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246話 ブルードラゴン戦……?

前回のあらすじ「デメテルの滞在時間およそ1時間程」

―「レルンティシア国仮役場・モノリス周辺」―


「いた!」


 僕たちは空中庭園デメテルから一直線でモノリスのある湖まで下りて来た。行きにいたスピア・スピノスの群れはどこかへ行ったらしく、襲われることは無かった。


ギャアアアーーーー!!!!


 こちらを見て威嚇する青い鱗を持ったブルードラゴン。そして口から水球を放つが、ユニコーンたちはいとも簡単に避けて、対峙しているアリーシャ女王たちの所へ着地する。


「アリーシャ様!ご無事ですか!!?」


「ミリー!ええ。こちらは大丈夫ですよ」


「いきなりアレが現れて……とりあえず様子見なんだが……」


 カイトさんが今いるログハウスの影からブルードラゴンを覗きながら話す。周りの見渡すと、隊員さんが武器を持ち、同じように警戒している。


「どうしてここに来たんですか?」


「分からない……でも、攻撃してこない点と何か迷っている様子からして、何か事情持ちだと思うけど……」


「ああ……アレッスね」


「そうなのです」


 レイスとフィーロが言うアレ。ゴールドドラゴン同士のボスの座を賭けた争いのことだろう。


「やっぱりそうだよね……はあ、どうしてここに?」


 カイトさんもそれが原因だと考えていたらしく、大きな溜息を吐いている。


「薫さん。何か案は……」


「それは……」


「私に任せて!」


 僕の話を遮り、自信満々な表情で言い切った泉。何かいい案があるのだろうか?


「薫兄!チョット手伝って!」


「手伝うって……僕は何をすればいいの?」


「いかにも偉そうな雰囲気で立ってればいいよ!」


 いかにもって……そう僕が思っていると、泉に袖を引っ張られ、ブルードラゴンに注意しつつ建物の陰から出て来た。


グルルル……!!!!


 唸り声を上げ、こちらを睨みつけるブルードラゴン。


「どうするのこれ?」


 ブルードラゴンの目線を向けたまま、横にいる泉に問いただす。


「まあ……任せて!」


 そのまま、偉そうに立ってて!と指示されたので腕を組んで胸を張った状態で立つ。


グルルル……!!!!


「ええーーい!!静まれ静まれ!!」


 泉がそう言って、手に持った銀色の鱗を前に出した。


「この鱗が目に入らぬか!!」


 泉が前に出した銀の鱗。それはハクさんからもらったシルバードラゴンの鱗だった。それを見たブルードラゴンが唸るのを止めて、睨むために細めていた目を大きく見開いた。


「このお方をどなたと心得る!恐れ多くもシルバードラゴンであるハク様のご盟友!成島 薫様である!頭がたかーい!控え折ろーーう!!」


 どこぞの黄門様の付き人のセリフをもじった決まり文句を大声で言い放つ泉。ブルードラゴンは目を見開いたままこちらを見つめたままだ。


「……まさかこれ?」


「うん」


 いや。鱗なんて偶然手に入る可能性のある代物だし……。そもそもご盟友かどうかも怪しいんだけど……?


ズサアアアアーーーー!!!!


 すると、ブルードラゴンが勢いよく頭も体も地面につける。口をよく見ると、カタカタ……。と震えている。僕たちでいうところの土下座だろう。


「ね?」


「いやいや……」


 通じちゃったよ……。先ほどの強そうな雰囲気は既に皆無で、今のその姿を見ると、取引先との仕事をミスって全力で謝罪している中年サラリーマンの姿にしか見えず、そちらの誠意は伝わったから頭を上げて欲しい気持ちになってしまう。


「シエル!お願い直ぐに来て!!」


 ブルードラゴンがいたたまれなくなってきたので、シエルを呼んでブルードラゴンの言葉を通訳してもらうのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―およそ十分後―


「ああ……やっぱりそうなんだね……」


グォオ


 ネコのしっぽ巻き座りみたいな座り方をしているブルードラゴンが返事をする。あの後、ブルードラゴンに頭を上げてもらって、事の成り行きを訊いてみる。すると、やっぱりリーダー争いが原因だった。グリーンドラゴンの夫婦は子育て目的だったが、このブルードラゴンは周りのピリピリした雰囲気が嫌になって、終息するまで別の場所で静かに過ごすつもりでここに来たそうだ。


「で、ここら辺を飛んでいたら、ちょうど湖が見えて、休憩の為に近づいたら私達がいて威嚇していたと?」


グォオ


「……だそうです」


 どうやら、このブルードラゴンは臆病な性格で、かつ人間を見たのはこれが初めてだったらしく、つい過剰に反応してしまったそうだ。


「あのスピア・スピノスの群れは、このドラゴンから逃げ出した奴らかもしれないわね」


「ああ……最強の捕食者ですもんね」


「ここら辺にドラゴンとまともに戦える魔獣っているんッスかね?」


「いないですね。王都が健在だった時にも、そんな報告はありませんでしたから」


「それより……このドラゴンはどうするのです?」


グォオ……


「迷惑を掛けないので、この辺りに住まわせて欲しいだって。ハクさんの知り合いである僕がいるなら安心できるって……って、僕ここに住んでないよ?それだから少ししたら帰らないといけないんだけど?」


