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297話 宝石購入への道

前回のあらすじ「誕生日プレゼントを決めよう!」

―カーター邸を出発して30分ほど「アリッシュ鉱山・鉱山入り口」―


「宝石か……」


「ええ。ここで働いているロック先生なら、いい商人を知っているかと思いまして」


「そうだな……」


 髭を擦りながら考える炭鉱夫のロックさん。僕たちはクロノスまで転移した後、鉱山から出ようと坑道内を移動してると、ロックさんとバッタリ鉢合わせして、お互いの近況を話しつつ、目的の宝石を手に入れるために質問してみたのだが……。


「分からないな……妻に指輪を送る際に利用したぐらいで、それ以外は全くだしな」


「そうですか」


「そもそも……それなら領主様に訊いた方が一番だろうしな。貴族は集まりが多いしな」


「ごもっともです。そうしたら訪ねてみます」


「ああ、そうしろ。その方が確実にいい物が手に入るだろうしな……それと今度はシーエと一緒に飲みに来いよ!」


「はい。必ず」


 そうして、ロックさんと別れ、僕たちはアリッシュの街に続く道を歩いていく。


「でも、いきなり会ってくれるかしら?」


「そこは薫たちがいるから問題無いだろう」


「僕たち頼みなんだね。そこは……」


「後で、何か奢るから頼む」


「はいはい……」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―それから、さらに1時間後「アリッシュ邸・応接室」―


「なるほど……宝石か」


「すいません……お忙しい中、こんな用件で尋ねてしまって」


「何を言ってるんだ。ここの平和を守ってくれた勇者の頼みなら断る理由は無いしな。それに、カーター殿と魔導士殿が夫婦になれば、この国もより豊かになるからな。喜んで手伝わせてもらうよ」


 カリストロさんはそう言って、新しく雇った執事さんに、この街の地図を持ってきてもらい、その地図を机の上に広げる。


「宝石ならこの店に訊いてみるといい。娘の宝飾では世話になってるからな。後は俺の紹介状も渡そう」


「ありがとうございます」


「……ところで、ユノ様のために薫は買わなくていいのか?」


「ああ……それは……まだ……」


「このような用事で来たんだ。何かの縁と思って、今から用意しておいてもいいのではないか?」


 カリストロさんの手案はごもっともである。ユノの誕生日は6月であり、後4ヶ月程である。凝ったものを用意するなら今から準備してもいいかもしれない。


「うーーん……となると、アレキサンドライトかな。なんせ皇帝の宝石や高貴って意味があるし」


「それなら、アレキサンドライトと薫の誕生石を組み合わせた物を作ればいいのです!」


「僕の誕生日……アクアマリンか」


「いいじゃない!カーターと一緒に作っちゃいなさいよ!」


「うーーん……それもアリか」


「なら、その事も紹介状に書いておこう……ちょっと時間をもらうぞ」


 部屋を後にするカリストロさん。紹介状を受け取ったら、すぐに向かう事になるだろう。


「これで薫もプレゼントの準備が出来るってことだな」


「話が早すぎるけどね……」


「……ねえ。アクアマリンっていつの誕生石なの?」


「え?」


「そもそも、薫と知り合って一年経つけど……もう30歳ってありえないわよね?」


「ああ……それは……」


 誕生日……子供の頃からそれを言うと、皆が揶揄ってくるので言いたくないのだが……。


「何?言いにくいの?」


「……3月3日なんだ」


「薫の誕生日って来月なのです?しかも……」


「レイス。それ以上は言わないで……」


「……分かったのです。女の子の健やかな成長を祝うひな祭りがある日とは言わないのです!」


「全部言ったよね!?」


「薫……祝ってやるぞ。女性として」


「もう、女性として認めなさいよ」


「違うから!!」


 子供の頃に友達から言われた事と全く同じ揶揄い方をする皆に対して、僕は領主様の家で大きな声を上げてしまうのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―紹介状を受け取り後「アリッシュ領内・宝石店」―


「どうぞ、ご覧ください」


 カリストロさんから紹介状を受け取った僕たちは、カリストロさんに薦められた宝石店にやって来た。今は従業員がトレイに乗せて持ってきた宝石たちを見ている。小さい物から大きい物まで…………。


「デカい!?」


 大きい物のデカさにびっくりする僕。まさか、手のひらサイズの宝石が来るとは思わなかった。


「この位の宝石なら日常茶飯事ですよ?ここのサイズとかは良く採れますし……」


 店のオーナーが差す宝石、大粒と言っても過言ではないサイズのアクアマリンだった。


「……ちなみにこれのお値段は?」


「こちらなら銀貨10枚ほどですね」


「安い!安すぎるって!せめて金貨10枚じゃないと!!え。これがこっちの宝石の値段なの!?」


「勇者様。そんなに驚かれてどうされましたか?」


「それなら私が答えるのです。地球ならこのサイズの宝石は高額で取引されるのです」


「そうでしたか……!それならテーブルの天板ように加工した特大サイズの物もあるのですが……どうです?見ていきませんか?お値段は金貨10枚からですが」


「安いですから……本当にそれ……」


 宝石で出来たテーブルって、もはや娯楽品でしかないだろう。ここは買っておいて、領事館かクロノスに飾っておくべきだろうか……うん?


