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307話 迷宮の先へ

前回のあらすじ「ダンジョンボス撃破!」


7/20:誤って、作成中の次話を投稿していました。ご迷惑をお掛けしました。

―「イスペリアル国・地下迷宮 ボス部屋」―


「きゃん!」


 後ろ足で立ち上がり、前足で必死に僕にしがみつこうとする機械仕掛けの子犬……和む。さっきまで殺伐とした姿が嘘のようだ……。


「そう言えば、この子の名前って?ベヒーモスは個体名じゃないよね?」


「そうですね……とはいっても、現存するベヒーモスはこの子ぐらいですから。改めて名前を付ける必要は……」


「でも……こんなかわいいと、何か別の名前を付けたくなるのです」


 ベヒーモスと言われると、どうしても筋肉ムキムキの紫色の肌を持つ厳つい獣しか思いつかない。確かに戦闘時には大型の4足魔獣っぽい物にはなるけど、平常時はこの姿なのだから、どこぞの変身キャラのように変身前と変身後で、それぞれ名前があってもいいはずだ。


「それじゃあ……こっちの時はクー。犬の精霊であるクー・シーから付けてあげたんだよ」


「きゃんきゃん!!」


 大きな声で鳴き、さらに大きく尻尾を振っている。どうやら気に入ってくれたようだ。


「あれ?この子、大きい時は牛っぽかったから……」


「そんなのはいいから……ねえ。クー?」


「アン!」


 クーもこう言ってるのだ。余計な詮索はしないで頂きたい。


「それよりもだ。何で正面玄関を守っているベヒーモスが、ここにいるんだ?そもそも……ここはどこだ?」


 ワブーに言われて、僕も周囲を確認すると、僕たちが入って来た入り口以外に、ここに侵入できる通路は見当たらない。


「うーーん……クー?君はどこから来たんだい?」


「アン!」


 すると、クーが歩きだして壁へと向かって行く。もしかして、クロノスの入り口みたいに壁が割れるのだろうか?そんな事を考えてると、クーが壁に到達する。そして、その手を壁に当てると、カタッと音を立てて壁の一部がへこんだ。これで隠された通路が……。


パンッ!


 ……壁ではなく床が大きく開いた。そうか……そっちが開くのか……。体が暗い穴の中に落ちていく間、そんな事を考えつつ、クーを抱き寄せておく。


「薫!」


「うん!飛翔!」


 いつまで落ちていくわけにはいかないので、飛翔を使って落ちるスピードを落とす。


「おい。そいつ俺達を始末する気が、まだあるんじゃないか?」


「でも、セラさんが解除してるし……」


「きっと、この子にとっては落ちても死なない高さなんでしょうね……だから、悪気が無いと思うわよ……」


 小脇にセラさんを抱きかかえた。カシーさんたちがこちらにゆっくり飛んでくる。


「セラさーーん。大丈夫ですか?」


「落とし穴怖い、怖い、コワイ……」


 カタカタと小刻みに震えながら怯えるセラさん。表情はここからだと見えないが、きっと目には涙を浮かべているだろう。


「今日はセラさんにとって厄日かな……?」


「かもしれないのです」


「コワイ、コワイ……」


 怖がるセラさん。とりあえず、このまま下りたところでフォローするとしよう。


「下が見えてきたな」


 ワブーに言われて、僕も下を見ると魔法陣が見える。そのまま、魔法陣の上に下りていくと、先に落ちていたベヒーモス時の装甲が散らばっている。さらに周りを見渡して確認すると、SFで見るような格納庫に着いた。そう……格納庫である。つまり……。


「見つけたわーー!!ひゃほおーーう!!」


 小脇に抱えていたセラさんを雑に放り投げて、カシーさんが置いてある飛行艇に向かって、走っていってしまった。


「いてて……今日の私ってこんなんばっか……」


「その分、明日はいいことがありますよ……それで、ここに見覚えはありますか?」


「はい……まさか、あそこが船を出すための格納庫に繋がる通路だったなんて……」


「知らなかったのです?」


「あんな危ない場所に出向く事なんて、ありませんから……それに、私は内業でしたし……」


 そう言って、僕の渡したハンカチで涙を拭くセラさん。というより……コッペリアである彼女がどうして涙を流す機能が付いているのか、今思うと不思議である。


「それじゃあ……セラはここからなら、どこに何があるのか分かるんだな?」


「はい。分かりますよ」


「なら、コントロール室に案内を頼む。帰りもあんな道を通る気は無いだろう?」


「もちろんです!って事で……薫様!よろしいですか!」


「いいよ。それに……」


 時計を見ると、夜8時である。さっさと家に帰って、お風呂に浸かってゆっくりベットで眠りたい。


「それじゃあ……ご案内します」


「うん。お願い。……カシーさん?行きますよ?」


「ハアハア……!」


 飛空艇の船体に体を密着させて頬ずりしてるカシーさんの服を引っ張って、無理やり格納庫からコントロール室へと向かうのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―格納庫から数十分後「軍事施設エーオース・コントロール室」―


 あれから、他の部屋を確認しながらコントロール室に来た僕たち。クロノスはボロボロだったのに対して、エーオースは最後まで活用されていたこともあって、埃っぽいだけで済んでいた。


