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243話 管理者ポウ

前回のあらすじ「空島発見!」

―「謎の空島」―


「そこに下りようか」


 シエルに指示して、島の先端に下りた僕たち。その後に泉たちが乗っているユニが下りてくる。


「凄いわね……」


 カシーさんが辺りを見て感嘆の声を上げる。上から見た空島は植物が生えていて、さらに人工的な建物に舗装された道があった。さらに今下りた所はお花から光の粒子が空へと舞い上がっている。


「綺麗……」


「お花……じゃなくてこれってエーテル?」


「チョット待て……!?」


 ワブーがその花に近づいて観察を始める。


「エーテルの葉は先端がとがってるが……これは二つに分かれている……」


「……花も咲き方が違うわね」


 いつの間にかユニから下りて、ワブーが見ている花とは別の奴を観察しているカシーさん。


「これはエーテルじゃないぞ……おそらくエリクサーだ」


「あのエリクサー症候群を引き起こす伝説の……」


「泉。それはゲームだけッス」


 その病気は僕も罹ってるな……。まあ、絶対にゲームとは違う効果なんだろうけど。


「と、それでエリクサーってどんな薬草なんですか?」


 エリクサーを摘んで、それを細かく観察しているカシーさんに効能を訊いてみる。


「エーテルはそれを使う事でハイポーションを作れるわ。その効果は大ケガを一瞬にして直したり、生まれつきの体の障害を取り除く効果がある。そこまではいいわよね?」


 僕はその問いに対して黙って頷く。


「そしてエリクサーはそれらの効果に加えて、どんな病をも治すと謂われてるわ……。しかし……」


「これがお伽噺のエリクサー……ね」


 ミリーさんもいつの間にかシエルから下りていて、カシーさんと同じようにエリクサーを見ている。


「ミリーさんも知ってるのです?」


「……これがあったならレルンティシア国の悲劇は防げたとアリーシャ様は仰ってたわ……そんなのは存在しないとも言ってたけど」


「存在しない?」


「エリクサーは文献上に残っているだけの物なのよ。その昔、不治の病を治すために多くの時の権力者達がこぞって、冒険者に探させた伝説の薬草……発見例は指で数えられるほどしかなくて、しかもこんな群生で発見したという例は無いわ」


「けど……これって、本当にエリクサーなの?」


「特徴はエーテルと同じように魔力の粒子を放出し、葉の先端は凹型。花弁の枚数が倍の20枚……これはその特徴全てに当てはまってる。ほぼ間違いないだろう」


「あ、それなら……」


 僕はアイテムボックスに入れていた、投影機を出す。


「ここは……」


 そこからセラさんが映し出されて、辺りを確認し始める。


「セラさん。ちょっといいですか?」


「あ、はい薫様」


「この薬草なんだけど……分かるかな?」


「これですね……これはエリクサーですね」


 セラさんが自信をもってエリクサーと断言した。


「エリクサーがどんな物か知ってるのか?」


「はい。エリクサーは超高山植物と言われる植物で、はるか上空……薫様の世界で言うなら成層圏に近い対流圏で育ちます」


 え?そんな所に生息って……。


「そんな高い山ってグージャンパマにあるんですか?」


「いいえ。実際にはそのような条件を疑似的に作れば育つという意味です。グージャンパマにもそんな高い山は存在しないですし」


「しかし……ここはそれと同じ環境なのか?周りを木々を見渡すとそんな高山に生息する植物には見えないのだが……」


 僕も近くの木を見ると、種類も名称も不明だが、そこら辺にあるごくごく普通の木にしか見えない。


「それは……」


「ねえ!皆!!何か来るよ!?」


 泉が指差す方向を見ると、そちらからカシュン、カシュン……と、音を立てて走ってくる青いロボットらしき2体がこちらへと駆け寄って来ている。


「……薫。あなたの話していたゲームにはあんなロボットが現れるシーンはあったかしら?」


「無かったですね……ねえ。レイス?」


「なのです!」


 そんなやり取りをミリーさんとしているうちにも、ロボットが近づいてい来る。ミリーさんは銃を取り出し、僕たちも武器を構える。そしてロボットが僕たちのいる場所から少しだけ離れた場所で立ち止まる。ロボットの大きさは大人より少し小さい位で、その両手は火器になっている。また膝は折曲がっていて、中腰の体制をキープしている。


「ケイコク!ケイコク!ココハ、クロノス研究所ノ敷地内デス!部外者ハ即刻、立チ去リナサイ!サモナケレバ、強制的ニ排除シマス!」


 アダマスのような機械音でこちらに警告を発するロボットたち。その中にクロノス研究所というワードが出て来る。僕はアイテムボックスから魔導研究所クロノスで使用している入場許可証であるバッチを取り出す。


