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259話 クリスマス前の聖獣探し

前回のあらすじ「エッチなハプニングが発生した模様」

―クリスマス3日前「イスペリアル国・領事館 執務室」―


「え?トナカイ?」


「違う!……トゥーナカイだ」


「はあ……」


 今、僕はドルコスタ王国の賢者さんと話をしている。クリスマス前にトナカイが関わる依頼とは……そのドローインで正確に写されたトゥーナカイの絵を見ているのだが……どう見てもトナカイにしか見えない。


「で、そのトゥーナカイの調査をして欲しいと」


「どちらかというと、ユニコーンに事情を聞いて欲しい。どうして王都付近に出て来たのかを……」


「トゥーナカイはいつもは別の場所に住んでるのです?」


「ああ。本来は王都からだいぶ離れた東の森林地帯のさらに奥深い場所に住んでるのだが……何故か、近場の森で目撃例が多発しているらしい……しかも、茶色ではなく真っ黒な毛をした赤い目を持つトゥーナカイがな」


「なるほど……」


 特殊な個体……もしかしたら、その他とは違う見た目のせいで仲間外れにされたんじゃないかと思ってしまう。


「それで……」


「いいですよ。もしかしたら何らかの異常が起きている可能性も否定できないですから……それに」


「ドラゴンですね」


「ええ。大した被害は出て無いけですけど、確実に下級ドラゴン達が棲み処から逃げ出している……今回の件ももしかしたら……」


 レルンティシア国のブルードラゴンの一件の後、他の場所でも数件、ドラゴン関連の事件が起きている。その都度、僕たちや泉たち、グリフォンで意思疎通が出来るカーターたちも呼ばれたりして対処に当たっている。そのどれもが、周囲に被害を出さない事を約束してもらったうえで、そこに住んでいる。


「ありがとうございます。それで……」


「明日、伺うのでお願いします」


「分かりました」


 その後、少しだけ話をしてドルコスタ王国の賢者は帰っていった。


「明日で大丈夫なのです?」


「これからすぐに、準備をするよ。それに、いくつかの旅の道具はアイテムボックスに入ったままだしね」


「でも……私達だけですよね?」


「うーーん……そうだね……」


「ただいま、戻りました!」


「疲れた~……!」


 あみちゃんと雪野ちゃんが料理教室から帰って来た。


「おかえり二人共。どう?」


「うーーん。流石にケーキは無理そうですね。まあ、クリスマスが無いこっちの世界だと急がなくてもいいかもしれないですけど」


「でも、年明けの祝いには出すかもしれないってことだから……そこまでにはある程度は形にしたいかも」


 今月のお題は日本で食べられる祝い事のメニューと題して料理教室をしている。本来なら日本らしくお正月料理であるおせちとかお雑煮とかを教えたかったのだが、こちらでの材料調達が難しいという事で断念。そこで何故か他の料理と比べて、段違いで向上している甘味系で攻めることにした二人。今はホールケーキやブッシュドノエルなどを教えている。


「そうしたら次は……」


「それだったら卵を……」


 二人が執務室のソファーに座って次の料理教室で教える内容を話し合っている。どうやら、今年の年末にもケーキを食べることになりそうだと思った僕なのであった。


―クエスト「赤目のトナカイさんを見つけよう!」―

内容:ドルコスタ王国で見つかった聖獣である赤い目と黒い体が特徴のトゥーナカイを見つけましょう。それと……クリスマス前には終わらせましょう。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―翌日「ドルコスタ王国・転移魔法陣の間」―


「ドルコスタ王国の王都って地底帝国だったんだね」


「ええ。それなので戦時中はその攻めにくさから、鉄壁の要塞とも言われてましたよ」


「地下でも食料を栽培できる技術を擁しているので、数年は籠っていても問題無いと言われてたのです。あれが太陽替わりになってるのです」


 レイスが指差す方を見ると、茶色一色の空に3つの大きな光球が見える。


「あれが自動で光を調整しているのです。黄昏も表現可能らしいのです」


「博識だなレイス嬢は……」


 転移魔法陣が設置してある建物近くで、皆から説明を受けているとドルコスタ王国の王様であるローグ王がお供を連れて現れた。


「ようこそ。ドルコスタ王国へ……うむ?」


 ローグ王が首を傾げる。事前に伝えていた内容とは違うのだから無理も無いだろう。


「泉たちが来るのでは無かったのか?」


「急用が出来ちゃって……それだから僕とレイスだけで行こうとしたんだけど、それならシーエさんたちを護衛にということでして……」


 ローグ王に説明する僕。実は少しばかり嘘を付いている。泉は急用ではなく、昨日から女の子の日なので最初から来れなかっただけである。そして昨日、カーターたちと今日の調査の事を話していたら、カーターの提案で非番であるシーエさんたちが来ることになったのだ。


「うむ……そうか……」


「何か問題でも?」


「いや……そういう訳では」


「トゥーナカイと契約されるのが心配なんだと思いますよ。私はまだフリーですから」


「他国の王の前で良く言えたな……」


「ここで下手な事を言っても意味が無いですからね……」


 ジト目で見てくるローグ王に、涼しい顔で言葉を返すシーエさん。今は和平協定が全ての国で結ばれてるが、平面化では軽い小競り合いみたいな物はあるようだ。


「それで……どこに出たんだぜ?」


「この王都から東の草原地帯近くの森の中だ。城門まで兵に案内させるから、後は頼んだぞ」


「はい。あ、その前に冒険者ギルドに寄ってもいいですか?」


「うむ?……なるほどな。構わん。ギルドマスターによろしく言っておいてくれ」


 ローグ王との挨拶を終えた僕たちは、兵士さんを連れてドルコスタ王国の冒険者ギルドへと向かうのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―およそ30分後「ドルコスタ王国・冒険者ギルド」―


