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244話 空中庭園デメテル

前回のあらすじ「ラ〇ュタは存在したんだ!」

―「謎の空島」―


「何がおかしいんですか……?」


 戸惑うセラさん。どうして、こんな話の成り行きになってしまったのか困っているような表情をしている。


「クロノスの管理者を決める際に、レイスたち精霊がいたかな?と言ってたの覚えてます?」


「はい……それは覚えてますよ?なにせ……」


「お婆ちゃんに起動してもらって……協力者に魔法使い来るはずなのにどうして精霊の情報が無いんですか?」


「え?それは……」


「あの質問。本来なら僕と初めて会った日にするものだと思うんです。しかしセラさんはあのタイミングで話をしてきた……恐らく、ログを振り返った時に気付いてしまったんですよね?精霊たちがいるのが当たり前にいるように、自分が普通に接してしまったことに。そこで急遽、訊こうとしたことを思い出したかのようなフリをして精霊が僕たちの世界の住人だと思い込んでいた。だからこれまでのやり取りは普通だったと……」


「いや……そう!精霊は昔からいたんですよ!ただ……」


「タブレット……」


「え?」


「クロノスのタブレット……全て大きいですよね?まるで精霊が使用することを考えていないようで?」


「……」


「他にも精霊が快適に使えるサイズの道具がクロノスには一つも置かれていなかった……ポウさん?レイス達、精霊って昔からいますか?」


「ポウ?……初めて見たポウ?そんな種はこの星にはいないポウよ?」


「だそうですよ?」


「それは……」


 黙ってしまうセラさん。いきなり僕がこんな話をしてくるなんて思っていなかったのだろう。


「でも、どうしてセラさんはそんな嘘を付いていたの薫兄?」


「もしかして……魔族の手先ッスか!?」


「それはありません!ただ……」


「ただ……?何ですか?」


 セラさんを追い込んでいく僕。どうしてもここで色々ハッキリさせたい。


「す、すいませんでした!!」


 頭を下げて、謝るセラさん。


「アンジェ様とマクベス様から皆様を上手く誘導するようにと……」


「誘導……つまり、僕たちがクロノスを見つけて、あそこの資料を調べた後、グリフォンの巣に行くように上手く誘導していた。ところが、本来なら来るのはもっと後だったはずのここに来てしまった。本当は……他の赤い点……次はイスペリアル国辺りを調べてもらう算段だったんじゃないですか?」


「はあ~……仰る通りです。現イスペリアル国にあるクロノスの施設である物を見つけてもらい、それからここに来る予定でした。まさか皆さんが個々で空を飛ぶだけではなく聖獣と契約を結んでしまうなんて予想外だったんです……」


「なるほどなのです……でも、あるものって何なのです?」


「飛空艇だよ。転移魔法陣を使わないで、ここまで来るのに空を飛ぶのは必須だからね」


「何でもご存じですか……?」


「発想力が豊かなだけですよ。それでここは何の施設ですか?」


「ポウ!それは僕に訊いて欲しいポウ!ここの管理人なのポウ!」


「分かってますよ……それよりポウ。ある場所に一度立ち寄ってもいいですか?」


「ポウ?……ああ。あそこポウね」


「皆さんもそれでよろしいですか?」


「薫?いいのかしら?」


 カシーさんがセラさんの言葉を信用していいのかと尋ねてくる。何かセラさんが隠しているのは分かっていた。ただし、そこに悪意があるとは思っていない。


「いいよ。そこに向かった後に種明かしをしてもらえれば」


「はい。私の……知っている全てをお話します」


 僕はエリクサーが植えられている場所に近い舗装された道に出た後、道なりに歩いていく。そのまま歩いていくと古びたコンクリート製のような建物、公園とかにあるような屋根とベンチが一緒になった物。


