表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
279/502

278話 黄昏の庭園

前回のあらすじ「ドラゴンとお食事会」


4/7追記:誤って下書きをアップしていたので再アップしました。

    

―昼食後「竜の居城 ドラッヘンシュロス・聖堂内」―


「うーーむ……どうやって入ったかですな?」


「はい」


 僕は床に何か仕掛けが無いかを確認しながらキリュウさんに訊いていみる。昼食後、ゴルドさんの許可を得て玉座の後ろを調べる僕たち。この場で唯一、当時の光景を知っているキリュウさんに、当時の人達がどうやって入っていったかを訊いてみる。


「はて……私もそこまで熱心に見ていなかったので覚えていないのですが……この壁を触っていたくらいで……」


「魔力の反応は全くしないがな」


 ゴルドさんの言ったことに、同じく魔力を感じ取れるレイスとフィーロ、そしてワブーも頷いて、その意見を肯定する。これと似た状況……。


「レルンティシア国のモノリスね」


「うん」


 カシーさんの言う通りで、あの時と同じである。アレも実際は上にあったデメテルの機構が起動し、モノリスの近くにある湖の底に埋められた魔道具がそれを受信して作動することで、地面が隆起してあのモノリスを作り出していた。モノリス自体には魔石は含まれていないため、多少の魔力の残滓はあったとしても、検知するのは難しいレベルとのことだった。


「となると……これも、どこかにある施設に行ける何かがあって、それを探さないといけないのかしら」


「というより、こちらから施設に直接侵入しないといけないのではないか?そもそも、セラに訊いていないのか?」


「ここに来る前に訊いたよ。ここが何かは知ってるんだけど……それ以外は全く知らない。って言っていたんだ」


「そうなんッスか?」


「特にアダマスのような大型ロボットがいたり、多くの薬の原料になる薬草がある訳じゃない。ここにある賢者の石は魔石の元となるものだけど、それなら魔石を魔獣から採ればいいし……だから、目ぼしい物は無いんだよね……うん?」


 待てよ?……だとしたら、何でグリフォンの巣に描かれていた地図に、ここが記されていたのだろう?あの地図は、魔王アンドロニカスとの戦いに向けて残した物のはずだ。それらとは、あまり意味の無いこの採掘場所が重要とは思えない。もしかしてドラゴンに協力を得よ。という意味があるのだろうか……?


「どうしたのです?」


「いや……何でもない……はず」


 そうだ……ここは賢者の石の採掘跡地……そんな場所にマクベスは何のために来たのだろう?賢者の石を得て何をするつもりだったんだろう?


「マクベスはアンドロニカスとの決戦のために準備をしている……その為に賢者の石を取りに来た?」


「薫兄どうしたの?」


「ちょっと待って……考えてる」


 泉にそう返して、マクベスについての情報を思い出す。


 マクベスについて、デメテルでの調査後にセラさんに訊いたのだが、マクベスが現在どこにいるかは不明。ただし、アンドロニカスとの戦いのために準備をしていて、どこにいるかを悟られないようにするために連絡は取れない状態で、何かある時はマクベスから連絡をしていた……。


「もしかして、どこか一ヶ所に留まっている?」


 移動し続けているなら……位置を悟られるとからという理由で、こちらから連絡が出来ないようにしているというのは、理由としては弱い気がする。しかし……もし一ヶ所に留まっていたと仮定すると、どうやって僕たちがロロックを倒した情報を得たのだろう?


「いや……あるはずなんだ……」


 そうじゃなければ、アンドロニカスが行動を移した時に、マクベスから連絡するということは出来ないはず。まさか、近くでずっと見張ってる訳にもいかないだろうし。となると、恐らく感知とか監視するシステムのような物がこの世界にあって、マクベスはそこで常に監視しているとしたら?連絡をよこそない理由が、その施設の位置がバレてアンドロニカスの手に渡るのを恐れたから……。


―アレが一度魔石の情報を壊した後、新しい情報を入れたのですが、前の情報とは違う情報を入れてまして……。―


「……」


「薫兄どうしたの?」


 泉の声がそこでハッキリと聞こえていた。が、僕はそれには返事を返せずにいた。マクベスの行動についてセラさんの話から何か分からないかとデメテルでの会話を思い出していた時、ある事に気付いたのだから。


