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330話 お祭り直前のハプニング

前回のあらすじ「お互いに色々考えている」

―「レルンティシア国・仮役場 お祭り会場」―


「お忙しい中、お越しいただきありがとうございます。ユノ様」


「こちらこそお招きいただきありがとうございます。今日は婚約者の薫と一緒に楽しませて頂きますわ」


「はい! レイス様もお楽しみくださいね」


「もちろんなのです」


 アリーシャ女王と挨拶する僕たち。ビシャータテア王国を出て、そのままクロノスとデメテル経由してレルンティシア国までやってきた。周囲を見渡すと、祭りに向けて皆がそれぞれ準備をしている。


「そういえば……泉さんたちは?」


「ふふ♪ 私達がいたらお二人の時間を楽しめないじゃないですか。だから別行動ですね」


「フィーロがいるからお二人なのかな……?」


「薫。そこは気にしなくていいのです。魔法使いと付き合うとそんなの日常茶飯事なのです……ちなみに、中には夜の営みをこっそり見る猛者もいるのです」


「はいはい……こんな真昼間にそんな話をしないの。とりあえず、祭りの衣装に着替えて……」


「ああ。それは泉さんが持って来るので……」


 やんわりと、アリーシャ女王が着替えるのにストップをかける。この感じ……まさか。


「……男性用の服を貸していただけませんか?」


「……ダメです♪」


「いつから、男性用の服を着れると思っていたのです?」


「なん……だと……って、ネタを振らないでよ。どうせ泉のことだから、あらかじめアリーシャ女王に衣服を渡すなって伝えてあったんだろうけど……」


 こんなこともあろうと思っていた僕はアイテムボックスから紙袋を取り出す。


「それは?」


「これ? あらかじめ、カイトさんに頼んで用意しておいた男性用の祭り衣装だよ。ここで見張りをしていた際に調達しておいたんだよね」


 祭り当日に、男性用の祭り衣装を素直に渡す訳が無いと思っていた僕。まさに、その通りになって事前に準備しておいて良かったと思う。


「さてと……うん? これは……?」


 紙袋を開けると、ほのかに香る甘い匂い。渡された時から入っていたこの布で出来たお守りからしている気が……でも、渡された時には、こんな匂いは……あれ? 何かふらつくな……?


「薫!?」


 すると、目の前がすぐに暗転してしまい。横にいたユノの呼びかけに答える事なく、僕はその場に倒れるのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―お祭り開始直前―


「泉ちゃんから頼まれて、何とかして薫が着替えるのを阻止して欲しいとお願いされまして……お守りと称したこれに、時間差で揮発する毒を染み込ませてありまして……次に袋を開けた時には軽い眠気を起こして、動きを止める予定でした……はい」


「その場に勢いよく倒れ込んで、大パニックになったんだけど……? しかも、ユノ様の目の前でよ?」


「……こうなるとは思っていませんでした。すいません!」


「誤って済むか!! 泉ちゃんも頼む相手は慎重に選びなさい!」


「すいませんでした!!」


「……ああ。そういうこと……ね」


 目が覚めて、ベットから体を起こすと、扉の向こうからカイトさんとミリーさん。そして泉の声が聞こえる。どうやらしてやられたようだ。


「ここは宿泊棟の一室……か」


 不意打ちで薬品の匂いを嗅いで倒れた事を思い出す……あれから、どれだけ眠ったのだろうと自分の腕時計を見ようと、視線を移すと……。


「結局、こうなるの?」


 女性のお祭り衣装としての白のワンピース服に着替えさせられていた。しかも、パット付きのブラジャーを使って胸を底上げしてるし……扉の向こう側でミリーさんにあれだけ怒られてるのに、これでは本当に反省しているのか怪しいものだ。


 とりあえず、ベットから立ち上がって、部屋を出る。すると、声が聞こえいていた3人以外にも、カーターとユノ、それにアリーシャ女王もいた。


「大丈夫ですか?」


「はい……まさか、あんな不意打ちを喰らうとは……」


「そうですか……? 本当に気分が悪かったら言って下さいね?」


 かなり心配そうな顔をするアリーシャ女王。やっぱりお客として呼んだ人を卒倒させたことに責任を感じてるのだろうか?


「二人共? もしかして、カイトさんかなりやらかした感じ?」


 僕は視線をカーターとユノに向けると二人が頷く。そこにいる皆の話を確認したら、僕を眠らせるのに使った薬が猛獣等に使用する薬だったらしく。それを人間である僕が嗅いで倒れた事が分かって大慌てだったらしい。


「何で、そんな危ない猛毒を盛ったんですか!?」


「いや……もしかしたら、薫がそれに気付いて、プロテクションで身体強化してから袋を開けるのでは? と思って、念には念を……」


「その前に死ぬかもしれない可能性を考慮しなさい!」


 正座されていたカイトさんの頭に、ミリーさんのキックが炸裂し、カイトさんが横に勢いよく吹き飛んだ。


「あ! 起きたのです?」


 レイスに声を掛けられたのでそちらを見ると、レイスとサキ、それにフィーロの3人が協力して籠に入ったお茶のセットを持って来ていた。


「うん。レイスたちは何をしてるの?」


「温かい飲み物を持ってきたッス。薫も変な薬を盛られて調子が戻っていないと思うッスから飲んだ方がいいッスよ」


「カーター、手伝ってくれる?」


「ああ。もちろんだ」


「私も手伝うわ」


 僕たちは、倒れているカイトさんをそのままにして、先ほどまで僕が寝かされていた部屋で休憩をとる。いつもの癖で僕も手伝おうとすると、皆から休めと言われ、ベットの上で静かに座っておく。


