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202話 レッドドラゴン戦その2

前回のあらすじ「結局、ドラゴンと戦うことになった」

―「イスペリアル国・ニトリル山脈 グリフォン仮拠点」泉視点―


「危なかった……」


「危機一髪ッスね」


 魔法が解除されて地面に投げ出された私達。運が良くまだ燃えていない場所に落ちたみたいだ……。ただ、目が回って少しばかり気持ち悪い。乗っていたユニコーンであるユニの様子を見てみると、あちらも目を回しているらしく頭を下に向けたまま動かないでいた。


「しかし、緊急回避魔法のエアー・クッションを……用意していて良かったッス……」


「そうだね……」


 上空から落ちた際の対処としてパラシュートだとこの衣装に似合わない。そこで用意しておいた風属性魔法のエアー・クッション。私たち周囲に空気の膜の層を何層も発生させて、それによって衝撃を和らげる魔法である。お父さんドラゴンがこちらにぶつかる瞬間に唱えてたお陰でダメージはゼロに抑えられた。ただ、地面にぶつかった後に何回もバウンドして全身をシェイクされたせいで酔ってしまった。


「うぷ……酔い止め薬ってあったかな……」


「ポーションを飲もうッス……あれなら多少は回復するッス」


「わ、分かった……」


 私はアイテムボックスに収納していたポーションを取り出して、それを一緒に取り出したコップに注いで皆に配る。


「ヒヒーン!」


「ああ~……随分、良くなったッス」


「そうね……とにかくすぐにここから離れないと……」


 ポーションで体調が回復したところですぐに戻らないと……ここは燃えて無くても周囲は火の気に包まれているのだから。


「皆、無事か!!」


 するとグリフォンに乗ってカーターさん達がこちらに下りて来た。


「防御魔法を張っていたので大丈夫です!お父さんドラゴンは?」


「それならすでに立ち上がって……」


「グッオ!」


 燃えている木々を押し倒して、お父さんドラゴンがこちらに現れた。ユニの翻訳のお陰で、大ケガはしていないとのことだ。皆が大したケガをしていないと分かり一安心していると、上空で雷鳴が轟き、黒い光が落ちていった。


「今のは薫達か?」


「多分。グリモアを使っての雷撃だと思う。あれ周囲に仲間がいると側撃雷を受けることがあるから気を付けないといけないの」


「何か見たことのある言い方ね?」


「クロノスで各種グリモアの強化版を試した際に、興奮した直哉さんが喰らってたんだよね……」


「髪がチリチリになってたのに、一時間後には戻っていたのは不思議だったッスね」


「まあ……あの人は……変態だから」


 直哉さんは時々、尋常では考えられないほどの再生能力というか回復力というか……うん。これ以上は深く考えないでおこう。無駄だろうし。


「となると、私達も距離を取って攻撃を仕掛けた方がいいわね」


「それと、この火をどうにかしないと」


 これ以上、燃えてしまうと火や煙の影響で戦いにくくなるし、何より、この後のグリフォン達の生活にも支障をきたしかねない。ここで何とかしないと!


「カーターさん!私達は火をどうにかします!」


「何をする気だ?」


「それは勿論!」


「邪神様頼みッスね!」


 私はグリモアで魔法陣を地面に映し出して、彼女を呼ぶ準備に入るのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―ほぼ同時刻「イスペリアル国・ニトリル山脈 グリフォン仮拠点」―


「黒雷!!」


「ギャオオ!」


 ギリギリのところで黒雷を避けるレッドドラゴン。すぐさま、口から尖った無数の氷をこちらへと飛ばしてくる。


(振り落とされないでね!!)


 シエルが空を縦横無尽に翔て、レッドドラゴンの氷攻撃を避ける。


(今だ!)


 レッドドラゴンの注意が僕たちに向いている隙をついてグリフォンたちが風属性魔法で攻撃を仕掛けていく。しかし、それらは大したダメージを負わせられずにいた。唯一、グリフォンの長が繰り出したウィンド・カッターがかすり傷を負わせたくらいだろう。レッドドラゴンはそれらに不快感を示すが、それらを無視して僕たちへの攻撃をし続ける。


「僕たちが一番の脅威と判断しているようだね」


(当然だろう。先ほどからの攻撃。唯一、通っているのは貴殿らの攻撃だけだ)


「それでも黒雷も何発も撃てないのです」


「そう……だね」


 黒雷を4発を撃ったが、少しばかり疲労感を感じる。そう長時間戦えはしないだろう。ちなみにその疲労感のお陰で先ほどの怒りが少しばかり治まったりする。


「ギャオオーー!!」


(奴はあれほどの魔法を使って、まだまだ余裕。このままだとこちらが不利か)


「召喚魔法……やっぱり麒麟なのです?何かヒーローものの残り10分ごろに使う必殺技みたいになってるのですが?」


「どちらかというと困った時は麒麟を撃てば何とかなるみたいになってるけどね」


(何の話だ?)


