205話 当然の結果
前回のあらすじ「正距方位図法による作図なんて無かったんや……」
―翌日の朝「イスペリアル国・ニトリル山 グリフォンの巣」―
「お世話になりました」
(何を言ってるのだ。貴殿らがここにいなかったら我らは全滅していたかもしれない。このように何事も無く終わったのは、貴殿らのお陰だ。本当に……世話になった)
そう言って、グリフォンの長を先頭にグリフォンたちが頭を下げる。必要な調査、収集が終わったので、近くの町では無くイスペリアル国の聖都まで帰ることに決めた僕たち。シエルたちユニコーンだとここから1日以上はかかる距離なのだが、ドラゴンにとっては最高速度を出せばあっという間とのことなので、僕たちはお父さんドラゴンの背中に乗っていくことにした。
ただ、そんな速度を出されたら僕たちがタダで済まなそうなので、しっかり防御魔法をかけてから背中に乗り込んだ。
「うーん……」
「泉?大丈夫ッスか?」
「うん?……大丈夫だよ。少し眠いけど……」
そう言って、泉は小さく欠伸をする。
「しょうがないわ。あれだけの魔法を使って、森の火を消火してたもの……」
カーターがドラゴンの首を刎ねた後、泉たちの召喚獣であるセイレーンが空を飛ぶ魚の群れで辺りの火をあらかた消火してくれた。その後も小さいくすぶった火を消して、消火が終わったと思ったら、今度はグリフォンの巣に行って壁画の調査と昨日は大分、濃い一日だった。それによる疲れが抜けきっていないのだろう。
「泉。こっちへ」
「ん?……はい」
カーターが泉を自分の方へと呼ぶ。さらに、手を出すように指示をする。
「よっ」
「へっ?」
泉は出した手を引っ張られて、カーターの前に座らされる。そしてカーターはそのままバックハグをする。
「……へ?」
「横になると、飛ばされる危険があるからな。俺が体を支えてやれば多少は寝れるだろう」
「……いや!そ!」
「それと……」
自分のマントを脱いで、それを泉の体が隠れるようにかける。
「このマントも一応、魔法が施された物で、防御性能もあるが隊員が仮眠を取る際に毛布替わりに出来るようにもなってるんだ」
「あ……そうなんですね……いや!そうじゃ!」
「はい。カーター」
僕はクッションをアイテムボックスから取り出して、それをカーターへと渡す。
「鎧が当たって痛いと思うから、緩衝材代わりに使って」
「助かる。ありがとう」
「どういたしまして」
「薫兄!!」
「何だい?ヒロインの泉?」
僕がそう優しく言うと顔を赤くする泉。これもカーターの泉を喜ばせる勉強の成果なのだろう。自分のことで精一杯の泉は気付いていないだろうが、言葉には表れていないがカーターも顔を赤くして恥ずかしがっていたりする。
「よし!出発ッス!!」
「なのです!」
「クェ!」
フィーロたちの掛け声で帰路に着こうとする僕たちに一匹のグリフォンがやってくる。それはカーターの所にやって来て、何かの魔法を発動させる。すると、僕たちがユニコーンと契約した時と同じように、カーターの手の甲に紋章が浮き出る。
「クェーー!」
「……そうか。それなら遠慮なく呼ばせてもらうぞ」
「クェ!」
そして、グリフォンはその場を離れる。
「……カーターさん。今のって?」
「お前達と同じってことさ。長の許可も取ったらしい」
同じ。つまりカーターはグリフォンと契約を結んだという事だろう。ここにグリフォンに乗る騎士が誕生したことになる。
「レッドドラゴンに使った魔法がまた使えるってことか」
「ああ。ただ……そういえば名前を付けて無かったな……」
「バルムンクとか?」
「バルムンク?」
「あっちの世界の伝説で英雄ジークフリートが持っていた剣の名前だよ。彼の英雄譚の中で、その剣を使って竜を殺したことがあると言われる聖剣だね」
「そうか……それなら、今度からその名前を使わせてもらうか」
竜の首を刎ねた炎の剣……本来と異なる点が多々あるが、竜殺しという意味では相応しいだろう。ただ……。
「(聖剣でも、呪われた聖剣扱いなんだけどな……)」
薦めたのはいいが、果たしていいのだろうか……?
