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301話 国会へGO!

前回のあらすじ「甘いバレンタインを過ごした」

―バレンタインから一週間 午後「都内・国会議事堂近く」―


「ありがとうございます田部さん。わざわざ送迎してもらって……」


「これも仕事ですから……それでコンジャク大司教。乗り心地はどうでしょうか?」


「大丈夫です……」


 妖狸の衣装を着ている僕の横で、体を震わせながら座っているコンジャク大司教……。


「今からそんな調子でどうするんですか……いつものようにしていれば問題無いんですから……」


「分かっています……分かっていますが……」


「そうですよ。薫さんのように振舞っていれば問題ありません。そうですよねレイス?」


「はい。お母様」


 優雅に助手席に座っているノースナガリア王国の女王であるソレイジュ女王はコンジャク大司教にそうアドバイスを送って、娘であるレイスとの会話に戻る。そう。レイスの言うピッタリの人物とは自分の母親である。


「確かに、インパクトはあるもんな……」


 精霊の見た目は確かにインパクト抜群である。僕たちより小さく、それでいて空を飛んでいる……他の種族なら、特殊メイクとかでしょう?って言われそうだが、精霊に関しては絶対にそうは言い返せないだろう。他にも各種族の中で精霊の立場は特別で、精霊がいないと魔法使いが生まれない事もあって何かと優遇される立場である。そのため他の代表からも特に反対意見が出る事も無く、ソレイジュ女王の国会への出席が決まった。


「かなり大騒ぎになってますね」


 赤信号で止まった車の窓から外の様子を見ると、どこかのテレビ局のカメラマンとレポーターが道行く人にインタビューをしているのが見える。そして、少しだけ視線を移すと別のテレビ局が取材をしている。それだけではなく、動画配信者らしき人々もいて、国会議事堂にカメラを向けて何か喋っている。


「妖狸を参考人招致した。という事を大々的に発表しましたからね……それの恩恵にあやかろうとする人達で殺到していますよ」


「でも、ここって議事堂から少し離れた場所なんですけどね」


「近くはこれより過熱してますよ……それに各国も、この後、重大発表をすると公表しているので余計に騒ぎが大きくなっていますね」


「……これって教科書に載りますよね?」


「再来年の教科書辺りには絶対に載るでしょうね……」


「はは……」


 ついに教科書に載る偉人として残ってしまうのか……何か複雑である。


「皆さん……ご準備はいいですか?そろそろ着きますよ」


 車が国会議事堂の正門へと近づいていく。正門付近ではメディアの激しい取材合戦が既に始まっている。


「あんな中に放り込まれるのは勘弁して欲しいですけどね……」


「……よろしくお願いします」


「分かってます……で、準備はいいかコンジャク大司教?」


「はい……覚悟は出来ました。前にいるお二人は?」


「大丈夫なのです」


「同じく」


 僕は妖狸の口調に変えて、気持ちを整える。そして……ついに、車が正門前に停まった。


「……着きました」


「感謝する」


 僕は一息整えてから、車の扉を開ける。


「妖狸です!妖狸が……」


「妖狸さん!何か一言を……!」


 今までバラバラに向いていたカメラが一斉に僕に向けられる。その威圧感に押されそうになるが、それには負けずに次の行動を取る。


「どうぞお二人共……」


 僕の呼びかけを受けて、車にいたコンジャク大司教とソレイジュ女王が車から出て来る。周囲からはこの二人が何者なのかと騒いでいる。そこでパフォーマンスとして一緒に出てきたレイスと僕は二人の前で片膝をついて首を垂れる。僕とレイスがこのような行動を取った事で、この二人がお偉いさんと分かるだろう。その読み通りにレポーターがカメラに向かって伝えている。


「顔を上げて下さい妖狸、レイス」


「はっ!」


 僕たちはコンジャク大司教の命令で顔を上げる。


「ここまでの活動……ご苦労様でした。これからは私達も表舞台に立つとしましょう。あなた方にはより一層の活躍を期待してますよ」


「お褒めの言葉を預かり光栄です」


「お待ちしておりました」


 そこに菱川総理が数名の議員らしき人を連れて、正門にやってきた。


「会うのは……これで2回目でしたね」


「ええ……あの時は極秘での会談でしたが」


 コンジャク大司教と菱川総理の話を聞いたメディアが騒ぎ立つ。


「それでは議事堂内をご案内します」


「よろしくお願いします」


 深々とお辞儀をするコンジャク大司教……挨拶を済ませた両名が並び立って議事堂へと歩き始めるので、僕とレイスも立ち上がって、その後ろに続く。僕たちはそのまま大勢の視線を浴びながら議事堂内に入る。中に入るとコンジャク大司教とソレイジュ女王は議事堂内の造りに興味を持ち、菱川総理に質問しながら用意されていた部屋へと入り席に着く。


