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239話 レルンティシア国

前回のあらすじ「移動中……」


追記:今週の金曜日は作者の都合でお休みです。次回の更新は11/24(水)になります。

―昼食を終えて再び飛び始めてから1時間ほど「レルンティシア国 旧王都」―


「おお……これは……」


「凄い……天空の城って感じかな」


 昼食後、隊員の方々のアドバイスを参考にひたすら北東方向に進んだ所、ポツンと一枚岩を発見。その上には、数百年前には大勢の人が住んでいたであろうレンガ造りの廃都が広がる。そしてその王都の中心には一際大きい建物があり、これがアリーシャ女王が住んでいたお城なのだろう。そのお城の周囲をくるりと飛んで確認すると高温で焼かれたのだろうお城の壁は黒く焦げていた。


「結構高い位置だけど、ここまで火が回ったんだね」


 このお城の中で一番高い塔までもが焦げている。それがどれほどの業火がこの王都を襲ったのかが分かる。


「これだけの規模の町を元に戻すのは大変よね……」


「もしくは戻さないんじゃないかしら……ここはここで残して、新たな街をその近くに築くとかもありえそうね。ほら、あっちの文化遺産みたいに歴史を残すみたいに……」


 確かにカシーさんの案もアリである。アリーシャ女王は僕たちの世界で長い間生活をしていたのだ。歴史を後世に伝えるために、保管するというのもあり得ない話ではない。ちなみにだが、レルンティシア国の王都復興計画は実はまだ未定で、この先遣隊の調査によって今後の具体的な計画が決定する。

 

「そういえば……先遣隊の拠点であるベース基地が見当たらないよね?」


「あっちの湖の近くって話だったよ」


 僕は一枚岩の近くにある湖に向けて指を差す。旧王都にベース基地を用意すると水源確保に苦労する為、そちらに拠点を置いたという話を、先ほど昼食を一緒に取った先遣隊から聞いていた。僕たちは一度、旧王都を後にして、そちらへと飛んで行くと……!?


「立派なログハウスが建ってるけど?」


 湖の近くまで飛んで行くと、何といくつものログハウスが出来ていて、その全体図はちょっとしたキャンプ場を彷彿させる。さらにそこへ近づいていくと、両手に旗を持って僕たちを誘導する人を見つけたので、そこへ下りていく。


「お疲れ様です!」


 そう言って敬礼をする隊員さん。ここだけは広くスペースを取られていて、かつお馴染みのヘリポートのマークが地面に描かれていた。


「僕たちはヘリコプターじゃないですよ」


「ははは!いや~……せっかく作ったのに使う機会が当分ない予定なので、ここは空を飛んできた皆さんで試そうかと思いまして」


 笑いながら答える隊員さん。ただ、隊員というには彼の装備は軽装であり、というよりかは、体つきからして彼は戦闘向きでは無い、カイトさんと一緒で後方支援型だろう。


「それでは改めまして……ようこそ!レルンティシア国仮役場へ!」


「仮……役場ですか?」


「ええ。ここにいるのは王都再建の為の人員しかいません。つまり全員、公務員と言っても過言では無いのです!ってことで、こんな名前を付けました……まあ、いい案が出なかっただけなんですけどね」


「そんなノリなんですね」


「まあ、そんなノリです……とりあえずモノリスへご案内しますね」


 それなら集落とかで良かったのでは?と思ってしまうが……わざわざ言うまでもないか。僕たちはここまで乗せて来てくれたシエルたちにお土産を持たせて還しておく。


「そうしたら私達は魔法陣を設置にしにいくわ」


「だな」


 カシーさんたちがここで魔法陣を設置するために別行動を提案する。それを聞いて僕は悩む。


「どうしたの薫兄?」


「僕たちも一緒に行った方がいいかな?先に行ってもやる事あるかな?セラさんはどうかな?」


「私はどちらでも構いません。そもそも、これから行く場所の情報は私の中には入っていないので、どちらを優先したらいいかとかは判断できません」


「かといって……その場にいても意味が無いッスよね?」


「フィーロの言う通りなのです。私達は魔法陣に詳しくは無いのです。それならついていく意味は無いかと」


「それもそうか」


「というわけだから、魔法陣はこちらに任せてあなたたちは先にモノリスを調べていて頂戴」


「任せたぞ」


 そう言って、二人は他の隊員さんと一緒に魔法陣を設置する場所へと向かって行った。


「では……モノリスへ案内しますね」


 そして、僕たちもモノリスのある場所、王家の墓へと向かう。ログハウスが並び立つ道を進んでいく。


「あちらはここにいる隊員の住居。そしてこっちは会議棟、むこうのコンクリートの小屋は重火器を保管する場所ですよ」


 この集落の説明をしてくれる隊員さん。およそ1ヶ月でここまで移動し、さらにログハウスの建築までするその行動力には驚かされる。一体どうやったのだろう?


