表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
296/502

295話 それぞれの物語

前回のあらすじ「夕暮れの学校での禁断の逢瀬」

―学校でのイベントから2日後の夜「泉宅・寝室」ユノ視点―


「これは……私の予想を上回る展開だったわ……」


「壁ドンからの抱き締めッスか……」


「私もこれには驚きました……」


 カメラで撮られた映像を見ている3人に私はココアを飲みながら答えます。2日前に学校であった薫と私にあった出来事……今、思い出しても頬が赤くなるのが分かります。


「怖かった?壁ドンって実際にやられると怖いし、不快感を感じることが多いって聞いたんだけど……」


「恐らく普通はそうなのですが……薫だと不安とドキドキが混ざり合った感じでしたね。その後、抱き締められた後に耳元で本気って言われた時には……もう……!!」


「うわ!?頬が一気に真っ赤に……!!」


「今、思い出してもドキドキが止まらないです……!!」


「それは良かったッスね」


 ニヤニヤしながら私を見るフィーロ。そんな顔で私を見ないで欲しいです……。


「でも……どうして薫はあんな行動に出たのでしょうか……?近頃の薫は大胆な事が多い気がします」


「年明けてから、そんな風になった気がするのです」


「レイスも詳しくは分からないのね……」


「うーーん……思いつかないのです」


 薫のパートナーとして、いつも一緒にいるレイスが分からないなんて……それ以外に薫について良く知っている人となると……。


「それなら薫のご両親かお姉さんなら分かるでしょうか?もしくは親友の直哉さんとか……」


「どうだろう……晶姉とかならもしかしたら……明日、ひだまりで訊いてみようか?」


「……いいのでしょうか。何かズルいことをしている気がして仕方ないのですが」


「かといって、モヤモヤしているのも嫌なんでしょ?」


「まあ……はい」


「それなら明日、聞きに行くッスよ!ということで、ゲーム大会を始めるッス!」


「なのです。ここで考えても埒が明かないのです……今は女子会を楽しむのです!」


 お二人がそう言って、コントローラーに手を掛けていたので、泉と私も考えるのを一旦止めて、ゲームに集中するのでした。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―次の日の朝「カフェひだまり・店内」ユノ視点―


「分からないわね……」


 次の日の朝、私達は朝食も兼ねて、薫のお姉さんである晶さんに会いに来ました。料理を待っている間に訊いてみましたが……晶さんでも分からないようです。


「でも、元旦の時から様子が変わった気がしたわね。ねえ、武人さん?」


「うん……?ああ。そうだな。確かお前さんたちが揶揄って、それを返り討ちにしていたな」


 調理の手を動かしながら答えてくれるマスターさん。フライパンで炒めていた料理をお皿に載せていく。


「ほい。ひだまり特製のモーニングセットだ。冷めないうちにどうぞ」


 マスターさんが私達の前に料理を出していく。具だくさんのコンソメスープとトーストされたパンにバター。大皿にはサラダとスクランブルエッグにベーコンとウィンナーがキレイに盛り付けられている。


「いただきまーす!」


「美味しいのです!」


「それは良かった……ジャムがいるなら言ってくれ、イチゴとブルーベリーしかないがな」


 すると、マスターさんは自分と晶さんの分も用意して、適当な席に座ってお二人も朝食を食べ始めました。


「ユノ。冷めるッスよ?」


「あ……はい。それでは……」


 私も皆から遅れて朝食を取り始めます。グージャンパマでは今だに味わうことが出来ないこれらの料理。王族とはいえども、これらの美食にはちょっぴり贅沢な気分になります。


「という事は……やっぱりその頃から変わったのかな?」


 泉がサラダを口にしながら、話の続きをします。


「そうね。それで間違いないと思うけど……元旦の前日とか何かあったかしら?」


「うーん……あったといえばあったよね?」


「クリスマスパーティーですよね」


「うん?クリスマスパーティー?」


「うん。あっちにクリスマスの習慣が無いから……だったら、クリスマスを作っちゃえと思ってやってみました!」


「楽しかったのです!」


「美味しかったッスね!」


 フィーロとレイスがバターをたっぷり塗ったパンを美味しそうに食べながら、あの時の事を思い出して話していますが……器用に食べながら涎を垂らしています。もしかして、ご飯を食べているのにケーキも食べたくなったのでしょうか?


