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240話 レルンティシア国の調査パート1

前回のあらすじ「目的地に到着」

―その日の夜「レルンティシア国仮役場・宿泊棟」―


 暗くなった所で、今日の調査を終了し、集落にある宿泊施設に泊まることになった僕たち。各個室にはトイレとシャワーを完備していて、よく1ヶ月でここまで準備した物だと恐れ入ってしまった。ちなみに夕食は隣にある食堂で既に済ましている。


 そして、今は宿泊棟にあるラウンジスペースで明日の予定を話し合っている最中である。


「うーーん。困ったわね……」


「そうですね……あのモノリスには何か特別な力が働いていると思っていたのですが……」


 アリーシャ女王とミリーさんが困っている。仕方ないだろう。あの後、モノリスを少し削って採取したサンプルを科学棟にある機材を使って鑑定したところ、ごくごく普通の石と判明し、これによってモノリスが何の変哲もないただの石と分かって僕たちも困惑しているのだから。


「でも、それだとただの岩なのに何であの形を維持し続けられるのかが分からなくなるよね」


「なのです。それにあのモノリスってコケが生えて無かったのです」


「そう言えばそうッスね……長年放置されていたら蔦が絡まっていてもおかしくないッスもんね」


「誰か管理しているならあり得ると思うんですど……そんな訳無いですよね?」


「泉の言いたいことは分かるよ。確かにあのモノリスを24時間観察してるわけでは無いし、こっそり誰かが……」


「お化けかしら?」


「この世界ならいても不思議では無いですね。なんせスライムみたいな四天王がいましたから」


「それは特別だと思うけど……でも、その可能性を捨てきれないのがグージャンパマなのよね」


 この魔法がある世界では、お化けはいない。とは言い切れない。それこそお化けのような特性を持った魔獣がいてもおかしくないのだ。ただし、ここに滞在している隊員さんたちが何らかの被害に遭っているという話は出ていないので、そんな魔獣がここにいるという可能性は低いだろう。


「……話が逸れましたね。それで、どうしましょうか?モノリスを調べればそれで何かしら分かると思っていたのですが……」


「アリーシャ様と同じ、僕も君達が調べたら何かしら起きると思ってたんだけどね」


「そんな都合のいい話が続かないですって!まあ、薫兄がフラグを立てれば何かしら起きるかも……」


「何でそうなるの?」


「頑張るのです薫!一級フラグ建築士の名に懸けて!」


「そうッスよ!ここは男としてカッコイイところを見せつける所ッスよ!」


「都合のいい時に男扱いしないでくれないかな?」


「……何だろう。君のその格好だと威厳が無いんだが?どうしてウサギの着ぐるみパジャマを着てるんだい?」


「……」


 カイトさんのその問いに対して、黙ったまま隣の泉たちを睨みつける。それを見て何かを察したのだろう。カイトさんはこれ以上は詳しく訊こうとしない。ちなみに、このウサギの着ぐるみパジャマは前に女子会で着たものである。


「でも、可愛いわよね」


「そうですね違和感が皆無ですね。私も……」


「アリーシャ様!?」


「あ、欲しいのなら、お代を頂きますけどお作りしますよ。道具も材料もアイテムボックスにあるので」


「そうでしたらお願いしますね♪」


「後、この姿の薫兄と一緒にポージングして写真を撮らせて頂ければ……」


「それは護衛である私の方からお断りさせてもらうわよ?今後、国を背負う方なんだから」


「まあ、当然ッスね」


「と・に・か・く!!で、どうする?捜索範囲を広げて調べてみる?それとも、もっと念入りに調査してみる?」


「それは……」


 ミリーさんのその問いに対して、僕は手を顔に当てて黙って思索する。この辺りは隊員さんたちがずっと滞在していた。それなのに不審な物が見つからないというのは、ここに何も無いという可能性が高い。それなら捜索範囲を広げるというのが正しい判断な気もする。でも……。


