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321話 ひな祭りと誕生日……そして新装備

前回のあらすじ「キャラ設定多過ぎの薫さん」

―オラインさんの検査後の夕方「カフェひだまり・店内」―


「うわ~……似合ってますね」


「……ねえ。これ」


「かわいいですよね」


「うん……かわいいけど、かわいいけどさ……」


 僕と同じ格好をして、その長い金髪をツインテールにしているユノは可愛いと思うが……。


「誕生日の度に言うけど……僕ってお内裏様じゃないの?」


「薫兄はそっち……十二単が似合ってるって」


 ひな祭りのお雛様の格好をしている僕。流石に十二単を着るのは大変なので、それっぽい服装が用意され、無理やり着せられた。という訳で、僕は5日後に誕生日を迎える昌姉と一緒に、誕生日をひだまりで祝ってもらっている。


「祝ってもらう立場なのに……何でこんな格好なのかな?」


「気にしないの……とりあえず、薫兄、昌姉誕生日おめでとう!!」


 そう言って、クラッカーを鳴らす泉。他の皆もクラッカーを鳴らして祝ってくれる。


「ありがとう!」


「……ありがとう?」


「何で、薫はそこで疑問形なのです?」


「じゃあ、レイスは男装して誕生日を祝われて平気なの?」


「え?面白そうなのです。ねえ?」


「そうッスね」


「それが毎年でも?」


「……さあ、気にせずに食べるのです!」


「そうッスよ!」


 僕の質問に対して返答せずに、話をはぐらかす二人。そこで皆の方を向いて心の内を叫ぶ。


「二人がこんな反応なんだよ? いい加減、普通の格好で……せめて、お内裏様を!」


「「「「それとこれとは別!」」」」


 マスター以外の皆が声をそろえて否定する。まさか、雪野ちゃんとあみちゃんも否定するなんて……。


「諦めろ……」


 そう言って、マスターは桃の花を浮かべた白酒が入った赤いお猪口を僕の前に出しくれた。これって、酒を飲んで嫌な事は忘れろってことだろうか……。とりあえず、僕は白酒を一口含む。他の皆もちらし寿司やはまぐりのお吸い物など、ひな祭りではお馴染みの料理を食べ始める。ちなみにデザートとして、妊娠中の昌姉のことも考えて旬のイチゴをたっぷり使ったマタニティケーキが用意されている。


「しかし……済まなかったな。急な頼みごとをしてしまってよ。まさか、それがこんな風に大事になるとはな」


「気にしないでよ。結構……いや、大分収穫があったしね」


「まさか、薫たちが王家の血筋を持つ人間だったとは驚きでした」


 マスターと僕の話にユノが混ざって来る。


「そうなのか?」


「うん。ただ、ここだけの話にして欲しいんだ。オラインさんにも、黙ってて欲しいってお願いしてるからさ」


「それはいいが……俺達は知ってていいのか?こっちを見てるあの二人も……」


 マスターが指を差す方向には、あみちゃんと雪野ちゃんがいた。そして二人も自身に向けて指を差して、先ほどの話を聞いてしまって良かったのか悪かったのか複雑な表情を浮かべている。


「いいと思う。それに……もし、これが本当ならマスターも関わってくるからね?」


「え?」


「ビシャータテア王国だったら……貴族の仲間入りですね」


「はあー!? どうして……あっ。そうか」


 マスターも気付いたようだが、王族の娘である母さんの子供である昌姉と結婚しているのだ。婿

であってもそれなりの地位があるだろう。


「おいおい……ガラじゃねえって……まあ、俺達が知っていい理由は分かった。昌に負担を掛け無いためってことだな」


「ごめんなさいね薫。気を使わせてしまって」


「ううん。気にしないで。それだから、この事は、最低でも昌姉の出産が終わるまでは秘密にしておいて欲しいな」


「構わねえよ。地位とか興味無いしな」


「私たちもいいません!」


「雪野ちゃんと同じです」


「ありがとう二人共」


 とりあえず、この事については皆に黙っててもらおう……あ。


「ユノ。王様にも黙っててもらっていいかな? 多分、シシルさんってこの話をどこからか聞いてるよね?」


「そうですね……これ以上、お父様にストレスを与える訳にはいかないので、シシルに関しては私から黙っておくように伝えておきますね」


「そんなことより……二人の誕生日を祝うッスよ!」


「ふふ……そうね♪」


そう言って、再び料理を食べながら談笑する皆。僕もこの話はここまでにして、さっそく色鮮やかなちらし寿司をいただくのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―それから2時間ほど「薫宅・蔵の入り口前」―


「送っていただきありがとうございます薫」


「どういたしまして」


 僕はユノを車に乗せて、自宅まで戻り、異世界の門(ニューゲート)がある蔵の入り口まで見送る。蔵の中を覗くと、迎えに来たハリルさんたちが魔法陣の前で待っている。


「それと……これを」


 綺麗に包装された袋を手渡すユノ……。


「誕生日プレゼント?」


「はい!きっと、似合うと思います!」


「ありがとう!」


「それじゃあ……また!」


 ユノが足早に、蔵の中へ入って異世界の門(ニューゲート)を使ってあっちに戻って行った。


「……怪しいな」


 いつものユノのノリなら、僕がこの場でこの袋を開けて、中身を確認するのを見ると思うんだよな……となると、この中身ってまさか……。


ガサゴソ……


 僕が梱包された袋を開けていく……中に入っていたのは、中央の結び目のところに白銀色の魔石を嵌め込んだアクセサリーが付いた大きなリボン。色は赤を基調としたグラデーションカラーである。そして、中には手紙が入っている。


