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24話 魔法の練習をしよう!!地属性の本気

前回のあらすじ「門の魔法を覚えた」

―「カーター邸宅・練習場」―


「それじゃあ、まずは基本の魔法をやってみるか」


 僕たちがいる場所から的まではテニスコートの端から端ぐらいであり、的が小さく見える。


「それじゃあまずはファイヤーからね。泉! フィーロ! やってみて!」


「はい!」


「いくッス!」


「「ファイヤー!!」」


 泉が前に出した掌から一直線上に炎の玉が飛ぶ。炎の玉はそのまま的にぶつかり消える。的には何か施されているみたいで燃え上がるという事は無かった。


「おお~。やっぱり凄いわ。自分の手から炎の玉が飛んでいくっていうのは」


「まず、無いからね。じゃあ次は僕たちだね」


「はいなのです」


 僕たちも的に向かってファイヤーを放つ。


「「ファイヤー!!」」


 同じように掌から炎の玉が飛んでいき的に当たった。


―火属性魔法「ファイヤ―」を覚えた!―

効果:炎の玉が1つ直線状に飛んでいきます。ただし調整次第ではライターのようにも使えるので上手く利用しましょう。


「皆、筋が良いわね。そしたら次は風よ」


―風属性魔法「ウィンド」を覚えた!―

効果:風で物を吹き飛ばしたり揺らしたりします。


「これも大丈夫そうね」


「そしたら水だな」


―水属性魔法「ウォーター」を覚えた!―

効果:水球が飛んでいきます。弾けた衝撃で敵を気絶させたりでき、飲み水にも出来て様々な場所で役立ちます。


―水属性魔法「アイス」を覚えた!―

効果:氷が一つ飛んでいきます。球体にも尖らせた状態にも出来ます。


「さっきから的に百発百中なんだけど?」


「ここに当たれ! って思えば大体はその位置にしっかり当たるわ。だからこんな風にも撃てるわよ」


 カシーさんが掌を上に向けて呪文を唱える。


「「アイス!」」


 氷の球体がかカシーさんの頭上に出てきて、そのまま的に向かって当たる。


「へえ~。これってもしかして動いている的の場合は追いかけてくれるの?」


「ああその通りだ。ただ当たるまで追いかけるとかではなく的が動けば魔法も動いて少し軌道を変えるぐらいだ。それと複数いた場合はどれに当てるかをパートナーと決めないとでたらめな方向に飛んでいくぞ」


 つまり、パートナーとの意思疎通がしっかりしていれば、動かない的なら百発百中で当てられるってことか。


「あの~。このアイスで土の壁って貫けちゃうんですか?」


「出来るわよ。試しにやってみましょうか?」


 カシーさん達が厚い土の壁を作り、それを尖った氷で貫く。


「貫けちゃうんだ……。厚い土の壁のはずなんだけどな……」


 氷の強度もそんなに強くないはずなのだが、氷は一切砕けることなく、土の壁を貫いている。


「魔法の氷は硬いのよ」


「土にはそれが適用されないの?」


「何故かされないのよ。どうしてもね」


「ねえねえ薫! 何か思いつかない?」


「サキ。何で僕に聞くの?」


「いや。あっちの世界の知識で何か分かるかなと……?」


 サキの言葉を聞いた皆がこちらを見る。いや、そんなことを言われても……まあ、あることはあるけど…。


「あくまで推測だけど……不純物が少ないんじゃないかな?」


「不純物?」


「えーと……」


 説明しようと何か書くものをアイテムボックスから出そうとする。


「薫兄が説明するならこれ。スケッチブック」


「あ。泉ありがとう」


 泉が持っていた鞄からスケッチブックを取り出す。こんな物を入れていたのか…よしこれで。


「それと白衣に眼鏡に……」


「それ、昌姉の持ち物だよね? どうしてそれを……? というか、スケッチブックもだけど何でこんなものを持ってきてるの?」


「昌姉が、一緒に行動するときはこれを持ち歩いてお願い。あと写真も忘れないで! って」


 何を考えているんだうちの姉は!?


