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325話 聖獣フェニックスの契約者

前回のあらすじ「新たな聖獣探し」

―「レルンティシア国・仮役場 宿泊棟」―


「あら……お上手ですね」


「王都での警備もしてますからね。犯罪を犯した奴の人相を訊いて、似顔絵を描くなんてしょっちゅうですよ」


 晩御飯を取りつつ、フェニックスの情報を訊いていた僕たち。実際に見たことがあるアリーシャ女王から色々な情報を訊くことが出来た。その中でも一番の情報は……。


「これが聖獣フェニックスか……どちらかというと朱雀や鳳凰みたいな見た目だね」


 カーターがアリーシャ女王からの情報を聞いて、描かれたフェニックス。赤と金で彩られた羽を持つ猛禽類のような姿かと思っていたが、紙に描かれているフェニックスは色鮮やかな羽と孔雀のような姿をしていた。


「英語だとフェニックスだから、合ってるんじゃないの?」


「鳳凰はそれでいいけど、朱雀はそのままSUZAKUだよ。もしくは……Red Chinese Phoenixだったかな……」


「この場合はどちらでもいいッスよ。しっかし……目立つ色ッスね」


「なのです。しかもこれで煌めいているなら余計なのです」


 そう言って、食後のお菓子を食べる二人。二人の言う通りで、これだけ派手な色なら遠くからでも視認できそうだ。


「そうなると別の場所に移動してしまったとか……?」


「ありえなくはないですね。ここで生活している住人の誰も見ていない以上、別の場所に移ってしまった可能性も……」


「そうなると少々、面倒ですね……何か、他に特徴はありますか」


「そうですね……」


 昔、自分が実際に見たフェニックスを思い出そうとしているのだろう。もしくはどこぞの誰かから聞いたお話を思い返そうしてるのかもしれない……それが、せいぜい100歳ほどしか生きられない人間である僕からしたら遥か昔の記憶を……。


「そういえば父から子供の頃に聞いた話ですが……フェニックスは何かを採りにここを通ってるだけのような事を話していたような……ただ、その何かは知らないと」


「うん? それってどういうことなの? そこまで知ってるなら何かも分かってるんじゃないの?」


「それが……見たことも無い植物だったらしくて……」


「うーん……でも、その話通りなら山とは別の方向に行けばいいのよ!」


「サキの姉御の言う通りッスね」


「それは……」


 アリーシャ女王が、そこで言い淀んでしまう。というより……それだけで何で言えないかが分かってしまったのだが。


「特に、そんな話を聞いたことは無い……と?」


「はい……もしかしたら、私が忘れてしまったのかも……私も歳ですし……」


 エルフであるアリーシャ女王……実年齢は少なくとも三百歳越えらしいのだが……見た目はその十分の一ぐらいにしか見えない。そんな方が高齢だと言われても説得力が無い。


「少なくとも、あなた達にそんなツッコミする権利は無いわよ?」


 僕と泉に対して、ミリーさんがそんな指摘をする。


「何で分かったんですか!?」


「泉は表情で分かるわよ……薫は何となく失礼な事を考えている気がしただけ」


「僕だけ適当じゃないですか?」


「そう思ってたでしょ?」


「……まあ、はい」


「僕達からしたら、君達って十代にしか見えなけどね……それより、アリーシャ様。フェニックスがあの山以外に行った情報は無いってことですか?」


「ええ……私以外にも生き残りがいたら良かったのだけれど……」


「そこは仕方がないのです。それよりも……フェニックスは何を採りに行ってたのです?」


「そこだよね……ちなみにどんな植物だったとかは?」


「さあ……」


 首を横に振ってしまったアリーシャ女王。これ以上の情報は望めないということか……うん?


「まさか……ねえ」


「どうしたの薫兄? 何か心当たりでも?」


「うん。だって……あるじゃん。見たことの無い植物の宝庫がこの上に」


 僕は指を上に向ける。それを見た皆が何を言いたいのかが分かったようで、各々頷いている。とりあえず明朝、そこを守る彼らに話を訊きに行こうと決めるのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「空中庭園デメテル・屋敷前の庭」―


「ポウ……そういえばその時期だポウね」


 植えられている木々を庭師の格好をしたミニポウたちと一緒に選定していたポウさんがそう答える。明朝、見たことも無い植物といえば、ここしか無いだろうと思って、デメテルに来たのだが……どうやら正解のようだった。一緒に来たアリーシャ女王にミリーさん、そしてカイトさんが頭をぐったりとさせている。