「それってすぐに買えるんですか?」


「え?薫……?」


「はい。もちろん!このサイズだとなかなか買う方もいらっしゃらないですから……」


「それじゃあ、一つ。ちなみに宝石の種類は?」


「ルビーです。上に置いたりしますから、一番硬い石で出来ています。形の違う物をいくつかご用意しますので、お気に召した物をご購入していただければ……」


「それじゃあ、それで……」


「かしこまりました。すぐにご用意します」


 店のオーナーが後ろにいた従業員に指示して、ルビーの天板を持って来るように指示をしている。


「おい。目的が違うだろう?」


「うん。分かってる。これは少し違う理由だから……」


 とりあえず、ルビーで出来た天板を一つ買っておこう。これだけのインパクトのある品……絶対に役に立つだろう。


「ただいま従業員に持ってこさせますので、その間に当初のご予定でした宝石の方をどうぞご覧になって下さい」


「はい」


 この後、様々なサイズの宝石を購入した僕たち。今回だけで僕は金貨を20枚も使用するのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―お昼頃「アリッシュ領内・商業地区」―


「ハート形や球体……色々な物が手に入ってよかったね」


「ああ」


「キレイなのです♪」


「そうね♪」


 レイスとサキの二人も欲しい宝石を手に入れて満足していた。


「これなら、ドルグ達も納得してくれるだろう」


「そうだね」


 これで、必要な物を買い揃えることが出来た。後は……。


「きゃーーーー!!」


「待てーー!!」


 僕たちが通りを歩いていると、誰かの叫び声と制止を呼びかける声……。


「何かしら?」


「さあ……?」


 僕たちは声のする方へ振り向いて見ると、この街の衛兵らしき人達が何かを追いかけてこちらへと走って来る。


「げ!?」


「あ!」


 衛兵が追いかけているその何かに見覚えがあった僕とレイスは変な声を出してしまった。


「どけどけ!こんなところで……!」


「兄さん!どこへ逃げるんですか!?」


「知らん!とりあえず今は……!!」


 衛兵が追いかけている何か……それは、あの河豚獣人と腹黒元セバスチャンだった。


「どうやら脱走した罪人らしいな……」


「うん……そうだね……」


 カーターの言葉に軽く返事をした僕は鵺を籠手にして、指を鳴らして準備を整える。


「薫……やるのです?」


「うん」


「手伝った方がいい?」


「いらない……とりあえずケリを付けておくよ」


 僕とレイスは奴らの進行方向を遮るような位置に立ち塞ぐ。


「そこのアマ!どけ……うん?」


「兄さん!どうした……んん?」


 脱走兄弟が立ちふさがる僕たちを見て何かに気付く。すぐに気付かないのは、しょうがないだろう。何せ、あの時は女装中で髪もウィックを付けてロングヘアーにしてたのだから。


「君たち……」


 そう言って、僕を籠手を装備した腕を脱走兄弟が見えるように前に出す。


「懲りていないようだね?」


「「げ!!勇者!!」」


 脱走兄弟が叫ぶと同時に、奴らの上に飛び……凝縮した斥力が働いている腕を下に振り下ろす。


「獣王撃ーー!!」


 ゴォオオオン!!と凄まじい音と共に脱走兄弟の二人が石畳の地面にめり込む。これなら逃げる事はもう出来ないだろう。


「痴漢、暴漢……死すべし……」


「セバスチャンのあの時の言葉……まだ、根に持っているのですね……というより兄は完全にとばっちりなのです」


「国家転覆罪で捕まったんだし、気にしないの」


 そこに駆けつけた衛兵さんたち。彼らは僕等にお礼を言って、少しだけ事情を話してくれた後、脱走兄弟を連行していった。


「護送中に逃げたんだって」


「そうか……」


「で、知り合いなの?」


「ほら。秋の抜き打ち検査で、僕たちが護衛として一緒に来たのを覚えているかな?あの時なんだけど……」


 僕はカーターとサキに約半年前の出来事について説明しつつ、事件の騒ぎで集まっていた野次馬の視線が痛いその場を、僕たちは足早に去るのであった。

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