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326話 情報戦

前回のあらすじ「科学忍法・火の鳥とは関係が無い模様」

―それから1時間後「アザワールドリィ施設内・病室」―


 デメテルから転移魔法陣を乗り継いで、アザワールドリィにやってきた僕たちは、今はオラインさんがいる病室で、マスクが準備が整うまで待機している。熊のグラッドルがオラインさんの近くでお昼寝中の中、今回のフェニックスの巣の襲撃者に心当たりが無いか訊いているのだが……。


「毒を使う女……って、四天王のエイルではないか!? え? これから戦いにいくのか!?」


「かもしれないだけだよ。ちなみにエイルってどんな姿してるの?」


「緑色の髪……長さは、カツラを被っておらぬお主と変わらないぐらいの長さで、それ以外はほぼ人と変わらない見た目をしている魔族じゃ。本人の強さもなかなかじゃが、そやつが使用する毒や罠が厄介でな……それと美女だから、誘惑に負けないようにのう」


「大丈夫なのです。彼女の裸体を見て、我慢できるほどなのです」


「言い方!? ちょっと生々しいよ!?」


「それは……男としてどうなのじゃ? やっぱり薫は女性……」


「お・と・こ! そこ! 間違えないでよ!」


 変な事を言い始めるオラインさんに注意する。このまま、女性扱いされてしまうのは困ってしまうので注意する。


「お待たせ! 持ってきたよ!」


 するとカイトさんがそう言って部屋に入って来て、台車に乗せて持ってきたマスクを見せてくれた。


「それぞれの契約獣に合わせたマスクも用意してあるんですか?」


「そうだよ。君達に使ってもらう物だったしね……本来は火山とかの探索を考えて用意した物だったが……こんな理由で使う日が来るとはね。このマスクには浄化の魔石の粉末を混ぜ込んだ生地を使って作られていてね。それと耐火性と耐傷性に強い素材を使ってるから防具としても役に立つよ。まあ……息苦しさや蒸れとかは普通のマスクと同じだから、激しい戦闘中だと装着しっぱなしというのは厳しいかもね。ちなみに、このマスクさえあれば、口と鼻以外の毒にも有効だから安心してくれ」


「それは凄いですね……」


「どうやって実験したのです?」


「いや……単純にこの施設の投資者のVIPの一人が使っていて、その身で実証をしてくれただけだよ。彼も命拾いしたね……」


 うんうん。と頷くカイトさん。それって毒殺されたということじゃ……もしかして、お相手はヘルメスの連中だろうか?


「ちなみに使われた毒は即死級の物だったけど、それが1日の入院で済んだぐらいの高性能だから安心してくれ!」


「それはそれで、そのVIPの人にどんな事があったのか気になるんですが!?」


「あはは! それより急ぐんだろう? さっそく行くぞ!」


 話をはぐらかした!?え?僕たちに聞かせたくない事案なの!?


「気になる……」


「気にしない気にしない……ねえ?」


「儂に訊かないで欲しいのじゃが?」


「ははは! さあ行こう!」


 絶対に言いたくないという意思が凄い……これ以上、深く訊くのもあれなんで、ここまでにしとくとしよう。


「それじゃあ、行きますね……また、お見舞いに来ますので」


「……気を付けるのじゃ。相手が四天王なら生半可な戦闘にはならないからのう」


「分かってます。気を付けていきます」


「うむ」


「うーーむ……」


「カイトじゃったな? どうしたのじゃ複雑そうな表情を見せておるが?」


「いや……この子の祖母であるアンジェさんと同等かもしくはそれ以上の大規模破壊魔法が使えるから……むしろ、あの地域の地形を変えないか心配なんだけど……」


「え?」


「はいはい……さっさと行きましょうね……」


 僕はカイトさんの背中を押して、足早に病室を後にするのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―ほぼ同時刻「とあるVR空間」ある幹部の視点―


「へっくしゅ!!」


「どうした風邪か?」


「いや……鼻が急にムズムズしてな……」


「おいおい。お前、体調が戻ってないんじゃないか? 今日はさっさと休んどけよ」


「……だな。運良く生き残ったのに、こんなんで死んだら元もこうも無いしな」


 そんな会話をして、この空間から退出した彼。定例会議で出席しておきたい気持ちは分かるが……今回ばかりは、休むことを勧めた彼に同意する。例の開発中のマスクをたまたま所持してたから、ヘルメスが開発した特殊な毒に対しても辛うじて生き残ったらしいが……。


