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242話 雲より高い場所へ……

前回のあらすじ「ユニコーンは気付ていた」

―「レルンティシア国仮役場・食堂」―


「ミリー。これを持っていってくれ……空気中に変なウイルスがいないかこれで調べられる。それと皆もこのマスクを」


そう言って、カイトさんが軍とかで採用されるようなガスマスクを皆に手渡してくれた。


「顔を覆てるのに喋りやすいッス」


「ただ、重く感じるのです」


 レイスとフィーロの二人がマスクをしながら会話をしている。ちゃんと精霊も使える小さいやつを用意しているなんて……改めてレルンティシア国の方々の行動力と技術力に驚かされる。あの後、空に何があるか分かった僕たちはこのモノリスの前に集合した。その後、誰が行くかを相談した結果、僕たちと泉たちにカシーさんたち。それにミリーさんが同行する。先ほどまで私服だったミリーさんだったのだが、今はサバイバルベストや銃を背負ったりしている。


「けど……まさか、本当に空に何かがあるなんて……」


「クロノスのような魔導研究所でもビックリだったけどね……」


 まさか、本当にゲームのような展開になったことに少し呆れている僕と泉。


「やったわ……新たな古代文明の遺産の発見!今度はどんな発見が……」


「もう空に浮いている時点で大発見なんだが」


 空に何かあると知って、そこに眠るロマンに期待するカシーさんとワブー。


「とりあえず、こんな所かな……」


「まだ、アイテムボックスの容量にまだ余裕があるけど、これだけでいいの?」


「そこにはこれから行く場所で見つけた物を入れて来てくれ。空き容量が多い方がいいだろう」


「頼みましたよミリー……」


「お任せください!」


 念入りに準備を整えるミリーさん。ミリーさんたちの会話のタイミングを見計らって、僕は声を掛ける。


「ミリーさん。準備はいいですか?」


「ええ。いつでもいいわよ。そっちは?」


 ミリーさんに訊かれた僕たちは首を横に振って、準備完了を伝える。


「そうしたら、ミリーさんはシエルの方に……カシーさんたちはユニの方に乗って下さい」


(いよいよ出発だーー!!)


 シエルがそう叫ぶと、泉たちのユニコーンであるユニが雄たけびを上げる。おそらく今のシエルと同じようなことを言っているのだろう。そんな士気が高まっているユニコーンたちの背中に乗り、いよいよ空にある何かへと出発の態勢が整った僕たち。


「お気をつけて!」


「いい収穫がある事を期待してるよ!!」


「任せて下さい!ねえ?」


「おうッス!!」


 泉たちが元気良く返答したところで、アリーシャ女王とカイトさん。それに他の隊員さんから激励を貰いつつ、空へと僕たちは翔け上がっていった。


「鉄壁」


 魔法を使える僕たちは自己強化魔法をかけておく。ミリーさんは衣服についていた謎のバッチを起動させている。


「何したのです?」


「魔石を使った自己強化……というよりライフスーツね。これ一つで防弾チョッキの役目は勿論。潜水服や登山服など色々な効果が発揮されるの。さらにこっちに来れるようになって魔獣の素材も使えるようになってるから、そこそこ強力な防護服になってるわ」


 そう言って、起動させためのバッチを見せてくれるミリーさん。そのバッチをよく見ると複数の魔石をそのバッチに一つにまとめてるのが分かる。


「なるほど……そんな手もありだったか……私、それぞれの衣服に魔石を取り付けるための金具を取り付けたのに……」


 右を向くと、いつの間にか泉たちのが乗っているユニが近くまでやってきていた。


「魔法使いはそれの方が強力だし効率がいいわ。あくまで人工的に作るならこれが良いって言うだけ。例えるなら……薫がロロックの攻撃を受けて死ななかったけど、私の場合は確実に死ぬわね」


「それって結構な差じゃないですか?」


「ええ。だから、あまり高い場所を飛ぶようならあなた達に付いていけなくなるかもね……」


 そう言いながら、足のフォルダーから銃を抜くミリーさん。それを見た僕たちも周囲を確認すると、複数の飛行する生物が見える。


「結構な数ね……」


「俺達が知らない魔獣だな……ミリー。何か情報はあるか?」


「アリーシャ様から聞いてるわ。魔獣名はスピア・スピノス。鋭い嘴で獲物を貫くワシと言えばいいかしら。風魔法を使って自身の移動速度を上げていて、さらに群れで襲い掛かるから中々、倒すのに苦労する魔獣よ。弱点としては……風魔法がその移動速度を上げるだけっていうのと、攻撃方法もその嘴で突き刺すか叩くかのワンパターンってところね」


「でも……この数は大変じゃないかしら?」


 話している間も集まってくるスピア・スピノスの群れ。その数は百は超えているだろう。


「そうね……振り切った方が早そうだわ」


「ユニ!」


「シエル!」


(グリフォンやドラゴンならともかく。あんな魔獣じゃ相手にならないと思うけど?)


