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302話 爆弾発言連続投下

前回のあらすじ「ネタ晴らし祭りの始まり」

―同時刻「カフェひだまり・店内」マスター視点―


(聞いた!?皆、聞いたよね!!?妖狸が今ハッキリと地球以外っていったよね!これがどんな意味か分かるよね!今!新世界への扉が開かれたんだよ!!)


 テレビからうるさいと思えるほどの大声で話す芸人レポーター。確か都市伝説をメインに活躍していたな……。


「うわ……これ本当なのかね?」


「嘘じゃないだろうな……何せ他の国のお偉いさんも認めてるしな」


 この発表とほぼ同時に、世界各国の政府が記者会見を開き情報が真実だと言っている。すでに、ネット上は大騒ぎ……異世界転生や異世界転移とかのワードが行き交っている。俺はそれだけを見て、スマホをポケットにしまって仕事の続きをする。


「どんな世界なのかね……?」


「案外、俺達が暮らす地球と変わらないんじゃないか?そうじゃなければ、地球人の妖狸は死んじまうだろう?」


「ああ……それもそうね。でも魔法のある世界ね……」


 それだけを言って、営業再開を聞いてやってきた常連のお客がテレビを見ながらコーヒーを飲む。他の客も飲食をしつつも、視線はテレビに釘付けになっている。


「さてと、夜の準備をしないと……」


「マスターは興味ないのかい?」


 俺があまりにも興味なく、仕事優先で動いている姿を見て、先ほどから話していた常連が俺に質問してくる。


「子供が生まれるからな……しっかり仕事もこなさないとな」


「そういえばそうだったな……それじゃあ、祝儀代わりにコーヒーをもう一杯くれ」


「あいよ」


 俺は注文を受けて、コーヒーを淹れる。


「興味か……」


 無いと言えば嘘になる。しかし……その世界に昌と一緒に何度も遊びに行ってるのだから、ここにいる他の客ほど興味津々とはいかない。


「あの二人を連れて来るんかね……」


「うん?どうかしたかいマスター?」


「独り言だ……気にしないでくれ」


もし、こっちに連れて来るなら早めに電話しろよ?と、テレビで議員相手に説明する薫に願うのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―ほぼ同時刻「国会議事堂・議事堂内」―


……ざわざわ


 僕の爆弾発言にどよめきが止まらない。無理も無い。僕も彼らの立場だったら同じように驚いていただろう。


「そんな嘘が……!」


「嘘ではありません。こことは別の場所……それは異世界なのか、それとも異星なのかは不明ですが……それでも地球とは異なる発展を遂げた星は存在します。それとも……」


 僕はレイスと目を合わせて、その場で飛翔を使って宙に浮く。


「今の私のように自由に空を飛ぶ技術がこの地球にありますか?」


 誰もその質問を返すことが出来ずに静かになる部屋内。その後、議長に注意を受けて、飛翔を解除して、自分の席に戻る。


「菱川総理。あなたはいつ、妖狸と接触したのですか?ご説明願いたいのですが」


 他の議員の質問に対して菱川総理が席から立ち上がり、答弁台に立つ。


「私が妖狸の事を知ったのは、恐らくここにいる皆さんと同じ、ヘルメスが銀行を襲撃したあの事件です。そして……その直後には妖狸が一般市民であり、地球とは別の世界に行くことが出来る人物だと知ることが出来ました」


「どうしてそんな早く?」


「あの銀行襲撃事件の近くに、私の知り合いがいまして……彼と妖狸は知り合いでした。知り合いは事の重大さを受けて、私に連絡……その後、密かに妖狸達を調査していました。そして、妖狸達と接触したのは……アメリカ大使のソフィア・ウィリアムとスカイツリー訪問前に極秘で接触しました。その際にはこちらのイスペリアル国の代表であるコンジャク大司教とも話をしています。」


 ざわめく部屋内、すでに半年以上前から内閣が把握していた事に、厳しいヤジが飛び交っている。そして、その中で、ここまで酷く緊張していたコンジャク大司教が手を挙げた。


「発言よろしいでしょうか」


 コンジャク大司教の要求に対して、議長はそれを認める。するとコンジャク大司教は堂々とした姿で答弁台に立ち、被っていた帽子を脱ぐ。すると、獣人であるコンジャク大司教の熊の耳が顕わになり、それを見て驚いている議員が数名見受けられる。


「初めまして、私はグージャンパマにある一国。イスペリアル国代表の大司教のコンジャクと言います。皆さまの中で驚かれている方々もいますが、グージャンパマでは皆様のような人族以外にも、私のような獣人にソレイジュ女王の精霊、後はエルフにドワーフ、オアンネス、それと竜人。色々な種族が住んでいる世界になります」


 地球とは異なる場所に住むコンジャク大司教の発言を、さっきとは打って変わって静かに聴く議員の方々。


「先ほどの菱川総理が今回のこの会議まで、妖狸さんとの接触していたことを黙っていた件については我々の方に問題があり、それが解決するまでは、表沙汰にしないということで約束していました」


「問題?」


「はい……多くの種族が住む我々の世界には魔族と呼ばれる種族がいまして……その種族が世界征服をするために侵攻している最中なのです。そして最悪な事に……この世界も狙われています」


