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255話 温泉街の探索

前回のあらすじ「どこかで書かないといけないと思っていた慰霊祭」

―3日後「県内・温泉街 湯畑」―


「うわ~♪凄いですね!!」


「県内一の観光スポットと言っても過言じゃ無いからね」


 県内には複数の温泉地があるが、夜にはライトアップされるこの湯畑を有するこの温泉地は特に有名であり、武田信玄ゆかりの温泉地だったりする。今は冬の時期ということもあって、昨日降った雪によって雪化粧をしている。


「独特な臭いがするッスね」


「なのです……」


「硫黄……じゃくて硫化水素の臭いね。よく卵が腐った臭いとか例えられてるけど」


「これって……大丈夫なのか?」


「硫化水素は危険ですけど……こんな観光地なら濃度も低いですし……全然、大丈夫ですよ」


 僕たちは湯畑を見ながら、その周りを歩ている。僕が視線を前に向けると母さんと父さんがあかねちゃんと一緒に楽しそうに湯畑を覗いていた。


「すごーーい!」


「はははは!凄いだろう!」


「うん!!」


「茂?大丈夫?もう年なんだからあかねちゃんを持ち上げるの大変じゃないの?」


「うん?大丈夫さ。これでも仕事で重い荷物を持ったりするしね……ほら!」


「きゃあ……あはは!」


 邪魔にならないように遠くから聞いていたのだが……何か親子と言うより娘達と観光に来たおじいちゃんという風に聞こえる。菱川総理から家族もと言われたので、母さんに連絡してみたら……。


「何!?高級温泉旅館にお泊り!?すぐに終わらせるわ!」


 何か小説のお仕事があったようだが、それを終わらせようで、温泉街にあるバスターミナルで待ち合わせしてから、ここまで一緒にやってきた。ちなみに昌姉とマスターも来てるのだが、今は二人で別の所を散策している。


「薫兄……淋しい?」


「え?」


 泉に訊かれたのだが……淋しいとはどういう事だろう?


「お母さんを取られて、寂しいんじゃ……」


「……僕、30歳過ぎだからね?」


「……」


「ユノ?黙ったまま、その両手を前に広げて、私に甘えていいんですよ?ってしなくていいからね?というか泉も変な事を教えないでよ」


「年下に子供のように甘える……癒されるはず!」


「恥ずかしさの方が上回るからね!?」


 そんな話をしてると、ふとある物が目に入ったのでそっちに僕は指を差す。


「二人共、あそこに足湯があるけど入っていく?」


「あ、入ってみたいです」


「俺もだ」


 足湯に来た僕たちは足湯に浸かりながら湯畑を眺める。


「気持ちいいですね~♪」


「そうだね……」


「うちらも入りたいッス……」


「なのです……」


「こういう時に不便よね……」


 精霊三人娘がいつもの鞄の中で、先ほどお土産店で買った温泉饅頭を食べながら羨ましそうに僕たちを見てくる。


「二人は旅館で入りましょうね~……」


 気持ちよさそうな表情を浮かべる泉。その隣にいるカーターもすっかりくつろいでいる。


「って、そういえば……これからどうするんだ?」


「この後は湯もみのショーがあるからそれを見て……その後はお店を見て周るのもいいし……」


「確か温泉で内部が温められた動物園があったよね?そことかは?」


「色々、見どころがあるんですね」


「そうだよ~……後は美術館にビジターセンター……神社とかもあるし……」


「ビジターセンターってどんな施設ですか?」


「え……?えーと……」


 ユノにビジターセンターとはどんな施設か訊かれた泉が、困った表情のまま僕の方へと視線を向けてくる。


「国営の公園にある施設で、その自然の情報を紹介してたり、公園の利用案内とかをしている施設だよ。ここだと西の河原公園って所にあるんだけど、そこが至るところから温泉が湧き出していて、岩や石が多いから温泉地獄とか呼ばれていたりするんだ……って、書いてあったかな」


「へえー……」


「それと夜にはライトアップされるみたいだから、夜中に歩いてみるのもいいかもね」


「ほうほう……つまり、カップルがいって互いの愛を深める場所ってことね」


「そ、そうだね」


 確かにサキの言う通りで、格好のデートスポットだろう。ただ、そんなつもりで言った訳じゃなかったので、意識すると少々、僕としては気まずい……。


「そうしたら、行きましょうね薫♪」


「あ、はい」


 というこで、行く事が決定しました。風邪を引かないようにしっかりと暖かい服装で行かなければ。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―湯もみ見学後「県内・温泉街 喫茶店」―


「しかし……どうしてこのタイミングで旅行なんだ?」


 カーターが抹茶のパフェを食べつつ、話題に挙げる。


「というと?」


「何だかんだで、忙しい立場の人物なのだろう?来月にはそれこそ自身の進退にも関わるグージャンパマと日本の関係を説明する大事な場面……ゆっくりしている場合じゃ無いんじゃないか?」


