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306話 迷宮の番人

前回のあらすじ「トラップダンジョン探索中……」

―休憩後1時間ほど「イスペリアル国・地下迷宮 通路」―


「走って!」


「ま、待って下さい……!」


 休憩後、再び通路を進む僕たちに襲い掛かるトラップたち。今はその一つに絶賛、追われている最中である。


「セラさん!もっと速く走らないと、サイコロステーキになりますよ!」


「そうなのですよ!」


 今、僕たちを後ろから追いかけてるのはレーザ……ではなく、壁はもちろん、天井や床からも出て来た円形状のノコギリが高速回転しながら迫って来ている。あれを喰らったら体はバラバラになってしまうだろう。


「空を飛ぶか、身体強化して走っている皆さんに言われたくないんですが!?」


 泣きながら訴えるセラさん。普通に走って逃げるには厳しい速さなのだが、魔法使いである僕とカシーさんは強化魔法を使用してるので、追ってくるノコギリとの距離を徐々に離していたりする。そして、空を飛んで移動するレイスとワブーは僕たちの横を飛んでいるので問題無い。


「こんな極悪トラップが無いって言ったじゃないですか」


「知らなかったんです!だから……あっ!?」


 すると、セラさんがその場でこけてしまう。僕は慌ててセラさんに虚空を掛けて宙に浮かべ、さらに鞭にした鵺をセラさんの体に巻きつけて、そのまま引っ張る形で再び走り出す。


「こんな運び方ありですか!?」


「この際、気にしない!!」


 そのまま、走り続ける僕たち。すると、狭い通路の先に広そうな空間が見える。


「よし!これで……」


「二人共!広い空間に出たら横に思いっきり避けて!!」


「「え!?」」


 前を走る二人が、僕の言ったことに理解できずに声が漏れる。しかし、そこは戦闘のプロである。僕の言葉を信じて、広い空間に出たら、そのまま左に曲がって、通路から離れる。僕たちは右側に曲がって距離を取る。そして……追いかけてきたノコギリの刃たちは通路で停止することも無く前に発射され、僕たちを切り刻もうとする。しかし、僕たちはその射線から大きく離れているので、飛んだノコギリの刃たちは何かを切り刻む事も無く、地面に落ちていった。


「なるほどね……良く気付いたわね?」


「通路の壁だよ。ノコギリの刃が通るように壁に切れ込みがあったでしょ?あれが、通路の端まであったからね。もしかしたら、飛んでくるのかもしれないと思ったんだ」


 反対側に避難したカシーさんたちがこちらに歩み寄って来る。


「か、薫様~……そろそろ……」


「あ、うん……下ろすね」


 虚空で浮かしていたセラさんを下ろしたところで、先ほどから見えていたある物に注意を向ける。


「グルルル…………!!」


 先ほどまで寝ていたそれは唸り声を上げながら、ドシン!ドシン!と音を立てながら近づいてくる金属で出来た4つ足歩行の魔物。


「……ねえ。これってクロノスで使用しているバッジを見せて、戦闘を回避するイベントとか発生しないかな?」


「その……残念ながら、アレにはそんな知性は無く……命令である侵入者の抹殺を遂行するだけなので……」


「それじゃあ……倒さないといけないって訳だね……」


「ガォオオオオーーーー!!!!」


 セラさんに事前に教えてもらったエーオースを守る番獣……希鉄鋼機獣(レアメタルビースト)ベヒーモスが雄たけびを上げると、僕たちがここに入って来るのに使用した通路に鉄格子が下りて、逃げられないようになってしまった。


「ようやく、迷路のゴールが見えたな」」


「ええ。セラの言う通りなら、これがこの迷宮の最後の番人のはずだものね」


「セラ……間違いないのです?」


「はい。ベヒーモスはエーオースを守る為の最後の番獣です。仮に施設から離れていたとしても、そんな遠くまで行く事はありません」


「そう……なら、私達の新たなる英知を得るためにも、さっさとそこをどいてもらいましょうか!」


 カシーさんが杖を構え、相棒のワブーもベヒモスを注視する。


「僕たちは帰ります……疲れたし」


「なのです……」


 エーオースの見学は明日でいいと思っている。流石に走り続けたりして疲れた。それに、そろそろ晩御飯の準備をしないといけないし……。


「皆さん……そんな余裕をかましていられる相手じゃないですからね!?」


「グォオオオーーー!!」


 セラさんの言葉に反応したのか分からないが、雄たけびを上げて、こちらに突進するベヒーモス。


「城壁!」


 鵺を壁にして、とりあえずの防御と目くらましをする。


「セラさん。こっち!」


 セラさんを連れて、その場を離れる僕たち。次の瞬間、ベヒーモスが壁になった鵺をぶっ飛ばして、先ほどまで僕たちがいた場所を通り過ぎて行き、壁に衝突した。


「凄い迫力なのです」


「うん」


ドドドドン!


