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233話 廃工場での戦い

前回のあらすじ「試合の妨害発生」


*作者の都合で来週の投稿は水曜日のみです。また再来週も水曜日だけの投稿になるかもしれません。その際は次話でご報告しますのでよろしくお願いいたします。

―「スタジアムから少し離れた廃工場」大輔視点―


「……美咲!」


 錆びれた工場地に俺の声だけが響く。俺は電話で指定された場所までやって来て、この周囲を探索しているが……美咲はどこにいるんだ!?


「どうやら、ちゃんと一人でやって来たようだな……」


 声のする方へ振り向くと、ベルコンベアや用途不明な機械が置かれていて元作業場だったと思われる建屋の大扉が開いていて、そこにガラの悪そうな一人の男が立っていた。


「お前か……?美咲を攫った奴は!?」


「ああ。そうだ」


「どこにいる!美咲は……!」


「ここだ……おい」


 男がそう言うと、機械の物陰から両腕を縛られた美咲、そして逃げられないように見張りの男が出て来る。


「大輔!」


「美咲!」


 俺が走って近づこうとすると、さらに、その男の仲間たちが物陰から現れて、行く手を阻むのと同時に俺の周りを囲んだ。


「動くな……客の要望でな……お前を始末しろって話でな」


 男は美咲に近づいて、ポケットから取り出した大きなナイフを美咲に首に当てた……!


「止めろっ!!」


「フハハ!!いいじゃねえの?どうせ二人一緒に始末するんだしな?」


「何故だ?俺達が何をしたっていうんだよ!?」


「……賭けの邪魔なんだよ」


「は?賭け……?」


「ああ。そうだ。お前が予想と違うことばかりやってな……お陰で何回も手を加えて大変なんよー……」


「何だよそれ……賭け?邪魔って……まさか監督も!?」


「あ~あ。気付いちゃったか……。そうだよ?俺が歩道橋からド~ン!と押して……アハハ!あっけね~えよなっ!アハハ!」


 監督を殺した……?こいつが?何だよ?どうしてそんな風に楽しそうに笑えるんだよ?


「ふ…ふざけるな!!恩師を……人一人殺して何だよ!何とも思わねえのかよ!?」


「何を?ただの金儲けを邪魔する奴を排除しただけじゃねえか?」


「……狂ってやがる」


「まあ、そうだな……客の要望とはいえ、少々やり過ぎたな。あの客もそろそろヤバそうだし……潮時だな。これを最後に一儲けさせてもらうか……」


「テメェ!!」


「おっと、いいのかこの女がどうなっても?」


 男がナイフを持たない手で美咲の体を触る。触られている美咲も嫌がる素振りをするが、男がナイフを持っているせいで強い態度を取れないでいる。それと例のバングルを持っているがケンカをしたことも無い美咲にそれを使って脱出というのは無理な話だ……。


「くそっ!」


「はは!いい気味だ……おい!そいつを……!」


バキン!!


 男が何かを言い切る直前で上から何かが割れる音が起きる。その音に対して咄嗟に上を見上げると……角がある馬に乗った巫女さんが……。


「ヒヒーーン!!」


 すると、角の生えた馬が嘶くと水の球体を幾つも発生させて、その全てを先ほどから話をしていた男に放つ。それが全弾命中した男は壁に叩きつけられる。


 そして巫女さんは小さい何かと一緒に馬から降りて、美咲の周りにいる残りの奴らを、黒い手甲を装備したグーパンで壁まで吹き飛ばしたり、地面に減り込ませたりして、明らかにやり過ぎな暴力でそいつらを黙らせる。