「この前の格好がハマったみたいよ」


「着ないから」


「それともし着ないっていったら、カーターさん達にアレを見せるけどいいの? って伝えておいてって」


 行動を読まれている!? しかも……アレを見せるなんて……。


「「アレ?」」


「えーと……薫兄の黒歴史よ。私も何枚かスマホにあって……」


「見せるな……」


 めいいっぱいドスの効いた声で見せることを止めさせる。ダメ。ソレ。ゼッタイ。


「なら……これを着てね♪」


 泉が笑顔で僕を脅迫する……その手に白衣と眼鏡を持って。あきらめて僕は渋々それを着る。


「なあ。これで写真というので撮られて、さらに弱みを握られるパターンじゃないのか?」


「かといって断れる状況じゃないんでしょうね」


「薫……不憫ね」


「思い切ってそれを見せた方がいいんじゃないのか?」


「いや。あれはやばいッスよ! って!?」


 その言葉を聞いてフィーロを片手で鷲掴みして、目を合わせる。


「ミタノ……?」


「そ、その泉と一緒に住んでるッスから。それだからその時につい……」


「ネェ、イッチャダメダヨ。ワカッタ?」


「はいッス!!」


 フィーロが手を真上に挙げて言わないことを誓う。


「ど、どんな写真か気になるなカシー」


「そうね。……でもやめときましょ」


「そうだな」


 絶対にあれは見せない。そう絶対に、絶対に。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―着替え完了―


「というわけで、僕の考えだけど」


 衣装を着て、この冬の寒空の中説明に入る。


「自然界の土には様々な物が含まれていてそのため魔力の伝導率が低いんだと思う。土には石や粘土、シルトなどの無機物に動植物が腐食して出来た有機物、さらに水分も含んでいる混合物なんだ」


「土を操るということはそれら全てを操ることになるからってことかしら」


「カシーさんの言う通りだと思う。水も空気中の成分が含まれていて純粋な水って訳じゃないんだけど、それでも水の割合が高いから問題ないんだと思う」


「空気の成分とは?」


「我々の目では捉えることが出来ない超小さい原子というのがこの世界を作ってるらしいのです。薫から教えてもらったのですが空気には窒素に酸素、二酸化炭素などのその他に分けられるそうなのです。で、私たちはその中の酸素というのを体に取り込んで生きているそうなのです。酸素はそれだけではなく火属性魔法を使うのにも必要らしいのです」