 その手紙を開くと、そこには「巫女服を着る際に着用して下さい♪」と書かれている。


「浮遊効果のあるリボン……?」


 いつもは頭に装備しておいて、必要ならリボンを解いて、浮かせたい物に巻き付けて使用するというところだろうか?役に立つ装備品だとは思うのだが……。


「多分、その理由は2番目で、1番の理由はオシャレのためなんだろうな……」


 これでますます、女装に磨きをかけてね♪と、ユノに言われたような気がするのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―翌朝「アザワールドリィ・病室」―


「……随分、かわいらしくなったのう」


「薫兄の巫女服姿に何か足りないと、思っていたけど……流石、ユノね。彼女の必要な物を理解しているわ……」


「彼氏だからね?」


 翌朝、再びアザワールドリィの施設内にあるオラインさんの病室やってきた僕たち。念のために妖狸の格好をして、ここに来た。そして、昨日、ユノからもらったリボンもしっかり髪に結わえている。


「かわいいよ薫ちゃん!」


「そうッスよ薫ちゃん!」


「ちゃん付けしない!」


 ふざける泉とフィーロに注意する僕。検査の結果、オラインさんの手術は可能とのことらしく、これから麻酔をして左腕の一部を切除、それからハイポーションによる左腕復元手術をするとのことになっている。


「うう……何か緊張するのじゃ」


「大丈夫ですよ。むしろ寝ている間に終わっているかもしれませんよ?」


「うむ……それならいいのじゃが」


コンコン!


「失礼します。良く寝られましたか?」


 曲直瀬医師が病室に入って来る。すると、僕の姿を見て持っていたカルテを落としてしまった。もしかして……見惚れてる?


「僕、男ですからね?奥さんに怒られますよ?」


「あ、ああ……申し訳ないです。リボンを付けただけでこの破壊力ですか……ごほん。それでオラインさん具合の方は……」


 落としたカルテを拾いながら、オラインさんの具合を訊く曲直瀬医師。先ほどのうつついた状態から、いつもの通りの医師としての姿に戻っている。 


「うむ。半年間、野宿してたからのう。このような布団で寝られるだけで満足なのじゃ」


「それは良かった。今日の手術が終われば左腕が元通りになるので、より寝やすくなるかもしれませんね」


「それは助かるのう……」


「それで手術室に移動しますが……よろしいでしょうか?」


「う、うむ……よろしく頼むのじゃ」


 僕たちは病室を後にして、手術室の前へと移動する。移動中、一言も話さないで黙ったままのオラインさん。ちなみにグラッドルには病室で待機してもらっている。


「僕たちはここまでしか行けないので、後は曲直瀬医師の指示に従って下さい。優秀なお医者さんなので安心ですよ」


「う、うむ……それじゃあ、行ってくるのじゃ」


「しっかり骨をひ……へぐ!」


 余計な一言を言いそうになったフィーロを、レイスが口を押えて静かにさせる。


「なんじゃ?」


「気にしない気にしない!さあ、行った行った!」


 泉がどうにか誤魔化して、オラインさんを手術室へと入るのを促す。曲直瀬さんも察して、彼女の背中に手を当て、一緒に手術室へと入っていった。それを見届けたところで……。


「何、変な事を言おうとしてるのよフィーロ!」


「いや。ここはボケるべきと思って……」


「そんなボケはいらないのです!」


「二人の言う通りだからね?」


 骨を拾ってやるって……そもそも、オラインさんの何の後始末をする気だったのか……。


「まあ未遂で終わったからいいとして……待ってる間、どうしようか?」


 ここから先は医師の方々に任せて、手術が終わるのを待つだけである。どれほど時間が掛かるのか分からないし、一度ここから離れて、やるべき仕事があればそれをした方がいいだろう。


「手術が始まったか」


 この後の予定を相談していると、直哉がやって来た。


「うん。それで……どうしたの? 何か用事?」


「ああ。私もだが……こっちも用事があるようだぞ」


 直哉がそう言うと、通路の奥からショルディア夫人が現れて、こちらにやって来る。


「戻られていたんですね」


「ええ。各方面から引っ張りだこで、この老骨にはこたえたわ……まあ、お陰様でこの世界にグージャンパマという世界の情報を広めることが出来たかしら」


 そう言って、華麗に笑うショルディア夫人。彼女の言った通りで、僕たちが国会での会議に出席後、すぐさま自身が関係者だと明かした事で、取材が殺到、それらに対応するために、ここ最近は東京でホテル住まいをしていたらしい。


「それであなた達にやって欲しいことがあって来たのだけれど……この後、お時間はよろしいかしら?」


「空いてますけど……そのやって欲しい事って何ですか?」


「この後、実演して欲しいの……浮遊石の作製を聴衆の前でね」


「ああ。何だそんなこと……え?」


「それって取材なのです?」


「そんなところかしら。ってことで……泉さんたちもいいかしら?」


「私、上手く答えられるか心配なんですが……」


「そこは安心しろ。そこら辺は私とショルディア夫人がする。お前達はいつも通りにしてくれればいい」


「それじゃあ、早速で悪いけど行きましょうか」


「え? はいって言ってないだけど!?」


「カメラの前でコスプレしてるでしょ……だから、問題無いよきっと」


「それとこれとは違うから……」


 僕としては、そっちの方がレベル高いんだけどな……。と思いながら直哉とショルディア夫人の後を付いていくのであった。 

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