表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
264/505

263話 連戦

前回のあらすじ「新魔法発動!」


*次回は作者の都合で金曜日ではなく土曜日に次話を投稿させて頂きます。

 楽しみにされてる方にはご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

―「ドルコスタ王国・東の森 開けた場所」―


ガンッ!


 籠手を装備した腕で地面を叩く。


「おおっ!?」


 グラルさんが驚いて声を上げる。無理も無いだろう……この辺りでは滅多に起こることはない、僕を震源とした地震が起きたのだから。


ゴゴゴゴゴゴ…………!!!!


 地鳴りが聞こえ、激しく地面が揺れている。規模はこの開けた場所限定だが、震度6クラスかもしれない。理想なのは、このままモグラ型の魔獣を生き埋めにできればいいのだが……。


ドン!


 揺れている地面から、いきなり飛び出てくる何か……その姿はモグラのようにずんぐりとした体型。しかし大きさは大型恐竜を思わせるくらいに大きい。そして前足の爪は長く、それで獲物を切り裂くことが可能だろう。


ぐぎゅるる!!


 遠くからこちらを威嚇するモグラ型の魔獣……モグラの目は退化しているはずなのだが、どうやらこいつははっきりとこちらが見えているようだ。


ぎゅ……


 その強大な爪のある前足を振りかぶるモグラ型の魔獣……魔法による遠距離攻撃が来るのが分かったので、籠手にしていた鵺を大盾に変化させて構える。


ぎゅる!!


 モグラ型の魔獣が威勢のいい声を上げたと同時に大盾に衝撃が走る。


「薫さん!相手は風属性の魔法を使ってきます!気を付けて下さい!!」


 右で待機していたシーエさんたちがモグラ型の魔獣に向かいつつ、僕に敵の情報を教えてくれた。モグラだから地属性かと思ったのだが……。


「前衛は突撃!魔石使いは後方から援護しろ!!」


グウーーーー!!!!


 グラルさんたちとトゥーナカイの群れも一斉に攻撃を仕掛ける。


「スパイラル・アイス・ランス!」


 シーエさんが貫通能力が高い氷魔法を繰り出す。それを危険と察したモグラ型の魔獣はその爪に風を纏わせて上からそれを叩き割る。


「おらぁ!!」


 グラルさんが自分の武器である大剣を振るって、その胴体を切りつけてケガを負わせる。


ぎゅ!!


 その攻撃に反応して、もう片方の手で、グラルさんに攻撃を仕掛けようとする。しかし、今度はトゥーナカイの群れが氷の角を前にして突進。さらにケガを負わせていく。


ぎゅうううう!!?


 戸惑うモグラ型の魔獣。そこからは一方的な蹂躙が始まる。3方向からの怒涛の攻撃に対して、相手は一体。しかも、ホームグラウンドである地中から叩き出されている。数も地理もこちらの方が有利なのである。既に僕たちが手を下す必要も無いくらいに……。


「これって……卑怯な気もする……」


「あまり気にしちゃいけないのです」


 レイスと会話をしていると、モグラ型の魔獣が音を立てて倒れた。

 

「よっしゃー!」


 グラルさんの声に反応して、皆が勝どきを上げる。早過ぎる勝利……そのためか、何か勝った気がしない。


「まあ、勝ったからいいのか……」


「勝てば官軍負ければ賊軍なのです!」


「ここは、正義は必ず勝つにしと……いや、同じか」


 道理はどうであれ、強い者が正義を名乗れるという意味ではどちらも同じであることに気付く。


「とにかく、ケガ人はいても重傷者や死人が出なくて良かった。って事にしておいて……」


 僕は倒れたモグラ型の魔獣に近づいていく。グラルさんたちも確認しているが、その表情は思わしくない。


「やっぱり見たことが無いですか?」


「ああ……俺もこの国で長く冒険者をやっているが、こんな姿をした魔獣は初めてだな」


 折れた爪の一部を持ち上げて、観察するグラルさん。


「勇者様はどうなんだ?あっちこっちに行って、悪魔もドラゴンも戦ってるあんた達なら似たような奴を見たことがあるんじゃないか?」


「ないね。似た物ならドラゴンかな……?」


「そっちの方が何倍も危険なんだが……」


 ジト目でこちらを見るグラルさん。しょうがないじゃないか。似ている生物なんてそれぐらいしか思いつかないのだから。


「とりあえず、いつものように魔獣の肉は聖獣に渡して……シエルも食べるよね?」


「(食べる!お土産用に多めで!後は塩焼きもお願い!)」


「塩焼きね。分かった……そうしたら……」


「(薫!後ろ!!)」


 シエルの呼びかけに反応して、後ろを振り向くより先に鵺を使って、僕の背中に城壁を作り出す。


ガキン!!


 後ろで響く金属音。誰が攻撃してきたんだ?


