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252話 昔話 その2

前回のあらすじ「前の文明が崩壊するまでの経緯」


*次回は金曜か土曜のどちらかに投稿しますのでお願いします。

―夜「空中庭園デメテル・屋敷 応接間」―


「それで話を戻しますが、魔石の情報を元通りにした後、社会を作り直したのですが……マインドコラプスの影響で協調性も喪失した世界、修復するのには長い年月がかかりました。結局、私達の手から離れたのはおよそ1000年後……その時には十人ほどいた再興メンバーもマクベス様とララノア様。そして私しか残っていませんでした。そして、私達はこの計画の最後の仕上げとして……新たな魔法文明のためにある種族が作られました」


「それが私達なのです?」


「そうです。その当時は戦争も多々あったことで、前からあった魔石や魔道具が消失。魔石に魔法を施すための施設も無くなり、生まれた時から魔法が使える魔物の強さが顕著になり始めたのです。このままだと文明が崩壊してしまうので、その代替案として精霊のシステムが出来たのです。精霊と契約できた一部の人間が大規模な魔法の使用、そして魔石に魔法を込められるようにする事で、極度なバランス崩壊が起きないようにしたのです」


「なんか……さらっとしてるッスね……」


「実際は色々な議論もあったのですが……とてつもなく長くなるので……およそ800年ほど」


「数日かかるッスね。それ」


 将来を見越して、かなり念密に考えられていた計画だったのだろう。そして、中にはそのような理由で新たな命を作り出すのはどうかの議論もきっとされたのだろう。


「そして、まだまだ混乱とした世界でしたが、これ以上の干渉は文明に悪影響を及ぼすと判断。ここで1000年に及ぶ計画は終了したのです。そして、ララノア様は地球に行ったアンジェ様の行方を捜すために地球へ行き、私はオーバーテクノロジーである各施設の管理、マクベス様はグージャンパマ全体の管理のためにユグラシル連邦に作った特殊施設に籠りました」


「なるほど……」


「この後は皆さんがご存じの通りで魔王としてアンドロニカスが表舞台に現れ、旧ユグラシル連邦の一画に自分の手駒として用意した魔族と共にこの世界への暗躍を始めたのです。マクベス様もそれに気付くのに遅れて……気付けばイスペリアル国の枢機卿として浸食されていたのです。それに手を打とうとしていたのですが、旧ユグラシル連邦全土を支配しようとする魔族との戦いもあったので……」


「お婆ちゃんが戻って来るまで何も出来なかった……」


「アンジェ様もご高齢だったので、実際には後の世代に引き継ぐ形でした。その引継ぎも失敗してたので、新たな計画を経てる必要があると思っていたのですが……アンジェ様のお孫さんであるお二人が予想外でして、まさかロロックを排除し、さらには我々が予想していた以上の力を持ち始めて……マクベス様もほくそ笑んでいたと思いますよ。流石アンジェの子孫だ。と言ってましたから」


「お婆ちゃん……意外にお転婆だった?」


「切り込み隊長でしたよ♪」


 ニコッと笑顔を浮かべるセラさん。その表情はどこか怖い物があり、もしかしてその当時、凄くご迷惑をおかけしていたのかと思ってしまう。


「ちなみに、アンジェ様は地球でララノア様と再会、ララノア様が天寿を全うするまで世界のあっちこっちを旅していたそうですよ」


「旅ですか」


「ええ……それこそ二人で熱い夜もお過ごされたとか……」


「それは言わなくていいって……」


 赤くなる頬を抑えつつ話すセラさんにツッコむ僕。ララノアとお婆ちゃんって上司と部下みたいな関係かと思っていたが、まさか、そんなカップルだったとは……いや、わざわざ地球まで追いかけたのだ。その位の関係であってもおかしくないのか?


