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251話 昔話 その1

前回のあらすじ「見学ツアー終了」


*明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願い致します。

作者の都合でこの時間に投稿になってしまい申し訳ありませんでした。

水曜日はいつも通りに投稿いたしますのでよろしくお願いします。

―夜「空中庭園デメテル・屋敷 応接間」―


「ふう……お茶が美味しいわね……これも、ここで育てたのよね」


「そうだポウ!僕たちもたまに飲んで一息ついているポウ!」


「ポポウ!!」


 後ろで、アピールするミニポウ。甚平みたいな服を着ているので、茶葉の摘み作業と加工を担当しているのだろう。ちなみに夕食は既に取っていて、これに関しては僕が事前に用意していた食材を、屋敷内にあった厨房でコック帽を被ったミニポウさんと一緒に調理した。


「僕たちと違う世界なのに、お茶の加工技術は同じ……いや、おばあちゃんが教えたの?」


「そうですよ。魔王との戦いになった時に地球と同じ物が飲めるというのは、戦闘時において大切な事ですから……」


 そう言って、お茶を飲むセラさんとポウさん。甚平を着たミニポウも飲んでいて、満足の出来る出来だったのだろう。頷きつつ飲んでいる。


「あ、それとコーヒーとココアもありますから、ご要望があればお出ししますよ」


 それを聞いて、この部屋の扉の方へ視線を向けると、それぞれの担当者であろうミニポウたちが扉の隙間からこちらを覗いていた。そのつぶらな瞳で見つめられると頼みたい気持ちになるがここは止めておく。


「さてと……そろそろ教えてもらえるかしら?マクベスはララノアとアンジェに出会ったその後を……」


 カシーさんがそう言うと、セラさんがカップを置いて続きを話し始める。


「マクベス様はアンドロニカスの凶行を止めようとしていたのですが、返り討ちに合い、ララノア様と会う時にはボロボロの状態でした。最初は敵の罠と思い警戒もしていたのですが、マクベス様が話された事が事実だと分かり、彼の協力を得るために、彼を修復しつつ事の真相を聞いたララノア様達は彼のアドバイスを聞きながらユグラシル連邦第一研究所への突入作戦の準備を始めたのです。」


「どんな作戦だったのかしら?」


「ユグラシル連邦の第一研究所近くの施設へ飛べる転移魔法陣を作成し、さらにアンドロニカスを倒すためにある武器を作りました」


「それって……薫兄の持つ四葩?」


 四葩が話題に出て来たので、僕はアイテムボックスから四葩を取り出して、テーブルの上に皆が見えるように置いた。


「そうです。この武器の青い刀身には、イレーレや魔族に弱体効果を与える効果がありまして、そして……アンドロニカスにも有効でした」


「あれ?お婆ちゃんも魔族……それにマクベスも……」


「切りつけられたら弱体化されるように作られてます……要は刃先に毒が塗られた剣と同じような物です……ただしその四葩は異常ですけど……」


「え?」


 四葩が異常と言われて戸惑う僕。そもそも、これもセラさんの予定通りだったと思っていた。


「あくまで剣で切りつけた時に効果が発動する物でして……そのように光で既に私達に影響を及ぼしてるのは異常なのです」


「……」


 何か迷惑を掛けているみたいなので、僕は黙って四葩をアイテムボックスにしまう。これ……普通にミスリルで作ったアイテムボックスに収納していたけど……大丈夫だろうか?


