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279話 ペクニア乱入!

前回のあらすじ「マクベス登場!」

―「竜の居城 ドラッヘンシュロス・聖堂内」―


「黄昏の庭園?」


「はい。施設の風景がそう見えるからと、アンジェがそう名付けました」


 透き通った少年の声で話をするマクベス。そしてその発言である疑問が解決した。


「そうか……おばあちゃんはここに来て、地球の情報を入力したんだね」


「そうです。アンジェがこちらに戻って来た時、セラには内緒でここに連れて来たんです。そして、そちらの地球が科学が発展した世界で、魔素で全てを解決する我々の世界より、はるかに高度な知識を持つ世界だと聞きました。そして自分が得た情報はきっと魔王との戦いに役立つ……そう話してましたよ」


「ほほう……俺がここの主になってから結構な年月が経っていると思うが、我が気付かぬとはな……どうやって行き来していた?」


「簡単ですよ……」


 パチン!と指を鳴らすマクベス。すると、マクベスの姿が一瞬にして消えた。


「え!どこ!?」


「消えたッス……」


 皆が辺りを見回しているが、僕は先ほどマクベスがいたところを見続けている。


「……薫さんは何かの特殊能力持ちですか?」


 パッ!と姿を現すマクベス。その場所は僕が視線を向けている場所だった。


「ううん。ドラゴンの持つ鋭い五感にも反応していなかったから、それだから移動していないと思っただけだよ。もし移動すれば足跡でゴルドさんは気付いていたんじゃないかな?」


