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266話 一難去ってまた一難

前回のあらすじ「変態や痴漢に対してチートスキルを持つカオリさん」


*今週の金曜日は投稿せずに、翌日の土曜日に投稿します。

来週以降も毎週水曜日と土曜日に投稿するようにしますのでお願いします。

―午後「東京・某有名会場」―


「本当にお昼ご飯を取らないんですね……」


「飲食可能なイベントもあるんだけど……衣装を汚したりするから、あまり取らないかな。時には締め付けるような衣装もあったりするから、いつもイベント終了後に食べているわね」


「なるほど……」


「それだから……後30分ぐらいやったら、撤収するからね」


「分かりました」


 休憩を取っている泉とユノがそんな会話をしている。今回のイベントでは14時頃には終わりにする予定だった。11時から始めてから、およそ3時間程度。これ以上、長くやるの初めてのユノには負担になるのと、正直……寒い。


「お願いします!」


「あ、はい!」


 カメラマンに頼まれ、昌姉と一緒にポーズを取る。今は上に何も羽織らずに衣装だけの姿なのだが、これが寒い。特に僕だけお腹を出している衣装なので、特に冷えている。けれど、他の3人も肩を出していたり、足を出していたりと寒いはずだ。まあ……衣装が魔獣の素材を使用しているので、少しばかり寒さは軽減されているのだが……。


「カオリ!アッキー!残り30分ね!」


「はーーい!」


「りょーかい!」


「え!?30分!?今回早い!?」


「おい!早く撮らないと帰っちゃうぞ!!」


 泉が僕たちに宛てた掛け声に反応するカメラマンたち。どんどん人が集まって来る。


「……さあ、ラストスパートよ」


「……うん」


 この後、予定していた時間になったところで終わりにしようとして片づけを始める。


「すいません。もう終わったので……」


「おいおい!それは無いだろう!?」


 声のする方を振り返ると、するとユノにスマホを持った男が何か難癖をつけていた。


「ユノどうかしたか?」


 そこをカメラマンをしていたマスターが仲裁に入るが、男は引き下がらない。


「何だよ……おっさん邪魔なんだが?」


「知り合いだからな。それとあまり騒ぐとスタッフに注意されるぞ」


「はっ!何だよ?こんなおっさんが彼氏とかそんなオチ?うわーー……」


 ついには、暴言を吐き始める男。マスターも、やれやれ。言いたそうな表情を浮かべている。


「違いますよ。私の彼氏は……」


 そう言って、こちらに走って来るユノ。そしてそのまま僕の腕に抱き付く。


「この子ですから」


 呆気からんと答えるユノ。どうやら、ユノに取ってあの男の暴言は気にするには値しないものだったようだ。


「あっ!?女同士かよ!気持ち悪いな!!」


 僕は男であるから、男の言ったことは違うのだが……流石にそれは言えないので……。


「ほら、帰るよ。片付けて」


「あ、はい」


 ユノに催促して、この男を無視してこの場からそそくさと離れようとする。


「無視するな!」


「はいはい……今日は店じまいなのでこれで失礼します」


ドカッ!


 お腹の衝撃と共に倒れる僕。チョット油断していた……まさか、蹴ってくるなんて……。


「テメェ!!無視するじゃねえぞ!!」


「チョットそこ!いい加減に!!」


「あん?うるせえ!」


 すると、今度はナイフを手に持つ男。それを前に出してスタッフを威嚇し始める。


「け、警察!警察を呼んで!」


「ああ!うるせぇ!」


「うるさいのはそちら様ですが?」


 スタッフの方を向いて暴れる男に、僕は立ち上がりながら注意をする……いい加減うんざりしてきたかな?……チョット痛い目にあってもらうか……僕はチラッと視線をある鞄に向け、さらに準備運動のふりをしてハンドサインを送る。その鞄からレイスの小さな手でオッケーのサインが見えた。


「(鉄壁……)」


 自分にバフを掛ける。これなら普通は無理な攻撃も簡単に出来るだろう。


「あん!?やるのか?」


「お客様……」


「は!?」


 お客様呼ばわりする僕に困惑する男。そして僕は男に柔らかな笑顔を見せて……。


「おかえりの時間です」


 このコスプレしたキャラが必殺技を放つ前に言うセリフ……それを言ってから、僕は男に先ほどの棒状のクナイ全てを手の指に挟んで、それを放つ。男は突然の飛び道具に避けられず、それを全て喰らう。


 怯んだのを確認した僕はそのまま男に近づき体当たり、さらには片腕を男の股下に入れて若干上へと吹き飛ばす。


「ふぇ!?」


 宙を浮いていて、身動きが取れない男……それに走り寄り、そいつより高く飛び上がって……。


「はあっ!」


「ぐべ!?」


 男の顔面に飛び蹴りを喰らわして、そのまま地面に落ちて男の顔に足を乗せたまま地面を滑っていき、タイミングを見計らって男の上から降りる。


「あ、あれは……!!」


 周りがざわめき立つ中、最後に一言。


「お別れです……地獄までの良い旅を……」


「おおー!リミットブレイク技のメイド葬送脚!!すげーー!!あれって再現出来るんだ!!」


「流石、カオリ……!!」


 周囲から歓声が巻き起こる。もしかしたら出来るかなと思っていたので、ちょうどいいからこの男で試させてもったけど……。


「うん?」


「うへ……うへへ……」


 ふと気になって男を見ると、虚ろな目で笑っている。何だ?