「おい……変わった身なりをしてるな?」


「はあ……」


 皆に外で待っててもらって、一人で冒険者ギルド内に入ったのだが……男共に絡まれてしまった。イスペリアル国では酔っ払った相手だったが、こちらは素面だな……どうしたものか。


「おい。こっちで……」


「失礼します!!」


 カウンターの向こうから、この騒動を見ていたギルド職員が慌ててやってきた。そして、男共を差し置いて、僕の前にやって来た。


「あ、あの……ギルド証をご提示していただいてよろしいでしょうか?」


 僕はアイテムボックスから、ギルド証を取り出して職員に手渡す。男共は僕が高価なアイテムボックスを持っていることに驚いていたが、職員はそれには気にせず、僕のギルド証を確認している。なんか職員の体がほんの少しだけ震えている気がする。


「あん?何だこのギルド証?Sなんて聞いたことが無いぞ?」


 男の発言を聞いて、周りの冒険者からどよめきが起きる。半年前ぐらい前に、僕たちのせいで変更になったランク制度をしっかり把握している人たちなのだろう。


「こ、この度は……何のご用件でお越しになられたのでしょうか……勇者様?」


「「「「……へ?」」」」


「仕事でこの近くにやってきたんだけど……それで王都周辺の情報を知りたくてやって来たんだ。それでどうかな?」


「わ、分かりました!すぐにご用意を!!後、すぐにギルドマスターもお呼びしますので!!」


 僕にギルド証を返した職員がカウンターの方へ走って戻っていった。何か大声が聞こえるので、他の職員に指示を出してくれているのだろう。


「おい……あれがドラゴンを従えたっていうあの勇者かよ?」


「俺は悪魔を惨殺したデーモンスレイヤーって聞いてるぞ……?」


 周りが徐々に騒ぎ始める。そして、僕にちょっかいを出していた男共も自分たちのした愚かさに気付き、顔が青ざめている。


「ねえ君たち?」


「は、はい!!」


「……次は無いよ?」


「「「「す、すいませんでしたーー!!!!」」」」


 ちょっかいを出していた男共が、僕に謝罪をしてから、すぐさま建物からすごい勢いで出て行った。


(ちょっと……快感かも……)


 ボソっと小声で感想を漏らす僕。この後、ギルドマスターに会えた僕は事情を説明して、王都周辺の情報と出現するモンスターについて確認をするのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―冒険者ギルドを出て30分後「ドルコスタ王国・東の城門」―


「えーと……クロス・ラビットにアイルス・キャット……」


 ギルドマスターからもらったモンスター討伐の手配書を確認する僕。本来なら討伐には4~5人組のパーティー推奨らしいのだが、魔法使いなら一組からでオッケーとの事だった。


「これらの魔獣も見かけたら、討伐しておいた方がいいんですね」 


「すいません……冒険者ギルドからも依頼が入っちゃって……」


「いいえ。気にしてませんよ。それに非番を何しようか悩んでいたのでいい気晴らしです」


「だよな!カーターたちはしょっちゅう地球に出掛けたりしてるから羨ましいんだぜ」


「仕方ないですよ。泉さんとお付き合いしている以上、何としても婚姻して欲しいのが王様の希望ですから……」


「それ、親戚の僕の前で言うことかな?」


「薫さんは……ほら。もう理解してますから、今さらですよ」


「そうそう……あ、この前の旅行でどうだったんだぜ?もうヤル事はやったのか?」


「やってないよ!!?」


 マーバが、いきなり突拍子もない事を訊いてくるので、慌ててそれを否定する。うん。間違ってはいない。あれは……事故だった。


「薫さん。頬が赤くなってますよ?何かあったのがバレバレですよ」


「いや。無いから。何も……起きて無いから」


 あの日の朝が頭の中で一杯になりつつも否定する僕。その場で首を振って、あの時のユノの姿を頭の中から消す。


「……王様にいい報告できそうですね」


「だな……」


「なのです」


「3人とも!からかうのはそこまで!ほら!仕事!仕事をしますよ!!」


 気持ちを切り替えて、シエルを召喚して早速、東の城門から近い森へと入っていく。


「(今回は色違いの聖獣探しって感じ?)」


「そうそう。それで、この前の空中庭園みたいに見つけられないかな……と、思ったんだけど……」


「(この前のはサイズがデカかったからね……それだからハッキリと分かったんだけど……)」


「難しいかな?」


「(その捜しているトゥーナカイの居場所次第では……難しいかも)」


「そうか……」


 森の中を進みながら、シエルに今回の仕事内容を説明をする。この前の空中庭園デメテル発見の要領で見つけられないか訊いてみたのだが……。


「ユニコーンは何と?」


「無理かもしれない。あまり遠い場所にいたら発見出来ないかもって」


「空から探すにしてもここら辺生い茂ってるから難しいぜ?」


「それだからなのか……少し暗い気がするのです」


「ですね……それに、場所によっては湿地帯もあるので、場所によっては足を取られるかもしれませんね……」


「うん……それに、モンスターも頻繁に出るみたいだから、周囲には用心して進んだほうがいいみたいだね」


 僕たちはそんな会話を交わしながら、さらに森の奥へと進むのであった。

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