「ありがとうポウ!それがあると何か体が変になるポウ」


「でも、これ私達には悪影響を及ぼさないのよね……むしろ、癒される感じ?」


「私も予想外でして……もしかして、鵺の影響かもしれませんね」


 またまた、僕の武器である鵺が話題に出て来たので、今度は鵺を黒剣にして置いた。四葩を作る際に鵺も錬金釜の中に入っていたのでその可能性が高い。


「これって、ララノア様の時代には無かった武器なのかしら?」


「無いです。人の思考を読み取って、その形に成り、挙句は召喚獣の骨組みに使える武器なんて……」


「召喚獣はその時代にはあったのかしら?」


「無いです。そもそも、それなら純粋な高火力と命中力が優先されましたから……まあ、そうは言っても所長が使用した黒装雷霆・麒麟のような個人で使う魔法の中であそこまで高火力な魔法は存在しません」


「あれも異常なのね……」


「あれは今後の戦いにおいて切り札になると思います。しかし……あれを受けたスパイダーにとっては苦痛だったでしょうね……極限まで弱体化を受けて、そこに電撃で継続ダメージと麻痺を受けて、トドメに高出力の剣でぶった切られるなんて……とことん相手を拷問して、最後に始末するのと変わらない状況だったでしょうね」


「鬼の所業……」


 皆が僕を見るけど……そんなつまりは毛頭……いや、殺意があったので完全に否定できない気が……。


「そういえば……薫たら、いい気味だ。みたいな事を……」


「言ってない!……と思う」


言ってないはず……でも、あの時は憤怒だったし……もしかしたら……。


「まあ、そこは置いときましょう。それで、四葩の劣化版の武器を大量に生産して身を固めた所で、転移魔法陣で第一研究所へ突入して……アンドロニカスを始末したってところかしら?」


「簡単に言うとそうですね。ただ、実際は激しい戦闘でした。私もバックアップで戦闘に参加していたのですが……すでにアンドロニカスによって要塞となっていた研究所……防衛用のトラップに量産型のロボットとの戦闘もあったりして次々と味方がやられてましたし、私も左腕を失いつつ、体をボロボロにさせながらも戦いましたよ。アンドロニカスに猶予を与えるとより力を蓄える恐れがあるので、短期で決着を着ける必要がありましたし……」


「そんな戦闘の中で、何とかアンドロニカスまで辿り着いたのがお婆ちゃんだった」


「はい。実際にはアンジェ様とララノア様、そしてマクベス様の三名が到達。激しい戦闘の中でどうにかアンドロニカスの内部コアを破壊し、さらに人間でいう脳の役割を持つチップも破壊して完全に始末したはずでした」


「実際は死んでいなかったけどね」


「その通りです。しかも、アンドロニカスは最後の悪あがきにアンジェ様を不安定な異世界の門で地球に飛ばし、さらに研究施設を自爆させて魔石の持つ情報に悪影響を及ぼす魔法と残った私達の始末……ありとあらゆる害悪を撒き散らしつつグージャンパマの表舞台から一度は消えたのです」


 ここで、一度はアンドロニカスの野望は潰えた。そして、そこから長い間、裏で世界を支配するための準備を長い時間を掛けてしていた……。


「ねえ。そこまでして、アンドロニカスは何が目的だったの?」


 泉がセラさんに尋ねる。セラさんが言うには、アンドロニカスの目的は今も昔も変わらないと言っていた。それはつまり……。


「ユグラシル連邦の勝利です」


「「「「え?」」」」


 他の皆はその答えに疑問を浮かべる。そう。魔王であるアンドロニカスの目的はそこにある。しかし……それは当初の意味とは大分かけ離れた物にはなっているだろうが。


「でも、自分を作ってくれたイレーレを滅ぼしたのに?」


「薫様……」


「また、問題ですか?」


「はい♪」


 また、問題を与えるセラさん。僕は理解していると思ってそんな問題を与えて来たと思うのだが……小説家としては、このような理由だろうか?