「時期ってことは……ここに来てるんだね?」


「ポウ。あの子達はここのフソウの木を採りに来てるポウ! 巣作りに使ってるポウ」


「ああ、なるほど……丈夫なフソウの木を巣に利用するのは利にかなってるね」


「それで、フェニックスはもう来たかな?」


「まだだポウ。そういえば来るのが遅いポウね……」


 ポウさんの言う通りなら、フェニックスは既にここに通い始めていて、おかしくはないそうなのだが……。


「ううん……何かあったポウかね……ちょっと待つポウ」


 そう言って、両手を前に出して念じ始めるポウさん……まさか。


「カモンッポウ!!」


 ポウさんの前方に魔法陣が現れ、そこから勢いよく空へと飛びあがる赤を基調とした煌めく鳥。その両翼も素晴らしいが、その揺らめく5本の長い尾羽もキレイであった。


「久しぶりポウ!」


 手を挙げて、フェニックスに挨拶するポウさん。


「お久しぶりです! 呼ばれて早々、申し訳無いのですが助けて下さい!」


 出て来て早々に助けを求めるフェニックス。何かトラブルが起きているようだ……あれ?


「フェニックスって喋れるの!?」


「喋れるポウよ?」


「あ!?」


 慌てていたフェニックスは、どうやら僕たちの存在に気付いていなかったようで、僕たちがいると分かった途端に自分より小さなポウさんの後ろに隠れようとする。


「……こんな風に恥ずかしがり屋さんなのだポウ!」


「「「「こんな目立つ姿なのに!!?」」」」


「み、見ないで下さい……は、恥ずかしい……」


 その両翼で頭を隠すフェニックス。他のフェニックスもこんな感じなのだろうか?


「え? フェニックスって全員、こんな感じなんッスか?」


 今、皆が気になる事をフィーロが臆せず訊く。失礼かなと思って、訊くのを躊躇っていたのだが……。


「そうすけど……悪いですか?」


「だって、下に町がある頃はそこを飛んでいたんッスよね? 恥ずかしいなら、別の場所を通れば……」


「飛んでましたよ……? ありとあらゆる視線の少ないところを……」


「そこには魔獣も含んでるんッスね……」


「そういえば、フェニックスって人の少ない所を飛んでるって聞いたことが……まさか、その理由がシャイだったからなんて……」


「……素顔を見た私達を地平線の果てまで追いかけて襲わないよね?」


 突如、とんちんかんな泉の発言に首を傾げる皆。何でそんな突拍子もない事を言ったのだろう?と皆が思っているのだろう。


「そんな、危険なモンスターをいきなり出さないでよ……」


 唯一、知っている僕がツッコミをいれておく。都市伝説に出て来るモンスターよりもさらにマニアックであり、より危険なモンスターは永遠に施設に隔離されていて欲しい……。


「どんなモンスターなのです?」


「とりあえず、化け物化したヘルメスの奴らを皆殺しに出来るぐらいに強いってことだけは確かかな……それよりも、フェニックスたちに何があったの?」


「そうだったポウ!! それで何があったポウ?」


「変な女が、巣に侵入してきて……そいつの毒で皆が……」


「それはイケないポウ!! 所長!」


「助けにいって……だよね? 皆もいいよね?」


「変な女というのも気になるしな……もちろんだ」


「イケないことをする奴は成敗なのです!」


「毒を使ってくる相手だけど……浄化の魔石の用意は大丈夫?」


「そうだね……そうしたら……」


「そうしたら僕達に任せて! いい物があるよ!」


「それと、私も付いていくわ……薫。あの銃を携帯させてもらいたいんだけど……」


「……要返却ですからね? ポウ。この前の銃を出してきてもらっていい?」


「分かったポウ。何なら……より強力な物が一つ見つけたポウだけど、それも持っていくポウ?」


「……」


 僕は一度、ミリーさんの方を見るとキラキラとした眩しい目で僕を見ている……。


「……絶対に」


「返すわ! だから……」


「……分かりました。ポウ?」


「了解ポウ! すぐに持って来るポウ! ミニポウ、カモン!」


「「「「ポポウ!!」」」」


 近くの茂みから飛び出してきた、つなぎを着たミニポウたち。


「用意開始!」


「「「「ポポウ!」」」」


 ポウの命令を聞いて、颯爽とどこかへと走り去っていったミニポウたち。きっと、このデメテルにある工房から持って来るのだろう。


「薫。毒をどうにかする装備を渡すから一緒に、地球に来てもらっていいかい? アザワールドリィの施設で作られた自信作なんだ」


「分かりました。レイス行こう……他の皆は準備を整えておいて」


「りょーかい!」


 フェニックスが住む巣に向かうために準備を始める僕たち。毒を使う謎の女……もしかしたらオラインさんが知っているか魔族なのかもしれないと思って、ついでに話を訊いておこうと思うのであった。

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