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305話 迷宮攻略

前回のあらすじ「トラップ発動! 落とし穴!!」

―薫達が地下に潜った同時刻「官邸」―


「そうか……分かった。……ああ、そっちも体には気を付けろよ」


 俺はグージャンパマの件で頑張っている息子にそう言って、電話を切った。ちなみに電話の内容は彼らの事だった。


「総理どうかされましたか? 何か渋い顔をしていますが……?」


「ああ……すまないな田部。あの子達がエーオースの調査に入ったそうだ」


「なるほど……それはまた、波乱が起きそうですね」


「彼らは知らないだろうがな……」


 彼らのグージャンパマでの発見は、すぐさま関係者に知らされている。そこからは調査をどう行っていくか。どこの組織が何名ほど入ることを許可するか。という緊急の会議が行われる。もちろん俺もその会議に出るのだが……ここで他の所にいい所を持っていかれないように立ち回るのには骨が折れるのだ。


「今回は飛空艇が主役ですかね……」


「ああ。燃料の心配がいらない空飛ぶ船……どこの組織も欲しがる物だな」


 既存の移動手段に替わる新たな手段だったり、兵器に利用したりと、かなりの利用価値のある飛空艇は、今回の目玉になるであろう。そんな事を考えつつ俺は手帳を開いて、今週の予定を確認する。


「いつ結果が出るのか……だな」


「ええ……そうですね」


 彼らの事だ。きっと、今週中には何らかしらの成果を挙げるに決まっている。下手すると、明日にでも息子から報告が来るだろう。


「今日は早めに仕事を切り上げるか……」


 とりあえず、俺の今日の予定にそれが決まるのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―同時刻「イスペリアル国・地下迷宮 空洞」―


「へ……くしゅん」


「あら。かわいいくしゃみね」


「ううん……誰か変な噂をしてるのかな……」


「そんなことより……どうする?このまま進むか。それとも戻るか」


 ワブーが空洞の底にある唯一の通路を見ながら、皆に訊いてくる。


「ここから先は何らかのトラップが待ち構えているで間違いないだろうし……セラさん。侵入者をレーザトラップでサイコロステーキするような悪質過ぎるトラップとかあります?」


「何ですか。その極悪トラップは? そんなの非人道的ですし、誤って職員が引っかかったら大変じゃないですか」


「あ、うん……そうだね」


 セラさんに強く否定されてしまった。まあ、システムの誤作動とかの危険性を考えた時にそんなのを設置するというのは、現実的では無いのか。


「ということは……命に関わるような凄く危ないトラップは無いという事なのですね?」


「もちろんですよ!」


「それじゃあ、さっきのアレも死なないトラップなのです?」


「……」


 レイスのその質問に対して、顔を背けて無言になるという行動を取ったセラさん。先ほどの高さから、あのまま落ちていたら、もれなくプチトマトを潰したかのように体が弾けるだろう。


「……ちなみにですけど、セラさんが知っているエーオースの防衛システムを教えてくれませんか?」


「防壁が下りて、相手を捕えた後に火魔法で焼却……後は風魔法で吹き飛ばした後、深い穴に落とすとか……あ、大岩が転がって来ることも……」


「即死トラップじゃないですか!!?」


「あくまでこれは正面玄関の防衛システムですよ! それと同様なトラップは……」


 その場で大げさな身振りをして、説明するセラさん。


ガコン!


 セラさんの足元から音がしたので、慌てて僕はセラさんの手を掴んで抱き寄せた後に、そこから思いっきり後ろへと飛ぶ。そして、先ほどまでセラさんがいた場所に、火球が高速で通り過ぎて行った。


