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32話 今週のビックリドッキリ魔法は!?

前回のあらすじ「戦闘準備」

―「ビシャータテア王国・王都より南東の森」アレックス視点―


「カシー、ワブー。準備はいいですか?」


「ええ。とりあえず、1,2匹はやっつけておきたいわね」


「そうだな」


「カーター、サキ。それと王子。カシー達のエクスプロージョンが決まったら直ぐに攻めるのでお願いします」


「分かった」


「了解よ」


「ああ」


 シーエから作戦を聞いて戦闘の開始を待つのだが……果たして大丈夫なのだろうか? カシーの爆発呪文の威力は知っている。だから魔法耐性のあるワイバーンでも直撃すれば一撃で落とせるだろう。


 しかし、今回は8匹もいる。それらをまとめて片付けるのは無理なはず。だから、残りを薫さん達に任せるのだが……。魔法使いになって日の浅い彼らに任せて大丈夫なのだろうか?


「皆! いくわよ!」


 カシーの声で考えるのを止める。ここまで来たらやれるだけやるのみだ。


「カシーいくぞ?」


「ええ……エクスプロージョン!!」


 上空にいるワイバーン達の近くに向けて小さい火球が打ち上がる。ワイバーンもそれに気付き最小限の動きで避ける……が、突如、火球が膨張し火球を中心に盛大に大爆発が起きる。その爆発に避けられず3体程が落ちてくる。


「上出来ね」


「いきますよ!」


 落ちてきたワイバーンに止めを刺すために森の中に進入する。木々の間から残りのワイバーンに目を向けると視界の端から何かが飛んできた。


「あれは……」


 薫さん達だ。彼らが飛んでいる……は?


「王子。今は目の前のワイバーンを」


「あ、ああ。分かってる」


 カーターに言われて、気持ちを入れ換える……が。


(……父上。異世界の人々は私の想像を越えています!)


 あまりの出来事に、私は心の中で叫ぶのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「ビシャータテア王国・王都より南東の森上空」―


「行くよ!」


 僕の声で一斉に飛び立つ。カシーさんたちの攻撃に3匹が巻き込まれたので、残り5匹を落とすべく近づいていく。その5匹も爆発の影響で2組に分断されている。


「まずは正面の2匹を落とすよ」


 爆発の煙で分断され、数が少なく、かつ一番近いワイバーンの群れに突撃する。爆発の影響で注意が逸れていたワイバーンもこちらにようやく気づくがもう遅い。


「いくよ!呪縛!」


「グラビティ!」


 ワイバーンに目掛けて対象にかかる重力を増加させる呪文を放つ。すると背中に何か重い物を乗っけられたかのように、体を逆くの字にしながら地面に向かって落ちていく。


「アイツらも、ウチらと同じように重力操作で飛んでいるみたいッスね」


「そうね」


 抵抗が全く無いまま、ワイバーンが森に落ちていった。森に落としたら後はシーエさんたちが片付けるとの事だったので、残りの空を飛んでいる3匹に集中する。既にあちらは戦闘態勢に入っている。


「どうするのですか?」


「3人とも! 常にワイバーンの上を取りつつ、速さで掻き乱すようにいくよ!」


「分かったッス!」


「分かったわ」


 更に、僕たちは高度をあげる。ワイバーンも僕たちに体当たりをしかけようと速度をあげて向かってくるが追い付けていない。


「追い付けてないのです」


「しかもなんか遅くなってない?」


「それはあの巨体だもの。落下は自身の重さがプラスして速く降りられるけど、上昇には少し時間がかかるはず。だから無理だと分かってそろそろ火炎弾を放ってくると思うから注意して」


「大丈夫よ薫兄! あれでハンター服を作るまで死ねないもの!」


「一狩り行こうぜッス!」


「まさに、その狩りの最中なのですが!?」


「……緊張感が無いな」


 死と隣り合わせの戦闘なのに……。そう思っているとワイバーンが空中で静止して頭をこちらに向ける。口から火を漏らして火炎弾を放つ態勢に入る。


「来るよ!」


 火炎弾が放たれるタイミングで急加速する僕たち。その直後にワイバーンたちが火炎弾を放ち、先ほどまで僕たちがいたところを通過する。バランスボールサイズの火球で、そのまま当たったらかなりヤバそうである。


「プロテクションでどれだけ防げるかな?」


「試す気にはならないけどね! とにかく、また1匹いくよ! 引き付けるからよろしく!」


「りょーかい!」


 3匹の中で少し外れたワイバーンを狙う。魔法は効きにくいということなので、あくまで注意を引き付けるための魔法を放つ。術を放つために人差し指と中指を伸ばした状態で顔に近づける。忍者や陰陽師が術を放つようなポーズを取る。