「大きな浴槽のあるお風呂場があるとは……」


「大きな食堂だったのです……」


「トイレも数が多かったわね……」


「ここには常駐する方が多くいましたから、宿泊施設がしっかりしてるんですよ。今は誰もいませんが……」


 コントロール室にある一つのコントロールパネル席を懐かしみながら触るセラさん。その席にはどんな人が座っていて、この世界の復興のためにどんな仕事をしていたのだろうか……それを知ってるのは、今やセラさんとマクベスだけである。


「えーと……」


 そして、セラさんが上段の中央に置かれているパネルを操作し始める。すると、今まで暗かった施設に灯りが点く。明るくなったところでランタンをアイテムボックスに仕舞っておく。そんな間にもセラさんがパネルを操作すると、中央のディスプレイに誰かが映し出される……。


(ああ……セラですか。どうやら見つけたようですね)


(奥にいるのは薫か。元気なようだな)


「マクベスに……ゴルドさん?となると、通信先ってセフィロト?」


(そうですよ。どうやら送った情報が役に立ったみたいですね)


「えーと……」


(どうかされましたか?)


「実は……」


 とりあえず、マクベスにここまで来た道のりを説明する。すると、マクベスの顔が見る見るうちに青くなっていく。


(それは……どういうことだ……?しかも緊急用の通路のセキュリティが最大になってるなんて……)


「緊急用の通路?」


(え、ええ。皆さんが踏破した道は緊急時に、職員が脱出するための通路でして……誰もいないエーオースならセキュリティは最低限の物が起動していて、脱出用の階段が収納されていたり、丸鋸が飛んで来たり、ベヒーモスが正面玄関からそちらに移動することも……セラ?誰か操作した痕跡は?)


「少々、お待ちください……誰かがここで操作した痕跡は……うん?」


(何か分かったのか?)


「臨時システム……およそ半年前にエーオース付近で莫大な魔力量の衝突を確認。それから厳戒態勢が敷かれています」


「「「「ああ……」」」」


 セラさんの読み上げた内容で理解した。原因は……。


「僕たちとロロックの戦闘だ……」


 大爆発に巨大な火災旋風。そして初めて使用された召喚魔法の麒麟による雷霆万鈞というレーザ砲。きっと、それを感知して施設の警戒システムが最大に引き上げられたのだろう。


「あれ?つまり、こんな酷い目にあったのって……皆さんが原因?」


 光の灯っていない目でこちらに振り返るセラさん。ここに包丁があったら、背後から刺されてるかもしれない位の殺気を感じさせる。


(そうではありませんよ。悪いのは魔族であるロロック達です。薫さん達はその脅威に立ち向かっただけですよ。ねえ?)


 そう言って、セラさんがディスプレイに振り向く前に早くウインクするマクベス。何かを悟ってフォローしてくれたようだ。


「そうですけど……はあ~……」


 マクベスに諭されて、怒りを鎮めたセラさんが誰にも文句を言えない替わりに盛大にため息を吐く。今度、何か美味しい物をご馳走しよう……。


ピー!ピー!


 すると、いきなりアラームが鳴り始める。ディスプレイにその原因が映し出されるのだが、そこには修道服を着た方々が映っている。


「セキュリティ解除と施設の電源が入ったことで、正面玄関に続く通路が地上に出たようですね」


「セラさん。至急、正面玄関の防犯システムを解除して下さい。ただし、扉はロックしたままで」


「かしこまりました……」


速やかに、指示を出す僕。うっかり通路に侵入して、殺人トラップに引っかからないようにしないと……。


「セラさん。施設の復旧作業はどの位掛かりますか?」


「えーと……薫様の世界で言うと……3時間ほどでしょうか」


「じゃあ、復旧作業は明日に。今日は帰りましょう」


「「ええー!?」」


 カシーさんとワブーが何か言いたそうだが、そんなの関係無い。そもそも深夜残業はしたくない。


「分かりました……施設のシステムをアクティブに……それと、帰るためのポータル場の魔法陣を再起動しました。これを使えば、カシミートゥ教会に出られるはずです」


(もう夜も遅いですからね……明日、また連絡ください)


「分かりました……あ、この子はどうします?このまま一人ってのも……」


 ちゃっかり僕の頭に乗っているクーに指を差して、マクベスに訊いてみる。


(気にしないで下さい。その子はその施設を守る為に、仕事をこなしてるんです。ねえ?)


「アン!」


 大きく返事するクー。連れて帰りたいところだが、ここはクーの意思を尊重しよう。


(お前……凄く残念そうな顔をするな……)


「だって……かわいいんだもん……」


 ゴルドさんの言葉に、頭に乗っていたクーを強く抱きかかえて、クーで顔を隠しながら僕は言う。


「胸キュンポイントなのです!」


「これぞ乙女力ね」


 うん。こうなる事は分かっていた。でも、かわいいのだから仕方がないでしょう?と心の中でツッコむのであった。


―クエスト「イスペリアル王国迷宮案内」クリア!―

報酬:軍事施設エーオースの管理権、希鉄鋼機獣(レアメタルビースト)ベヒーモス、飛空艇、etc

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