「大丈夫!?」


「僕は大丈夫ですよ。セラさんは?」


「だ、ダイジョウブデス……」


 体を震わせたまま、僕に抱き付いたままのセラさん。この状態を大丈夫と判断する人はごく少数であろう。


「ここは戻って、しっかりとした対策を練ってから進みたいですね」


「そうね……でも、それは無理かしらね」


 僕の要望に対して上を見ながら答えるカシーさん。そういえば、先ほどから、重たい物が動くような音がどこからか聞こえるのだが……。


「か、薫!上なのです!!」


 レイスに言われて、上を見ると、空洞と同じ幅の何かが落ちてきている。今から飛んで、元の道に戻ろうとしても、それの方が先に落ちて通せんぼするだろう。


「あっちに道がある!逃げるぞ!」


 ワブーの指差す方向にこの空洞から出れる道がある。僕たちはそのまま急いでそこまで走って逃げる。


「ま、間に合いませんよ~~!!」


 セラさんの言う通りで、僕たちが道に辿り着くよりも先に、落下物の方が地面に到着してしまうだろう。


「鵺……城壁」


 僕は鵺をアーチ状に展開して、即席のトンネルを作る。しばらくすると、鵺と落下物が接触したようで、ギシギシと鵺が音を立て始める。


「早く!!」


 そのまま走り抜けて、僕たちはどうにか空洞から脱出する。そして一番最後を走っていたセラさんが脱出したと同時に即席のトンネルは崩れて落ちてきた何かが潰してしまった。


「ああ……鵺がコピー用紙みたいに……」


 即席のトンネルになっていた鵺を回収しようと呼んでみると、鵺は平べったい長方形の形で、少しずつ出てくる。


「まるで反物なのです」


 ペラペラの鵺を巻き取りながら回収していると、それを見たレイスがそう呟いた。確かに傍から見ると、そう見えるのかもしれない。


「うーーん……金属……ヒヒイロカネかしら?」


「そうだな……」


 そんな事をしている僕たちの横で、ここに入ってきた入り口を通せんぼしている、落ちてきた何かをランタンの光を使って調査するカシーさんとワブー。


「ちょって待って下さい……」


 そこにセラさんが近づいて、指を近づける。すると、指が割れて、中から小さいアームが出て来て、それが落ちてきた何かを調べ始める。


「……解析結果。お二人の言う通りでヒヒイロカネですね」


「こんなトラップの為に希少金属を使うとは……」


「イレーレがいた時代では、この金属は日常的に使われていたのかもしれないわね……」


 3人がそんな話をして、考察をし始めている。


「よし!回収完了っと」


 僕は鵺を回収しきって、いつもの腕輪状にしておく。


「3人とも、鵺の回収が終わったんで次行きますよ」


「うん?いいのかしら戻らなくても?」


「戻れないの分かってるくせに」


 僕はここへの入り口を塞いでいる分厚いヒヒイロカネの塊を見る。これをどうにかするよりも、奥に進んだ方がマシだろう。


「冗談よ。ただ、ここから先はおふざけ禁止よ。敵のアジトに潜入しているのと同じくらいの覚悟で行くわよ」


「もちろんだよ」


「それじゃあ出発するのです。長期滞在できるような準備はしていないのです。このままだと飢え死にしてしまうのですよ」


「一応、そこそこ食料はあるから、数日は大丈夫だと思うけど……まあ、長くいる訳にはいかないかな」


「じゃあ、いくぞ。さっさとここを出て、このヒヒイロカネを回収しなければな」


 僕たちは、暗闇が続くこの通路の先へと歩を進めるのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―それから約2時間後―


「獣王撃!!」


 僕は転がってきた岩を殴って、強制的に壁にめり込ませる。


「全く……」


「トラップが多すぎるわね」


「えーと……あ、そこ踏まないで下さい。そこに加圧式のトラップがありますよ」


 セラさんの指差す場所を避けて先に進む僕たち。セラさんの目には暗視以外にも、このように簡易的なトラップをサーチできる機能があり、それを頼りに進んで来た。


 ここまで惑わせるための別の通路もあったりしたが、そこまで複雑な迷宮ではなく、基本的には一本道だったこの通路。しかし、ここまで進むのにたくさんのトラップを避けたり、解除したり……時には物理的に破壊したりして、大分時間が掛かっていたりする。


「ふう……」


「レイス疲れた?」


「いえ。大丈夫なのです」


「無理しなくていいよ。そろそろ休憩を取りたいと思ってたしね……3人もいいよね?」


 3人も休憩を取ることに賛成したので、危険なトラップが潜む通路内だが、軽食と飲み物をアイテムボックスから取り出して一息入れる。


「どこまで続くのでしょうか……この道」


 セラさんが、受け取った缶コーヒーを飲みながら、この後、進む予定の道の先を見る。ここまで歩いてきたが、通路は暗いままだ。


「そうだな。あまり長くなるようならどこか野宿できる場所を探さないとならないな」


「なのです……薫はどうなのです?」


「……後、少しだと思う」


「あら?その強気な根拠はどこから来てるのかしら?」


 僕は自分の持っている時計を確認しながら、根拠を述べる。


「カシミートゥ教会からエプレス教会までの移動するのにかかった時間は歩きで一時間もかかっていなかった。そして、エーオースの施設があるのはカシミートゥ教会の真下のはず……となると、そろそろ着いてもおかしくないかな。って思っただけ」


「なるほどね……」


「もし、これ以上の時間が掛かるなら、別の場所に歩かされている可能性があるから、その時はすぐに野宿できる場所を確保するべきかな」


「なるほどな。そうしたらもうひと踏ん張りで、エーオースに辿り着くってことか」


「うん。でも、ここまでの即死トラップを考えると、きっと最後に何かとっておきがあるんだと思うんだよね」


「ダンジョンのラスボスなのです……」


 ココアを飲みながら、答えるレイス。まさに、そのような相手が待ち構えていてもおかしくは無いだろう。


「クロノスを守護していたアダマスのような、自立型起動兵器の可能性もあるな」


「それはありません。アダマスと同等とか……あっ」


 セラさんが何かを思い出したみたいで、不安になるような声を上げる。


「セラさん?」


「いや……でも、あれは正面を守ってるはず……だから、あり得ないはず……」


「セラさん。念のために説明をお願いします」


「は、はい! 分かりました」


 こうして、恐らく待ち構えているであろうラスボスの詳細を聞く事になるのであった。

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