「改めて……わざわざご足労いただき感謝しますコンジャク大司教、それと……初めてましてですよねソレイジュ女王」


「初めまして菱川総理。娘のレイスがお世話になってるわ」


「いえいえ。むしろこちらがお世話なってます……バイオテロの首謀者達の確保に尽力を尽くしてくれましたから」


「総理。あまり時間が……」


「分かってる。それではこの後の流れですが……」


 自己紹介をそこそこに、この後の流れを相談する僕たち。それは会議が始まる直前まで行う予定である。ある程度、話がまとまったところで菱川総理がある事を指摘する。


「それで妖狸……君の口調なのだが……」


「やっぱり変えた方がいいか?」


「そうだな……流石にお面はそのままでいいが、口調は変えた方がいいな」


「ならば……一人称は私にして、こんな風に女性っぽく話せばいいですか?」


「だな。訊かれたら、個人が特定されないようにするための演技をしている。とでも言ってくれ」


「はい。それで一番最初に話すのは私でいいんですか?」


「……ここにいる奴らで異論があるものはいるか?」


 菱川総理のその質問に対して、誰も異論を唱えない。


「だったら、最初に話すのは君で決まりだ……爆弾発言を頼んだぞ」


「確かにこれは爆弾ですね……大勢の人が混乱するような…ね」


「だな……それにしても、その喋り方に違和感が無いな」


「むしろ、そちらでいつも話していただけると助かりますね……」


「……私は変えませんからね?」


 どこで聞かれてるのか分からないので、男だって事がバレないように女性として振舞う僕。ちなみに、ユノの口調を参考にしていたりする。


「そういえば、これって偽証罪になりませんか?」


「証人喚問じゃないからな……安心しろ。さあ、いくぞ!」


 菱川総理が立ち上がったので、他の皆もそれに続いて席から立ち上がり移動を開始する。僕も息を整えてから、立ち上がるのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―それからしばらく後「国会議事堂・議事堂内」―


「面妖の民、妖狸」


「はい」


 議長に呼ばれて返事をして、発言するために答弁台に立つ僕。今、テレビで予算委員会や決算委員会が使うような部屋で話し合いが行われていて、今回は僕たち面妖の民やヘルメスなどの謎の組織にどう対処するかで集まった議員の話し合いに出席している。これは本会議ではなく、あくまで会合や勉強会などであって、議員全員が参加している訳では無い。


「……」


 答弁台に立つと、周りの議員さんの目がこちらに集まる。僕は深呼吸してから話し始める。


「初めまして。皆様から面妖の民と呼ばれ、そのリーダーと称されています妖狸といいます。今回はこのような場の為、いつもの口調とは違う話し方ですがよろしくお願い致します」


 僕の自己紹介にちょっとしたざわめきが起きる。いつもは高飛車で強気な口調、そして自分の事を妾と呼んでいる妖狸が、お淑やかな女性のような話し方をしたことに驚いているようだ。


「お面は外さないのか!」


 すると、どこからかそんなヤジが飛んでくる。


「素顔を晒してしまうと、私の身に危険が迫ってしまうので、どうか寛大なご配慮をいただければと思います」


 そう言って、僕は一度自分の席に戻る。すると、一人の議員が答弁台に立った。


「私の身と言いますが……そちらの方々は素顔を晒しているので、言い訳にはならないのでは?それにそこのお二人が何者なのかご説明願えますか?」


 質問と答弁を繰り返し行って進んでいくこの話し合い。僕は一度、隣に座っている菱川総理に視線を向けると、特に言葉を発せずに頷いている。僕に全て任せるらしいので、僕は再度、答弁台に立つ。


「ご紹介が遅れて申し訳ありませんでした。こちらは左からイスペリアル国で代表を務めますコンジャク大司教、そのお隣の精霊はノースナガリア王国の女王であるソレイジュ様になります。私との関係ですが、お二人からは活動の支援をしてもらっています」


「そんな国は聞いたことが無いぞ!!」


「そうだそうだ!!」


 再び飛んでくるヤジ。ちょうどいいので、このタイミングで爆弾発言を投下させてもらおう。


「当然です。何故なら……この地球には存在しない国家ですから」


 先ほどより大きいざわめき……僕はそれには気にせず、そのまま話を続ける。


「彼らが住む世界……その名前はグージャンパマ。私はそのグージャンパマと地球を繋ぐある物を見つけ、そして、ここにいる相棒であるレイスと契約を結んだことで魔法使いになった日本人です」


 大きくざわめく部屋内。きっとこれをテレビで見ている視聴者も同じように驚いているだろうな……と、心の中で思う僕なのであった。

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