「……私も常に持ち歩いておくか」


 後で、ショルディアに頼んで譲って貰えないか訊いてみようと、頭の片隅に覚えておくのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―それからさらに1時間程「レルンティシア国・フェニックス棲み処から少し離れた上空」―


「はい。髪は緑色の女でした……」


 はい。四天王確定です。解毒効果のあるマスクを装備した僕たちは、フェニックスの後を飛んで、彼女たちの巣に案内してもらっている。ちなみにこのフェニックスと契約しているポウさんは、戦力不足ってことでデメテルに残っている。


「となると何の目的で、フェニックスを襲ってるのかしら?」


「素材の回収……魔王の復活に何か必要なのかもな」


「恐らく、私達の血ですかね……じわじわいたぶった攻撃でケガをさせてから採取していたので」


「酷い……」


「ぶっとばしてやるッス!」


 皆がやる気を高めている……。


「いいわ……この銃を試すのには十分な相手ね……」


 僕の後ろで、先ほどから持っている銃に頬ずりしているミリーさん。やる気はあるのだが……その理由が僕たちとは違うので何か恐い……。


「……ミリーさん。ほどほどにお願いします」


「任せて……眉間を吹き飛ばして上げる……♪」


 今度は銃を誰もいない方向へと向けて狙いを定める仕草をするミリーさん。その形状からスナイパーライフルとしてても使えそうってことで、突貫で照準器を付けるというカスタマイズがされている。威力は足のフォルダーに入れてある銃より格段に高いとのことだったが……その小さな銃で下級ドラゴンと戦えるなら、このスナイパーライフルはどれほどの威力が出るのだろうか?


 そんな事を僕が思ってる間にも、銃を笑顔で観察するミリーさん……。もしかしたら、ひさびさにグロ画像を拝むことになってしまうのだろうか。魔獣の解体などで多少は慣れてきたとはいえ……あまりに酷い物は見れないのだが。


「特に人型だと……ね」


「(へっくし!!)」


 フェニックスが住んでいる山岳地帯が近くなった所で、大きなくしゃみをするシエル。


「大丈夫なのです?」


「(うん……へ、へっくし!)」


 昨日の件もあって、その体が冷めないように馬着を着せていたのだが……山に近づいた途端にくしゃみを何回もするシエル。これは……もしかして。


「フェニックスさん。毒の効果って、ちなみにどんな物でした?」


「衰弱……後は目がかゆかったり、呼吸がしづらくなって……」


「……」


「薫兄……これって」


 話を聞いていた泉が反応する。そう……この魔族が使う毒が何なのかが分かってしまった。となると……このマスクの毒無効は効かないのだろう。現に、シエルのマスクが役目を果たしていないのだから。


「花粉症だね……」


「何だ? 花粉症って?」


「うーんと……花が種を作るために花粉って言って粉上の細胞……でいいのかな? それを大量に吸ったりすると、体の免疫反応が過剰に反応して、フェニックスが言ったような症状を引き起こすんだ」


「ああ。確か前にあっちに行った時にテレビで見たような……」


「恐らくマスクの無毒化が効いていないみたい。シエルがくしゃみをしっぱなしだしね」


 もしかしたら、そんな免疫機能を過敏にする毒を使ってるだけかもしれないが……経口で毒を取った覚えが無い以上、花粉と同じ鼻から吸い込んだと考えた方がいいだろう。


「(へっくしゅ!!)」


「しかし、グラドやユニには効果は出ていないみたいだぞ? それに……俺達も」


「シエルは敏感なのかもしれないね……でも、全てのフェニックスが花粉症になっているとしたら、僕たちが発症してもおかしく無いかも……」


「厄介だな」


「うん……」


「でもさ……私達ってマスクをしているのにどうして発症してるのかな?」


「考えられる理由としたら……マスクの目より細かい花粉なのかもね」


「どうするつもりなのです……?」


「まあ……手っ取り早くアレかな」


「アレ?」


「相手は花粉だからね……それに仮に似た毒だとしても、この方法なら確実に除去できると思うし……その前に、フェニックスに確認があるんだけど……」


「どんな方法なの?」


「それは……」


 この後、僕たちが行う作戦を説明する。かなりの力技なので許可が下りるかなと思ったが……。


「いいですよ。どうせ片づけますから」


 と、あまりにも簡単に許可が下りるのであった。

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