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236話 レルンティシアのモノリス

前回のあらすじ「無事に優勝」

―2日後の夜「カフェひだまり・店内」―


「それでは……優勝を祝してかんぱ~~い!!」


「「「「かんぱ~~い!!」」」」


 それぞれが飲み物を持って乾杯する。今日は直哉のチームが勝利して一部リーグ昇格を一位で通過したお祝いである。二日後になった理由だが、当日は当然チームメイトと優勝を祝い、翌日はテレビと事件の取り調べと続いたため、それが一段落した今日となった。


「ありがとうございます。主人の為に開いてもらって……」


「祝い事ですもの!盛大に祝わないと!」


 大輔の奥さんと楽しそうに話している昌姉。今日は店舗を貸し切ってのお祝いであり、ひだまりのメンバー以外に、二日前に、応援に来ていた人たちが集まっている。ただ、ユノとカーターとサキはあちらの都合上、ここには来ていない。


「薫の姉さんは相変わらずだな……」


「そう?少し変わったと思うけどな……」


「例えば?」


「コスプレさせる頻度が減ったり……」


「そんなの分かるか!!って、そっちの女性達は誰だよ?」


 大輔が横のテーブルにいる二人の女性が誰なのか訊いてくる。大輔の言葉が聞こえたのだろう二人がこちらを向く。


「紹介するよ。こっちは梢さん。僕の小説の担当者で、大輔のチームのファンクラブの一人だよ」


「は、初めまして……!」


「ああ!感謝祭に来てた人か」


「覚えていただけてるなんて光栄です!!」


 両手を合わせて、嬉しそうにする梢さん。


「大した選手じゃないですが、そう言ってもらえると嬉しいです。来年はもっと激しい戦いになるんで応援よろしくお願いします」


「もちろんです!」


 そのまま握手する二人。今後は僕の知り合いとしても覚えてくれるだろう。


「それで……そちらは?何か見覚えがあるんだが?」


「初めまして。ソフィア・ウィリアムです。アメリカの大使として勤務しています」


「ああ。そうかテレビで……って?何でそんな人が?」


「薫さんから聞いていると思いますが、こことは別の世界に行ける方法が発見されました。それを知ったアメリカはすぐに最優先事項として私を薫さんに派遣したんです」


「いや……そうでは無くて……」


「何でファンじゃない、ソフィアさんがこのお祝いの場にいるのかって事だよね」


「そうそう」


「実は薫さん達にお話があって来ました」


 そう言って、持っていた飲み物を飲むソフィアさん。話の内容は当然……。


「モノリスの調査ですね」


「その通りです。依頼者は……」


♪~♪~~


 ソフィアさんが依頼者について話そうとすると、貸し切りのお店に誰かが入って来た。扉の音を聞いたレイスとフィーロが慌てて物陰に隠れる。


「すいません。今日は貸し切りでして……」


「薫さん達に会いに来たのですが……」


 突如、入って来た人物に冷静に対応する昌姉に、僕たちに会いに来たことを説明する耳が隠れるような大きな帽子を被る女性。


「あ、昌姉!その人は僕たちのお客だよ!」


 誰が来たのかが分かって慌てて対応しようと席を立ち、その女性の前まで来る。それから、そのまま一度止まった祝勝会を再び続けて大丈夫であることを皆に伝え、その女性と話し始める。


「帽子は外されて大丈夫ですよアリーシャ女王」


 僕のその言葉を聞いて、被っていた帽子を外すエルフ特有の長い耳を持つレルンティシア国の代表であるアリーシャ女王。


「それで……護衛は?誰も付けずにここまで?」


「外で待ってもらってます。中だとご迷惑ですから」


「ご配慮の程、ありがとうございます。どうぞこちらへ」


 僕はそのままアリーシャ女王をソフィアさんがいる席へ案内、そして泉たちもこちらに来てもらう。


「……こちらの女性は?耳が長いんだが?」


 何も知らない大輔が当然だが訊いてくる。そして大輔の奥さんも気になってこちらを見ている。


「エルフだもん。当然だよ」


「こっちだとエルフ自体が普通じゃないからな!?」


「こちらは?」


「紹介しますね。こちらは渋川大輔。それで……」


 僕はアリーシャ女王に二人を紹介する。今後、スポーツの文化が無いあっちの世界で、手始めにサッカーを広めるために指導役として頼んだことを伝える。その後は、3人で自己紹介しあってもらった。