 速度を上げて、さらに上に駆け上がるシエルたち。その速度のおかげで、空がスピア・スピノスに覆われる前にその上へと逃れられた。そして、スピア・スピノスの群れは僕たちの後ろを追いかけてくるように飛んできた。


「オクタ・エクスプロージョン!!」


 そこにカシーさんたちが複数の爆発する玉を放射、そして爆発を起こして群れを焼き払う。ただし、爆発直前に避けたやつもいて、それがこちらへと突進を仕掛けてくる。


ダン!ダン!


 片手はしっかり僕の体を掴んだ状態で、銃を発砲するミリーさん。しかし移動しながらなので、なかなか当たらない。


ピィーー!!


 そこから一匹が僕たちに向けて突撃してくる。


「水連弾!!」


 僕は小刀にした鵺を前に出して、その先端から複数の水の弾を散弾にして発射する。突進を仕掛けて来た一匹のスピア・スピノスは避けようとするが、一発が直撃し失速。そのまま落ちていった。


「ウインド・バースト!!」


 泉たちも杖を構えていて、スピア・スピノスの群れを風の爆弾で盛大に吹き飛ばす。その間もユニコーンであるシエルとユニは更に上へと翔け進めていく。スピア・スピノスに襲われた場所の時点でかなりの上空で、今はもう僕たちがいつも飛んでいる位置より高い。


「本来なら高山病になりかねないけど……流石、魔法の道具ってところかしら。まだまだ行けそうね」


 銃のカートリッジを交換しつつ、自分の来ている装備の性能に感心するミリーさん。


「これなら宇宙産業でも十分にアピールできますね」


「そうね」


「二人共!左から来るのです!」


 冗談を言っている僕たちにレイスの注意が入る。すかさず左に攻撃をする僕たち。その間もスピア・スピノスの数が増えていく。


「……ここまで執拗に追いかけてくるなんて」


「彼らも生物……わざわざ私達を食料にするために襲ってくるには少しおかしいのです」


 二人の言う通りで、どんどん数が増えるスピア・スピノス。僕たちを食べるにしても多すぎる気がするし、何よりかなりの高度なのにまだ追いかけてくる。


「どうするのです?」


「シエル。目的地まで、後どれ位かかりそうかな?」


(すぐに着くよ。半分以上は来てるから)


「なら、振り切ろう。この後を考えたら、体力は温存したいし」


「その意見に賛成よ」


 ミリーさんがサバイバルベストから手榴弾らしい物を取り出す。その形にどこか見覚えが……。


「凄い音と閃光を放つから投げたら、猛スピードで移動して!!」


「あ……グレネーード!!」


 何を投げるのか分かった僕は大声を上げて、泉たちに注意喚起する。これから何をするのかが分かった泉はユニに指示を出して、僕たちの前を飛び始めた。


「えいっ!!」


 スピア・スピノスに向けて、グレネードを投げつけるミリーさん。僕たちが急いでそれから遠ざかるためにスピードを上げたタイミングでグレネードが爆発する。そのまま、目の前の雲に入り込み、そのまま雲の反対側へと抜けた。


「もう……来てないのです?」


「そのようね……」


 持っていた銃をフォルダーにしまうミリーさん。しばらく経っても何も付いて来ていないので諦めたのだろう。僕たちはスピードを落として、再び並走を始める。


「それで……目的の何かはどこかしら?」


「見当たらないッス」


 カシーさんとフィーロがキョロキョロと視線をせわしなく移して周囲を確認する。安全が確認できたところで、シエルとユニに止まってもらって僕たちも辺りを確認するが、下は雲が流れているだけで、周りに何かある様子は無い。


「何も無いのです」


「そうね……薫?」


「え?」


 皆の疑問に答えるために、シエルに聞いていた僕はその回答の意外性に驚く。


「嘘でしょ!?」


 泉の驚いた声がする。きっと泉も聞いて驚いたのだろう。


「二人共どうしたのよ?何って答えたのよ?」


「えーと……」


 シエルの話の通りなら……僕は鵺を黒刀にしてそれを何も無い左に突き刺す。すると、先端が消えてしまった。


「「「「……え?」」」」


「本当だ……もう、目と鼻の先だよって言われて驚いたけど……」


「な、なにこれ……空間を歪ませるとかそういう魔法なの?それとも私達のミラージュ!?」


 泉が目をキラキラさせながら、この摩訶不思議な現象を考察している。本来ならカシーさんたちがこの役目だと思うのだが、肝心のその二人はまだ驚いている最中である。泉以外が驚いている所で、シエルに頼んでそれにもっと近づいてもらって、今度は手をその中に入れる。


「どう?」


「大丈夫みたい……」


 僕はさらに顔を突っ込む。


「うわ……!?」


「何!何が見えたの!?」


「泉……」


「何?」


「ここまでゲーム通りじゃなくていいと思ったよ」


「それって……」


 すると、泉はユニに頼んでそのまま、その境界に突っ込んだ。僕たちも遅れてその後に続く。


「……こんなのが上空にあったなんて」


「これが……」


 驚きのあまり、黙ってしまう皆。無理も無いだろう僕たちに視界の下に広がるのは明らかに人の手が加わったであろう大きな浮き島があったのだから。

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