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31話 ワイバーン襲来!!

前回のあらすじ「お目当ての生地は買えなかった。」

―「ビシャータテア王国王都・城壁(カーター視点)」―


「ワイバーンか……」


 王都を守る城壁から、ワイバーンが来る方向を見る。


「ええ。とりあえずはギルドに所属している冒険者や戦闘職の人も呼んでいますが……王都への被害は免れないでしょうね」


 ワイバーン……大型の魔獣であり、魔法と砲弾が届かない上空を飛び、両足の鉤爪で獲物を狩り、しかもその口からはファイアーボールを撃ってくる。そのため討伐できずに逃がしてしまったり、倒したとしても被害が大きかったりと、出会いたく無い魔獣の1匹である。


「私たちが空を飛ぶ魔法が使えていたら良かったのだけど」


「いや。長年、研究されていた魔法がそんな簡単に使えたら大問題だぜ?」


「でも、使える人がいるんだけど……」


「……もはやあれらと比べちゃいけないぜ」


 薫たちにフライトの魔法を教わって必死に練習をしているが上手くいかない。せめてほんのちょっと浮くくらいはいけないかなと思っているのだが……。


「はあ~」


 思わず溜息が出る。涼しげに空を飛んでいたあの4人の顔が浮かぶ。


「溜息を吐くと幸せが逃げるっていうわよ」


「あっちの世界の話だろう。問題ない」


「状況はどうかしら?」


 どうやらワブーがカシーを連れてやってきたようだ。声のした方向に顔を向けるとそこには……。


「こんにちは」


「おじゃまします」


「失礼するのです」


「ういーッス!! アネゴ達お久しぶりッス!」


 ああ……確かあちらの世界にこんな言葉があったな。噂をすればなんとやらと……。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「ビシャータテア王国・城壁」―


「一緒にいたから連れて来たわ。この子たちが入れば頼もしいでしょ?」


「確かに空を飛べますからね。ただ……民間人なんですが?」


「魔法使いなんだから問題無いわ。4人にも同意を得てるし」


「お前ら何って言われて、手伝うことになったんだぜ」


「ワイバーンの皮が欲しい!」


 泉が元気よく答える。きっとこの中の誰よりもやる気があるだろう。


「いや。お前らプロテクションが使えるからって危険だからな。命がけなんだぜ」


「そうなんだけどね。かといって見過ごすわけにはいかないでしょ? 魔法使いとしての力を持っているのにさ」


「同じくなのです」


「うちもッス」


「しかし……」


「慢心しているわけじゃないから安心して。もしヤバくなったら直ぐに逃げるから」


 自分たちの命が最優先である。決して危険な真似はしない……1人を除いて。


「というわけで、泉も分かっているよね?」


「え? ……うん! 分かってるよ!」


 かなり怪しい返事だったが、いざとなったら引っ張ってでも戦線離脱すればいいだろう。


「……分かりました。ただ、決して無理しないでくださいね」


「おい! シーエいいのかよ?」


「大丈夫ですよマーバ。薫さんなら勝機が無いと分かれば必ず引いてくれると思いますから。それに被害を最小限に出来るなら……。ということでお願いしますね」


 シーエさんの了承を得る。どこまで出来るかは分からないけどとにかくやってみよう。


「そういえば、お前らさっきから何も言わないがどうした?」


 カーターたちが静かだったのに疑問を覚えたワブーが2人に尋ねる。


「うーん。適材かも」


「へ?」


「あれらの魔法なら有効かもな……」


「あれらって……空を飛ぶ魔法以外にもあるの?」


 どうやらカシーさんたちには飛翔以外の魔法を本当に教えてなかったみたいだ。道理で他の魔法に対して追求されなかったわけだ。


「さあ! 頑張って討伐していきましょうか!」


「そうだぜ!!」


「ちょっと待ちなさい!! カーター詳しく教えなさい!」


「すまん。今は忙しいからな無理だ」


「そうね。後にしましょうか。ワブーもいいわね?」


「ああ」


「ちょ! あなたたち!?」


「さあ、行くぞカシー。さっさと終わらせよう」


―クエスト「ワイバーン討伐!!」―

内容:ワイバーン8匹が王都に向かって接近中!被害が拡大する前に倒しましょう。あまり傷つけないで倒すと、その分報酬が増えます。余裕があればやってみましょう。


「私に説明しなさーーーい!!!!」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「馬車」―


「王都から出て良かったの?」


「お前らの魔法を見せる訳にはいかないからな」


 あの後、カーターとシーエさんたちは馬にまたがり、僕たちは馬車に乗りワイバーンが今いる場所へと向かう。


「それで……王子様が何でここに?」


 そう馬車に入ると何故か王子様が座っていたのだ。


「父上に言われてやってきました。あちらの指示は俺がやっとくと。私に経験を積ませる意味で行かせているのだと思います」


「なるほど」


 時期、王位を継承する関係上、安全な場所でただ見ているというわけにはいかないのか。


「それに、魔法使いがこんなにいますから問題はないかと……」


 ……危険な場所には行かせるが、安全性をちゃんと考慮してるんだな。


「でも、離れて良かったのかな。砲台とかあったのに……」


「残念だけど今回のワイバーン戦にはあまり役に立たないわ」


「そうなのです?」


「お前等にワイバーンについて説明するが、あいつらは魔法が通じにくく、耐久力も半端ないから魔法の籠った砲弾で攻撃しても何発も当てないといけない。そもそも空を飛んでいる相手に当てるのにも苦労するのに、降下するときの速度は半端なくてな……無駄弾になるだけだ」