「水連弾!」


 顔の近くに持ってきた二本の指を相手に向ける。指の先端から水の弾がワイバーンの顔を目掛けて数発放たれる。それらはワイバーンの顔に直撃して弾ける。注意を引き付けるのと同時に丁度いい目眩ましになる。


―水属性「水連弾」を覚えた!―

効果:水弾を連発で放ちます。殺傷能力はゼロですが衝撃と水飛沫で相手の行動を遅延または気絶させます。


「グワアアアァァァッーーー!!!」


 当てられたワイバーンが怒ってこちらに顔を向ける。その隙に泉たちがグラビティの魔法の射程距離内まで接近する。


「グラビティ!」


 術を喰らったワイバーンがその場に留まろうと必死に羽ばたくが耐えきれずに森へと落ちていく。


「後、2匹!」


「こっちに来たのです!!」


 2匹の内、1匹が空で静止中の僕たちに猛スピードで突進する。あちらから射程距離に入ってきてくれたのはありがたい。


「呪縛」


 突進してくるワイバーンが少しづつ下降しながら僕たちの下を通過していく。そしてそのまま地面に落ちていく。


「これで後1匹」


「もはや無双ゲーよね。これ」


「まあ、飛べないワイバーンはただの大きなトカゲですから」


「それでも、火を吐くけどね……」


 レイスがワイバーンをトカゲと評しているが、あの巨体で火を吐く生物が僕たちの世界にいたら大騒ぎである。


「くるッスよ!」


 口から火が漏れている。急いで射線上から離れる。


「え?」


 放たれる火炎弾。しかし、その形態が先程とは違っていた。その火炎弾は大きさはバレーボールサイズと小さくなっているが、それが複数個、放射状に放たれる拡散型のファイヤーボールだった。


「「「「嘘!?」」」」


 急いで回避行動を取る僕たち。かなりの数が飛んできたが、何とか避けられた。


「危ないわね……」


「そうッスね……」


 するとワイバーンは口を閉じて、すぐに拡散ファイヤーボールを泉たちに向かって撃ってくる!


「泉! 危ない!」


「え!?」


 不意を突かれた為に直ぐに動けない2人を庇うために、2人の前に急いで移動する。そしてそのまま僕が攻撃を受ける。


「薫兄!?」


「大丈夫ッスか!?」


「あちち……大丈夫。ちょっと痛いけど」


「でも、血とか少し火傷してるのですよ?」


「男だから大丈夫。それよりレイスは怪我無い?」


「薫がとっさに私の手を引っ張って庇ってくれたので大丈夫です」


「そう。良かった」


 皆の無事を確認すると、今度は自分の確認をする。火炎弾が何発か当たって服が破けたり焦げていたりする。正面から受けたが、鉄壁のおかげで思ったより痛みが少なく、行動に支障をきたすようなダメージでは無かった。


「皆、気を付けて……あれは他のやつと違うみたいだ」


「群れのボスってところッスかね」


「そうでもなさそうかな? もし群れのボスなら最初の3匹がやられた時に指示をだして団体行動を取るはずだと思うんだけど…」


「じゃあ、他の個体よりただ強い個体ってことですか?」


「多分ね」


 ワイバーンの行動に注意しながら会話をする。もし、群れのボスなら何かしらのアクションをするはずだが見た限りアイツには無かった。それよりかは他の個体より強いだけと考える方がいいだろう。


「そうなると、あまり近くに寄れないね」


 あのワイバーンの拡散型ファイヤーボール。撃った後の再度放つ間隔が他のワイバーンと比べてかなり短い。注意を逸らし、どちらかが近づいて呪縛を放つには危険すぎる。きっと、近づいたタイミングでその前に拡散型ファイヤーボールが撃たれるだろう。


 僕たちはそのワイバーンから距離を取り、お互い睨みあう状態になっている。どうするか。このまま引いてくれるのを待つか? でも、それでは仲間を呼ばれる可能性があるし……ここで仕留めておいた方がいいだろう。


「ここは奥の手を使うか……」


「奥の手?」


「皆、よーく聴いてね」


 皆に奥の手を話す。素材としてはダメになるけど、既に材料になるワイバーンは7匹もいる。ここは討伐を優先でいいだろう。


「じゃあ、皆いくよ!!」


「「「おおーー!!」」」


 僕たちから離れた泉たちが、敵から距離を取った状態で魔法の攻撃を仕掛ける。


「アイスボール!!」


 掌を相手に向けてバスケットボールサイズの氷の玉を飛ばす。ワイバーンがそれを避けて拡散型ファイヤーボールを放つ。


「避けるッスよ!」


「りょーかい!!」


 泉たちがスピードを上げて避ける。距離を取っているため余裕を持って避けられている。僕はそれを見ながらタイミングを計る……。


「いくよ! スプレッド・アイスボール!!」


 今度は野球ボールサイズの氷の玉が掌から複数飛んでいく。あのワイバーンの拡散型ファイヤーボールを見て思いついたみたいだ。ダメージは無さそうだが、鬱陶しいのか少し怒っている。