「なるほどな……確かに我の耳にそのような音は聞こえなかった。まさかその場に立っていたとはな」


「ふふ……!本当にアンジェの子孫は面白い子達ですね!その能力は魔王であるアンドロニカスで役に立つはずです。彼もこの魔法を使ってくるはずです」


「その魔法を俺達が使う事は出来ないのか?」


「残念ですが……私達は兵器として生まれました。それだから、それが出来るように特殊な肌になっているだけです。アンジェの時は転移魔法陣を特別に用意しましたので」


 首を横に振りながら答えるマクベス。


「いや?それなら出来るかも……」


 その話の最中に泉がそう答える。


「どこかのマントみたく、羽織を作ってそれに仕込めば……」


「それは……出来るかもしれませんが、短時間しか効果は見込めないと思いますよ」


「そこは技術班の腕の見せ所よ……という訳でその技術を……」


 手をワキワキさせながら、マクベスに近寄るカシーさん。危険を察知したマクベスが僕の背中に隠れる。その姿はまるで怖い物に怯える子供である。


「何で僕を盾にするの?」


「この中で、何となく安心ですから……」


「……君自身返り討ちにできるよね?魔王であるアンドロニカスと戦ってたくらいだしさ」


「出来ますが……何ででしょう?あの人からただならぬ気配を感じるのです。戦うより逃げた方がいいような……」


「「「「ああ……」」」」


 そこにいる全員……何故かドラゴンの方々もマクベスのその意見に納得している。


「……酷くないかしら」


「そう思うなら、少しは反省しろ……それよりもだ。王様の要望であるその黄昏の庭園に俺達は入ってもいいか?」


 僕の服を掴んで離さないマクベスに質問するワブー。


「いいですよ。下手に周辺を荒らされたりすると大変ですし、ここにいるドラゴンの方々も口が堅そうですから……」


「ならば早速……と言いたいところだが、少し待て……面倒ごとが来た」


 行きたいと言ったゴルドさんが何かを察して止める。その視線の先はこのドラッヘンシュロスへの入り口……そこを乱暴に開けて誰かが入って来た。


「ちっ!小さい奴らが来たって聞いて来てみたら、本当にいるとはな……」


 大柄で筋肉隆々、そしていかにもガラの悪そうな金髪の黒肌の男。


「こんな奴らを、こんな場所に入れるとは何を考えてるんかね愚王はよ!」


「ふん!お前のような馬鹿には我の考えなど分からぬまい。この愚弟が」


「何だと!?」


 そのまま言い合いを始める二人。僕はこっそりとハクさんの近くに行って、入って来た男について質問を小声でする。


「(弟さんでいいですよね?)」


「(はい。あちらはペクニア様です。あのような粗暴な奴でして……昔は可愛かったのですが……)」


「(昔は?)」


「(昔は優しかったのですが……いつからかドラゴン以外の存在を侮るようになってきて……)」


「(なるほど……)」


「おい!そこのチビ!ハクと何を話してやがる!!」


 僕がハクさんと話していると、ペクニアがこちらに怒りをぶっつけてくる。


「うん?大した事は話していないけど?」


「あん!?何だその態度は……?」


「いや……そんな態度の人達を大勢見てるから……逆に冷静になれちゃうというか……」


 僕を女と見て、見下す輩は大勢見た。そして、そんな奴らと同じ臭いがするこのドラゴンに、怒るよりも先に呆れていたりする。


「チビのクセに生意気じゃねえか……あん?」


「いや……まあ……」


 どこか小者感を感じるペクニア。ゴールドドラゴンのはずなのだが、ゴルドさんと比べたらかなり弱い気がする。


「何だその目は……気に入らねえな……このアマが!」


「僕、男だけど……君のお兄さんはすぐに分かったのに」


「だからこそ愚弟なのだ。同じ上級ドラゴンのクセに、見た目だけで判断するとは……俺の代わりにリーダーになるには百年早いわ!!」


 ここぞというばかりに煽るゴルドさん。その顔を見ると悪い笑みを浮かべている。


「うるさい!そもそも、こんな見た目をしているこいつが悪い!」


 こちらに指を差して、怒るペクニア。いや……君のお兄さんが煽ってるんだけど?それに……。


「見た目で判断するのは二流のすること……常に戦いに身を置く者なら冷静に相手を分析出来ないと、足元をすくわれるよ」


「貴様~~!!」


 その剛腕で殴りかかるペクニア。僕がそれをかわそうとすると、先ほどから服を掴んで静かにしていたマクベスが片手を前に出し……何をやったのか分からないが、ペクニアを盛大にこけさせる。


「な、なんだ?」


 驚くペクニア。自分の足を触りながら周囲を見渡している。


「ねえ君?」


 マクベスが甘く優しい声でペクニアに声を掛ける。そして、ペクニアの視線がマクベスに向けられる。


「あん?何だテ……」


「これ以上やるなら……私が相手するよ」


 その瞬間、僕の額から頬へと汗が流れていく。マクベスのこの見た目と声に似合わない鋭い殺気がペクニアに向けられる。そしてその殺気に、自分に向けらていないはずなのに思わず僕は恐怖してしまった。


 その一瞬だけ、怖いくらいに静かになった聖堂内。その静寂をゴルドさんが破る。


「まあ、そこまで言うなら……どうだ?互いに戦ってみたらどうだ?」


 手合わせを提案するゴルドさん。真剣な表情で真面目に話をしている所からして、ふざけている訳では無いようだ。


「戦う……だと?」


「そうだ。この薫、それにそのマクベスはとやらは我には及ばないが、なかなかの強者と見える。ならば、ここはドラゴンの掟である強者に従うに沿って、どちらが強いかをハッキリさせるべきだろう」