「どうかされましたか?」


 今度はハクさんが声を掛けてくる。皆から心配する声が聞こえた所で、僕は静かに立ち上がり、頭の中の情報を再整理する。


「薫……?」


 マクベスはここに来た。もし、それが賢者の石を手に入れる事ではなく、別の理由でここに来たとしたら……。


「どうしたのよ?」


 情報を書き換える……この星全域の情報を……クロノスとデメテルにはそんな能力は無かった。じゃあ、まだ見つかっていない要塞エーオースにその能力があるのだろうか?いや、それならセラさんはエーオースで情報を書き換えたというはずだ。


「おーーい!」


 フィーロが思いっきり耳を引っ張った所で思案するのを止めて、皆の方へ振り向く。


「どうしたの!急に考えて……」


「……ここはもしかしたらかなりヤバい施設かもしれない」


「え?」


「ここは……この星の魔石の情報を書き換えた施設かもしれない」


「「「「……」」」」


 僕が何を言ってるのか分からないのだろう。聞いていた皆が黙ってしまった。まあ、理由をすっ飛ばして話してるのだから、そうなるのは当然だろう。とりあえず僕はМT-1を取り出して、セラさんに電話を掛ける。


「もしもし……」


(もしもし、薫様どうかされましたか?今、ヴルガート山に向かっている最中ですよね?)


「それなんだけど……セラさん。今、時間いいかな?」


(はい。大丈夫ですけど……)


「ヴルガート山にある神殿のような建物内部まで来れたんだけど……ここって賢者の石の採掘現場だよね?」


(そうですよ?ララノア様とマクベス様がそうおっしゃっていました)


「そう……それで話が変わるんだけど、一度、壊されてしまった魔石の情報をどこで修復していたか分かる?」


(それは……えーと……)


「分からない?」


(……はい。話は聞いただけでどこかまでは……)


「そうか……それと、マクベスがこの採掘現場に来たって話は聞いたことがある?」


(いえ?そこは元々はコーラル帝国の採掘場所で、とりわけ重要な施設でも無いので……まさか)


「ここに来ていたって証言があるんだ。そして……見つかっていないエーオースで魔石の情報を書き換え作業を行っていなかったとしたら……」


(……エーオースはあくまで軍事施設。武器や乗り物はありますが、情報書き換える魔道具はありません)


 セラさんがそう断言する。となると、やっぱりここは……。


「そうか……バレてしまったか」


 突如、聖堂内に響く僕たち以外の声。


「セラさん。今の声……聞こえた?」


(はい!まさか……)


ウォン……


 聖堂内の壁が全て発光し、その光が玉座の後ろのある一ヶ所を照らし出す。その照らしている光をよく見ると魔法陣を描いている。そして……そこに誰かが転移してくる。青い髪と幼い顔立ちの人型。でも……肝心の口が無い。


(マクベス様!?そこにいらっしゃるんですか?)


「セラ……ご苦労。そして初めまして薫。我が友の孫よ」


「何だこいつは?こんなのが居付いていたのか」


 今まで静かだったゴルドさんが、突如として現れたマクベスに近づき観察し始める。


「申し訳ない。私はここで誰にも悟られずに管理しなければいけなかったので……でも、まさか君達がやって来るなんて」


「おばあちゃんが用意した地図には、ここにもマークが付いていました。おばあちゃんは……アンジェは知っていたんですね?」


「ああ。彼女がこちらに再び来た時にこっそり会いに行ったんだ。そして、ここの情報を教えた……もし、計画が失敗した時は私の所に行けるように図ったのだろう。ここはもはや世界を維持するための施設だからむやみやたらに来ないように、目ぼしい物が無いと嘘の情報を流しておいてね」


(私にもですか!?)


「すまなかった。もしもの事を考えて、君には教えて無かったんだ。何せ、君には他の重要施設の管理を任せていたからね……」


「それじゃあ……ここはやっぱり……」


「ああ……そうだよ。ここがグージャンパマ再誕のために築かれた施設……黄昏の庭園だよ」


 マクベスはそう言って、口の無い顔で笑顔を見せるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