「エルフの方と話せるなんて驚きです」


「だな」


「大輔。ちょっと仕事の話するからチョット外してもらっていいかな」


 三人の挨拶が終わった所で、依頼の詳細を詳しく聴くためと祝い事とは遠い話をするので、席を外してもらう。


「構わねえよ。それに今回、応援してくれた人達に挨拶しねえとな」


 大輔は席を立ち、奥さんと一緒に応援してくれた人達がいる席へ移動していった。


「それでは……私もあっちに行ってますね」


 梢さんも話の邪魔にならないように、別の席へと移動してくれた。お陰様で、今度の依頼に関係のある人物だけが残った。


「すいません。祝いの席に水を差す真似をしてしまって」


「いいですよ。ソフィアさんも話そうとしてましたから」


「それで何の仕事ッスか?」


「なのです」


 二人が皿に盛られた料理を食べながら尋ねる。もごもごとさせてる姿から聞くより食べることに夢中だというのが良く分かる。


「スタジアムで話していたモノリスの件ですよね?」


「モノリス……って、レルンティシア国にある王家の墓である謎のオブジェクトのこと?」


「そうです。シーニャ女王が派遣してくれた兵士とミリー達の現地調査団が頑張ってくれたおかげで、短時間で場所を特定。すでにそこまでの街道の整備計画を立ち上げています」


「その街道が出来る前に調査して欲しいと?」


「はい。とはいっても私達からしたら、その街道が出来た後でいいと思っていました」


 アリーシャ女王がそう答える。どういう事だろう?


「そこは私が説明しますね。実は今回の早期の調査は私達がある理由で調べて欲しいとアリーシャ女王にお願いしたのが理由なんです」


「私達……それってソフィアさんが所属している組織が関係している感じですか?」


「だけじゃありません。総理と大統領もです」


「うーーん?」


「どうしたの薫兄?変な顔して?」


「いや……理由が思いつかなくて。アリーシャ女王が依頼者ならその理由は自国の歴史を知る為とか再建の際に邪魔にならないか調べて欲しいとか、理解出来るんだけど。今回、一番積極的なのが他国でしかもこちらの世界だよ?理由が想像つかないんだよね」


「確かにそうだね……」


「お二人が疑問に思うのも当然です」


「それで……その理由とは?」


 僕がそう訊くと、一旦間を置いてからその理由をソフィアさんが説明してくれた。


「来年の国会で異世界の発見について発表することになりました」


「え?来年ですか?確か、もっと後だって……」


「スパイダーとの戦闘時に見せた麒麟が神で妖狸達は神の御使いと、巷で騒がれてるのは御存じだと思います。それが菱川総理への追及にもなってまして、このままだと菱川総理の退任にも発展しかねないんです」


「どうしてですか?直接的な繋がりは無いはずじゃ?」


「泉さんの言う通り直接は無いんですが……やはり、自衛隊や警察が皆さんを捕えない姿が放映されたりして、内閣が関わってるんじゃないかって騒いでまして……ここで菱川総理が退任されるのは我々としては困るんです」


「何でそれが今回の依頼と繋がるのですか?」


「レイスの言う通りッスよ」


「そこで発見された内容を使用するかもしれないからです。魔石や魔法はもちろんですが、先日のグージャンパマの地図情報とかも公開しようと思ってます。この話の信憑性を高めるためにも」


「ああ……なるほど。そんないきなり、異世界が見つかりました!なんて誰も信じられないですもんね」


 理解した。なるほど少しでも信憑性を高めるために利用できそうな情報を搔き集めたいということなのだろう。


「でも、そんな都合よく見つかるとは思えないんですが……」


「もちろん、そんな都合のいい情報が必ず手に入るとは思っていません。でも今の所、可能性として高いのがそのモノリスなんです」


「なるほど……」


 僕たち……いや、主に僕のせいで菱川総理に迷惑を掛けているみたいだし……この状況で総理が変わるのは、こちらとしても活動するのに都合が悪い。


「僕はいいけど……皆はどうかな?」


「私は大丈夫だよ」


「当然行くのです」


「うちもッス」


「皆の了承が出たので、お引き受けいたします」


「ありがとうございます。薫さん達が依頼を受けたことは方々に伝えておきますね」


「それと今回は我々レルンティシア国がバックアップをしっかりします。野宿とかは考えなくて大丈夫ですので安心して下さい」


―クエスト「沈黙のモノリス調査」―

内容:レルンティシア国に昔からあるモノリスについて調査し、来年の国会で異世界のアピールに使えるような情報を手に入れましょう!


「となると……セラさんも連れて行こうか。もしかしたら役に立つかもしれない」


「そうだね」


「他のメンバーはどうするのです?」


「それなら、カシーさん達も行くそうなのでよろしくお願いします」


「「「「ああ……」」」」


 もしかしたらクロノスのような研究施設が見つかるかもしれないのだ。適任ではある……のだが、カシーさんが暴走しないか少しばかり心配する僕たちだった。

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