「何を言ってるんだ!?俺がこいつらに負けると?」


「何だ?やりたくないのか?それともお前はこの小さき者達と戦って負けるのが怖いのか?」


「ハッ!負ける訳が無いだろう!!どこまでも馬鹿にしやがって!!いいだろう受けてやる!!」


「ならば、互いに準備がいるだろう。これより数刻、互いに準備時間をやる。準備が終わり次第、決闘場で決着を着ける……いいな?」


「いいぜ……ボコボコのぎたぎたにしてやるよ」


 どこぞのガキ大将が言いそうなセリフを言って、聖堂内を後にするペクニア。


「ふう……勝手に進めてすまなかったな。そこの小さき者が何をしでかすか分からなかったからな」


「同感です……皆、大丈夫?」


 マクベスの殺気に思わず、恐怖で黙り込んでしまった皆に声を掛ける。


「……」


「泉……大丈夫?」


 特に酷い状態である泉は頬を引っ張って確認する。


「……アッ!?いひゃい!!」


「気付いた?」


「あ!?えーと……!!」


 慌てて何が起きたのかを思い出そうとする泉。他の皆もそれぞれ息を整えたりして、落ち着かせようとしている。


(何かあったんですか!?)


 先ほどから繋ぎっぱなしだったМT-1から慌てたセラさんの声が聞こえる。


「マクベス!セラさんに説明して下さい!……いいですね!!」


「え?」


「い・い・で・す・ね……?」


「は、はい!」


 僕は圧を掛けて、マクベスにセラさんへの説明をしてもらう。その間に僕は皆に飲み物を渡したりして、落ち着かせようとする。


「しかし……まさかハクやキリュウも黙らせるとはな……」


「も、申し訳ありません……先ほどのアレは……」


 体を震わせながら答えるハクさん。その隣にいるキリュウさんは髭を擦りながら、マクベスを冷静に観察している。


「あれほどの殺気……この老いぼれだと少々きついですな……」


「ふん。そう言って冷静に見れるのは普通では無いがな……」


「……何でそう言って、僕に目線を向けるんですか?」


 皆の介抱をしながら、ゴルドさんにツッコむ。


「当然なのです!!ド素人の私達でも殺気を感じて恐怖したのですよ!!」


「レイスの言う通りっス!!アレって、漫画によくある殺気で人を殺すやつッスよ!!それなのに平然してるっておかしいッス!!」


「僕だって額から汗が出たからね?」


「それで済むのがおかしいわよ……私もそこそこ戦いの場に出てるけど、ここまで死を感じたのは初めてよ」


「だな……泉はよかったな。気絶できて」


「それって良かったことなの?戦闘中に気絶するって死亡フラグな気が……」


「気にする事は無いと思うぞ。この王である我も畏怖したしな……まあ、それに対して命令するこいつもなかなかの大物だな」


「だから……って、それよりも戦わないといけないんですか……弟さんと」


「お前も気付いているだろうが……アイツはゴールドドラゴンとしては弱い。だから勝つことも不可能では無いだろう。それに……アイツを上手くボコれば鱗も、お望みの牙も手に入るぞ?」


「……え。それなら生え変わって古くなった物でもいいよね薫兄?」


「恐らくだけど……無いんじゃないかな。生え変わるけど、それはあくまで自分が抜いた場合とかであって、自然に抜ける物じゃないんだと思うよ」


 ここに来る際の道中に抜けた鱗を集めるような場所があったのだが、そこに金、銀そして黒は無かったような気がする。恐らく、黒より下の下級ドラゴンは生え変わりを続けることで強くなり、それ以上はまた別の方法で強くなっていくのかもしれない。


「その通りだ。これなら我もわざわざ痛みに堪えながら抜く必要も無いしな。まさに一石二鳥だ」


「そんなお考えだったとは……」


 ハクさんが感心している。が、恐らく……。


「それだけの理由じゃないですよね?じゃなければ、わざわざ僕たちに弟さんのお相手をさせるなんて、ドラゴンの矜持からしてさせないだろうし……ということで、本当の理由をお訊かせてもらってもよろしいでしょうか」


「……くく!そうだ。もし、これを無事に達成したら俺からさらに追加の褒美をやろう。我が愚弟だが……」


 そこから、ゴルドさんの説明が始まる。それを聞き終えた僕たちはその為の策を相談するのであった。

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