表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
249/502

248話 見学ツアー 工房編

前回のあらすじ「アミューズメントパークに入場」

―「空中庭園デメテル・遊歩道」―


 高い木々がある道を歩いていく僕たち。ここにある背の高い木々はこの庭園の木造施設の修復に使われるらしく、木こり服のミニポウさんが間伐作業をしている。


「ここの木々……流石ね。まさかフソウの木々がこんな風に存在するなんて……」


「ええ。ソーナ王国の王都にあるブルーフォレストの木々のように周囲の魔素を溜め込む伝説の木、魔力の伝達力、放出力がともに高く、魔法使いの武器に使う木材としては最高の素材です」


「へえー。そうなんだ……後で少しもらえないかな?」


「ふふ。泉様なら自由に持っていてもらって結構なんですよ?どうぞ必要な量を持っていてください」


「管理者特権って凄いッス……」


 少しばかりの余談。会話のタイミングを見計らって、先ほどの話の続きを話してもらうために、前にいるセラさんに声を掛ける。


「セラさん。それで……話の続きを」


「そうですね……まずはイレーレについてですが、この星は元々イレーレという人種が住んでいました。その姿は人間に近いものでしたが……口は無く。黒い大きな目が特徴的でしたね」


「口が無いって……意思疎通はどうしてたのよ?」


「テレパシーです。彼らはそちらの言語で言うならサイキッカーと呼ばれるような人種だったのです」


「エスパータイプだったんッスね……」


「そうです」


 シリアスな話にボケを入れてくるフィーロ。お陰で、都市伝説に出て来るグババとかヒューメイリアンをイメージしたのに、何でも覚えるかわいいエスパータイプのキャラになってしまった。セラさんはそれを気にせず話を続ける。


「彼らはサイキッカー……その能力は多岐に渡り、炎、水、風、土……時にはテレポートや収納……それこそ今の魔法文明の能力を、その身一つで使う事が出来ました。しかし、そこに個々の才能、血縁などによってどうしても得手不得手があり、それを解決するために魔石の技術が生まれました。これがイレーレ人と魔石の最初の物語ですね」


「そんな文明があったなんて……」


「そして……彼らもまた、人間と同じように争いが絶えませんでした。それこそ今の地球と変わらないかもしれません」


「……それは地球に住む身として痛い話ですね」


「でも、争いが不毛だと感じ、平和を望む者達もいました。そこも同じです……コーラル帝国はそんな者達が集まる国でした。そしてまだコーラル帝国とユグラシル連合以外にも他の国々があった頃にある発見がありました」


「それが……地球に繋がる転移魔法陣ですね」


 セラさんが僕の言った言葉に頷いて答える。


「元々は、迎撃強化の目的で作られた魔法陣の失敗作が始まりみたいだったそうです。そして、それを通り地球へやって来た彼らは安定したルートになるように魔法陣を調整、そして現地の素材を回収したそうです。そして……それにより、この世界の技術が大幅に進歩しました」


「進歩……?そんな文明に影響を及ぼす物が地球にあったと?」


「魔石の母材となりえる物が多かったのです。魔石の当初の作り方は、イレーレが数人集まり、能力を行使して一つの石を作る。というのが作り方だったんです。しかし、それだと生産能力は低く魔石の出来もバラバラで……イレーレの間ではどうやったら安定した魔石を作れるか研究されていたそうです。そして、その研究の中で地球の動植物を品種改良したところ、家畜のように体内で魔石を作る生物の作成方法が発見。これにより魔石を使った文明がより発展しました」


「この施設はその最盛期に建てられた栄華を誇った頃のコーラル帝国の遺産ってところですか……」


「その通りです。そして……クズ魔石しか作れない人間は……ペットや奴隷として扱われました。その際に品種改良してエルフやドワーフ、獣人と様々な種族を増やしていきました」


「クズ魔石?それって黒い魔石ってこと?」


「はい。黒い魔石はイレーレの住人にも使用できない魔石だったらしく。しかも、その魔石を持った人間は自分達と同じように魔法を使えるという管理するのに手に負えにくい存在になってしまったのです」


「それって……魔族?」


「それは違います。それが魔物と呼ばれる存在なのです。魔族はその後、魔王と名乗る者が作った魔物の強化個体といえる存在なのです」


「ねえ。一体、魔王って何者なの?」


 恐らく知っているであろう僕たちの敵の親玉。そして、その正体……歩を進めていたセラさんが立ち止まり、僕たちの方を振り向いてから静かに話し始める。

 