「そうなの?」


「レイスとフィーロにも言ったけど、私や薫兄にとってそれが当り前の知識よ。子供の頃に学校で習うわ」


「魔力がこの世界を作っている訳ではないのか……」


「私達はそう教わったわ。でもそれは誰も疑問に思わず詳しく調べるということをしなかったから。だから、如何に魔力が影響を及ぼしているのか説明しようとしていたわ」


「しょうがないと思う。もし僕たちの世界にも魔法があったら魔力が形を変えた物って考えていたかもしれない。昔はこの原子論説も異端と考えられてきたぐらいだしね」


「なるほど魔法というのが無いからそのお陰で火や水というそのものの仕組みを知ることができたのね」


「うん。で、話を戻すけど、地属性魔法もそれを意識して何を操るかを明確に意識して伝導率を上げれば使えるんだよね」


「へ?」 


 カシーさんが変な声を出す。レイスを呼びあっちで練習した魔法を使ってみる。手を地面に当て、そして目の前の石ころに意識を集中して……。


「ストーン!」


 すると、石ころがそこから的に向かって勢いよく飛んでいき、的にぶつかって砕ける。


―地属性魔法「ストーン」を覚えた!―

効果:近くにある石を一つ素早く撃ち出します。石がないと発動しません。威力は……。


「おお~」


「土を動かすとかじゃなくて、地面に転がっている石ぐらいならいけるんじゃないかなって試しにやってみたんだよね……」


 その時は木を的に使ったのだが……銃を撃ったんじゃないかというような穴が空いた。


「これは使えるわ」


「ああ。なるほど地面の上にある石だけに集中すればいいのか」


 カーターたちも試しに使ってみると、さっきと同じように近くの石ころが的に向かって飛んで砕ける。それを見てカーターとサキが目を合わせて頷いている。


「これはなかなか強力ね。地面に石が無かったら使えないとはいえ実戦でも通用するわ」


「うん。というか今まで誰も試さなかったのかな?」


「まあ他の魔法の規模が段違いだからな……これも初級の魔法なんだが……見せた方がいいか。サキ行くぞ」


 そう言って、2人が的の前に立つ。


「ファイヤーボール!!」


 カーター達がファイヤーボールを的に放つ。突如現れた大きな炎の玉が的に向かって爆ぜる。さらに飛び散った炎が周囲に広がる。その勢いは強く、的が砕け散っていた。


「すごーい!!」


「カッコイイッス!!」


「確かにストーンを使うより威力が高いのです」


「そうだね……あ、それとこんな地属性魔法も使えたよ」


 レイスに目で合図をする。それはこの世界にはない新しい魔法。


「地属性魔法……飛翔」


 僕の体が浮き上がる。そのままレイスに指示を出しながら皆の前で移動したり宙返りしたりしてみた。


「……嘘だろう?」


「いや本当に飛んでるわよ。というか風じゃないの?」


「フィーロ。私達もやろうか。薫兄。アイテムボックスに入れてもらった箒出して」


 出かける前に入れといた箒を泉に言われて出す。


「行くよ。地属性魔法フライト!」


 泉は箒に腰かけた状態で浮き上がる。ちなみにフライだとニュアンスが悪いとのことで変更したらしい。


「こうみると現代の魔女って感じだよね」


「箒を使った方がイメージしやすかったんだよね。フィーロもアニメを見て納得してくれたし」


「「……」」


「って、カシーさんたちがさっきから黙っているけど…どうかしたの」


「す」


「す?」


「すばらしいわ!!!!」


 目をギラギラさせてこちらを見るカシーさん。その両手を上に掲げ、僕たちを捕えようとして指を気色悪く動かす。


「その魔法の使い方をぜひとも。いいえ。仕組みを教えてもらいたいわ!! ああ!! あっちの世界の知識を使えば魔法で空を飛ぶなんていとも簡単なのね!!」


「「「「……」」」」


 どうしよう……とりあえず泉達と目を合わせるが、2人も今のカシーさんを見て引いている。今、絶対降りたら若干暴走気味のカシーさんの餌食になるだろう。はて、どうするべきか……。


「うん?」


 こちらに誰か来ている……あ、シーエさんたちだ。


「うぉーーーー!!!! なんだあれ!!!!」


「まさか……これは驚きましたね……」


 こちらに来たシーエさんとマーバが驚いた表情で僕たちを見上げている。


「お二人ともこんにちは」


「ええ、こんにちは……空を飛んでる人から挨拶されるなんて始めてです」


「こんな風に挨拶をするなんて僕も始めてだよ。そういえばカーターの邸宅に来るという事は何か用事ですか?」


 オフであるカーターとは違って鎧を身に着けているところからして仕事中だろう。


「ええ。カシー達がなかなか戻って来ないので様子を見に来たのですが……」


 こちらを見てすっごく興奮しているカシーを見て、どんな状況か理解したらしい。そのまま、カシーさんに近づいていく。


「えい」


 そのまま首に手刀を食らわせて気を失わせた……。


「よっと。それじゃあこのまま連れていきますか」


「すまないな。ああなるとカシーは止められなくてな」


「ワブーも大変だよな」


「お陰で変人扱いだからな。お前らも俺を変人とかこいつらに教えるなよ」


「研究に対する情熱は十分変人だと思うわ」


「そこは否定しない。お前達が来なければ俺も薫達に質問攻めだっただろうしな」


「……シーエ、俺も手伝おうか?」


「馬で来てますので大丈夫ですよ。それに薫さんたちの魔法について訊いてもらう必要がありますし」


「あ、あの~……カシーさんに話さなくて大丈夫なんですか?」


「こちらも仕事が詰まっていますので。それでは」


「じゃあな~。あとでその魔法教えろよ~」


 そのままカシーさんを連れてシーエさんとマーバがこの場を離れていった。


「薫!」


「うん?」


「後で色々聞かせてもらうからな。それと俺達以外にはこの世界では見せるな。それは、あまりにもヤバすぎる」


そう言ってワブーも3人の後を追って去っていった。


「カーター。シーエさんの扱いなんだけど……」


「よく見かける光景だからあまり気にするな」


「そうね」


 賢者って国の宝みたいなのに扱い方がかなり雑なような気がするんだけど……果たしていいのだろうか。


「……とりあえず下りようか」


「うん」


 とりあえず安全が確認されたので下りる事にした。


「マフラー持ってくれば良かったな。寒いや」


「そうッスね」


「こっちのお金貰ってるからレイスとフィーロの為にも買いにいった方がいいかもしれないね」


 旅用の道具はボロボロ、それに生活に必要な道具とかの購入も必要だろう。


「マフラーとかなら私が作ってもいいわよ。精霊の服を仕立てるなんて楽しそうだし」


「そうしたら、こっちの服のデザインとかを……」


「そんなことよりさっきの魔法がなんなのか教えてくれないかしら?」


 サキが腕を組んでこちらを睨む。


「そうだ。あれほどの魔法をどうやって!?」


 カーターも真剣な目つきでこちらを見ている。


「分かった分かった。説明するから」


 ということで、再び説明に入るのであった。

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