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324話 聖獣フェニックスの探索

前回のあらすじ「ちなみに、モンスター娘との出会いを求めて、異世界に行く準備をする男共が急増したらしい」

―オラインさんの手術から1週間後「レルンティシア国・ソーナ王国との境にある山岳地帯」―


「フェニックス……まさか、伝説の不死鳥を目の前にする日が来るなんて……」


「カイトさんが言ってたでしょ? 不死身では無いって」


「それでもさ! あの伝説の火の鳥だよ! もう、テンション上がりっぱなしだよ!!」


 オラインさんの病室でカイトさんからの仕事の依頼を聞いて引き受けた僕たちは、レルンティシア国とソーナ王国の間にそびえる山岳地帯付近までやって来た。以前はここを通り抜けただけだったが、ここに聖獣フェニックスが暮らしているとの事だ。


「その羽を使えば戦闘不能状態を回復する作用が……」


「無いからね?」


 テンション駄々上がりの泉にツッコむ。先ほどから黙っている彼氏にも協力してもらおう。


「カーターもツッコんでよ? 僕だけだと大変なんだから」


「いやいや、二人が何を言ってるのか理解出来ないから、黙ってるだけだからな。それなら、たまに泊りに行っているサキに頼んでくれ」


「そうね……泉には悪いけど、そんな効果は無いわ。あったらエリクサーの発見の際にあんな大騒ぎしてないわよ」


「そうか……それは残念。それで、どこにいるのかな?」


「うーん……今のところ聖獣どころかモンスターも動物も見ないんだよね」


 今、山岳地帯をゆっくり飛んでもらってるのだが、雪が積もっているだけで、白以外の色を発見できない。


「ユニもそれらしい反応が無いって」


「グラドも同じことを言ってるな」


 泉の契約獣であるユニコーンのユニ、そしてカーターの契約獣であるグリフォンのグラド。同じ聖獣である二体が感じないって事は、この辺りにはいないのだろう。


「(へっくしゅ!)」


「大丈夫?」


 大きなくしゃみをする僕の契約獣であるユニコーンのシエル。


「凄かったのです」


「(うーーん……どうしてかな? さっきからくしゃみばっかりしている気が……)」


「温度差……でも、シエルって、普通だったらありえない高度まで上がって平気だったよね……風邪かな?」


「(でも体調が悪いって気がしないんだよね……さっきまで、普通だったし)」


「そうか……体調が悪いと思ったら、気兼ねなく言ってね?」


「(うん……)」


 シエルの体調を気にしながら、移動を続ける僕たち。上は灰色の雲に覆われていて、日光が届かないせいで余計に寒く感じる。契約獣も含めた全員が寒さ対策の防具や魔道具を装備しているので、こんな極寒状態でも問題無く活動は出来ているのだが……それでも、シエルみたいに体調を崩してしまう者が現れてもしょうがないだろう。


「そういえば今回の依頼はフェニックス探しで、その羽が必要って聞いているんだが……どんな祭りなんだ?」


「あれ? 泉から聞いていないの?」


「クエストでレルンティシア国に行くとしか聞いていなかった。何せ聞いた後、王様から同行する許可を貰うために、仕事を大急ぎで片づけていて忙しかったからな」


「そうそう……だから、少しだけ寝不足なのよね……」


「お前は俺のポケットの中で寝ていただろう……」


「あら? そうだったっけ?」


 てへ♪とベロを出して誤魔化すサキ。とりあえず、カーターは泉の付き添いで来ただけで、今回のクエストに関して何も聞いていなかったことは分かった。


「じゃあ、説明すると……今回の依頼はレルンティシア国のアリーシャ女王からで、スプリング・フェスティバルを行うから、それに必要な素材であるフェニックスの羽を取って来て欲しい。というのが今回の依頼だよ」


「スプリング・フェスティバル……つまり、春が来たことを祝うお祭りをするってことか?」


「そう。ビシャータテア王国だと建国祭しか祭りごとって無かったと思うけど、レルンティシア国にはそれに加えて、そんなお祭りをこの時期に行っていたらしいんだ。そして、フェニックスの羽は民衆が一番目立つ飾りに使われる大事な物らしいんだ」


「しかも、そのお祭りの後はフェニックスの羽は耕作地に埋めるらしいのです」


「そうすると、野菜が元気に育つらしいッスよ」


「なるほど……シンボルであり、実用的な使い方があるフェニックスの羽……復興中のレルンティシア国にとってはどうしても欲しい物ってことか……しかし、フェニックスの羽を手に入れるために、レルンティシア国の奴等はここまで来たのか?」


「ううん……それだから、僕らがここに来たんだ。この時期になればフェニックスが町の付近まで飛んできて、その際に羽を落とすからそれで事足りたらしいんだけど、今現在、フェニックスが空を飛んでるところを誰も見ていないらしいんだ」


