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296話 記念日に向けて

前回のあらすじ「おめでた」

―バレンタインまで後2日「カフェひだまり・厨房」―


「それでは……さっそく作っていきましょうか!」


「「はーーい!」」


 昌さんの指導の元、バレンタインのチョコづくりが始まりました。まずはチョコレートを細かく砕く事から始めます。


「あみさんと雪野さんも誰かに?」


「お二人みたいに、彼氏にあげるとかでは無いですけどね」


「私達は友チョコです。友達とチョコを交換し合うんです」


「それはそれで楽しそうですね」


「でも、お二人は彼氏さんを優先して下さいね」


「はい」


 お喋りをしながら、チョコづくりを進める私達。そして話題は昌さんのあの件になっていく。


「ご懐妊おめでとうございます」


「ありがとうユノちゃん」


「昌姉もお母さんか……」


「ええ。でも高齢出産だから少し心配ね。もう少しで41歳だし」


 そう言って、頬杖を突く昌さん。でも……。


「見た感じは全然高校生で通じる位に若いんですけど……むしろ、私達より若いと言われても文句が言えない気が……」


「あ、泉さんも同類ですからね?」


「え?酷くない?」


「成島家の一族の女性陣は不老の一族だと思ってるんで」


 同じことを考えていたあみさんと雪野さんのその意見に私は頷いて同意します。薫もあの見た目で30歳……。


「あれ?」


「どうしたのユノ」


「薫って今何歳ですか?そういえば30歳って言ってましたけど……一年経ちましたよね?だから31歳じゃ……?」


「そういえばそうですよね」


「薫兄……誕生日を言いたくないんだよね……だから、誤魔化すためにああ言ってるんだよね」


「そうそう。あの子は今年で32歳ね」


「それで……薫さんの誕生日っていつなんですか?」


「3月3日よ」


「ああ……なるほど」


「確かに薫さんならではの悩みですね……これは」


「どういうことですか?3月3日に何があるんですか?」


「3月3日はひな祭りがあるんです。女の子の健やかな成長を祝うイベントが」


「ふふ!なるほど……」


 笑いながら答える私。普通の人ならそこまで問題では無いのでしょうが、美人と言われる薫にとっては女性の証明の一つとして揶揄われてしまいますね。それは仕方がないでしょう。


「それで私が3月8日の女性の日が誕生日なの」


「お二人共、女の子が主役のイベントがある日が誕生日なんですね」


「いえ?3人よ……泉ちゃんは2月14日なの」


「へえー……面白いですね。って誕生日なんですか!?」


「うん。今度で25歳だよ」


「それじゃあ、誕生日のお祝いもしなくちゃいけないですね!」


「ありがとう」


 あみさんと雪野さんの言葉にお礼をいう泉。私も何かプレゼントを用意しないと……それにしても薫の誕生日は3月3日か……忘れないようにしないと。


「……そういえば薫さんで思い出したんですが、レイスさん来ないんですか?興味津々でチョコレート作りに来ると思っていたのですが」


「ああ……薫がグージャンパマで用事があるからって、そちらに一緒に行きましたよ」


「そうか……来れないのは残念ですね」


「それじゃあ、レイスちゃんの分も美味しいチョコレートを作りましょうか」


「「「「はーーい!」」」」


 皆が昌さんの意見に賛成する。この後、皆がそれぞれ思い思いのチョコレートスイーツを作っていくのでした。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―それより少し前「カーター邸宅・応接室」―


「薫……」


「……カーター」


 机越しに座っていたカーターが立ち上がって僕の両肩を掴み、その整った顔を僕の顔に近づけてくる。その眼差しは僕だけを見ていて、その表情はいつにも無く真剣である。本来なら止めるはずである互いのパートナーである精霊は何も言わずに遠くからワクワクした様子で見ている。カーターに好意的な女性だったなら、これほど嬉しい展開は無いだろう……まあ、男の僕には関係ないが。


