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280話 ペクニア戦

前回のあらすじ「マクベスの睨みつける!相手は怯む!」

―「ヴルガート山・山頂 高原地帯」―


「何かどんどん面倒ごとが増えて行ってる気がするわ」


「しかし、ここでドラゴンの王と関係を築けるのは俺達にとってプラスだ。今後の魔族との戦いにも協力してもらえるかもしれないしな」


「そうね」


 広々とした草原地帯でカシーさんとワブーがそんな話をしつつ、戦闘準備を整える。ゴルドさんの話を聞いた後、僕たちは戦いの場になる高原内にあるこの開けた場所にやってきた。周囲には噂を聞きつけたドラゴンたちが遠くからこちらを見ている。


「あのマクベスが戦ってくれたら、よかったッス……」


「力を使ったら、魔族の奴らに気付かれるかもしれないからね。仕方ないよ……それよりも、どう戦うかだね」


「前衛は薫兄達で、私達は後衛かな」


「それでいいと思う。ペクニアはゴールドドラゴン。その攻撃を防げるのは鵺の城壁ぐらいだしね」


「でも……耐えきれるのです?」


「……あまり期待できないかな」


 鵺は素材を使用して前よりは強化されている。が、相手はグージャンパマ最強の聖獣であるゴールドドラゴンである。レッドドラゴンでも苦戦した僕たちが勝てるかと言われたら難しい。


「薫さん」


 いつの間にこちらへと歩いて来る人影……マクベスだ。


「どうかしたの?」


「こちらを返しに来ました」


 そう言って、マクベスは貸していたМT-01を僕に返してくる。


「ありがとうございました。おかげでセラとゆっくり話せましたよ……それと、エーオースの詳しい位置について話しておいたのですぐに見つけられると思いますよ。そこには保管された飛空艇や武器がありますし、いざという時の避難場所にも使えるので、ぜひ使用して下さい」


「ありがとう。それで……やっぱり管理者は僕と泉の名前なの?」


「はい。管理者権限の譲渡に関しては、アンドロニカスとの件が終わるまではこのままにして下さい……戦いが終われば、あれらの施設の利用方法も変わるでしょうから」


「大きくは変わらないと思うけどね」


「そうかもしれませんね……それと、セラから聞いたのですが薫さんが持っているアンチマジックウェポンが変わっていると?」


「アンチマジック?……ああ、四葩の事か。今出すよ」


 僕はアイテムボックスから、魔族に絶大な効果を発揮する四葩を取り出す。マクベスはそれを見た途端に目を見開かせ、その武器を奪い取るような勢いで手に取る。


「馬鹿な……!どうして……ありえない……」


 四葩を持って、呟くマクベス。


「……薫兄のチート能力を理解したんだね。きっと」


「違うから。絶対それは無いから」


「はいはい……それで、何がありえないのかしら?」


 カシーさんが、僕たちの会話を無視してマクベスに驚いている理由を訊く。


「……皆さんはどこまでこの武器の話を聞いていますか」


「タンザナイトを使った武器で、魔石を体内に持った相手なら特攻効果が付く武器ッスよね」


「けれど、薫の持つ四葩は放つ光の段階で、周囲に影響を及ぼすと……」


「まあ、この二人が言った内容しか知らないな」


「そうですか……」


 皆の話を聞いて、何かを考え始めるマクベス。


「まず、最初に言いますと……これは我々が作れなかったアンチマジックウェポンです」


「作れなかった?」


「昔、我々はこれを量産してアンドロニカスとの戦いに挑むつもりだったのです。理論上は製作可能というのは分かっていたのですが、様々な素材を用いて色々なパターンで作ったのですが……結局は失敗しました。時間が無かった私達は不完全な武器を手に取り、あの頃は戦ったのです」