「そこで空を飛べて、かつフェニックスと同じ聖獣と契約している薫達に頼みに来たってことね」


「そういうこと。それで、いつもフェニックスはこの山の方へ飛び去って行くのが確認されているから、ここを調べてるんだけど……」


「真っ白ね」


「うん。真っ白だよ」


 サキの言ったことを、そっくりそのまま返す僕。どこまで行っても真っ白な山の峰。流石にこんな場所にいる訳無いか。


「もう少し、下を探した方がいいのかな?」


「そうかもね」


「(へっくし!)」


 再び、大きいくしゃみをするシエル。


「大丈夫?」


「(うん……寒いのかな……?)」


 シエル本人は寒くないようだが、もしかしたら思った以上に冷えているのかも……。


「一度戻ろうか。拠点からここまで、結構な距離があるしね」


「そうだな。ってことで、一旦帰還するぞ」


「クエー!」


 そろそろ、夕方になるので一度、レルンティシア国の王都……という名の仮拠点に一度帰るのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「レルンティシア国・仮役場 宿泊棟」―


「お疲れ様! どうだった?」


「見つかりませんね。今日は山頂付近を見たので、もっと下の方を探してみます」


「そうか……まあ、直ぐに見つかるとは思ってないが……」


 頭をぽりぽりと掻くカイトさん。仮役場に到着した僕たちは契約獣を返した後、本日の宿である宿泊棟に来た。扉を開けて中に入ると、ミリーさんと話をしていたカイトさんに鉢合わせしたのだった。


「私も一緒に行きたいけど……空を飛ぶ聖獣じゃあ、足手まといね……」


「そこは任せて下さい。それよりも……その服いいですね……」


 泉がミリーさんの来ている服に注目する。ミリーさんの服装はいつも動きやすい格好で、かつ防御面を考慮した物になっている。それだから今回のような白のワンピース型の儀礼服を着てるのは珍しい。


「祭りの練習よ。春が無事に来ることを祈る巫女として女性数人で踊るのよ。もし必要ならあなた達もいるかしら? 私達が終わればその後は自由に踊って騒ぐダンスパーティーみたいな物になるから」


「人前で踊るには恥ずかしいぐらい下手なので……それは薫兄にでも」


「大丈夫よ。そこは既に用意してあるから」


「何で男である僕に女性の儀礼服を着せようとしてるんですか。そもそもコスプレイヤーの泉が恥ずかしいっておかしくないかな?」


「そうなのです? これは結構あると思うのです」


「そうッスね。うちらは学校でやった事があるから、そうは感じないッスけど。あ、うちらの服はあるッスか?」


「それなら用意しておくわよ。精霊に踊ってもらえるなんて、ご利益がありそうだもの」


「やったッス!」


「それと、カーターさんも一緒にどうです? 新婚のカップルが、お互いのこれからの幸せを誓いながら踊ったりするそうですよ」


「ほーう……それはいいかもしれないな」


 そう言って、カーターが泉を見る。泉が必死に両手を前に振って、無理だとアピールしている。


「彼氏に言われたら一緒に踊らないとね?」


「薫兄! そう言ったら、ユノに言うよ! 薫兄だって踊るのが苦手……」


「……いいけど?」


「え!?」


「服装が嫌なだけで、踊るのは別に……昌姉に小さい頃に仕込まれたから普通にいけると思う」


「あれ……? 何かいつもと立場が逆転してる……?」


「それじゃあ、準備しておくわね」


「あらあら……楽しいお祭りになりそうですね」


 僕たちが会話をしていると、アリーシャ女王が2階から下りて来た。


「アリーシャ様? どうしてここに?」


「同じく衣装合わせですよ。誰かに手伝ってもらわないと着れませんから。それよりも……探索の方はどうでした?」


「残念ながら見つかりませんでした……」


「そうですか……それでしたら、まだ晩御飯を食べていないですよね? ご一緒に食事しながら、私の知る限りの情報をお教えししましょう」


「それは……」


 アリーシャ女王からのお食事の誘い。断る理由もないし、何より実際にフェニックスを見たことのある人物は、彼女以外にここにはいない。


「分かりました。皆もいいよね?」


 僕がそう訊くと、泉たちも頷いて返事をする。


「じゃあ、すぐに準備をしてもらうから、それまでは部屋でゆっくりしてくれ……えーと……」


 すると、カイトさんが近くの鍵が掛けてあるところから、鉤を3つ手に取って僕たちに渡す。


「それじゃあ、お言葉に甘えて……」


「そうッスね……ひと眠りするッス……」


 背筋を伸ばしながら、欠伸をするフィーロ。今日のお昼頃から、休まずに探索していたので疲れていてもおかしくは無いだろう。


 鍵を受け取った僕たちは、2階にあるそれぞれの部屋に入った後、ミリーさんに呼ばれるまでゆっくり過ごすのであった。

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