「自分がいないとダメな下等生物を排除し、新たなユグラシル連邦の王となってこの星を支配する!……それだったらイレーレの命令を背いたわけじゃないですしね」


「はい。その通りです……ユグラシル連邦のイレーレの悪態に疲れ果て、その果てに憎しみを覚えたアンドロニカスは自分より優れていないイレーレ達の指示を訊く必要があるのだろうか?いや、そんなはずが無い。私達は至高の存在であり、この世の王となる資格がある……当初の命令を歪曲し、その結果、全てをリセットするという考えに至ったようです」


「私達?」


「アンドロニカスはマクベス様も誘っていたのです……しかし、マクベス様はそれを拒否してました。マクベス様は最後までグージャンパマに住む人々の幸せを願っていたのです」


「なるほど……それで、戦闘後は?」


「まずは、私達の方ですが……この世界の修復を始めました。壊された魔石の情報を正しい物にして、さらにマインドコラプスの影響を受けた人々に対して新しい秩序と社会による統治を被害を受けなかった者達で始めたのです」


「先ほどから気になっていたけど魔石の情報ってどういうことかしら?」


「魔石は元となる核石……決まった名称は無いのですが……薫様の世界なら賢者の石と思って頂いても構わないかと、この賢者の石から全ての魔石が作られるので……」


「その賢者の石といのはどんな物なんだい?そもそも魔獣を使って増やしていた物を直せるものなのかい?」


「まず、賢者の石はこの星で取れる鉱石でして、そこに装置を使って情報を入力します。元々はイレーレ達がそれを複数人で念じる事で念じた者達の記憶を保持する性質を発見したことがきっかけでした。そして……ある環境下で自己増殖が出来る性質もあったのです」


「それが……地球の生物の体内に埋め込まれてる時か」


「女性個体が受精すると母体の持つ魔石が反応して、核である賢者の石が増殖、それが胎児の内部に侵入し、新たな魔石になるのです。これは完全コピーで劣化することはありません。さらにある魔法を使う事でその賢者の石に情報を上書きも出来ます……壊す際にも直す際にもこれを使用しています」


「ICチップみたいな物なのか?それが自己増殖して……ダメだ。あまりの情報量にパンクしそうだ……それって無機物なのか?それとも有機物なのか?」


「有機物では無いですね。かと言って無機物というのもおかしな話になると思います」


「そうなのか……あ!となれば今ある魔石を人に埋め込めばそれだけで新しい魔石をどんどん作れる!!……そうしたら、地球でも大量に……!?」


「人体実験するんじゃないわよ!!」


 ミリーさんが危ない発言を始めたカイトさんの頭を持っていた銃のグリップ部分で殴った。その痛みのせいで、カイトさんは体を前に倒し、テーブルの上に頭を乗せ、殴られた箇所を手に当てている。


「……皆さん。この情報は流さないように。ここだけの秘密にしましょう……ミリーさん。魔石の情報がクロノスに少ない理由ってこれが原因ですか?」


「はい。人の欲望はララノア様もアンジェ様もよく理解してましたから……そのような手段で人間牧場なんかを作る輩も出てきそうなので……」


「軍事目的でやりそうよね……。どこまで情報を下ろすべきか考えた方が必要だと思うわよ」


「ですよね……所長として、ここにいる人だけにしましょう。魔石の確保は魔獣討伐だけに留めとくということで……セラさんもポウ、この情報はここにいる人だけにして下さい」


「分かったポウ」


「はい」


「魔石の増産方法は、賢者の石を体内に入れて、その生物を繁殖させる……うん。止めときましょう。今のカイトみたいに閃かれたら困るし……」


「それと……賢者の石の採掘場所なんですが……そちらの情報は所長と泉様のお二人だけにしましょうか」


「そうですね」


 僕は立ち上がって、セラさんの耳に顔を近づける。


「(……ドラゴンの棲む。ヴルガート山ですか?)」


 僕がそう訊くと、無言のまま頷いて答える。ヴルガート山の赤い点はいざという時のために賢者の石を補給できるようにと印が付いていたのだろう。


「(あそこはいざという時の施設なので、行く必要は無いですね)」


 そんな情報をセラさんに教えてもらった所で、再び席に座り直す僕。セラさんも僕が座ったことを確認してから話を続けるのであった。

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