「彼女達はグージャンパマに戻らなかったのかい?」


「あっちの世界で骨を埋めるつもりだったそうです。ララノア様とアンジェ様は魔物に属する魔人でして……人間の品種改良した中で最高傑作の部類だったので、その力があちらで利用されるのを恐れた……というのと、魔法の無い世界を彷徨うのが面白かったというのもあるそうです」


「僕たちと逆か……」


「そうです。あの二人にしたら、地球こそが小説の世界だったんですよ」


 それはそれで、少しだけ分かってしまう。何せ今の僕たちと変わらないのだから。まだ見ぬ景色にお宝……それらと会うたびに僕の心はウキウキするのだから。


「その後、アンジェ様は運命の殿方と出会い結婚。その子供である明菜様をお産みになり、そして、偶然にも異世界の門であちらに行ったプライムとタリー達に出会い、こちらの事情を理解してその対策を打つためにマクベス様から指示を受けて行動していた私と会い、さらにマクベス様に連絡を取り、本当にわずかな時間で対策を練り上げたのです」


「なるほど……セラさんがお手伝いしてたから、あっちこっちで色々な準備を出来たわけだったんですね」


「はい。動けないマクベス様の代わりに、ご高齢でかなり弱っていたアンジェ様のお手伝いをしていました。アンジェ様の来られなくなった後……つまり、お亡くなりになった後になると思うんですが、事前に指示を受けていた私が準備をしていました……これで、お話は全てですかね」


「そうだったんですね……」


「中々、ボリューム満点な話だったわね……」


 ここで話を終わらせようとするセラさん。


「まだ、分からないことがあるんですが……」


「……どうぞ」


「まず、一つ。どうして異世界の門を使って、地球への増援、もしくはお婆ちゃんに応援を頼まなかったのか」


「それについてですが、アンドロニカスが生きていたのが分かったのがララノア様が地球に行ってからおよそ百年後でして、そのためアンジェ様達がどこにいるのかが不明だったのです。そして地球への増援ですが……実は何度か私が命を受けて行ったのですが、当時は文明レベルが低すぎて、とてもじゃないですけど戦えませんでした」


「そうしたら、次にセラさんが地球に行けるように、アンドロニカスも地球に行けたはずなのにどうして行かないのか」


 話をしてて、一番疑問に思った事で、アンドロニカスは強力なサイキッカー……もとい魔法使いである。非戦闘要員のセラさんが地球に行けるようにアンドロニカスも行けるんじゃないかと考えられる。


「行けません。アレが一度魔石の情報を壊した後、新しい情報を入れたのですが、前の情報とは違う情報を入れてまして……どのように弄ったか知ることが出来ないアンドロニカスは異世界の門を使えません。使えても変な場所に放り出されるでしょうし」


「最後に3つ目、何で対策がこんな回りくどいのか……どうして、母さんに真実を伝えなかったのか……」


 今まで過去を隠し続けようとしていた。それはこの世界の人々が作られた存在だから、それをうやむやにするためにだと思っていた。しかし、その隠蔽は中途半端。後の世代に任せるにしても、それを語り継がないといけないはずだ。しかし、その語り継がれる役だった母さんは何も知らなかった。病床に伏せていたとしても、そうなる前に何かしら対策を取れていたはずだし、そもそも動けるセラさんが伝えればオッケーのはずだ。


「前にお話した通りです。過去をうやむやにする。と、娘達を戦いに参戦させたくない気持ちがあったと」


「本当にそれだけだったの?」


「はい。そこは間違いありませんでした。しかし、プライム達の予定外の死……そして……」


 溜めるセラさん。何が出て来るのだろう……。


「ヘルメスの前リーダー。ハリスへの対応による無理がたったって、志半ばで倒れたのです」


「なんだって!?あの事件の裏に二人の祖母が関わってるのかい!?」


 アリーシャ様とミリーさん、それにカイトさんがとてつもなく驚いている。僕たちもヘルメスとの関りが祖母の時からあったことに驚いている。


「えーと……ヘルメスってつい最近の犯罪組織じゃ?」


「その前からあったんだよ……前身は傭兵部隊。自爆テロや暗殺なんか何でもありの武装集団……しかし突如、本拠地が破壊されて……メンバーの大半が死亡して表舞台に出る前に、一度壊滅状態になったんだ。それをアンジェさんがやったと?」


「そうです。アンジェ様は空から地面に向かって巨石を高速で発射……それによる衝撃波で全てを吹き飛ばし、もう一つの魔法で徹底的に施設を崩壊させたのです」


「それって私達が使ってるメテオだよね」


「アンジェ様の得意属性は地属性でして、泉様の言う通りメテオと、サンド・コラプスという大規模都市破壊魔法を得意としてました」


「え……地属性ってそんな魔法があるの?」


「地属性は使い勝手が悪くて一番弱い魔法なんですが……威力だけならどんな魔法にも負けない2極大魔法があるんです。というより所長が使ってます」


「え?」


「私達が使ってる……のです?」


「ああ……守鶴か……」


「はい。サンド・コラプスはありとあらゆる物質の水分を抜き取り、かつその魔法によって強化された微細な砂はありとあらゆる物を傷つけて崩壊させる魔法……薫様の召喚獣はそれに意思を持たせた魔法とも言えますね」