「カーター……キモい」


「おい!俺は真剣なんだぞ!?」


「いや、意中の相手とかじゃない人が顔近づけて来たら嫌だって……それで、どうするのか決まったの?」


「そ、それが……まだ……」


「決まらなくて、僕に助けを呼んだってことか……」


「ああ……それでアドバイスをくれないか……泉が喜ぶ物が何なのかを……!」


「はあ~……全くもう……」


 ハリルさんたちからカーターが呼んでいると言われて来たのだが……その内容は泉の誕生日プレゼントだった。


「もう明後日だよ?プレゼントの候補とか無いの?」


「最初は珍しい生地とかをプレゼントしようかと思ったんだが……何か違う気がしてな」


「ああ……言われるとそうだね」


 確かに衣服を作っている泉なら、それでも大喜びするだろう。しかし、祝うという意味では少々違う気がしてならない。


「私はそれなら宝石を提案したのよ。あっちの世界では高値が付く宝石があるんでしょう?」


「その考えはどうだろうと、俺は思うんだが……」


「金銭で釣るか……」


「何か嫌だな……それ」


「冗談だよ。恋人からもらったなら宝石付きのジュエリーアクセサリーもアリだと思うし……誕生石ならよりいいかも」


「誕生石?」


「地球では月ごとに宝石が当てはめれていて、自分が生まれた月の宝石を身に付けると、幸せになるってものなんだ。泉の誕生日は2月だからアメシストかな。紫色の綺麗な宝石で、宝石言葉は誠実」


「へえー……そんなのがあるんだな。となると俺の場合は?」


「カーターは9月になるから……サファイアだね。こちらは青色の宝石で慈愛、それと同じく誠実」


「お揃いね」


 宝石言葉が一致したことをからかうサキ。実に悪い笑顔を浮かべている。


「からかうな……それで、それらの宝石はどんな物なんだ?」


「アメシストは紫色の宝石、サファイアは青色の宝石だよ」


「紫色の宝石と青色の宝石か……」


「カーター……宝石にする?」


「うーーん……いいのか?」


 そう言って、腕組しながら考えるカーター。時間が無いのだからさっさと決めて欲しい。


「文句は出ないんじゃないかな……それで、どうする?」


「そうしたら、その二つを使ったアクセサリーはどうだろうか?」


「いいかもしれないのです。泉もきっと喜ぶのです」


「だね」


「そうか……そうしたら」


 この後は彫金師を探して、その人に頼めば……。


「宝石を取りに行くか!」


「なんで、そこからなの!?というより明後日だよ!?」


 僕は今から宝石を取りに行こうとするカーターに思いっきりツッコミを入れる。時間が無いのだから省ける手間は省くべきである。


「今日中に宝石を取りにいけば間に合うぞ……もしかして、そちらの彫金師ってそこまで早くないのか?」


「普通なら2週間以上……下手すると3ケ月はかかるよ?」


「なるほどな……まあ、ドルグ達に頼めばあっという間に作ってくれるはずだからな。問題無い」


「あ、それなら……って、ドルグさんたちって王様に仕えているよね!?それなのに私用を頼んでいいの!?忙しいんじゃないの!?」


「普通は色々許可を取ったりしないといけないんだが……この件ではいらないんだ」


「いらない?」


「俺が泉と結婚することで、他の国より有利な立場になるからな……俺と泉の関係が良好になるなら、許可を取らなくてもいいと言われている。だからこんな無茶が通るんだ」


「無茶は自覚してるんだね……でも、ドルグさんたちが……」


「そんな話はいいからさっさと取って来てくれないかい?作る時間がなくなってしまうよ!」


「だな。さっさと行ってこい!」


 すると、いきなり応接室の扉を開けて入って来たドルグさんとメメ。噂をすれば何とやらと言うが、いくら何でもこれは早すぎる。


「……なんで二人がカーターの屋敷にいるの?」


「扉の調整が終わってな。その報告に来たんじゃ。馬小屋にあるクロノス行きの魔法陣へと続く階段の鉄扉が使いづらいって、意見が多くてな……素材を軽くて丈夫なミスリル製にして、後は地球で使われているドアクローザーも付けて安全性も確保しておいたぞ」


「あ、それは助かります」


「お礼はいいから早く行ってこい。宝石を取りに行くなら、クロノスへ行ってそのままアリッシュで探せばいいじゃろう」


「ああ……あの鉱山ってたまに宝石が取れるって聞いてたけど……カーターが満足するような物があるの?」


「そこは行ってみてだな。無かったら……」


「無かったら?」


「王都で購入だな」


「それなら購入しようよ!?」


「真心は大切だろう?」


「時と場合を考えようよ!!」


「薫。諦めていくのです。というより、早く行かないと本当に間に合わなくなるのです」


「そうね」


 サキとレイスが応接室の扉へと向かって飛び始める。


「さあ!いくぞ!!」


 カーターも二人の後に続き、三人が部屋を出て行ってしまった。


「……これ僕が行く必要ある?」


「ないだろうね……まあ、行ってやんなよ!」


「お前さんも行くと、安心だしな」


 二人にそう言われて、僕は注がれていたお茶を飲み干してから、渋々三人の後を追いかけるのであった。


―クエスト「バレンタインに送る誕生石」―

内容:泉の誕生日が明後日に迫っています!泉が喜ぶように、宝石を手に入れて、素晴らしいジュエリーアクセサリーを用意しましょう!なお、余剰分を地球で売ってはいけません!

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