここで水を差すのは悪い気がするので、僕は口出しをせずに静かにステーキを口にするのであった。


「うん。美味い!」

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