「グギャアアアーーー!!!!」


 泉を落とそうと必死になっている。よし。僕たちから注意が逸れた……僕たちは急いで相手の真上に飛ぶ。


「解放」


 アイテムボックスから、事前に入れておいた巨石を空中に出す。そして……。


「彗星!!」


 巨石に呪縛をかけてかかる重力を極限まで上げ、即席の隕石を作り上げる。ワイバーンがこちらに気付くがもう遅い。この距離では避けられないはずだ。


「いけっ!!」


 ワイバーンが回避行動を取るよりも早く巨石がぶつかる。


「グギャアアアーーーーーーーーー!!!!!!」


 ワイバーンは悲鳴を上げ、そのまま巨石と一緒にもの凄いスピードで地面にぶつかった。上空から生死を確認するが轟音と土埃でハッキリとは見えない……しかし、あんなのを喰らったら流石に倒しただろう……、


「やったね!!」


「凄いッスね。周辺の木々も落ちた衝撃でなぎ倒されてるッスよ!」


 そこに泉たちが合流する。ワイバーンの群れを倒し終わって、余裕が出来たのだろう。先ほどの魔法に興奮しているようだ。


「メテオとは……やるわね薫兄!」


「馬車を止めた所に丁度いい巨石があったからね。アイテムボックスに入れて置いて正解だったよ」


―地属性魔法「彗星」を覚えた!!―

効果:石に「呪縛」を施して敵に落とします。威力は魔法の加減だけではなく石の重さや材質でも変わります。ストーンバレッドのように多少なら標的に目掛けて飛ばすという事ができます。……ちなみに落ちた衝撃で下は()()()()()()()()。周辺に被害が無いように気をつけましょう。


「木端微塵とは行かないけど……バラバラだね」


「……そ、そうね。あまり見ないようにしてるんだけど」


「なのです……」


「ウチもあれは……」


 土埃が晴れて、上から視認できるようになったが……周辺の木々は倒され、そしてその中心には巨石で潰されたワイバーンが……。落ちた衝撃で手足がちぎれ、体があらぬ方向を向いている……うわ、目玉も飛び出して……。


「あまり見ないようにしようか……」


「……そうだね」


「おーーーーい!!」


 カーターの声が聞こえたので周囲を見回す。


「ここよ!ここ!!」


 ワイバーンが落ちて出来たクレーターの隅で、カーターたちが手を振ってこっちに呼び掛けていた。僕たちはそこに向かって降りていく。


「やったな!!」


「どうにかね」


「ちょ! 薫! 大丈夫なの!? ケガしてるじゃないの!?」


「はは……ちょっとね」


「皆さん無事でしたか」


 他の皆もやってくる。僕の姿を見て心配されたが、軽傷と知り安堵の表情をしてくれた。そして、最後に倒したワイバーンの話になる。


「間近で見ると余計に凄いわね」


「そうだな。俺たちのエクスプロージョンでもここまでにはならなかったしな」


「ああ。それで何の呪文を使ったんだお前らは?」


「薫兄がメテオを撃ちました」


「メテオ?」


 カーターが首を傾げている。どうやらこちらには隕石とかそういう知識は無いようだ。


「あ、あのメテオってなんですか?」


「いや。お前らそれより薫の事を心配しろよ。ケガしてるしさ」


「マーバの言う通りですよ。とにかく手当てをしましょう。馬車にポーションがあるので」


「いいんですか? 落とした他のワイバーンとか……」


「全部、始末しました。落ちた後も術と落下の影響で身動きが取れなかったようで難無く片づけられましたよ」


―クエスト「ワイバーン討伐!!」クリア!!―

報酬:ワイバーンの皮×8、魔石×8、その他使える素材が色々。解体作業があるので少し待ちましょう。


「それじゃあ……」


 カシーさんが例のごとく僕の肩を掴む。


「手当てしてあげるから話を聞かせなさい!! どんな魔法を使ったのかを!!」


「「「「カシー……」」」」


 皆が呆れたようにカシーさんの名前を呼ぶ。……質問攻めになることを覚悟しつつ、僕はケガの手当てために皆と一緒に馬車へと戻るのであった。

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