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288話 ドラゴンとの会談

前回のあらすじ「エネルギーを補給中」

―その日のお昼「国会議事堂前」菱川総理視点―


「総理。ここで待ち合わせですか?」


「ああ。何せドラゴンが3体も来るんだ。広い場所がいいだろう。それに……門の向こうで取材している報道陣に見せつけるのには丁度いいだろう」


 薫君からの連絡を受けて、もう少しで到着するとの事だったので議事堂前で待つ俺達。しかし、あそこにいる報道陣ときたら、マスクなどでウイルス対策をしているとはいえ、カメラを構えて密集しているのは勘弁して欲しいのだが……。俺がそんな事を思っていると、その報道陣が空に指を差したりして騒がしくなってきた。空を見ると、大きい3つの影が見える。それはどんどん大きくなっていき、その近くを3つの小さい影が飛んでいるのも分かる。


「来たか……」


 相手は空一面を炎で覆える存在……失礼が無いようにとネクタイを改めて締め直すのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―同刻「国会議事堂近く」―


「ここか」


「はい……って、いうことでここで下りるぞ」


「わざわざ仮面で顔を隠して、さらに口調を変えないければいけないとは……難儀だな」


 ゴルドさんが、妖狸として下りるための準備をする僕の様子を面倒くさそうに見ている。


「妖狸。それっていつまで続けるのです?」


「そうだな……今度、国会に招かれた時はどうするべきか悩んでいたりする」


「そうしたら、戻しちゃえば?一人称だけは私にしてさ」


「その方がいいかな?」


「戦いの時はさっきの口調にして、普段はこっちみたいに使い分けて……」


「そして新たな黒歴史の完成ッスね」


 皆の提案を最後にぶち壊すフィーロ。その余計な口を泉が頬を引っ張って伸ばそうとする。


「……やはり変えずにこのままだな」


 僕はそう言って妖狸としての口調に戻す。


「妾たちが先に下りる。その付近に皆も下りるように」


 シエルに乗った僕たちが先に議事堂前に下りる。柵の外にいるマスコミにも見えるような位置に。


「妖狸が来ました!そ、それに……ドラゴン?」


「ドラゴンです!ドラゴンが……!!」


 僕たちの後に続いて皆が下りる。ゴルドさんには人の姿を見られてしまうと、気軽にこちらでご飯を食べに行けなくなるからという理由からドラゴンの姿のままでいてもらう事にした。


「ふむ。やはり珍しいな……見てて飽きない。しかし……我らの姿を見て、かなり驚いているな……」


「こちらでは精霊もドラゴンも……そしてユニコーンやトゥーナカイも全て空想上の生き物ッスよ」


「魔法も他の種族もいない世界か……こちらでは、それが本当に当たり前なのだな」


「当たり前だった……ですね。私達はそっちを知ってしまった側ですし」


「そうだったな」


「……それで兄上と会談するお相手である菱川総理はどちらに?」


「議事堂……あの建物の前で待ってるそうだ。いや……こっちに来てるな」


 議事堂からこちらに歩いてくる集団。その先頭に菱川総理がいた。僕らもそれぞれが騎乗している聖獣から下り、グージャンパマで一般的な敬礼の型である右手を胸に当てるポーズを取る。


「護衛任務ご苦労だった面妖の民の諸君」


「この度、連盟に加盟する竜人の3名をお連れした。こちらが代表のゴルド殿。次に財務管理担当のペクニア殿に秘書のハク殿だ。あちらの連盟の代表には既に挨拶を済ませている」


「報告ご苦労。本日はこのようにお越しいただきありがとうございます。現在、我が国ではバイオテロ発生中のため、大したおもてなしが出来ない事を深くお詫び申し上げます」


「こちらが無理を承知で頼んだことだ。そこは気にしないでもらっていい。それに今回の目的は下界との繋がりを絶っていた我らが見聞を広げるために、このような我儘を申し付けたのだからな。むしろ、そちらに何かしらの要望があれば我らは応えるつもりだが」


「要望……ですか?」


「うむ。例えば今回の事件とかだな。薬の精製には我らの協力が必要なのだろう?その協力を惜しまないつもりだ」


「ありがとうございます。それで……」


 菱川総理たちとドラゴンたちの会話を静かに聴く僕たち。今回の僕たちは両者を繋げるパイプ役である。そして、この会談を邪魔する奴がいないかの見張り役でもある。


「周囲に不審な人はいなそうだぜ」


「そうですね……妖狸。正門で怪しい動きをしている人はいますか?」


「……見えている範囲ではいないな。マスコミに紛れてここを監視している奴がいないかと思っていたが……ウイルスが蔓延るこの場所からはすでに撤退しているのかもしれない」


「私達も気を付けないといけないのです。ウイルスで私達が倒れたらお終いなのです」


 レイスの言う通りで僕たちが一番気を付けなければいけない。特に間違ってもグージャンパマには持ち込まないようにしなければ……。


氷鬼(ひょうき)さん達は大丈夫なんですか?」


 シーエさんの変装時のコードネームであるだろう氷鬼(ひょうき)を呼ぶ泉。スパイダーとの戦いの時と同じ白い衣装に青い鬼の仮面を付けているのだが……その時、どう呼べばいいのか聞いていなかったので、ここで分かって丁度良かった。


「問題無いと言い切れませんが……帰る前にしっかり検査するので安心して下さい」


「そうだぜ」


「皆さん!今、ご覧になられているでしょうか!?な、何と総理がドラゴンと会談をしています!」


「この会談!我々は夢でも見ているのでしょうか!?」


 正門ではマスコミが中継をしている。恐らく、大半が予定の無い臨時の生中継だろう。そして、この中継を見ている人々の中にはフェイクニュースだと思っている人もいるだろうな……。