「何か言ったかしら薫?」
「ううん。何でもないよ。さあ!皆、帰ろう!」
僕の掛け声を合図にドラゴンたちが飛び立つ。後ろでは多くのグリフォンの鳴き声がする。
「元気でなのですーー!!」
「また、来るッスよーー!!」
二人が大きな声を出して手を振る。僕も二人に合わせてグリフォンたちに手を振る。
(吹き飛ばされないように、しっかり掴まってて下さいね)
ハクさんの注意を受けて、しっかり竜の背中に乗る僕たち。
「グォオオオーーー!!!!」
お父さんドラゴンが雄たけびを上げ、ゆっくりだったスピードを徐々に上げる。
「早く帰れそうだな」
「そうだね……」
「どうしたの?薫」
「いや、何か大切な事を忘れてるような……?」
そう。僕たちは完全に失念していた。聖都に竜が来るという事がどれほどの騒ぎになるかということを……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
―それから数時間後「イスペリアル国・聖カシミートゥ教会 会談の間」サルディア王視点―
「そうですか。あちらの情勢は思わしくないのですね」
「ええ。それだから付き合っていく国は慎重に選んだ方がいいと思います」
この会議に初めて参加しているアリーシャ女王がそう言って話を締める。こちらの世界の住人でありながら、地球に長く滞在した彼女から詳しいあちらの情報を聞いていたところだった。
「当然だが……薫達が住んでいて、現在唯一ゲートがある日本とは付き合っていくでいいよな?」
「そこは異議なしですね~。むしろ反対する人いますか~?」
オルデ女王の発言に誰もが否定する。アリーシャ女王も平和ボケと言われる国だが、治安がいいのでオススメすると言ってたのだ。問題は無いだろう。というより、娘の嫁ぎ先なのだ。ここは個人的にもぜひ付き合っていきたい。
「後はアメリカか……まあ、手を貸してもらってるしな。あそこも当然か」
「そうですね……」
「後は組織と言われる方々の拠点がヨーロッパなのでそこも付き合う事になるかと」
アメリカにヨーロッパ。ここはほぼ決まりである。こちらに対して、支援もしてくれているし情報も提供してくれるありがたい存在だ。他の国々でもいいのだが……これに関しては、我々と早期に接触を図れた事。つまり早い物勝ちというところが大きい。
「後は……国民を弾圧するような国とは関わらないようにするですね。大司教としてそれを認める訳にはいきません」
「そうですね……ラエティティアとして私達が集めた情報もあるので、そちらを有効活用してこちらにとって繁栄に繋がる国と付き合っていけるようにフォローしていきます」
「よろしく頼みますねアリーシャ」
「はい!ソレイジュ女王!」
これで今日の会議は終了となる。後は各々の国へ帰るだけなのだが……。
「そういえば薫達は順調にやってるかね~……」
ヴァルッサ族長がそう言って話を始める。
「グリフォンの涙の採取……一筋縄ではいかないだろう」
薫達がグリフォンの涙を求めて、ニトリル山脈に向かって今日で三日。早ければ今日明日で帰ってくるはずだ。
「こちらからカーターとサキを付けてるのだ。無茶なことがあったら引くように指示している。問題は無い」
「でも……薫さん達って結構面倒ごとに合いますよね?私のお願いを聞いた時はゴリラチンパンジーモンキーの群れと戦ってますし……」
「……そうだったな。こっちもミスリルの回収を頼んだ時に四天王であるシェムルと戦ってたしな」
「俺の所はドレイクだな……」
「今度はどんな面倒ごとに合ってるんですかね~……?」
「まさか!勇者様達もそんな毎度のように……」
「不思議なことに何か合ってそうなのよね……」
すると、ここにいる皆が無言になる。我としてはそんな面倒ごとに巻き込まれることなく無事に帰って来て欲しいと思うのだが……。
「グリフォンと戦っていたりして?」
「グリフォン相手に召喚魔法でばっさばっさと……」
「もしかして魔族と戦っていたりして~……」
「それは無い事を願いたいですね……」
「よし!賭けるか?」
「いいですね~……私はグリフォンと戦って従えた。でいきますね~」
「ここは平和的に何事もなかった。に賭けます」
今、薫達が何をしているかで賭け事が始まる。真面目に仕事をしているであろう彼らに悪い気がするのだが、面白そうではある。
「なら……私はカーターがグリフォンと契約した。にでも賭けるとするか。聖獣であるし可能性もゼロでは無いだろう」
「それはおもしろそうですね。あえてあの4人では無く付き添いの彼らに賭けるなんて……それなら……」
「た!!大変です!!!!」
いきなり、会談の間の扉を開けて、勢いよく僧兵が入って来た。息を切らしているところからして、何か大事があったと察する。
「何事ですか?」
「ド!」
「ド?」
「ドラゴンが接近中!!数は4体!!グリーン2体にレッドが1体!!そ、そして……シルバー1体です!!」
「……へ?」
コンジャク大司教がそれを聞いて停止する。ドラゴンがやってくる事態が大騒ぎなのに、そのうち一体がゴールドに次ぐ強さを持つシルバー……我が国の総力をもってしても討伐出来るかは難しいだろう。
「し、シルバー?見間違いとかは?」
「確かな情報です!!そ、それで北の監視塔を抜けてこちらへと向かってるそうです!!!!」
「……ぜ……全員、避難して下さい!!僧兵は急いで住民を誘導して避難を!!」
「は、はい!!」
「薫達がいないこのタイミングでかよ!!」
我に返った途端に皆が慌てだす。これは大事になって来た……ここで自国に戻るべきだが……。
「それではすぐに!!」
再び扉へと振り返り急いで住人の避難させようとする僧兵。すると、その扉に誰かが入って来た。
「いたっ!!」
「薫!大丈夫ですか!?」
「うん。大丈夫……」
尻もちをついた女性……いや、男だった。彼はゆっくりと立ち上がり。倒れた僧兵に手を差し伸べる。
「大丈夫ですか?ゴメンね?」
「い、いいえ……って勇者様!?」
何というかベストなタイミングで薫達が帰って来たでは無いか!!
「よ、良かった……これで何とか」
「え?」
泣いている僧兵を見た薫が、そのまま中にいる全員を見渡す。
「何かあったんですか?」
「あ、ああ……それで薫達はどうしてここに?」
「えーと。皆さんがここにいると聞いて……そのグリフォンの涙の回収が終わった報告を……」
「そうか。それは良か……」
「後、レッドドラゴンを討伐してシルバードラゴンのハクさんに頼んで運んでもらったんですが……あ、それとグリーンドラゴン家族が子育ての為に広い所を探してまして何かいい場所が無いか訊きたいんですけど……」
「「「「原因はお前かーー!!!!」」」」
「ふぇ!?」
そのまま、各代表達に怒られる始める薫達。いくら何でも事前に報告して欲しかったものだ……。とりあえず、何か面倒ごとに巻き込まれるという我々の予想が正しかったことが証明されるのであった。




