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26話 魔法の使い道

前回のあらすじ「やったね!使える魔法が増えたよ!」

―「カフェひだまり・店内」―


「これどこに移動させる?」


「こっちに移動させてくれ」


 マスターの指示で、棚を虚空で浮かして指示された所へ運ぶ。


「水をお願いしてもいいかしら?」


「じゃあここに出すよ」


 今度は昌姉の指示でバケツに水を出す。


「本当に便利だわ~」


「お役に立てて嬉しいのです!」


「魔法がここまで自由にできるだなんてな……驚きだな。そんな便利じゃ無いって話はどこにいったんだ?」


 魔法の練習もしつつ開店の準備をする。レイスもはりきって手伝ってくれて細かいところの拭き作業をしてくれている。ちなみに2人には使える魔法が増えたことは伝えてある。


「魔法が使い手の知識次第で色々できるとは最初は思ってなかったよ。魔力という物質は僕たちの思っていた以上に凄い物なのかもしれないね……」


 精霊や魔石を通して様々な自然現象を起こせる無尽蔵の力。これって使い方次第では世界を繁栄にも滅亡にも導く力じゃないかな……。


「凄い力っていうのは最初から分かっていたつもりだったんだけどな……」


 正直言って、かなり甘く見ていたかもしれない。


「あら? そんな難しい顔しちゃって。そんなに難しく考えなくていいんじゃないかしら。あちらの世界の人が異世界について調べる限りきっと何時かはこうなる日が来たはずよ。ただ、それが今回だっただけ」


「それもそうなんだけど……ね」


「俺も気にしなくていいと思うぞ。むしろだ。お前以外のやつがその力を正しく利用する保証なんてないしな。カーターさん達が初めてあったのが薫。お前で良かったと俺は思っているぞ。」


「とにかく、難しく考えずに気楽にやりなさい。姉からの忠告よ?」


「……うん。分かった。」


 今、考えてもしょうがない。とにかくは今できることをやっていこう。小説のネタのためにも!


「よーし! そしたら店を開けるぞ。薫。外の看板をオープンに返してくれ」


「了解。マスター」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―数時間後―


「注文お願いしまーす」


「はーい!」


「すいませーん!」


「少々お待ちを!」


 昼時になり沢山のお客様が来る。今日は特に外が冷えるので特性ポトフが良く出ている。


♪~♪~~


 扉の鈴の音がする。


「いらっしゃい……あれ?」


「あ! 薫さんお久しぶりでーす!」


「こんにちは!」


 常連の高校生の子たちだ。


「いらっしゃい二人とも。今日平日だよね?」


「今は大学受験真っ最中で自由登校なんです」


「で、あみと勉強してたらお腹空いたからこうやってきたってわけ!」


「なるほどね。それじゃあ2人共こちらの席へどうぞ」


「あら? 2人ともいらっしゃい」


「昌さんお久しぶりです!」


「受験勉強で疲れてるでしょ? ゆっくりしていってね」


「ありがとうございます!」


 元気一杯の2人が席に着いて、メニューを見始める。


「受験シーズンか……」


「ええ。そうね……薫ちゃんも友達と一緒に勉強してたわね」


「でも、あいつスポーツ特選で入ってるのが決まってたからな……」


 どちらかというと、ゲームしようぜ!! って言って勉強を邪魔されていた気がする。


「注文お願いしまーす!」


「はーい!」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―数時間後―


「こちら食後の紅茶になります」


 食べ終えたあみちゃんたちの前に紅茶を出す。忙しさが一段落して店の中はゆったりとした時が流れている。


「ありがとうございます。ウェイトレスさん♪」


「ウェイターだからね?」


「いやあ~。お決まりなので」


「いや。そんな決まりないから」


「でも、初めてのお客さんは確実に間違えてますよね?」


「……そうなんだよね。この髪をもう少し短くしたらいいんだけど、昌姉がこれ以上髪を短くしちゃダメって言ってくるし……」


 昌姉には逆らえない……僕の黒歴史を知られるわけにはいかない。


「薫さんって本当に男に見えないんですよね~」


「うん。雪野ちゃんの言う通りで頭の中では分かっているはずなのにね。しかもお化粧無しでここまでって……何か特別なお手入れをされているんですか?」


「うーん。洗顔フォームとか化粧水とかは使っているけど、ドラッグストアに普通に売っているものだし、それ以外に特別なことはしてないかな」


「女性に見られたくないのに、そういうのは使うんですね」


「ニキビとかの防止でしてるよ。それにこの地域は空っ風で乾燥するしね」


 男なら髭剃りのせいで肌が荒れやすいからという理由もあるのだが……この歳になっても髭が生えたことが無い。ただこれを言うと余計に男じゃないと言われそうなので黙っとく。


「そうなんですよねー。私、乾燥肌だからしっかりやっとかないと大変で……」


「あらあら。何の話をしているのかしら?」


 昌姉がトレイに何か載せながらこちらに来る。


「お肌のお手入れの話をしてました!」


「あら、薫ちゃんにしては珍しい内容の話しているわね」


「会社勤めの時、よく顔を合わせるから注意していただけで、男とか女とか関係無いと思うんだけど? それよりも何を持ってきたの?」


「試作品のクリームブリュレよ。頑張っている2人にと思って」


「うわー! ありがとうございますって……うん?」


 2人の前に置かれたクリームブリュレ。しかし、表面が焦げていない。


「昌さん…これ炙られていないですよ?」


「実は薫ちゃんの手品で炙れないかなと思ってね。試してみたかったのよね」


「薫さん手品出来るんですか!?」


「いや、その……」


 手品じゃなくて魔法が使えます。なんて言えない。というかレイスがいないと使えないんだけど? レイスは何処だろうと辺りを見回す。すると昌姉が袖を引っ張り、僕の体で隠しながら指を差すのでそちらを見る。