「そういえば群れを成しているのは珍しいッスね。縄張り争いがあるから多くても2匹っていうのが通説なんッスけど」


「フィーロの言う通りだ。2匹ならともかく今回は8匹を倒す。それなら魔法使いが前に出て数を少しでも減らして、残った奴らを王都にいる者と砲台で片づけるというのが一番被害が少なくて済む。」


「っていうことで、最前線に出て少しでも引き付けるというのが私達の役目なのよ。魔法使いならプロテクションも使えるからね」


「なるほどね。つまり私達って囮でもあるってことなのね」


「ねえ。質問なんだけどさ。それなら魔石にプロテクションを込められないの?」


「出来るけど、攻撃用の魔石と同じように効力が弱くなるから、中級クラスのワイバーンにはあまり役に立たないわ。ゴブリンとかウルフなら意味があるんだけどね」


「それとお前らに注意しとくが、攻撃は足の爪とその巨体を使っての体当たり、そして口からの火炎弾があるからな。覚えとけよ」


「火炎弾って連射が効くの?」


「間を空けて一発ずつ放ってくる。口を開けて放ったら、口を閉じる。それの繰り返し。要はファイアーボールだ」


「なるほど」


 近接で相手するとその巨体の餌食になるし、下手な距離は火炎弾の餌食か。上手く戦わないと危ないな。


「泉。僕の指示で動いて。どれだけ役に立つか分からないけど間合いとかなら格闘技の経験がある僕の方が掴みやすいと思うから」


「りょーかい!」


「じゃあ薫がリーダーってことッスね!」


「わ、私も戦闘とかしたことがないので指示をよろしくなのです」


 格闘技経験がどれだけ生かせるか分からないけどやるだけやってやるぞ。


「あ、あの」


「王子。どうかしましたか?」


「聞いていると、4人は別行動を取るみたいの事をおっしゃっているように聞こえるのですが……」


「ああ。そうだ。俺達ではこいつらの行動についていけない」


「それはどういうことですか?」


「説明するより見てもらった方が早い。それに……」


「それに?」


「いや。何でもない。忘れてくれ」


 ワブーが何か言おうとしたが……何を言おうとしたんだろう。少し気になるな。


「薫達も気にするなよ。悪い話とかでは無いからな」


「分かった」


 カーターに気にしないように言われてしまった。どうやら顔に出ていたらしい。これ以上聞くのも失礼だと思って止めとくのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「ビシャータテア王国・王都より南東の森近く」―


「あれがワイバーンか」


 王都から約30分。森が近くにある高台からワイバーンを確認しているが……空を飛んでいるその姿は想像以上にデカい。


「翼を広げて飛んでいるせいか大きく見えるね」


「すごく。大きいのです」


「だな」


 姿を見て少し怖じ気づく。巨人を相手に戦う人たちの気持ちが多少分かった気がする。


「ちゃんと8匹いるな……」


「シーエ。どんな作戦でいくんですか」


「王子は私達と一緒に下に降りてきたワイバーンの相手をお願いします」


「え? 王子様も戦うんですか!?」


 泉の言う事に僕も思わず驚いた。まさか、王子様も一緒に戦うなんて。レイスとフィーロも驚いている所からこちらの世界でも普通では無いみたいだ。


「そうですが。まあ、安心して下さい。シーエ達から手解きを受けていますし、実際に魔獣とも戦った経験もありますので」


 この国の王子様はずいぶんアグレッシブである。


「それでカシー達は最初に奇襲をかけて混乱させる役目をお願いします」


「分かったわ」


「心得た」


「そして、薫さん達にはカシーの奇襲後、ワイバーンを地面に落として下さい」


「分かった。つまり、カシーさんの攻撃後に突入。倒すより地面に落とすのを優先した攻撃。全てを叩き落としたら上空から攻撃でいいんだよね」


「はい。それでよろしくお願いします」


「待って下さい。今、上空からって……?」


「説明は後です。ではマーバ」


「よし。そしたらおっぱじめるぜ! 皆、覚悟はいいか!!」


 「おおー!!」っと声を上げて、皆で気合いを入れるのだった。


「おおー?」


 王子様は頭にハテナマークを浮かべているように見えたのは気のせいでは無いだろう。

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