「はい。スッキリするわよ」


 ミリーさんから飲み物が入ったカップを受け取り、一口飲む。すると、爽やかな香りが口から鼻へと抜けていく。


「ミントティー?」


「そうですよ。ダメなら他の物もご用意できますけど……」


「大丈夫です。こっちでこうやってミントティーを飲めるなんて思ってなかったので」


「色々、試行錯誤しながら育てているんです。それでご気分の方は……」


「大丈夫ですから……まさか、猛獣扱いされるとは……」


「ゴメン。頼んだ私もそこまでするとは思って無くて……」


 意気消沈している泉。まさか、そこまでやるとは思っていなかったのか……あれ?


「じゃあ……何でこんな格好を?」


「それとこれは別だから!」


「反省しなさい!」


 僕は鵺をハリセンにして、泉の頭をパンッ! と叩く。強度は金属ではなく、紙と同等にしているので、大ケガする事は無いだろう。


「ご、ごめんなさい……」


「俺も今回ばかりは少々やり過ぎだと思ってるからな。二度とこんな事はするなよ」


「彼氏の言う通りだよ……それで、お祭りは始まったの?」


「これからですよ。薫さんはちょうどいいタイミングで起きた感じです」


「それは良かった。僕のせいで遅れていたら、嫌ですし」


「そうしたら、予定通り始めましょうか。準備が整ったら呼ぶからここでゆっくりしてるといいわ」


 ミリーさんはそう言って、アリーシャ女王と一緒に部屋を後にした。


「気分はどうですか?」


「大丈……ふぁ~……」


 僕は思わず欠伸をして目をこする。まだ、薬の成分が残ってるのだろうか?


「もう少し休んでおいた方がいいですよ……それ!」


 僕の横に座ってたユノが僕の腕を強く引っ張る。僕の体は倒れて、そのままあれよあれよと、何故かユノに膝枕されてしまった。


「始まるまで、ゆっくりして下さい」


「……うん」


 恥ずかしいが……体を横にすると、思った以上に体が楽に感じられたので、今回ばかりはその言葉に甘える。


「いてて……大丈夫だったかい薫?」


 すると、カイトさんが頭を擦りながら部屋に入って来た。


「……そう見えます?」


「すまなかった。僕も少々やり過ぎた……あ、はい! ユノ様。すいませんでした!」


 この体勢だとユノの顔が見えないのだが、僕がこんな目にあったことに怒ってるのだろう。何故かカイトさんと泉以外も怖がってるのは……うん。気のせいだろう。


「今後は気を付けて下さいね……さもないと、お母様直伝の必殺技を受けてもらいますよ?」


「肝に銘じておきます!!」


 ……気のせいだったらよかったな。ユノから殺気が漏れてるのが分かるし……。


「しかし……僕も試したけど卒倒するような効果は無かったはずなんだけどな……全身の力が抜けて、しばらくは動けない程度だったし……」


「確認してたの?」


「もちろん。いくら何でも事前に確認したよ……だから、僕も報告を聞いた時はかなりビックリしたよ。薫。今日のお祭りを楽しんだら、明日はゆっくり休んだほうがいい。もしかしたら、僕たちが依頼した、ここの連日の見張りで体調を崩してるのかもしれないからね」


「分かりました」


「後で、疲れや快眠にいいビタミン剤でも用意しておくから、持っていってくれ……じゃあ、僕も準備にいかないといけないから行くね。本当にすまなかった!」


 そう言って、ミリーさん達がいるだろう祭り会場の方へと、カイトさんは行ってしまった。


「カイトさんの言う通りなら、薫は随分、無茶しているんじゃないですか?」


「これが終わったら、休息を取った方がいいんじゃないかな……」


 皆から身体の心配をされる。少々、体を酷使していたのかな……自分ではそう思っていなかったが。


「そうかな……」


「ちなみに昨日は何をしてたの?」


「見張りの任務が終わって、その間に溜まった洗濯物の片づけに、電話での小説の打ち合わせ……それが終わったら夕ご飯の準備をして、お風呂を入れている間に総理とショルディア夫人と今後の打ち合わせ……それ以外にも色々していたのです」


「「「「仕事を休め!(みなさい!)」」」」


「仕事のし過ぎかな?」


「お父様より働きすぎです!」


「騎士団でも、特別な事情が無い限りは、そんな長時間、働かせないからな?」


「ブラック企業じゃないの! もしかして……ここの見張りをしている時も、薫兄って何かしてたの?」


「こっちにいる間は見張り以外に小説の執筆にデメテルでのフェニックス達の受け入れの準備、後は各国の賢者達とエイルの情報を共有するための資料作成に……ってことで、明日から数日は休ませて欲しいのです」


「だな……薫が倒れられたら、あっちこっちで支障をきたすぞ……」


「でも……エイルの使用した毒の調査結果に、世界会議の際のマナーでグージャンパマだとマズい所作がないかの相談とか……」


「「「「いいから、休め!!」」」」


 その後、僕に当てられている仕事の量がおかしいという事で、早急に改善するようにユノを中心に嘆願書が作られることになったのであった。


「これでも効率よくやってたんだけどな……」


「それでも働き過ぎなのです。私もお母様から打診してもらうつもりだったのです。今度からは気を付けるのです」


 最後に、相棒であるレイスからも注意を受けるのであった。

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