「キレイ……」


 今度は目の前に花のトンネル。内部は藤のような花が垂れ下がっていて、鮮やかな薄紫色のトンネルになっていた。


「ここの庭の管理はポウ達がしてるポウ!」


「へえー……って、あなた私達が来るまで寝ていたのよね?」


「僕はそうポウ。でも……」


「ポポウ!」


 鋏にスコップ、じょうろなどの道具が乗ったリアカーを押している集団。その集団はポウさんより小さいポウさんそっくりの姿だった。


「ポポウ!……ポポ~ウ?」


「ポウ!左半身の事は聞かないで欲しいポウ!それより眠っている間の管理ご苦労様ポウ!」


「ポウ!ポポウ?」


 すると、小さなポウたちが僕たちに指を差す。


「お客さんポウ!それと、こちらはクロノスの管理者でここの代表ポウ!しっかり挨拶するポウ!」


「「「「ポウ!!?」」」」


 小さなポウたちが僕の方を向いて、頭を下げる。何かかわいらしいな……って。


「え?ここの代表?」


「うん?そうポウよ?ここはクロノス管理下の国立の公園。観光地であり研究施設でもあるポウ!」


「観光地だと?」


「ああ……まあ、そんな施設はあっちの世界にはよくあるわね」


 ワブーの驚きに対して、ミリーさんは納得している。資金稼ぎや知名度を上げるために、クロノスの中でも一般に開放していた施設ということだろう。


「じゃあ、下の岩のモノリスって……」


「ポウ……?運行掲示板の事かポウ?」


「運行掲示板?」


「それって、あっちの電車やバスのあれッスよね?」


「そうだろうね……」


「一般のお客様はエアカーゴに乗ってここまでやってくるポウ!どうするポウ?先にそっちを確認するポウ?」


「それは……」


 使用できる状態なら使用したい所である。何せここはレルンティシア国の領内にあるのだ。その代表であるアリーシャ女王には知ってもらわないといけない。


「セラさんは大丈夫ですか?ここも極秘に隠された施設ですよね?」


「そうです。だからこれから行く場所に寄りたいのです。そうすればエアカーゴの使用位なら問題ありません」


「じゃあ、そちらを優先しましょう薫。アリーシャ様をお呼びするのもそれからでもいいわ」


「では……」


 再び道なりに歩き始める僕たち。花のトンネルを抜けた先には、噴水付きの花壇と大きな屋敷が現れる。


「ここがこの空中庭園デメテルの中心地である建物ポウ!」


 僕たちはゆっくりと歩を進めて、その庭と屋敷を確認する。ところどころ建物があったが、ここはしっかりとした状態で残っていて数千年経過したとは思えない程、見事に維持されていた。


「ポウ。ここでは何を研究していたのかしら?」


「ここは植物をメインにした施設ポウ!見た目や香りのいい花を作ったり、品種改良してケガに効く薬草とか、ある特定の病に特効がある薬草とかを人工的に作り出したり……あ、ちなみにここでの最高傑作はあのエリクサーだポウ」


「へえ……」


「それと……ポウ達、コッペリアの製造だポウ」


「コッペリア?」


「そうだポウ!小型で人の役に立つ人形をコンセプトにしたロボット……それがコッペリアだポウ」


「あなたのようなロボットが昔は多くいたのかしら?」


「ここだけだポウ!僕たちが一般に出回る前に戦争が激化してそれどころじゃなくなったポウ!既に作られた僕たちはここの管理を言いつけられて、それからずっと管理してるポウ」


「ここを……ずっと?」


「うん?そうだポウよ?何か悲しい表情をしてるけど……どうしたポウ?」


「……外の世界を見たいとは思わなかったの?」


「うーーん……特には無いポウ。皆と仲良くここで生活していたから淋しく無かったポウ」


「そうか……」


 泉が訊いたこと、僕も同じことを思ってしまう。命令を忠実に守り、数千年もここで仕事をし続けるポウたち。人間である僕たちの感覚からしたら、それは籠の中の鳥じゃないのかと思ってしまう。


「ポウ!」


 そんな事を思っていると、建物の入り口から、小さいポウがこちらへと何か平べったい物を持って飛んでくる。


「ポウ!ポポウ!」


「ありがとうポウ!」


 それを受け取るポウさん。


「ああ。スペアの着ぐるみね」


「そうだポウ!いや~……スリープ状態に入ってから数百年も経っていたらこうなってもおかしくないポウね……見ちゃダメだポウよ?」


 そう言って、近くの木の裏に隠れて着替え始めるポウ。ダメって言ってるのに行こうとするカシーとワブーを羽交い締めにして押さえ込む。


「薫!放しなさい!私は研究者として……!」


「そうだぞお前ら!あんな存在を見せられて……!」


「大人しく着替え終わるのを待つッス」


「なのです」


「人?……まあ着替えを覗くなんてダメだよ。本人がダメって言ってるんだから」


「「放せーー!!」」


 カシーさん程度なら抑えるのは容易である。ワブーはレイスとフィーロに両脇から押さえ込まれてるし問題無い。少しの間、そんなくだらない格闘をしていると、全身を着ぐるみで包み込んだポウさんが現れる。


「おお!かわいい!」


 泉が飛んでくるポウを抱きかかえて頭を撫でる。その姿はぬいぐるみをかわいがる少女にしか見えない。


「泉?そのポウって軽いのかしら?」


「軽いですよ?ミリーさんも抱いてみます?」


 泉の提案に乗って、ポウさんを両手で抱きかかえるミリーさん。


「中は機械だから抱き心地悪いかと思っていたけど……そんな訳じゃないのね……」


 ポウさんの意外な抱き心地にミリーさんが驚いている。


「くっ!」


「チャンスを逃した!」


 両膝を付いて残念がるカシーさんたち。覗きは犯罪ですよ?


「この着ぐるみはどうやって手に入れたのかしら?」


「それは屋敷に入れば分かるポウ!」


 ミリーさんの両手から離れて、皆を屋敷の中へと誘おうとしているポウさん。僕たちは導かれるまま屋敷の中へと入っていくのだった。

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