「グォオ!?」


 壁に衝突したことで、一時的にその場に立ち止まるベヒーモスに、カシーさんたちが爆発の連弾を浴びせる。僕たちも負けずに、グリモアを使って、黒雷連弾を喰らわせる……が、あまりダメージは無さそうだ。


「ガァアア!」


 するとベヒーモスがこちらに急接近。直前でジャンプして上から叩き潰そうとする。僕はグリモアによる黒い靄をから素早く黒い靄を纏った球体の鵺をベヒーモスに向けて投げる。


「全てを飲み込む黒き力!今こそ発現せよ黒風星雲(こくふうせいうん)!」


 呪文を唱え切ったと同時に、四葩を取り出しつつ、僕たちは被害に遭わないように後ろに下がる。


「グォオオオーーーー!!?」


 ベヒーモスが地面に落ちて来ることなく、その場で手足をジタバタさせる。さらに、鵺から漏れだした黒い靄がまるでベヒーモスを拘束するように縛り上げ、さらに鵺にも引っ張られ、その体を無理矢理、変な方向に曲げられる。


「そのままへし折るか、潰れるとありがたいんだけどな……」


 影星の強化版である黒風星雲。鵺を中心に、指定した範囲の全てを鵺に引っ張るという地属性の魔法である。それだと影星と変わらないように聞こえるが、それより引っ張る力が強く、また、範囲を指定できるというのが利点である。


 黒風星雲の範囲指定をしない場合は、影星より広範囲を自身に引っ張る。これが範囲を指定していると、その引力が範囲内で最大限に発生する。要は範囲を狭めるほど、引力を強く出来る仕組みになっている。そして鵺が野球ボールサイズの球体の為、対象はその球体に沿って引っ張られる。これを生き物に使用したら……。


「リアル肉団子の出来上がりなのです……」


「止めて……想像したら晩御飯にお肉が食べられなくなるから……」


 レイスがそう言うから、血が滴り、骨が剥き出しになった肉団子を想像してしまった。そんなスプラッター映画は確実に18禁に指定だろう。まあ……それを実際に出来てしまう僕たちもヤバいが……。


「グォオオオオーーーー!!!!」


 しかし、今回は生き物では無いし、それにどうにかこうにか抵抗しているので球体になる事は無いだろう。まあ……後ろでロケットランチャーを構えている爆装した召喚獣の攻撃を喰らえばスクラップにはなりそうだが……。


「ファイヤー!!」


 カシーさんがそう言うと、カシーさんたちの召喚獣であるフラムマ・マキナの集中砲火が行われる。その爆発の最中にベヒーモスが落下を始める。それと同時に鵺が手元に戻って来た。僕は戻って来た鵺をカーバンクルの魔石を取り込んだ状態で黒剣にして、四葩と鵺を両手に構える。


「一気にいくよ!」


 僕は走りながら、四葩に風を纏わせ、鵺にはカーバンクルの魔石の効果で炎を纏わせる。


風燐火斬(ふうりんかざん)!」


 クロスするように剣を振ると、二つの魔法が混ざり合って青い炎が発生。それが爆発によって弱くなっているベヒーモスの装甲を切断。さらに斬撃となってベヒーモスを切り裂いた。


「よし!セラさん!これでいいですか!?」


「はい!後は本体を探して下さい!」


 僕たちは崩れたベヒーモスの外装の山から本体を探し始める。崩れた外装から顔を覗かせたり、もしくは移動することで外装が揺れればいいのだが……。


「いたわ!!」


 カシーさんたちの方が先に見つけて、それを抱きかかえる。


「あっちで見た犬寄りのロボット犬みたいな感じね」


「うむ……ただ、こっちの方が戦闘能力があるから実戦向けだな」


 二人がさっそくベヒーモス……いや、子犬を観察する。その間も子犬は暴れて、カシーさんから脱出しようとするが、変態的な表情を見せているカシーさんが絶対に逃がさないというような感じで、ガッチリと体を抱き寄せてるために逃げられずに、最終的には、くぅーーん。と吠えながら、僕の方をチラ見してくる。


「いや。さっきまで君と戦ってたよね?しかもトドメを差してるし……」


「きっと、母性を感じたのです」


「そこは父性だよ……」


「絶世の美女の見た目を持つ、薫様なら母性の方がしっくりきますね……」


 そんな事を言いつつ、僕の横を通り過ぎていくセラさん。それに関して僕がツッコむと、他の全員から一同に、セラさんが正しい!と言われてしまう。セラさんはそれに気にせずに、カシーさんが抱えている子犬まで近づき、指を近づける。


「展開……」


 すると、指の先から魔法陣が展開する。カチコチと音を立てながら子犬の警戒モードを解除していく。暴れていた子犬は次第に落ち着いて……。


「いたっ!?」


 カシーさんの手を噛んで、拘束から逃れる子犬。そのままこっちに走り寄って来て……僕の体に抱き付いてきた。


「……これが母性の差か」


「薫になら負けても悔しくないわね」


「なつかれるのは嬉しいけど……そこは違うからね!!」


「アン!」


 嬉しそうに尻尾を振りながら子犬は一鳴きして、僕の意見に肯定してくれるのであった。


―地属性魔法「黒風星雲(こくふうせいうん)」を覚えた!―

効果:グリモアによる黒の魔石と魔法陣展開の両方使った場合に使用可能な影星の強化版。範囲を指定することができ、その範囲を狭めるほど引力が強くなります。また黒い靄の部分はさらに強力な引力を帯びています。うっかり生き物に使用すると、それの肉団子を生み出しかねないので、なるべく無機物に使用しましょう。


―複合魔法「風燐火斬(ふうりんかざん)」を覚えた!―

効果:鵺にカーバンクルの魔石を装着することで使えるようになった炎の剣と、四葩に風の魔法を施した風の剣を両手に装備した状態で使えるようになる合体魔法。組み合わせる事で青い鬼火のような炎の斬撃を生み出し、かなり堅くて大きい物も切断します。準備に手間がかかるので、相手の隙を伺う必要があるので注意して下さい。ちなみに……四字熟語の風林火山との関係性はありません。

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