「明日もこの辺りを調べてもいいですか?やっぱりあのモノリスがある以上、その近くに何かあるというのが普通だと思うんです」


「オッケー……そうしたら、どこを調査するかなんだけど……」


 ミリーさんはそう言って、この周辺の地図を広げる。


「こんなのも出来上がってるんですね……」


「周囲の把握は必須だよ。特に街づくりとかね……で、この周辺で怪しい場所は……」


 僕たちはその地図を眺めるが、特に怪しい物は見当たらない。いや、ある事にはあるのだが……。 


「このモノリスと旧王都かな?」


「他に不審な物は……ここ。森の中で少し開けているのが怪しいってくらいかな」


「そうしたら、明日はこの3ヶ所を手分けして調べましょうか。私達は旧王都を調べたいわね」


「私も私も!ねえフィーロ?」


「そうッスね!」


「じゃあ、僕たちはその開けた場所とここの調査かな……レイスとセラさんはそれでいいの?」


「問題無いのです」


「薫様のご指示なら」


 二人がこの振り分けに問題無いという事なので、その後、さらにどう調査するかを皆で案を出し合ってこの話し合いは終わった。


「私達は復興のためにやらないといけない事があるから、明日の調査は頼んだわよ」


「もし助けが必要な場合は気兼ねなく仰ってくださいね」


「はい」


 その後、僕たちはすぐに部屋に戻り早朝から調べるために、すぐに眠りに就くのだった……ちなみに着ぐるみパジャマはとても肌触りが良くてすぐ眠りに就けたのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―翌朝 調査再開から1時間程「レルンティシア国仮役場より南の森」―


「うーん……特に何もなさそうですよ?」


「確かに開けていて怪しいけど……これといった怪しい物は見つからないか……レイスは?」


「こっちも何も見つからないのです」


 僕たちは隊員さんたちが、事前に調べた中で怪しいと判断した森の中で木々が生えていないこの開けた場所を調査しに来たのだが……これといって怪しい物は無い。


「地中とかでしょうか?」


「その可能性はあるかな……」


 何せ魔導研究所クロノスは地中に埋まっている間に、大きな鉱山になっていたくらいだ。ここにある怪しい何かも地中に埋まっていてもおかしくはない。


「それは……どうでしょうか……?」


 僕たちの後ろで、手を組みながら考えていたセラさんがそれを否定する。


「どういうことですか?」


「魔導研究所クロノスが復帰してから私なりにクロノスの施設を調べてみたんですが、動力源に使っている巨大な魔石はかなり貴重な物のはずなんです。天然の物では無くて何かしらの技術を使って合成してると思うので、そう何個も複製できないとはずと判断しています。もちろんここにそのような物が使われている可能性は否定できないのですが……」


「……いや。ここには大きな魔石がある可能性があると、僕は思うよ」


「どういうことなのです?」


「レルンティシア国を襲った変異型のペストってその影響を受けたんじゃないかな。だから、この辺りにもクロノスに負けない大きな魔石を使用した何かがある可能性が高いと思うんだ」


「なるほど……薫様の考えは十分にあります。でも、それなら怪しいのはレルンティシア国の旧王都でしょうか?」


「そうだね……あっちは何か見つけられたのかな?」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―同時刻「レルンティシア国 旧王都」カシーさんの視点―


「凄いわね……岩の中にこれほどのスペースを作るなんて」


「私達の世界なら地下都市があるカッパドキアみたいですね。でも、ここまで広くスペースは取られていないですね」


 馬車の往来が可能なほどの大きな地下都市の通りを私達は歩いている。昔は人の往来が激しい通りだったのだろう。今はその通りを隊員がせわしなく行き来していて大通りとしての役割を今も果たしている。


「やっぱり、半永久的に使われる灯りがあるせいか、外の光を取り入れようとする窓が無いですね」


「そんなのがあると雨が降った時に大変ッスよ……雨漏りし放題ッス」


「いや。そうでもないと俺は思うぞ?雨を溜め込む場所を作れば生活用水に使えるからな。むしろ多めに作ると思うんだが……」


 私達はそれが気になって、近くで作業している隊員さんに尋ねてみる。


「ここは上下水道が完備されていたんです。そこの穴。あれが上下水道用のパイプをがあった通路に入れますよ。で、水はお城があった周辺に貯水タンクや湖として作られていたそうですよ」


「流石ね。当時、最先端の技術力を誇っていただけはあるわね」


「そうですね。当時なら地球と比べても最先端だったかもしれないですね」


「そうですね……産業革命とかその辺りぐらいですもんね」


「ですね……そういえばアリーシャ様から聞いたことがあったんですが、あちらの車や飛行機のような物を作る研究もやっていたそうですよ?まあ、それも全て燃えてしまったようですが……」


「そうなんですね……」


 隊員さんはそう話して、自分の仕事へと戻って行った。もし、ここが変異型のペストの被害に遭っていなかったら、この世界はどれだけの発展をしたのだろうか。もしかしたら今、戦っている魔族と対抗できる戦力を持っていたかもしれない……そんな、あったかもしれない未来が来なかったことに私は残念に思いつつ、再び大通りを歩き進めるのだった。

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