「もしかして……夜間も?」


「あ。分かりましたか?実は夜通しで活動しました。そうじゃなければ、こんな短時間でここまでの設備を用意は出来ませんよ。それに……他の国に歩幅を合わせないといけませんから」


「国としての体裁を整えるためですか」


「そういうことです。とりあえず1月の日本の国会での発表ぐらいには……と、着きましたよ」


 集落を抜けた先に、上からも見えた大きな湖に辿り着く。そしてそこには静かに佇むモノリスがあった。


「これが……例のモノリスなんですね」 


「はい」


 僕たちの目の前に現れるモノリス。キレイな直方体に加工されていて、材質は岩だと思われる。


「ちなみにですが特別変わった所はありませんでした」


「何も無いんですか?」


「はい」


 僕は隊員さんのその発表に驚く。


「どうしたの薫兄?」


「レルンティシア国は新型のペスト菌を消滅させるために大火災で一気に王都を燃やした歴史がある。そしてこの辺りも火災の影響を受けているはずだと思うんだ。それなのにこの岩はキレイすぎる」


「その通りです。火災はあの一枚岩の上にある王都、そしてその周辺を燃やし尽くしたという記述がありました。それなのにこれは焦げ跡一つ付いていないんです」


「ああなるほど……」


「確かにキレイッスね……」


「全方向……まるで今さっき削ったようにキレイなのです」


 レイスとフィーロがモノリスの周辺を飛んで、じっくり観察している。


「セラさん。どうかな?何か分かる?」


「チョット待ってて下さい」


 セラさんが下の映写機内部から、アームみたいな物を出す。そしてそれが岩を触りモノリス調べていく。


「特に変わった所は無いですね……どういう事かしら?何かあると思ったのだけれど……?」


 映写機から映し出されるセラさんが両手を組んで考え始める。状況的にこれは異常なオブジェクトで間違いないはずだ。それなのに何も無いっていうのは……。


「何もないのよね……だったらこの周辺に他の異常は無かったのかな?地中に何か不審な物があったとか?」


「そうッスね。クロノスも炭坑内にあったッスもんね」


「残念ながら発見されてませんね。ここに建物を築く際に調査しましたから」


 何も見つからないか……うん?


「あっちは?」


 僕は大きな一枚岩に指を差す。


「王都ですか?」


「はい。あの一枚岩の内部とか……」


「それなら見つからなかったわよ?あの内部にも住居や店なんかがあったみたいだし」


 話している僕たちに後ろからミリーさんが答える。


「魔法陣の設置終わったんですか?」


「ええ。すでに彫ってある溝にこの液体を流し込んで試しに発動させるだけだもの。そんな時間はかからないわ」


「それでそっちは……いい報告は無さそうだな」


「はい。このモノリスをセラさんに調べてもらったんですか。反応無しみたいなのです」


「それは本当ですか?」


 説明していた隊員さん、そしてミリーさんにカイトさんも右手を胸に当てて敬礼のポーズを取って、女王であるアリーシャ様を迎える。


「アリーシャ様?いつこっちに来たんですか?」


「皆さんがこの王都に移動を開始した少し後です。この国の女王として見届けようと思いまして……それに何か疑問点があればお答え出来ますから。それで王都に何か怪しい場所が無いか訊いていたようですが……?」


「はい」


 僕はここで話していたことを、後から来た皆に説明する。


「なるほど……でも、ありえないと思います。あの岩の内部を採掘して居住地を築いた際に不思議な物を発見したという話を両親から聞いたことが無いですから……もし、あったなら王位を継承する際に、そこのモノリスみたいに教えられているはずですから」


「教えられている……もしかして、このモノリスを以前に調べた事があるんですか?」


「両親が一度調べたそうです。特に変わった所は無いそうですが」


「どういうことだ?ここも大火災の影響を受けてるのだろう?それなのに全く特別な所が無いなんて……?」


 ワブーの意見はもっともだ。こんなキレイに整形されていて、かつ、長い年月、野ざらしになっているのに、欠けている個所がない岩が普通とは考えにくい。明らかに異常性を持った人工物と考えるべきだろう。今、ここにいる皆が、そう思っているはずだ。


 その後、夕方近くまで僕たちは手分けして、このモノリスとその周囲を調べたのだが、結局、何か特別な物は見つからずに今日という一日を終えるのだった。

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