「これって許可証になるかな?」


 僕の問いに対して、一体のロボットが僕の方へ近寄り、手に持っているバッチを確認し始める。


「……魔力ノ波長ヲ確認…………波長ガ一致……」


 このロボットには両目らしきものがあるのだが、その目が赤から青に変わる。


「大変シツレイシマシタ……許可証ヲ確認致シマシタ。ココニ滞在中ハ、オ連レノ方々モバッチヲ身ニ付ケテ下サイ」


 ロボットの指示を受けて、バッチを目に見える位置に付ける僕たち。


「確認……アリガトウゴザイマス……ソレデ、今回ココニ来タ、ゴ用件ハ?」


 ご用件か……何て言おうか、僕が皆に一度確認すると任せると言われてしまった。僕は少しだけ考えてロボットに用件を告げる。


「ここの管理者に取り継いでほしい。緊急のためにアポイントとか取っていないんだけど可能かな?」


「管理者……ポウ様ニ連絡…………少々ココデ、オ待チ下サイ」


「もう来たポウ~!!」


 僕たちが見ている方向とは違う所から声が聞こえた。どうやらロボットがどこかへ通信を入れるより早く。語尾に自分の名前を付け、アニメだったら絶対マスコットポジション的な声をしている管理者のポウさんが来たみたいだ。僕たちは声のした方へ振り向いた……!!?


「ポウ~!!久しぶりのお客さんだポウ~!!…………なんで、そんな物騒な物を向けるポウ?」


 ポウさんの言う通りで、僕はそれぞれの武器を構えている。ポウさんの姿はまさにマスコットキャラクターに相応しい姿をしていて、その体はフワフワと浮いていて、赤ちゃん程のサイズ。ピンクと白を基調とした猫やウサギを掛け合わせたような姿、さらに耳は動物のそれに花を融合させたような形になっていて、とても可愛らしい見た目をしている……はずだったのだろうが……。


 僕は驚いているポウさんに、アイテムボックスから手鏡を取り出してポウさんに向ける。


「ポウ?」


 鏡に映る自身の姿を見るポウさん。


「ポーーウ!!!?バケモノだポーーーウ!!!?」


「映ってるの……君だからね?」


 自身の姿を見て驚くポウさん。無理も無いだろう。どこぞの未来から来た侵略ロボット兵器みたいに半分が剝き出しになっているのだから。左は可愛らしい外観をしているが、右は中身である機械がハッキリと見えてしまっている。


「あれってマスコットっていうより、あの男爵のパチモンっぽいッスね」


「あ~……分かるかも」


 僕の横で泉たちがどこぞのロボットアニメの敵キャラの話を始める。確かにアレも体の半分で別れているけど、それとは全く似ていないと思うんだけどな……。


「ポーーウーー!!!?」


 その後、ポウさんが落ち着くまで僕たちはしばしの間、そこで足止めを喰らうのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―それから十数分後―


「ポーーウ……。まさか、そんなに時が経っているなんて……」


 落ち着きを取り戻したポウさん……改め、ポウに僕たちが何者で、何のためにここまでやって来たのかを説明した。


「うーーん……でも、納得ポウ。そちらにセラがいるポウしね……」


「え?セラさん知り合いですか?」


 泉がセラさんに質問する。


「すいません……メモリーには無いみたいで……」


 セラさんがそう説明する。ここでそろそろセラさんに聞きたいことを訊くとしよう。


「セラさん……嘘つかなくていいですよ。秘書って言うのは建前で、お婆ちゃんから僕たちを導き、そして監視する役目を負ってるんですよね?」


 僕のその言葉に驚いたような表情を浮かべるセラさん。そして皆もセラさんの方へと視線を向ける。


「な、何を言ってるんですか薫様?私は……」


 僕は自分の武器である四葩をアイテムボックスから取り出した。


「これ。この武器に使われた宝石であるタンザナイトが最初の疑問だったんです」


「……」


 静かになったセラさん。僕はそのまま話を続ける。


「僕が四天王であるアクヌムと戦った時、この武器で攻撃した途端にアクヌムに弱体化を引き起こしたんだけど、その原因は、間違いなくこの青く光を放つ刀身だと思うんです」


「それが……何か?」


「タンザナイトには魔族に悪影響を及ぼす……しかし、セラさんは見た目を変えるのに使えるというだけで、そんな効果があるとは話してくれなかった。それとあの施設に保管されていた物資のリストを見ると、タンザナイトが保管されているという記載は全く無かったんです。つまり、あの時セラさんが渡してきたタンザナイトはお婆ちゃんが後から持ち込んだ物としか考えられないんですよ」


「それは言い忘れてただけで……」


「他にもおかしなことを自分で言ってるのに気付いてなかったんですね?」


「え?」


 何のことか理解していないセラさん。僕はさらにここからセラさんに言及するのだった。

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