「魔王……統括管理者アンドロニカスはマクベス様と同じ時期に作られたマザーコンピューターです」


「マザーコンピューター……ってことはマクベス様って言われてる奴も同じマザーコンピューターってことかい?」


「はい。ただ、皆様が思うような置き型のマザーコンピューターではなく。イレーレをモチーフにして作られた。至高の人造ロボット……それがアンドロニカスとマクベス様です。彼らが作られた目的はユグラシル連邦の勝利の為、ユグラシル連邦が持つ最高の技術で作られました」


「動くマザーコンピューターなんて……とんでもない物があったものね」


「しかし……少し矛盾してませんか?ここはコーラル帝国ですよね?でも、マクベス様はユグラシル連邦で作られた……」


「その通りです。そして……それが全ての悲劇の始まりでした……と、一旦この話はここまでにして、皆様が一番見学したい建物の見学をしましょうか」


 右手を挙げるセラさん。そちらのほうを見ると、林道の中に埋もれるように作られたレンガ造りの建物が見える。


「今の話の続きも気になるが……」


「ええ。私達が求める施設の内部に入るのが最優先!!」


 研究者の血が騒いで、仕方ないのであろう。カシーさんたちが人には見せてはいけないような顔をしている。僕としては話の続きの方が気になるが……。


「薫?どうするのです?」


「こちらを優先するよ。あそこの3人が暴走しかねないし」


「ご迷惑をおかけします……」


 アリーシャ女王とミリーさんが謝罪する。カイトさんだけのためではないので謝罪は不要なのだが……。


「じゃあ!僕達の仕事場を案内するポウ!」


 今まで静かにしていたポウさんが先頭に立ち、工房へと案内を始めるのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「空中庭園デメテル・工房」―


「凄い……見た目も中世のヨーロッパの工房みたいだが、作られてるのは近代的……いや、最新鋭の物だ!」


 作業服を着たミニポウたちがトン!テン!カン!とリズムよくハンマーで金属を叩いたり、釜に入れた何かを数人で協力して取り出したり……まるで、アミューズメントパークの施設の中にいる感覚を起こさせる。


「こんな細かいパーツ……この軽さに色……ミスリルで作った物か!?」


「アダマンタイト……ヒヒイロカネ……ダマスカス……それらがインゴットで大量に管理されている……どうやってこんなに?」


「ポウ!その問いなら、一つは僕たちの体ポウ!大切な記録が入っているチップ以外は古くなったら、一度溶かして、再度作り直す際にインゴット状にしているポウ!それと、長時間を掛ければ自動金属生成装置で勝手に作ってくれるポウ!」 


「それ!どんな仕組み何だい!?」


「分からないポウ?維持するのは出来るけど仕組みは知らないポウ」


「な……!?これは早く解明しないといけないな……いつまで動き続けてくれるか分からないしな……」


「それなら管理人しか入れない書庫にあると思うポウ。読む際は所長の許可とこの工房内のみで読んで欲しいポウ」


「くぅ~……また、許可が……薫!私をあなたの養子に……!」


「出来ませんから」


「薫兄に同じく。そもそも、血縁関係者じゃないと意味が無いですよ?」


「そうだったわね……それじゃあ、管理者としての権限で……」


「アンジェ様から血縁関係者以外が所長になる場合は、マクベス様のご許可が無いとダメ!と言われてます。ですから、現在通信が切断されている以上は無理ですね」


「そんな……」


 肩をガックシと落とすカシーさん。管理者の条件に血縁関係者は、僕はどうかと思ってたのでいずれは、頑張れば誰でもなれるチャンスがある条件にしたいのだが……すぐには無理か……恐らく、魔王であるアンドロニカスを倒すまでは……。


「とりあえずは許可をするので、本の閲覧いいですか?」


「ポウ!そうしたらこっちポウ!」


 案内されて2階の所長室に入る。中はキレイに整理されていて、部屋の両端に本棚、部屋の奥には所長が執務するための机と、隅に床に置くタイプの大きい地球儀らしき物が……あれ?


「あれって……地球儀だよね?」


「そうだよ!」


 カイトさんが机の上にある地球儀を眺め始める。


「これってグージャンパマの地球儀だよ!これを調べれば、より詳しく地形を知ることが出来るよ!!」


「あんなのがあるなら人工衛星的な物もあるのかな?」


「あることはありました。でも恐らく、もうありません……イレーレを滅ぼすために落とされたはずですから」


「それって……」


「それと、その地球儀ならこの庭園にいくつかあるはずなので、薫様のご許可があれば、持っていっても差し支えないかと」


「「「……」」」


 猫のような、じーー……。っとした目でこちらを見てくる研究者3人組。


「許可しますから……」


 僕がそう言うと3人がハイタッチして大喜びするのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