「うへへ……へ……」


「こちらです!!」


 すると、スタッフに案内されてお巡りさんたちがやって来た、そしてすぐにそいつを連行していこうとする。


「またか……」


「また?」


 一人のお巡りさんの言葉に思わず僕は訊き返してしまった。


「ああ。すまないね。こんな事件がちらほらあってね……ほら!立て!」


「うへ……へ……」


「本部に連絡しろ!このまま連れて行け!それで……」


「あ、はい……」


 軽い事情聴取を受ける僕たち。周りの人達も手伝ってくれたおかげで3分程度で終わる。


「分かりました……何か気になる事があったらご一報をお願いします。それと……犯人確保にご協力感謝します!」


 お巡りさんからお礼を言われた僕は軽くお辞儀をして、お巡りさんを見送る。


「何だったんだろう……あの男?」


 そんな事を気にしながらも片づけを済ませた僕たちは、その場を後にするのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―ほぼ同時刻「官邸」菱川総理視点―


「そうか……また、現れたか」


(ああ。あれほどのイベント会場で何かあったら困るからな。事前に配備していたが……あそこに薫君がいて助かったよ)


 この時期に開催されるあるイベント会場で起きた事件ついて話をしている俺と二井。受話器の向こうから二井の安堵の声が聞こえる。それほど危ない物だったのだが、被害に遭った当の本人は気が付いていないだろう。


「担当していた警察官たちは事情を知ってるのか?」


(いや。知らない。ただの薬を決めた暴漢が暴れてるだけの認識だ。恐らくこのような事件が多いとは思ってるがな……)


「そうか……」


 つい先ほど起きたばかりで、その男の詳しい検査はしてないがほぼクロで決まりだろう。


(それで……これはヘルメスが関係してるのか?)


「さあ?だが、否定も出来ないという感じだ……内密に調査を進めてる。今は内調以外にも多数の情報網があるからな。すぐにでも分かるだろう」


(年末年始も仕事熱心な奴らだな)


「全くだ……この前の温泉で少しは休めたつもりだったが……」


(俺はそれに行く暇も無いんだが……?)


 恨めしそうに話す二井。ここのところ休み返上で仕事をしているそうで、年末も仕事の事だった。


(とりあえず、この男の部屋を調べてみる。何か分かるかもしれないからな)


「こちらも何か情報が入ったらすぐに伝える。あまり無理するなよ?」


(ああ)


 電話を切る二井。日本で指揮をしていた黒後は逮捕したお陰でその勢力は著しく弱らせることに成功したが……ヘルメスの脅威が去った訳では無い。


「俺達もしっかり準備しないとな……」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―夕方「仲見世から少し離れた場所にあるお寿司屋さん」―


「美味しいのです!」


「はは!それは良かった!前に、うちに来た時にウケの良いネタを出して正解だったな!」


 そう言って笑う店主。ここに来たのは2回目なのにお客さんの好みを把握しているとは流石プロである。どうしてここに僕たちが来たかというと、イベント後、僕たちは少しだけ東京散策をしてから、以前に総理と会談するために来たこのお寿司屋さんに来た。1つはお昼を抜いて頑張ったご褒美として、そしてもう1つは……。


「すいません。着替えるのに場所を貸してもらって……」


 僕の着替えのためである。イベント会場で着替えるのに男性更衣室に入ってしまうと、カオリとしてはおかしいし、それじゃあイベント会場から少し離れたどこかの男性トイレで着替えようかと思ったのだが、見つかった時が面倒くさい。ということで、ここで着替えをさせてもらっている。ちなみに会場に行く際もお世話になっている。


 なお、本来ならこれらは運営から禁止されてるところも含んでるので、よいこの皆はマネしてはいけない。


「いいってことよ!前から連絡をもらっていたし……それに、明日からうちも休みだしな」


「そうなんですか?」 


「ああ。初競りが行われる5日ごろまで休みだな。そっちはどうなんだい?」


「僕も休み……って言いたい所なんですけど、あっちで何かあったら行かないといけないので……正月返上かもしれないですね……」


「大変だな……そういえば、あいつらも何か忙しそうだしな……」


「あいつらって、二井警視総監と菱川総理ですか?」


「ああ……何か、面倒な事件が起きてるって話だよ。その分だと、そっちには話は行ってないようだな」


「そうですね……まあ、何かあればすぐにでも来そうですけどね」


「そん時はよろしく頼むよ……あいつらもアレで大変だからな……」


「はい」


「おおーー!!」


「あかねは初めてだよね……こんなお店って」


「うん!!」


 母さんとあかねちゃんが手を繋ぎ楽しそうに会話しながら店内に入って来る。その後ろからは父さんも荷物を持って入って来た。


「やあ薫。元気してたかな?」


「つい最近、会ったばかりでしょ?」


「そうだったな」


 そう言って父さんは僕の横のカウンター席に座り、母さんとあかねちゃんは泉たちがいるテーブル席の方へと座った。


「今日からしばらく厄介になるよ」


「うーーん……これってややこしいよね?一応、あの家って母さんの名義だから、厄介になるっておかしくない?」


「管理してるのは薫達だろう?だから、言い方は間違っていないはずだ」


「そうかな……」


「そうだよ……注文いいですか?」


 そう言って店主に注文する父さん。今日は3人がここに来たのは、年末年始は母さんの実家である僕の家に帰省するからである。


「薫!何でも頼んでいいのかい?」


「店主に迷惑が掛からない程度でね?」


「分かってるって!あかねは……」


 そう言って、あかねちゃんのために何を頼むか泉たちと相談し合う母さん。


「うちが賑やかになるね」


「こっちはずっとだけどね」


 温かい笑みを浮かべる父さん。仕事に育児、そして母さんのノリで大変だと思うのに、そんな生活に満足しているように見える。だが、それでもどこか疲れているようには見えるので、日頃の苦労を労うために、僕はお酒を頼んで、親子で酒を飲み交わすのであった。

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