「そこまで、徹底的に破壊した理由って……黒い魔石絡みだよね」


 お婆ちゃんがそこまで徹底的にやるなんてその位しか考えられない。


「何故、ヘルメスが黒い魔石を加工した黒い液体を手に入るのか……それは昔、アンドロニカスが魔族の部隊を地球に送ることに成功したことが一度だけあったのです。それをアンジェ様とララノア様が早急に撃退。そして地中深く埋めたのですが、それをヘルメスの前リーダーであるハリスが見つけたために、アンジェ様が組織ごと潰したのです」


「アンジェさんはその場所に常にいるわけではなかったはずよね……ってことは、見つかったことを教えてくれる魔法みたいな物を仕掛けてたの?」


「ララノア様がそのような仕掛けをするのが得意でしたので、恐らくはララノア様が仕掛け、後始末はアンジェ様がやった感じかと」


「なるほど……そして、その事件の際に生き残りがいて、そいつが再度、掘り起こしたってことですね」


 アリーシャ様の考えに頷くセラさん。色々な事がここで繋がるのか……。


「でも、偶然が重なり過ぎていない?地球という規模でアンドロニカスの送った魔族の部隊に会って、プライムさん達に会うってかなり出来過ぎている気が……」


「そこなんですが、恐らくアンジェ様の中にあった魔石に引かれたのかと……地球にはイレーレ時代に行き来した際にいくらか魔石が残ってる可能性がありますが、その当時で現役の魔石となればアンジェ様の中にある黒い魔石が一番だったでしょうから」


「そうか……」


 僕は座っていた椅子に深く座り直してから、お茶を飲む。僕として訊きたいことはこれで全部聞いた。恐らく、何かしらの聞きもらしがあると思うが、それは気付いた時に聞けばいいだろう。


「となると……アンドロニカスは直ぐにでも討たないといけないのでしょうか?」


 アリーシャ様がアンドロニカスへの対応について訊いてみる。確かに既に行動をしているなら、対策は必要じゃないかと思ってしまう。


「今は準備を専念して下さい。もし、何かあればマクベス様から報告が来るので、マクベス様の合図待ちとなります」


「悠長に構えていいの?」


「予測として2年程あります。アンドロニカスは恐らく自分の本当の体を持っていません。今は安全な場所で部下の魔族に侵攻と自分の復活を指示しているのです。そして、アンドロニカスが自分のメインボディを手に入れたその時。それはマクベス様が今度こそアンドロニカスを完璧に倒すための最大のチャンスでもあるのです」


「その準備が終わるのが2年か……大忙しだね。それに相手は体をもたない電子生物ともいえる状態……厄介極まりないな」


 カイトさんの言う通りで、要は切れない殴れないゴーストを相手にしているようなもの、それを倒すためにも今はまだ待つべき時なのだろう。


「それでも希望はありますよ?何せ四天王の一人であるアクヌムがすでに倒されてるのですから。四天王の一角が倒されて、アンドロニカスは内心では慌てているでしょうし……」


 セラさんの言う通り、アンドロニカスが慌てていればいいのだが……油断できない。何せシェムルという四天王もいるのだから。


「とりあえず……その話を今度のグージャンパマでの会議でもお願いしますね」


「所長の命令でしたら」


「……これで今回のクエストは完了って事でいいのかな?」


「そうッスね」


 泉とフィーロが言うように、一先ずはこの調査は終了という事でいいのだろう。後は……これをどう上手く伝えるかが難点ではあるが……。


「頑張ってくださいね所長?」


「はい……」


 僕が会社に勤めていた頃、夜中まで資料作りをしていた時の事を思い出し、思わず面倒だと思ってしまうのであった。


―クエスト「沈黙のモノリス調査」クリア!―

報酬:空中庭園デメテルの所有権、完全体セラさん、ポウとミニポウ達

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