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299話 バレンタイン当日

前回のあらすじ「薫の知らないところで行われている実験のお話」

―バレンタイン当日「カーター邸宅・応接室」―


「よ、よ、よし……準備がでキ…出来たぞ」


「そんな緊張してどうするの……というか、変な声が出てるよ?」


「す、すまん……どうしても緊張してしまって……」


「全くもう……」


 緊張しているカーターに呆れている僕。一緒にいるレイス、カーターのパートナーであるサキも同じように呆れた表情をしている。


「新年の挨拶の時の凛々しさはどこに行ったのよ!?」


「これはこれ。それはそれだ!」


「訳分からないのです……」


 レイスの言う通りで、このままだとカーターがどんどんおかしなテンションになっていきそうなので、さっさと用事を済ませるとしよう。


「カーター……とりあえず、送る誕生日プレゼントはちゃんと用意できているの?」


「も、もちろん!ここにあるだろう……?」


「よし……そうしたら、今日これから出かける理由は何?」


「泉の誕生日を祝うパーティーをするから、ひだまりに集合……」


「そう。そしてユノは既にひだまりに行ってます……つまり、後は僕たちだけです」


「お、おう……」


「っていうことで、カーター行くよ。ほら早く」


「いや、心の準備が……」


「そんなのは移動中に終わらせる!」


「そうよ!これ以上は二人に迷惑だからさっさと立ちなさい!」


「あ、ああ……」


 サキに促されて立ち上がるカーター。ぎこちない歩き方をするカーターを心配しつつ、誕生日パーティーを行うひだまりへと、僕たちは向かうのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―それから1時間程「カフェひだまり・店内」―


パァーン!!


「「泉さん!お誕生日おめでとうーー!!」」


「ありがとう二人共!」


 クラッカーを鳴らしたあみちゃんと雪野ちゃんの二人がお祝いの言葉を掛ける。その後、ユノに昌姉、そしてマスターと次々とお祝いの言葉を伝えていく。


「いや~……こんな状況で祝ってもらえるとは思っていなかったけどね。まだバイオテロの影響で、流通が止まってるし……」


「そこは薫に感謝だな。こいつが鈴木食材店を自衛隊やソフィアに紹介したお陰で、商品を多めに備蓄してくれていたからな」


「薫兄、ありがとう!」


「うーーん……たまたまだよ。ビシャータテア王国に食料を供給するためにやった事が、結果的に今に繋がっただけだからさ」


「謙遜しないの!本当にありがとう!」


 皆に祝ってもらって上機嫌な泉。いい笑顔で僕にお礼を伝えるので、少しだけ照れ臭くなる。


「いいって……それより、おめでとう。って言ってもらいたい人がいるんじゃないの?特にそこの……」


 僕は先ほどから静かに座っている泉の彼氏に指を差す。結局、車の中でも緊張が解けずにパーティー会場に着いてからも、ずっとこの体勢である。


「カーターさん?そんなに緊張してどうしたんですか?」


「え?いや……その……」


 カーターからの言葉を待っていた泉も、流石に待ちきれずに、俯いていたカーターの顔を覗き込むようにして質問をする。


「カーター?誕生日である泉にその態度は失礼よ。何かあるなら、さっさと言いなさい」


「あ、ああ……泉…おめでとう」


「ありがとうございます……」


 サキに促されてやっとお祝いの言葉を伝えるカーターに、泉はどうしたものか分からずにおどおどした様子で返事をする。そんな落ち着かない様子の二人を見て、周りにいる僕たちは、いつの間にかそれを静かに見守っている。どのくらいの時間を待つことになるのかと思っていると、カーターが椅子から立ち上がって、プレゼントの入った箱をアイテムボックスから取り出した。


「その……誕生日って聞いたからな……プレゼントを用意したんだが、受け取ってくれるか?」


「え?は、はい……」


 泉はそれを静かに受け取る。


「あの~……開けても?」


「あ、ああ……」


 一度カーターに確認してから、泉がゆっくりと箱を開ける。すると、泉は箱の中の物を見て驚いた表情を見せる。中身が何なのかを知っている僕としては、あの表情には納得である。泉は驚いた表情のまま、中に入っていた物を取り出す。


