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347話 ウメノオムスビとサケノオムスビ

前回のあらすじ「魔獣を瞬殺した」


*パソコン故障のため、スマホでの作成になります。その為、いつもの書式とは違う箇所があると思いますがご了承下さい。また慣れない機器での作成の為、しばらくの間、投稿が遅れたり休稿する恐れがありますので、ご注意下さい。

―薫が怪鳥を討伐して数十分後「どこかの建物の一室」シェムル視点―


「くっ~~やしい! 何なのよ! 隙を狙って襲ったのに!!」


「……エイル。何やってるの?」


ネルへの報告のため廊下を歩いていると、近くの部屋から変な声が聞こえたから来てみたけど……。


「な、何でも無いわよ!」


「ふーん……薫に送りこんだ魔獣があっさりやられたのか……」


「何で、あんたが知ってるの!?」


「鎌を掛けただけなんだけど……抜け駆けはズルいよ?」


「あんたみたいに、戦いが目的じゃないの! 魔王様の邪魔をする、あの勇者を消そうと思ったのよ! 相棒の精霊がいない絶好のタイミングだったのに!!」


「ご愁傷様……だから、甘くみるなって言ったじゃん。薫って色々隠し手を持っているから、油断出来ないんだよ」


「そんなの分かってるわよ! ふん!」


そう言って、俺を残してエイルは部屋を出ていった。


「全く……分かっていたら、ヤられる訳が無いじゃん」


くだらない話をしてしまった……とりあえず、ネルへ報告に行かないと。俺も部屋を後にしようと、扉に手を掛ける。


「どんな手を使ってきたのか見たかったな……」


魔法を使わないで、いかにエイルご自慢の改造魔獣を倒したのか、かなり気になる。が、エイルに訊いた所で、魔王様の命令を無視したこともあって、素直に話す事はないのは確実である。


「あの黒い武器以外にも何か持っているのは分かるんだけど……普通に考えたら魔石かな?」


でも、エイルの改造魔獣は、魔物たちが使う魔法にある程度耐えられるようになっている。それの下位互換である魔石の攻撃なら余裕で受けきれるはずである。


「ユニコーンにやらせた可能性もあるけど……エイルは一度見ているから、それも折り込み済みの作戦だったはずだもんな……」


そう考えると、それら以外の切り札を有している事になるのだが。


「ふっ……! 面白いじゃん。やっぱり、おもちゃはそうじゃなくちゃね」


自分でも、気持ち悪いと思えてしまうような笑みを浮かべながら、部屋を後にするのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―討伐してから3時間ほど「イスペリアル国・正門近く」―


「申し訳ありませんでしたー!!」


そう言って、僕に討伐依頼をしたオアンネスの修道士が頭を下げる。


聖都からの応援部隊が来て、協力してキマイラと怪鳥の死骸を馬車に載せて運搬して帰ってきた所に、聖都の正門前で待っていた彼が謝罪してきたのだが……。


「気にして無いので、頭を上げて下さい」


「いえいえ!? レイス様が実家にご帰宅されていて、魔法が使えない状況とは知らずに、とんでもないお願いしたのですから、ここはしっかり謝罪を……」


「「「「え?」」」」


それを聞いて、一緒に戦ったパーティーから驚きの声が上がる。


「あれで魔法を未使用なの?」


「魔石のレベルが違うのかも。最後のアレは見たことも聞いたことも無いから」


「聖獣マグナ・フェンリルが使う魔法が込められた凍結魔法なのじゃ。さらに、ヘンテコな剣の相乗効果で、切った相手の熱を即座に奪う魔剣になっていたのじゃ。魔国なら王家管理の宝刀扱いじゃな」


「向こうの大陸出身者が、そこまで言うなんて……」


「流石、勇者。強さも美貌も兼ね揃えてるわね……」


「……これで、女性だったら完璧だったのにな」


「「「「分かる!」」」」


オラインさんも含めたここにいる全員が、その意見に同意する。って、何で話に参加していない部外者までもが同意してるのだろう。あ、グラッドル!? 熊である君は頷かないでくれないかな!?


「……帰る」


呆れたのと、大人数にツッコミを入れる気にならなかった僕は、静かにその場から立ち去ろうとする。


「報酬は!?」


「魔獣の肉以外は、どうぞご自由に……」


そう言って、僕は領事館に戻るのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―夕方「イスペリアル国・領事館 食堂」―


「うむ……これはダメじゃな。肉が普通の魔獣とは違う……食べたら腹を壊すぞ」


「そうですか。となると……エイルの用意した魔獣かな……」


領事館に解体された魔獣の肉が届いたと同時にマグナ・フェンリルが突如、訪問して来たので、倒した魔獣の肉をお裾分けしようと思ったのだが……。


「となると……これは破棄しますか」


シエルに渡すお肉は別の物にするとしよう。もしくは、調理した料理を渡すのもありだな。


「そういえば……マグナ・フェンリルさんはどうしてここに?」


「マナフルと呼べ。マグナ・フェンリルは種族名じゃからのう」


「じゃあ……マナフルさん」


「うむ。それでいい。で、ここに来た要件じゃが、お主に聞きたい事があって来たのじゃ」


「聞きたいこと?」


「そうじゃ。妾も歳を取ったな……お主、アンジェの身内か?」


「え?」


マナフルさんの発言に、僕は思わずビックリする。どうして、彼女の口からその名が出たのだろう?