「ハハ!完璧に背後を狙ったのに防がれるなんてね」


「全員!武器を構えろ!」


 グラルさんが大剣を持って、僕の後ろの何かに攻撃を仕掛ける。


「よっと!」


 その何かが攻撃を避けるために避けたのだろう。声が遠くから聞こえるようになった。僕は鵺を城壁から黒剣に変えつつ、後ろを振り返る。周りもそれに注意を向けている。


「つまらない仕事の最中だったけど……こう楽しみがあるといいね……」


「……知り合いか?」


「シェムル……魔王配下の四天王の一人だよ……倒したアクヌムより断然やばい」


「まあ、あれは脳筋だしね……そこまで強くは無いね」


 剣を持ったまま話を続けるシェムル。剣を下ろしていて、一見無防備に見えるが、シェムルの風魔法は初級の魔法であるウィンド・カッターでも、中級クラスの威力があり連発も出来る。油断は出来ない。


「なるほど……今回の一件は君が絡んでたんだね」


「まあね……お陰様で頼まれていたお使いが済んだよ」


 どこからか動物の角を取り出すシェムル。


「トゥーナカイを襲って、角を集めていたんですね……」


「そういうことだよ……そういえばそちらさんも火山であったかな?」


「覚えていなくていいんだぜ?」


「君達も楽しそうだからね……」


 すると、シェムルがシーエさんたちに向かって急加速。そのまま剣で切りつけようとする。


キン!! 


 それをシーエさんは剣で受け止める。


「マーバ!」


「おうっ!」


 鍔迫り合いから互いに引いて、魔法での攻撃を仕掛けようとする。


「スパイラル・アイス・ランス!」


「ウィンド・カッター!」


 互いに同時に放った魔法がぶつかり合って、相殺する。


「すげえ……」


「感心している場合じゃ無いからな?いつこっちに攻撃が来るかもしれないんだ……いつでも回避できるように構えておけ」


 グラルさんの言う通りで、ここでむやみやたらに特攻しても返り討ちになる。それだけに余裕を見せるシェムル。トゥーナカイ達も遠くから見て戦おうとはしない。でも……。


「薫?」


「準備いい?」


「なのです!」


 戦っているシェムルに対して、横から攻めようと走る僕。


「ふ!そう来るよね!」


 シェムルがこちらに武器を持っていない手をこちらに向けて、魔法を放とうとする。


「雷連弾!」


 それよりも先に上から雷を落とすが、とっさに避けられる。


「本当に楽しいね……なら、こっちも……」


 シェムルはそう言って、手元から魔石を取り出す。その色からして風属性だと思うのだが……何をする気だ?


「来い!ガルーダ!!」


 シェムルがその魔石を上に投げると、強く発光する。


「召喚魔法!?」


 強く発光した光が収まるとそこには一体の四つの羽を持つ大型の赤い鳥が出現する。


「君達が使えて、僕が使えないと思ってたの?いけガルーダ!」


 無言のまま、その羽を羽ばたかせるガルーダ。すると、無数のウィンド・カッターが出現する。


「城壁!!」


 僕は急いで鵺を城壁にして、僕の後ろにいるグラルさんたちも守れるようにする。


「お前ら!ここにいても邪魔になるだけだ!!撤退するぞ!!」


 グラルさんが、敵わないと判断して、自分たちの身の安全を守る為にも後ろに下がる。しかし、ガルーダは素早く位置を移動して、逃げるグラルさんに攻撃を仕掛ける。


「(ウォーター・シールド!)」


 それをシエルが自分の魔法で防ぎ、その間にグラルさんたちは森の中へと逃げていく。トゥーナカイの群れも戦う者以外は逃げている。それを確認した僕は鵺を再度、黒剣に戻す。


グウウ!!


 ガルーダに向けて突進するトゥーナカイたち。それを見たガルーダはさらに高い場所に逃げる。


「黒雷連弾!」


 黒剣をガルーダに向けて、黒い雷を無数に撃ち上昇するのを防ぐ。さらに、ガルーダにもダメージを与えられている。


グウウ!!

 

 トゥーナカイたちがそのまま突進。その頭の氷の角がガルーダに突き刺さる。


「(薫!!)」


 シエルが近くまで来たので、シエルに騎乗してガルーダに向けて走り出す。


「いくよ……水破斬!!」


 シエルとの協力魔法で水の巨大剣を作り、それでガルーダの胴体を真っ二つにする。


「これで消えるかな?」


 召喚魔法はあくまで魔法なので、これで打ち消せたのか不安だったのだが、ガルーダはそのまま消失……そして何も起きなかった。


「はは!!何だいそれは!?面白いねえ!!」


 ガルーダで一杯だった僕たち。急いでシーエさんたちとシェムルに目を向けると、シーエさんがニガリオスに乗って、白く光る剣を振るっていた。その剣が振るわれるたびに、その直線状の物が凍っていく。


「凍てつく斬撃……って所か!」


 楽しそうに、その攻撃を解析するシェムル。


「そんな悠長に構えてていいのかだぜ!」


「そうだね……」


 マーバのあおりを受けたシェムルが、思いっきり上に飛んで距離を取る。


「そうしたら……!!」


 そして、今度は黒い魔石と風の魔石をの同時に取り出すシェムル。


「俺のとっておきを見せてあげるよ!!」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