「指輪にチェーンを通したネックレス……ですか?」


「ちょ!?宝石デカくないですか?」


 雪野ちゃんが指輪に嵌められている大きなアメシストに驚いている。キレイにカットされたアメシストの宝石の大きさは指の第一関節くらいと同じくらいの大きさである。そこに脇役の小粒のサファイアがアメシストが目立つように嵌めらていた。


「そうね……って、あら?紫色の宝石……アメシストかしら?泉ちゃんの誕生石ね」


「ちなみにサファイアはカーターの誕生石だよ」


「おい!薫!」


 僕はフォローとしてサファイアが付いている理由を泉に教える。それを知った泉はちょっと恥ずかしそうにしている。


「あらあら!それは素敵ね♪」


「互いの誕生石を使った指輪を送るなんて……何かロマンティックですね」


「うん……」


 カーターが泉へ送った誕生日プレゼントに、皆が良い感じの評価をする。そんな中、呆然としていた泉が何かに気付く。


「こんな高い物を頂いていいんですか……?」


「いいんだ。最初は衣服を作る素材をプレゼントしようかと思ったのだが、何か違う気がしてな……アドバイスを貰って、それにしたんだ」


「ああ……薫が手助けしたんですね」


「うん。プレゼントの案を出していたら、ランジェリーの話になったんだけど、その時に誕生石の事を話したんだ」


「そうなんだ……」


 僕の話を聞いて、さらに嬉しそうな笑顔を浮かべる泉。


「という事は……これってペアルックなんですか?」


「……え?」


 泉のその質問にカーターが固まる。そんな反応をしてしまえば、これがペアルックじゃないことがバレバレである。


「ああ……違うんですね……ちょっと残念かな」


「すまない。泉へのプレゼントしか考えて無かったからな。それだから……」


「いいえ!?もらった誕生日にケチを付けるような言い方をしちゃって……ごめんなさい」


 何か雰囲気が悪い方向に行きそうなので、ここで僕はアイテムボックスから箱を取り出す。


「カーター。これドルグさんたちから渡しておいてくれって頼まれていた物なんだけど」


「え?」


 僕は二人の会話に割って入り、ドルグさんたちからのプレゼントをカーターに渡す。


「カーターがあんな状態だから少し心配で、こちらの独断で作っておいた。だって」


「それって……」


 カーターが急いで箱を開けて、中身を取り出すと、泉の物と同じネックレスが……ただ、こちらは男性用に少しチェーンが太くなっており、宝石もカーターの誕生石であるサファイアがメインに嵌めらている。


「職人の仕事なのです」


「流石よね」


 レイスとサキがチョコレートを食べながら、ドルグさんたちの仕事っぷりを評価する。まあ、職人は関係があるのかは知らないが……。


「へへ……お揃いですね」


「あ、ああ……」


 ペアルックのジュエリーアクセサリーを手に入れて嬉しそうに話す二人。幸せそうな二人を見てると、こちらが恥ずかしくなってくる。


「さてと!プレゼントをカーターが渡したことだし、出した料理をしっかり食べてくれよ!温かい料理を出したのに冷めちまうぞ!」


 マスターがその場の空気を入れ替えようとして、料理を勧めて来る。僕たちは甘い空間内にいるカーターと泉の二人を置いて、料理に手を付ける始める。


「私も薫とあんな風にしたいのですが……」


「今日は二人が主役なんでそれは無しで……」


「今日は女の子が主役の日ですよ?だから……この後、薫の家にお泊りしちゃダメですか?」


「え?それは……」


「未成年とか……そんな理由はダメですよ?婚約関係なんですから、そんな言い訳は無しです!」


「……はい」


 そして、押し切られるようにユノが家に泊る事が何故か決まるのであった。


―クエスト「バレンタインに送る誕生石」クリア!―

報酬:ペアルックのジュエリーアクセサリー、二人の甘いひととき

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