「そんなことが……!」


「まさか……」


「これは事実であり……そして、これを回避するために我々は密かに活動していました。本来ならこれは公にするのが一番だと思われるのですが……こちらでは異世界の存在は知られていないために、多くの人々に混乱を引き起こしかねない。もしかしたら、これ自体が嘘だと思われてしまうかもしれない。そこで徐々に異世界の存在を明かしいくという形を取り、来たるべき時に備えていました……皆さんの中には翻訳機能を持つアイ・コンタクトという謎のアイテムを持っている方がいらっしゃるのではないですか?」


 コンジャク大司教のその問いかけに、何名かの議員が顔色を変える。そう、アイ・コンタクトは今でも謎のグッズとして売られていて、それの出所がどこなのかは今もバレていない。そして今のコンジャク大司教の発言でそれが異世界の魔法グッズと理解した者もいるだろう。


「他にも眼鏡のように掛ける事で書いてある文字を理解できるセシャトも我々の作った物になりますね」


 そこで一回、他の議員が質問して、それをコンジャク大司教が答える。その次は僕や菱川総理、たまにソレイジュ女王が説明していく。そんなやり取りをしながら、今までグージャンパマで集めてきた情報を公開していく。気が付けば会議は予定時間だった1時間を大幅に過ぎていて3時間……あっという間に時間が過ぎ去っていた。


「既に自衛隊員に米軍、警察などに所属する特殊部隊が既に活動して情報収集していたとは……」


「これは世界を揺るがす大事件だぞ……」


 ここにいる議員全員が頭を抱えている。自衛隊と警察が他国で極秘活動していて、さらにビシャータテア王国で起きた戦争にも参加しいたことも明らかにした。本来なら責められるべき内容だが、異世界の国はこちらでは国家として認められていない。さらにはこちらへと侵略される恐れがあった……これは自衛権の範囲から外れているが、かといって何もしないでおいていい訳でも無いし……と、色々責めたい内容もあるが、じゃあ自分たちはその時どうするつもりだったのか?と訊かれた場合答えられる訳もなく、他にも化け物となったスパイダーなんて、僕たちがいなかったら国内で戦車や戦闘機による爆撃を行っていたけど、その責任は?とかを考えている人もいるだろうし、他の話題を聞いて今後の政策、国民生活への影響、他国との関係……どこまでも計り知れない影響力を持つ、グージャンパマという存在自体に頭を悩ませている者もいるのだろう。


「恐らく、この話を聞いてもご理解できない方々もいらっしゃるかと思われます……出来れば近いうちに、メディアを対象にあちらへの招待を予定しています。行き先はイスペリアル国。そこで様々な物を見て頂ければと思います。また非認可ですが領事館にもご案内しますので」


「「「「え!!?」」」」


「ちなみに、これは妖狸があちらで稼いだ私財を投じています。それと日本の領事館としても使用できる許可をもらえる話になっています……後は本会議でそれを認めてもらえるかが問題になるでしょうが……」


 僕と菱川総理の発言に、さらに頭を悩ませる議員たち……そんなこんなで、この話し合いはお開きとなった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―話し合い終了後「国会議事堂・正門前」―


「妖狸さん!一体これから、この世界はどうなってしまうんですか!!」


「妖狸さん!何か一言!」


 正門からマスコミが大声で僕に質問してくる。僕はそちらに背を向けて、聞こえていないふりをする。


「長時間の会議にお付き合い下さって、ありがとうございました」


「いえいえ……私達もこれで一つ、悩みの種が消えましたから」


「ですね。これからはより妖狸達に支援しやすくなりましたから……」


 菱川総理とコンジャク大司教たちが議事堂を出て、外で会話をしている。僕はそれを静かに聴いているのだが、菱川総理の後ろを見ると……議事堂の入り口には大勢の議員や秘書がこちらを遠くから見ていた。


「それでは名残惜しいですが……そろそろ帰らなければ」


「そうですね」


「分かりました……それで、お迎えはどうされるおつもりで?妖狸のユニコーンだとコンジャク大司教を吊り下げて運ぶ形になってしまうのでは」


「仲間が来たので問題無いのです」


 レイスが指を差す方向から、こちらに向かって飛んでくる二組。


「お迎えに上がりました」


 そこに来たのは赤鬼姿のカーターたちと妖狐姿の泉たちが来てくれた。カーターのグリフォンを見てマスコミがまた大騒ぎしている。僕たちはそんな事は気にせず、コンジャク大司教とソレイジュ女王がグリフォンの背中に乗っていく。僕もシエルを呼んですぐに飛び立てる準備をしておく。


「それでは……今度は世界会議ですかね」


「ですね……バイオテロの影響で予定が伸びそうですが……その時にはまたお願いします」


「ええ、もちろん……それでは」


 二人の別れの挨拶が済んだ所で、僕たちは空へと飛び立つ。


「これは……絶景ですね」


 議事堂を飛び立って、徐々に高度を上げていくと見事な夜景……人の作り出す灯りで下が照らし出されている。


「あ、薫兄。マスターがご飯を食べにくるか?だって」


「あ、うん。私の方で連絡をする……」


「「私!?」」


 僕のうっかりにカーターとサキが盛大に驚く。


「か、薫兄がメスに……」


「違和感が仕事を放棄してるッス!!」


「さっきまで、お淑やかな女性のふりをしていたから、それの影響だよ……さあ、あまり遅くなるのも悪いからさっさと帰ろうよ」


 僕は自分のミスに恥ずかしさを感じつつ……何事も無かったようなふりをするのであった。

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