「よ、妖狸!?」


 狸のお面を付けた巫女さんを見て、俺を囲っていた男共がざわめきだす。


「どうしてここに……!?」


「お主らがくだらない事をして試合を邪魔してるようだからな……その邪魔を妾たちがさらに邪魔をしようと来ただけだが?」


「くそ!テメェら!!」


 一人の男の掛け声を聞いて、全員が銃を取り出し、それを妖狸に向ける。


シャン……シャン……。


 杖を叩きつける音と同時に、金属同士がぶつかり合う音がする。すると、いつの間にか俺の近くに錫杖を持ったお面を付け、古めかしい格好をした子供がいた。


「何だ……こいつ?」


 すると、子供が錫杖を力強く叩く。すると、宙にキレイな模様の番傘、茶釜が現れ浮いている。そこで、この子供があの巫女さん……いや、薫の召喚魔法だと気付く。


「このガキ……!!」


 ただの子供じゃないと気付いた一人の男が銃をその子に向ける。しかし……。


「はあ……ああ……」


 銃を落として、喉を抑え悶える男。


「み、みず……み……」


 その場に倒れて水を懇願する男。この男だけじゃない。気付けば俺の近くにいた男共が同じように倒れて水を要求している。


「こ……この……!!」


 まだ闘争心を折られていない一人の男が頑張って銃を付き出そうとするが、突如現れた砂の蛇に巻き付かれて、身動きの出来ない状態にされてしまった。


「人に使うとこうなるのですね……」


 振り向くと、倒れた暴漢共の間を通り抜けながら、薫達が美咲を連れて俺の近くへと来ていた。


「大輔!」


「美咲!」


 走り寄ってくる美咲を俺は抱きしめる。


「大丈夫だったか?」


「うん」


 美咲の無事を確かめて、俺は再度抱きしめてしまう。


「痛い……強すぎ……か…妖狸さん達が見てるって」


「妾たちには構わなくていい……ちょうど奴らの干物を作ってる所だからな」


「干物……?」


 俺がその干物にされそうになっている男共を見る。すでに肌がひび割れ、ミイラのように生気を搾り取られたような姿をしている……。


「おい……これ死んだんじゃ?」


「大丈夫……生きている」


「いや?でも……」


「モンダイナイ」


 いきなりカタコトで話す薫。


「(大丈夫。もし何があっても不祥事は消されるはずだから……大丈夫……ダイジョウブ……)」


「大丈夫じゃねえよそれ!!」


 小声で自分に言い聞かせている薫に俺は思わずツッコんでしまった。しかも何か変な事を言わなかったかこいつ!?


「ヒヒーン!!」


 ユニコーンが嘶く。その顔の向いている先には美咲にナイフを当てていた男が逃げようとしていた。


「くそっ!」


「待ちやがれ!!」


 逃げようとする男。ここで逃がす訳にはいかない。監督を殺した張本人であるこいつだけは!!置いてある機械を盾にして逃げるが、こちらは現役のサッカー選手……すぐに追いついた。


「こ、の……!!」


 男が懐から銃を取り出す……俺ならその銃で何とかなると思って笑顔を浮かべているのだろうが。


「この野郎!!」


 俺は秘密兵器であるバングルを付けた手を前に出す。そして……。


「くらえ!!」


 右手から電気を放出。相手を一瞬にして痺れさせて……うん?こいつの体から煙が出てるけど威力が高過ぎるんじゃないか?


「か……はっ!?」


 いや!それよりも……!!


「今のは俺の分!そして……!!」


 バングルから発生する電気が俺の左手に纏わりつく。


「これが美咲と……監督の分だーー!!」


 俺は男の腹に目掛けてアッパーを喰らわせる。すると、男から電気が発生し全身を強く痙攣させる。しばらくして俺の拳から離れたその体は地面へと倒れた……倒れた後も体はビクッと何度も振るわせている。俺はその姿を息を整えつつただただ黙って見ていた。


「……ゴングでも鳴らしとくか?」


「いらねえよ……というより監督の仇を取って感傷に浸ってるんだから邪魔するなよ」


「この後、試合だからな……さっさと行くぞ」


「行くって……どうやって?ここまでタクシーで30分以上かかったんだぞ?それにこいつらをこのままにするのか?」


 俺は試合には出られない覚悟でここまで来た。そしてここからスタジアムまで今から戻るとなると、前半は終わってしまうだろう。それにこいつらには真っ当な法の裁きを与えないと気が済まない。


「そろそろ関係者が来る。後始末はそいつらに任せて、お前には空の旅をプレゼントだ」


 そう言った薫。それを聞いた俺は視線をユニコーンに移す。


「あれか?」


「半分当たり。半分ハズレだ」


「半分?」


「……どうやらこちらは終わったようだな」


 俺達が話をしていると、今いる建物の入り口から数人の外国人男性達がこちらへと歩いてくる。


「そちらは?」


「外にいたこの男の仲間達は全員捕えた。だが……首謀者である黒後はいないようだ」


 一人の男性と親しそうに話す薫。どうやらこのスキンヘッドが特徴的な男性がこのグループのリーダーのようだ。


「そうか……とりあえず妾はこの男をスタジアムに連れて行くとしよう。奥方も連れてな」


「分かった。ここは我々に任せて行ってくれ」


「ああ頼んだ。では大輔……行くぞ?」


「ああ……で、どうやって?」


 すると、薫がどこからかいきなりロープを取り出す。


「……そのロープはなんだ?」


「シエルは男性を乗せない。だから、男はロープで胴体を括り付けて引っ張っていくしかない。それだから奥方はシエルに乗せて、お前は引っ張る。それでいいな?」


「え?……お前…だって?」


 すると薫は物凄いスピードで俺の体をロープで括り付けて、もう片方はユニコーンの胴体に括り付けた。そして美咲にユニコーンに乗るように催促し、自分も乗る。


「よし!出発!」


 すると体が浮いていく。空を飛ぶ感覚というのはこんな物なのかと感動する一方、どうしても指摘したいことがある。


「時間が無いのです!」


「猛スピードで移動するぞ!!」


「おい!やっぱりお前っておんな……!」


「全速前進!!」


「おい!ごまか……あっ!?ああああーーーー!!!!」


 そして、俺の言いたいことを言わせないまま物凄いスピードでスタジアムへとユニコーンを進めるのだった。

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