「「あ、お気になさらず!」」


 日曜の特撮の話をしているだけですから。


「ただ、必殺技を放つ時間があればの話だけど……」


「フィーロ達は無事なのです?」


 先ほどから、レッドドラゴンの攻撃を避けつつ、周りを確認しているが木々が燃えている影響で火や煙で視界が悪く、泉たちの様子を確認することが出来ない。


「ここは信じるしか……あ」


 不自然な水の柱……いや、触手が出現する。


「無事みたい……だね」


「なのです」


 そして、触手がその場でグルグルと振り回して、邪魔な火と煙を消していく。


(……何だ。あの魔法は?)


「ええと……空想上のモンスターを創り出す魔法です…はい」


(なんと奇怪な……)


 そんな、話をグリフォンの長と話をしているとレッドドラゴンが突如現れた触手に今度は攻撃をする。触手に火炎弾がぶつかって蒸発する。すると、今度は2つの水の触手が発生する。レッドドラゴンは同じように触手を火炎弾で潰す。すると今度は4本……。鼠算式に触手を増やしていく泉たち……遊んでないかな?


「薫!」


 すると、真下からカーターたちが飛び上がってきた。


「あの燃えている森を駆け抜けて来たの?泉は?」


「大丈夫だ。それにあのドラゴンも一緒にいるから問題は無いだろう」


「それと、あの森を駆け抜けるならこの子が凄かったわよ。スイスイと進んでいたわ」


「クェ♪」


 カーターが乗っているグリフォンが機嫌よく鳴いている。お手の物と言いたいのだろう。


「それで泉がセイレーンで森の消火をしつつレッドドラゴンの注意を引き付けているから、薫は早く麒麟を呼んでくれ」


「分かったけど……麒麟で仕留め切れるかな?」


「最後に俺が仕留めるから安心しろ」


 自信満々に言うカーター。何か秘策でもあるのだろう。


「……分かった」


 火が回っていない地面まで下りた僕たちはグリモアを使って魔法陣を発生させる。


「薫……」


 白い魔石を持ったレイスがこちらを見る。


「いくよ……僕たちに力を貸して!来て!雷霆・麒麟!」


 この地を覆うように暗雲が発生し、そこに白い魔石が飛び込んでいく。


(……あれは……神か?)


 雷雲から飛び出す麒麟。グリフォンたちが麒麟のその姿を見ておののいている。一方、レッドドラゴンは自分を見下している麒麟を睨みつけている。


「ギャオオオオーーーー!!!!」


 この中で一番危険と判断したのだろう。レッドドラゴンが麒麟に襲いかかる。しかし、麒麟の神速によってレッドドラゴンの突進攻撃は当たらず、そのまま暗雲からの雷の雨を降らせる轟雷でレッドドラゴンを攻撃していく。レッドドラゴンは左右へと避けていくが、それでもいくつかは直撃する。


「ギャオオ!?……ギャオ!!」


 このままではやられると判断したのだろう。また口に火を溜めてブレス攻撃を麒麟に放った。先ほどより早いが……光速で移動する麒麟には遅い。麒麟はまた避けて、今度は雷槍で貫通力を高めた攻撃を仕掛ける。その攻撃によって始めてレッドドラゴンの体から大量の血が流れる。


「ギャオオ!!」


 レッドドラゴンは、このままでは危険と悟って、今度は逃げようとする。


「……今さら逃げないでよね?」


 僕の意思を読み取った麒麟が雷雲から電気をチャージ。


「いけ!雷霆万鈞!」


 いつもは上から下に放っていた攻撃を、真横に向けてレーザー砲のように放射する。その極太の光はそのままレッドドラゴンを飲み込む。


「やったのです!」


「レイス!それダメ!フラグだから!」


「あ!」


 レイスがフラグを立てたせいか、雷霆万鈞が止んだその射線上にいたレッドドラゴンはそこに留まっていた。攻撃が止んだことに気付いたレッドドラゴンはそこから急いで逃げようとする。


(マズい!)


 すると、どこからかレッドドラゴンには敵わないが、中々の大きさであるファイヤー・ボールがレッドドラゴンに向けて撃ち出されて当たる。その撃ち出した方向を見るとお父さんドラゴンの姿が。そして、攻撃を受けたことで、今の僕と同じように誰がやったかを確認するために一時的に身動きが止まってしまったレッドドラゴンに向けて一騎のグリフォンが突進していく。


「フランベルジュ!」


「クェエエーー!!」


 炎を纏った剣を構えるカーター。その剣がグリフォンの鳴き声と同時に更に大きく激しい物になる。


「うおおおお!!!!」


 カーターは雄たけびを上げ、すり抜けざまにレッドドラゴンの首をその大きな炎の剣でぶった切った。


「……凄い」


「なのです」


 一刀両断。頭と胴体を切り離されたレッドドラゴンは大きな音を立てて森に落ちたのだった。

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