「ところが、その完成形が何故かここにあると……」


「はい。そして、その原因を作ったのが……」


「僕の持つ、もう一つの武器である鵺だね」


 僕は鵺をブレスレット状態から黒剣に変える。


「セラさんがこんな武器は見たことが無いって言ってたんだけど」


 そう話す僕から鵺を取り、先ほどの四葩と同じように観察するマクベス。


「これは一体……?」


「マクベスも知らない武器なのです?」


「え、ええ……この武器は地球では当たり前の物なのですか?」


「いや。こっちからしてもこれは異常だよ」


「そうですか……ありがとうございました。これらはお返しますね」


 マクベスから鵺と四葩を返してもらう。


「それで、薫さん達はペクニアにどうやって挑むおつもりですか?」


「それは……」


 僕は先ほど話していた事をマクベスに話す。


「そうしたら、その四葩をメインに使って下さい。恐らくですが、それならドラゴンのブレスさえも退ける力があると思います」


「そんな事が出来るの……?」


「ドラゴンのブレス攻撃は魔力をふんだんに使っています。そして、その四葩は魔力の多い者に対しては圧倒的な強さを誇る武器です。きっと、皆さんの力になります」


「……分かった。僕たちもどう戦おうか悩んでいたんだよね。それなら、その方法でいくよ。皆もいいよね?」


 僕がそう問いかけると、皆が頷いて返事をする。


「頑張ってね薫兄!その約束された勝利の剣で……!」


「それって、周囲を吹き飛ばすからダメ……まあ、黒装雷霆を使うとそうなるのか……」


「死なせちゃダメよ。それがゴルドとの約束であり、そして計画なのだから」


「分かってる……それで皆の準備はいいかな?お相手さんが来たようだよ……」


 バサッ……バサッ……と羽ばたく音が、徐々に大きくなっていく。そして……ペクニアがこの草原地帯に降り立った。


「ふふふ……逃げずにやって来たか」


「まあね……それで、そちらの準備はいいのかい?」


「ふん。生意気だな……こちらは問題無い」


「そう……後で多勢に無勢とか言わないでよね?」


「……つくづく生意気だな。そっちこそ……死んで後悔するなよ?」


 ドラゴン姿で下卑た笑みを浮かべるペクニア。果たして、これが彼の本性なのかどうか……。


「両者、準備は出来たようだな」


 そこにゴルドさんがハクさんとキリュウさんを連れてやって来た。


「これでお前が勝ったら、こいつらにはすぐにここを去ってもらう。こいつらが勝ったら、ここに滞在しても、お前は文句を言わない……いいな?」


「ああ!と言っても去る必要は無いがな……」


「甘く見ていると痛い目を見るぞ……」


 そう言って、ゴルドさんは僕の手に持つ四葩を見る。ゴルドさんにはこの四葩がヤバい物だと分かっているようだ。もしくはもっと前、初めて会った時からアイテムボックスに入っていたこれに気付いていたのかもしれない。だからこそこんな依頼を頼んできたのだろう。


「では、互いに少し離れろ……俺が合図したら決闘の開始だ」


 マクベスがゴルドさんの方に移動して、戦いの場から離れる。残った僕たちはゴルドさんの言う通りにペクニアから少し離れた場所に移動する。ペクニアも移動し終わったのをゴルドさんが確認する。周囲のドラゴンたちも鳴くのを止めて静かに見守っている。


「ではいくぞ……はじめ!!」


「死ね!」


 開始早々、物騒な事を言って、いきなり口から炎を吐くペクニア。こちらは事前に防御魔法を施しているが、それでもまともに喰らったらひとたまりも無いだろう。


「うわ!!?ズルい!!」


 泉のそんな言葉が後ろから聞こえる……そんな中で僕は手に持っていた四葩を上に構えて、静かに振り下ろす。すると、炎のブレスは僕たちの左右に分かれて通り過ぎていく。


「……凄いのです!!」


「魔法を切る剣なのね……」


 皆も今、起きたことに驚いている。いきなりで咄嗟にやってみたが……まさかこうなるとは。


「な、何だと!?」


「レイス!いくよ!」


「オッケーなのです!」


 驚いているペクニア。僕はその隙を逃がさずに、四葩の刀身に風を纏わせる。


「鎌鼬!!」


 素早く四葩を振り抜くと、青と緑の混ざった斬撃が飛んでいき、ペクニアの体に切り傷をつける。


「どういうことだ……!?ゴールドドラゴンの俺に傷を!?」


 ドラゴンの鱗は硬く。高火力の攻撃じゃないと通じないはずなのだが……四葩は中級魔法クラスでいとも簡単に、ゴールドドラゴンに切り傷をつけた。


「……お前は一体?」


「ただの一般男性だけど?」


「……」


 おどけた僕に対して悪態を付かずに、静かに臨戦態勢を取るペクニア。


「(……これが本当に操られている状態なのです?)」


「(ゴルドさんの言ったことは間違っていないと思うよ。舐めていた態度を取っていたのに、この四葩の危険性に気付いた途端に態度を変えたくらいだしね)」


 僕は小声でレイスに言葉をそう返したのだが、そう。実はこのペクニアというゴールドドラゴンは何者かによって精神操作系の魔法の影響を受けているとの事だった。そして……ゴルドさんからその精神操作を解いて欲しいというのを依頼されていた。


「……」


 静かにこちらを見るペクニア。僕たちも武器を構えて、すぐに迎え撃つ体勢を取る。


「……!!」


 突如、猛スピードでこちらに体当たりしてくるペクニア。


「城壁!」


「ウインド・シールド!!」


 僕たちはそれに対して、鵺の城壁に泉たちの風属性の防御魔法という2重の盾で防御する。ドン!!ともの凄い音を立てて、城壁を歪ませたがどうにか防ぐことに成功した。


「いくわよ!!」


 カシーさんのその言葉に反応して、今度は僕たちから攻撃を仕掛けるのであった。

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