「はい。僕の祖母ですが……知り合いですか?」


「そこまでの関係じゃ無いのう。アンジェとは一度だけ会ったことがあってな。それっきりじゃったから、忘れていたのじゃ」


「どこでお会いしたんですか? 祖母がアオライ王国に行った話は聞いた事が無いんですが」


「場所は知らん。何せ、赤いドラゴンの後を追いかけていた時じゃたしな……それじゃから、いつ会ったかも覚えていないのう」


となると……お婆ちゃんが無くなる前、アオライ王国からヴルガート山までの道のりで会った事になる。


「お主のように旨い飯を差し出した稀有な女じゃった。確か……サケノオムスビとウメノオムスビとかいう料理じゃったな」


そう言って、口から涎を垂らすマナフルさん。おむすびの味も思い出したようだ。


「作りましょうか? 時間を頂ければ作れるんですが……」


「おお! 気が利くのう。そうしたら、それを食べながら話すとでもしようかのう」


ルンルン気分で食堂の床に座り込むマナフルさん。今日の晩御飯の主食はこれで決まりだな。後は、オカズを何にするか……あ、唐揚げを大量に作ってシエルに渡そう。後はトマトがあるから、それでサラダでも作って……。


「よし! 早速……!」


「薫さん! いらっしゃいますかー!」


あ、ハクさんが来た……。マナフルさんを見ると、さっきまで尻尾を振っていたのにそれを下げて、機嫌悪そうな表情をしている。


かといって、ここで居留守を使うわけにはいかないので返事をしないと。


「はーい! どうぞ入って来て下さーい!」


あまり待たせ過ぎないようにしないと……。僕はこの後、大急ぎで料理を作るのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―1時間ほど後―


「おお! これじゃ! この味じゃ! 懐かしいのう……この酸っぱさと香りのおかげで、より鮮明にあの時のことを思い出すのじゃ!」


「忘れていたのに懐かしいって、どうなんですかね?」


「何が言いたいんはじゃメストカゲ?」


「ババアって言ってるんですよ。このメス犬?」


「二人ともケンカはダメですからね……それで、マナフルさん。先ほどの話の続きをお願いします」


晩御飯を2人と一緒に取りながら、話の続きをマナフルさんにお願いする。


ちなみに、その時のお婆ちゃんの様子をを知りたいという理由もあるのだが、こうでもしないと2人がいつまでも罵り合いそうという理由の方が強かったりする。


「そうじゃったな。妾がそなたの祖母に会ったのは赤いドラゴンを追い掛けていた時でな。その道中で偶然出会ったのじゃ」


「その時、お婆ちゃんは何をしていたか分かりますか?」


「昼食を取っていたのじゃ。追い掛けている内に、腹が減ってしまってな。いい匂いがして、そちらに寄り道したら偶然出会ったのじゃ。いきなり現れた妾に親切な対応をしてくれてのう……いい女じゃったのう」


「そうですか……」


そうなると思った程の情報は得られなさそうだな……まあ、そんな美味しい話は無いか。


「で、追い掛けるのを優先していて、その時にお礼を渡せなかったのじゃ。あの時のお礼を渡したいのだが……」


「残念ながら……マナフルさんと会った時期位に老衰で……」


「そうじゃたか……ならば、代わりにそなたにお礼を渡そう。何かあるか?」


「うーん……それなら」


僕はフルールの羊毛をアイテムボックスから出して、テーブルの上に置く。


「これは?」


「お婆ちゃんが死ぬ間際まで集めていた聖獣の毛です。お婆ちゃんが何故これを大量に欲していたのか……その理由が知りたいんです。マナフルさんから見て、これはどんな効果があるか分かりますか?」


「フルール? それにこの毛は……あのモコモコした獣の事か?」


「そうです! こんな姿の聖獣なんですが……どうですか?」


僕はスマホを取り出して、この前の毛刈り時に撮影したフルールの写真を見せる。


「ああ、やっぱりそいつか。妾がご飯を取っている間に、先に昼食を終えたそなたの祖母が毛を刈っていたのう……何でもイレーレとかいう奴が持っていた禁忌書に記された素材とか……」


禁忌書!? そんな物があったの!? 僕が驚く中、マナフルさんは話を続ける。


「妾も禁忌書に記載されていたとか言っていたのう……そこのトカゲもな」


トカゲ発言にハクさんがマナフルさんを睨み付ける。また、口論が起きてしまいそうだが……それどころでは無い。


まさか……聖獣はその本に書かれていた魔獣の総称なのか? それにその本は今どこに? しかし、この後のマナフルさんの会話によって、それの所在がどうでも良くなった。何故なら……。


「ああ、思い出した。その時に訊いたな。何のために刈っているのかとな」

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