グォオ。グゥオウ


「私の話を静かに聞いてくれる方々なら襲ってくることは無いだろうし、ここにいなくても連絡を取れるなら問題無い。何かあった時に、先ほどのように銀の鱗を見せていただければそれだけで戦いを避けるはずですから……だって」


 泉が僕の代わりに翻訳して、皆に説明する。


「何か……他のドラゴンがあっちこっちに飛んでくるってこと前提で話してるわよね?」


「そうだな……王様が聞いたら卒倒するな」


「アリーシャ様。今度の会議で、各国の代表の方々にこの事を伝えておいて頂きたいんですが……いいですか?」


「もちろんです」


「あ、そうだ」


 僕は思いついたことをブルードラゴンに提案する。


「ねえ?確か鱗っていらないんだよね?抜けたら、ここの人たちに譲って貰えないかな?」


グオッ!


 よし。了承を得られた。これでレルンティシア国復興のための資金稼ぎになるだろう。


「いいのかい!?今、君達の領事館にいるグリーンドラゴンより上の鱗だよ!?」


「大丈夫ですよ。私達、さらに上のレッドドラゴンの鱗を持っているので」


「倉庫部屋に大量に山積みッスもんね……」


「しかも、あんな部屋に……」


「そこの精霊二人組。目がどこか遠くを見てるわよ……?」


 領事館の倉庫部屋に鱗を保管してるのだが、もはや宝物庫なのに、ガードが手薄過ぎます!とクリーシャさんが呆れながら話していたのを思い出す。レイスとフィーロも表情や口には出さないが同じように思っていたのかもしれない。


「(二人のためにも、もっとちゃんとした部屋を用意した方がいいかな?)」


「(それはいいかもしれないけど資金とかは大丈夫なの?)」


「(大丈夫……使い切れずに溜まっていく一方だから……今後の事もあるしね)」


 泉と小声で話ながら、今度、領事館に厳重な金庫室みたいな部屋を造ろうと決める。何せ今度はデメテルで手に入れた素材や道具も持ち帰るかもしれないのだ。そう考えると急いで用意しなければならない。


ウォン……


 何かが起動するような音が聞こえた。音のする方を見るとモノリスに字が浮き上がっている。それだけでは無く湖から上空へと登っていく光の線も発生する。エアカーゴ……もしかしたら、ケーブルカーみたいな乗り物なのかもしれない。


「何だ!これ!」


「ああ。運行掲示板だったかしら?」


「運行掲示板?一体、何があったのか説明してもらえますかミリー?」


「実は……」


 僕たちがアリーシャ様に上での出来事を説明する。一通りの説明を終えると同時に下りて来ていた光の線をロープ代わりにしたケーブルカーのような乗り物が湖の上でかつ淵の近くに下りて来た。


「ハイテクノロジーだね……」


「これだけにどれだけの魔法陣や魔石が組み込まれてるかしら……」


 カイトさんとカシーさんが今、下りて来たエアカーゴを見て、ワクワクした様子で話し合っている。そして、エアカーゴの扉が開いて、そこからセラさんとポウさんが出てくる。


「下の安全を確認できたので下りて参りました」


「ポウ!?本当に町が無くなってるポウ!?驚きだポウ!!」


「二人共、お疲れ様。それで、またすぐに上に昇りたいんだけど……いいかな?」


「もちろんです。それで……」


「セラ……?これって完全な人型ロボット!?ヤバイ!こんな技術が残ってるなんて!」


 カイトさんがホログラムから、ロボットの姿になったセラさんを見て涙を流しながら感動している。


「ロボットのはずなのに……もはや、人にしか見えない!これだけの技術が空の上にあるなんて!!」


「……カイトさんがあんな様子なので早く行きましょう」


「かしこまりました。それでは皆さん!エアカーゴに乗って下さーい!すぐに発車します!」


「分かりました」


「お前らは乗らないのか?」


「うん。だって……見れば分かるでしょ?」


 ワブーの質問に、本当なら試しに乗ってみたいのだが……それに乗らせまいとシエルが僕の服を噛んでいる。


(乗ってよー!!)


 泉の方は噛みはしないが、泉にじゃれているので似たような感じだろう。


「……だな」


 ワブーはそう言って、エアカーゴに乗り込んだ。そしてエアカーゴが動き出すと同時に僕たちも再びシエルに跨り、再度、空中庭園デメテルへと戻るのであった。

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