「妖狸!」


 先ほどから話をしていた菱川総理とゴルドさんが、こちらに近寄って来る。


「話は聞いた。彼らとの友好関係を築くためにも、今度の国会での説明ではこの事も話して欲しい。それと……薬の試作品を持ってきたという話をゴルド氏から聞いたのだが」


「ああ」


 僕はシエルの体に括り付けていた抗ウイルス薬が入っているケースを菱川総理に手渡す。何でそんな運び方をしているかというと、アイテムボックスに入れてしまうと薬が変異してしまう恐れがあるからだ。そこでこんな方法でケースを運んできた。


「あちらに感染者を出す訳にはいかないので、臨床試験はしていないとのことだ。それだから事前の報告通り確認はそちらで頼む」


「分かった。了承を得られた患者から優先で投薬してみる。これが成功した場合は追加で製造を頼みたいのだが……」


「分かってる。いつでも大量生産が可能な状態だから安心しろ。それとお代だが……今度の説明時のフォローを頼む」


「お安い御用だ。しかし、その施設の管理者である君なら大金を吹っ掛けられるというのに……」


「これ以外の仕事で稼がせてもらってるからな。これ以上を求めるのは金の亡者と変わらん」


「そうか……助かる」


 これで、この薬がしっかり効果を発揮すれば、このバイオテロは一応の解決にはなる。でも、やっぱりここは製造施設を壊し、実行犯たちを捕えなければ再び起きる脅威を防ぐことにはならない。


「……妖狸さん。少しお尋ねしたいことが」


「ペクニア……なんだ?」


 ペクニアさんに尋ねられて、そちらに顔を向けるとペクニアさんはどこかを見ていた。僕はその方向を見るが何の変哲もない景色が広がっているだけだ。


「この世界に魔物や魔族が来ていますか?」


「一度だけ。しかし、それは我が祖母の手によって防がれている。あっても骸だけだ」


「……私が見ている方向に、私が戦った魔族の女と同じ雰囲気を感じるのです。しかも移動していますね」


「何……?菱川総理。あの方角に黒の魔石を保管している施設などはあるのか?」


「無いはずだ。あれらは君達が知っている場所で保管している。東京湾とかあるあちら側には無いはずだ……距離は分かるか?」


「結構遠いですね……兄上はどうです?」


「うむ……」


 ゴルドさんがペクニアさんが向いている方向を向いて、その気配を探る。


「愚弟の言う通りだな。この世界には魔石を生み出す魔獣がいないのは確かなのだな?」


「そんなのがいたら大発見だ……つまり、この先にいるのは……」


 他に黒い魔石をこの世界で使う奴らなんて、ヘルメスしかいない。


「やれやれ……どうやらマスターの言う通り、一暴れすることになるのか」


「ですね……捕らえられるなら、すぐに捕えた方が良さそうですね」


「待て!行くのか……?」


 菱川総理が今回の首謀者達を捕まえようとする僕たちを制止する。


「ここで奴らを捕えないと、この事件の根本的な解決にはならない。だから……」


「私も今回は妖狸の意見に賛成。友達の分までぶん殴ってやるんだから!」


「ならば我らも付いていくとしよう。その方が愚弟の罪滅ぼしになるからな」


「はい!今度はしくじりません!」


 ゴルドさんたちも手伝ってくれるとは……。もはや過剰戦力かもしれない。


「分かりました……すぐに防衛省から自衛隊に連絡しろ!今回の首謀者達が乗る船らしき物を発見!今すぐに拿捕せよ!とな」


「はい!そうしたら緊急対策室の設置もします!」


「ああ。それと発見次第、マスコミに公表するからその手筈も整えておいてくれ……妖狸」


「……終わらせてくる」


「頼んだ。それと自衛隊が出発を整えてから飛び立ってくれ。流石にドラゴンの息吹で消し飛んではいけないからな」


「分かってる」


 菱川総理から頼まれた僕たちは戦闘の準備をする。今回は海上、そして船に侵入すれば狭い通路での戦闘になるだろう。


「妖狐とフィーロ、ドラゴンたちは後方支援。中には妾たちが侵入する」


「愚弟も入れろ。こいつの手加減なら人を殺める事は無いだろう」


「兄上なら、手加減しても妖狸レベル以下なら壊してしまうでしょうね……代わりに私が……」


「という訳だが……いいな?」


「分かった。くれぐれも手加減をしてくれ。それと狭い船内の通路では竜人にならないと戦えないが……」


「それはいい手加減になりそうですね」


 ペクニアさんが自身の拳を合わせてやる気を見せる。しかし僕としてはペクニアさんを船内で戦わせるつもりは無い。


「だから、ペクニアには船上の敵の制圧を頼みたい」


「私たちは船内いかなくていいの?」


「狭い通路で戦うからな。二人にとって戦いづらい状況になる。それなら広い空中から船上に出て来た奴らをぶっ飛ばして欲しい」


「うーーん……分かった」


「その方が戦いやすいッスもんね」


「妖狸は接近戦、妖狐は遠距離戦が得意なのです。臨機応変、適材適所なのです」


「レイスの言う通りだ。逃がさないように頼む」


「オッケー」


 そこに自衛隊の方々が準備が済んで、ヘリに乗った。という菱川総理から連絡を受けたので、ペクニアさんたちが感じた方向へと、僕たちは飛び立つのであった。

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