「そうですね……こっそり話したいなら、他にも手はあったような気がしますね」


 そう言って、ユノがアフォガートをスプーンで、ひとすくいして口に入れる。その瞬間に満面の笑みを浮かべていて、とてもかわいい……。


 足湯でゆっくりした後、予定通り湯もみのショーを見学した僕たちはそこからお店を周り、今は喫茶店に入って一息ついているところである。事前にネットで調べたら、今、カーターが食べている抹茶のパフェと、ユノが食べているコーヒーではなく、熱い抹茶をかけてから食べるアフォガート。それ以外にも美味しそうなメニューがたくさんあったので、僕としては是非とも行きたかった場所だったりする。そんな僕も抹茶のパフェに舌包みを打っていたりする。


 ちなみに精霊三人娘も抹茶のアフォガートを仲良く、他のお客さんに見られないようにこっそり食べている。


「薫は何か聞いていないのか?」


「特には聞いていないよ?突如、菱川総理が王様に話を切り出してきたからさ……」


「そうそう。私も途中から聞いてて、何かいきなり話題を振ってたよね」


 僕と泉はその直前に菱川総理が、戸籍上、夫婦にしていいか?という発言をしていたのは聞いてるのだが、それをすると説明とかが面倒なので、この説明からは意図的に省いている。


「そうか……何か思惑があると思ってたが……」


「それはあると思うよ。さっき話したグージャンパマと日本の関係を説明するのに僕に出席を頼んでるから、その交渉を兼ねた接待。とか、それとは別にヘルメスの奴らの相談……とかかな?」


「ヘルメスか……日本での活動を指揮している……えーと、黒後だったか?あいつは捕えたんだろう?」


「うん……そういえば、皆にはまだ話してなかったかな……」


 スタジアム内での黒後の逮捕後、厳しい取り調べが行われていて、定期的に僕の方へと情報が流れてきている。


「薫兄?それって話して大丈夫な内容なの?何か秘密とかじゃないの?」


「秘密……なんだけど、恐らくかなり厄介な出来事が起こり兼ねない状況らしいんだよね」


「厄介事か……ここで話すってことは俺達やシーエ達にも手伝って欲しい内容って訳か?」


「もしかしたら……ね」


 黒後から得た情報。ヘルメスからの武器の流通経路や、金の送金方法とか色々あったのだが、僕たちの中ではこれが関係してくる可能性があると思う。


「ヘルメスは専用の研究所を持ってるんだけど……どうやら海上で行ってるらしいって話を聞けたんだ」


「海上って?え?海の上?」


「うん。どこの国の領域でも無い公海上で研究を行っていて、そこで新兵器や薬品の開発、そしてあの黒い液体はそこで作られたって話らしいんだ」


「それって本当なの?にわかには信じられないけど?」


「らしいだからね。確かに嘘の情報かもしれない。けど……そんな船があったとしたら?」


「どこの国の領域でも無い……つまり、法的な処置が取れないってことか……」


「そもそも……地球ではそんな船が作れたりするんですか?」


「どうだろう?出来なくは無いと思うんだけど……」


 海洋調査船というのがある位だし、その位は出来たりするのかもしれない。


「それで仮にあった場合の話になるんだけど……」


「分かったぞ……その船を拿捕しろ。って命が来るかもしれないってところか?」


「正解だよカーター。その船がある限り、新たな兵器が作られては、あっちこっちの国で多大な被害を引き起こす。だから、その船を抑えて、これ以上の好き勝手をさせない!ってことらしいよ」


「なるほど……国が持つ軍を動かすには制約など面倒な所があるが、薫達……つまり妖狸達には今はそれが無い」


「そういうこと。で、船を拿捕するなんて事を僕たちだけじゃ不可能だと思うから……もしかしたら手伝ってもらう事になるかもしれない」


「船を沈めるだけなら、薫達だけでも出来るのにな……」


「それは出来ると思うよ。特に海上なら最強の召喚魔法がこっちにはあるからね……」


「……それって私のセイレーンの事を言ってる?」


 泉の言葉に全員が頷く。海の上を進むしか出来ない船に取って、セイレーンという悪魔は恐怖でしかないだろう。


「大型水棲魔獣を串刺しにしたり、叩きつけたり出来るセイレーンなら、船一隻程度を木端微塵にするなんて朝飯前だと思うよ?そもそも、海軍相手にセイレーンだけで圧勝できるって、皆から言われてるからね?」


「それを言うなら黒装雷霆・麒麟だって、大規模な軍隊を消滅させられるってテレビで言われてるからね?」


 互いの召喚魔法の評価を引き合いに出す僕と泉。ただし、どちらが危険か言い合いをするか?というと、お互いにどちらも危険と認識しているのでそこまでにはいかず、直ぐに話をここで切り上げる。


「もし、そうなったら相談して下さいね?お父様にお願いしますから」


「うん。それだからカーター……」


「分かった。後で他の連中にも伝えておく」


「お願いね」


 僕はそう言って、自分が頼んだパフェをまた一口と口に入れるのであった。

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