「それで。その時に何かあったかしら?」


「無いかな……」


「そういえば……薫。王様に呼ばれて二人で別室で何か話していたのです」


「それでしたら今年の予定について話していたそうです。薫がそう言ってましたから」


「王様と今年の予定か……」


 マスターさんがカップに入ったコーヒーを飲みながら、何か考えています。


「何か分かった?」


「いや?今年の予定について話しただけじゃ……な」


「それもそうか……残念」


「まあ……あまり深く気にしなくてもいいんじゃないか?それよりお前さん達にはあのイベントが待ってるだろう?」


「イベント……豆まきかな?」


「泉ちゃん。とぼけちゃダメよ?カーターさんに愛情たっぷりのチョコを送るんでしょう?」


「いや!?でも……ほら。バイオテロの影響でチョコレートって手に入りにくく……」


「あるから安心しろ。なんせ昌がはりきって用意してるからな」


「ということで、頑張りましょうね?」


「は、はい……」


「私もですか?」


「もちろん。もしかして、グイグイ来られて薫の事が嫌いになっちゃた?」


「いいえ!そんな事はありません!」


「ふふ!それじゃあ、一緒に作りましょうか……薫の好きなチョコレートレシピを教えてあげるわ」


「ありがとうございます」


 その後、朝食を終えた私はお城へ戻るために、泉たちと一緒に店を後にするのでした。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―ユノたちが帰ってからしばらくして「カフェひだまり・店内」マスター視点―


「ねえ武人さん?」


「うん……?何だ晶?」


 朝食で使用した食器を洗いながら、朝の仕込み作業をしている俺に何か訊こうとする晶。


「さっきの話だけど、武人さんは何か心当たりでもあるんじゃないかしら?」


「どうしてそう思うんだ?」


「武人さん……おもむろに話を変えたの気付いているんだからね」


「そうか……」


 それとなく心当たりがあったが、俺の勘であって、確かな証拠などは無い。仮にもしそれが当たっていても、それは薫の口から話すべきだろう。


「それでどうなの?」


「今年の予定……そしてユノの父さんである王様とのさしでの話。奥さんの父親と話ってなったら……」


「あら♪もしかして……」


「結婚についてだろうな。まさか、ヘルメスと魔王の件が終わるまで結婚を待ってくれ!なんてわけにはいかないだろうしな……っていうのが俺の考えだ」


「あらあら♪いつ、結婚するのかしら?」


「さあな……まあ、今すぐっていう訳では無いだろう。何せユノはまだ学生だしな」


「そうか……そうしたら、3人で出席できたらいいわね」


「そうだな……うん?3人?」


「ええ……」


 食器の洗い物を終えた晶が自分のお腹を押さえる。


「え?まさか……」


「生理が来ないから、もしかしてとは思っていたけど……検査薬の結果は陽性だったわ」


「マジか!!って!働いて大丈夫なのか?こんな時はあまり動かない方が……!?」


「あらあら!気が早いわよ……でも、私もいよいよお母さんになるのね……」


「そ、そうか……俺も父親になるのか……」


「ええ……」


「となれば……今から準備をしていかないとな。病院には行っていないのか?」


「バイオテロで行きにくい状態だったから……」


「そうか……でも、早めに行かないといけないだろうし……曲直瀬医師にでも相談してみるか?もしかしたら、最寄りのいい病院を教えてくれるかもしれないしな」


「そうね。薫の入院の時にもかなりお世話になったものね……」


「今日の仕事の合間に一度、連絡を入れてみようか。善は急げってな!」


「ふふ!そうね」


「さてと!仕事も頑張らねえとな!!」


 突然の晶の告白に驚いた俺だが、その嬉しい知らせに俺は喜ばずにはいられなかったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