「……」


 レイスがカウンターから隠れながらこちらを見ている。親指を立て、準備万端のようだ。


「(レイスちゃんには指からバナーぐらいの炎って説明しているから頑張って!! 後、消すときは息でフッと消してね)」


 小声で伝えてくる。魔法の炎で炙れ……か。多分出来るとは思うけど……思うんだけどさ…

…。


「ぶっつけ本番は止めてよ」


「まあまあ。とにかく……ね?」


「私達も良いですよ! ねえ?」


「うん!」


 期待に満ちた目でこちらを見る2人……。ここは覚悟してやるしかない。袖を巡り服に燃え移らないようにする。


「それじゃあ、在り来たりだけど僕の手を見てね」


 2人が僕の両手を見て、種も仕掛けも無いことを確認する。


「そしたら僕の魔法で、今から僕の人差し指と中指の先端から火を出すよ」


 自分の左手を顔までの高さに上げ人差し指と中指を立てる。目をつむり忍者が忍術を使うような姿勢になる。


「火炎」


 僕の人差し指と中指から少し浮いたところで火が出続ける。火力も丁度良さそうだ。そしてそのまま、クリームブリュレの表面を炙っていく。周囲にお砂糖の焦げたあの独特な甘い香りが周囲に充満する。


「っと、こんな感じかな?」


 表面には綺麗な焦げ目が付いている。


「ええ。バッチリよ!」


 そして合図である指に息を吹き掛けて火を消す。


「すごーい!!」


「本当に魔法みたい……熱くないんですか?」


「ちょっとだけ」


 少しだけ熱いのだが、火傷とかするような熱さではないので問題ない。


「どうやって火を着けているのかが分からなかったな」


「ああ。手品なんだから何か仕掛けはあるんでしょうけど」


「こっちからじゃあ見えなかったけど、どうだったんだ?」


 周りのお客も今の手品という名の魔法を見て驚いている。チラッとカウンターの影にいたレイスは笑顔で可愛くガッツポーズしていた。


「これは使えるわね。本格的に取り入れようかしら?」


「でも、僕がいないとダメだよねこれ?」


「……そうなのよね。目の前で料理を仕上げるっていうのがあるから、それに一工夫で手品と思ったんだけどね。まあ、薫ちゃんが入る時の限定として売り出せばいいかしら」


「それ良いですね!見た感じばえますよ!」


「あ、ムービー撮れば良かった」


「それじゃあもう一度……」


「いやいや。何やらせるの昌姉」


「それもそうね。じゃあ今度は氷を……」


「同じ物だとつまらないじゃないからね。というより外は真冬なのに何で氷を出さないといけないの?」


「出せるんですか?」


「出来なくはないけど止めようよ。氷出しても意味無いからさ」


「薫。氷出すならストーブの上にあるヤカンに入れてくれ。そろそろ水を補給しないといけないからな」


「マスター!?」


 まさかのマスターからご要望が来るとは。というか手品で何でもかんでも片付けるのには無理があると思うんだけど? しかし、周りのお客様がこちらを見ている。


「……はあ。分かりました。でも撮影は無しね」


 氷を出すために皿を1つ用意する。開店前に一度やってはいたので問題はないだろう。手の平で器を作り呪文を唱える。


「氷球」


 すると、手の平にあめ玉サイズの氷の球が沢山でてくる。それを用意していた皿に入れていく。


「え、え!?」


「な、なんだ。あれ?」


 周りのお客様が驚く。何もないところから氷がどんどん出てくるのは不思議でしょうがないだろう。皿が一杯になった所で出すのを止めてヤカンに中に氷を入れる。


「本当にすごい……」


「い、一体どこから出してるんですか!?」


「それは秘密だよ」


 人差し指を口に当ててそう答える。まさか、魔法です。なんて言えないもんね。ふと、レイスに目を向けると満面の笑顔を見せる。


「薫さん! マジシャンとしてやっていけるんじゃないですか?」


「あくまで素人の手品だから無理だよ」


「そうですか? 炎ならともかく氷は珍しいと思いますよ?」


「まあまあ、これ趣味の範囲だから……ね」


 あれが趣味の範囲の手品か? というような表情で周りのお客が見てくるが、何としてもそういうことにしたい。


「まあ、今はそれでいいわ。薫ちゃんがいない時はどうしようか考えていないし、とりあえず今回はお客様の反応とか見たかっただけだしね♪」


「美人ウェイトレスさんが目の前で手品をしてくれる飲食店……きますね」


「そんなのこなくていい」


 僕がそう否定すると2人から笑いが漏れる。なんだかんだだが、受験勉強を頑張っている2人に喜んでもらえて良かったと思う。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―数十分後―


「「ご馳走様でした!!」」


「ありがとうございました。また来てね♪」


「「はーい!」」


 2人が帰っていった所で店内のお客様がいなくなった。


「レイスお疲れ様」


「お疲れ様なのです。喜んでもらえて良かったのです」


 カウンターの影から飛び出てくる。


「かなり楽しんでたでしょ?」


「あはは……つい」


 いつもよりテンションが高かった感じがする。


「じゃあ。キリがいいからお昼にしましょうか」


「うん」


「はいなのです」


 こうしてお昼の時間が過ぎていくのであった。

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