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195話 グリフォンの涙

前回のあらすじ「麒麟の進化フラグ発生」

―お茶会から数日後の午後「???」―


「それは……カッコイイッスね!!」


「薫兄にしかできない芸当よね……」


「私も聞いた時は驚いたのです」


 ユニコーンに乗って空を移動しながら、この前、思いついた麒麟のパワーアップ案を二人……いや、四人に話す。


「あれのパワーアップ……ついに大地が捲り上げられるのか……」


「そんな魔法使われたら、お終いよね……」


 僕が乗っているユニコーンであるシエナに括り付けてある紐に引っ張られているカーターにその頭にしがみ付いているサキ……体を震わせている……寒いのかな?


「寒く無いからね!?あんたの発想が恐ろしいから体が震えてるのよ!!」


 サキに思考を読まれてしまった。まあ、僕たちが使える最強の魔法である麒麟の強化となればそうなるか。


「サキの意見と同じだからな?むしろお前の方が寒くないのか?特に……足が」


「そうだね……うん。寒い」


 僕の服はいつもの改造巫女服である。そしてカーターの言う箇所、鉄壁のキュロットスカートとハイソックスの間にできる隙間……ここが特に寒いです。ボルグ火山とは違って今回の山岳地帯は普通の高い山。僕たちの下には葉を落とした木々が多く見られる。後、少ししたらこの辺りは雪に埋もれるらしい。


「泉は大丈夫?」


「え?そこはバッチリだよ?ちゃんとひざ掛けを持ってきてるからね!薫兄は用意していないの?」


「大丈夫だと思って……」


「準備万端な薫兄が珍しいね。それなら予備があるよ……はい」


 泉たちが、こちらへと近づいた所で僕はその予備を受け取る。猫のイラストが入ってるピンク色のひざ掛け……男としてこれは……。


「……言っておくけど、予備はそれしか無いからね?」


「……」


 僕は諦めてそれを素肌が晒されている太ももにかける。たったそれだけだが大分、感じる寒さが違う。


「大分マシになったね。でも、やっぱり羽織る物がそろそろ欲しいかも」


「だから、今回の聖獣から大量の羽を手に入れて軽くて丈夫な防寒具を作るのよ!私の創作意欲に火が付くわ!!」


「来月のイベントに来る友達にも作るんッスよね……かなりの量を確保しないとッス!」


「私もお手伝いするのです!!」


 そう言って3人が今回のクエストに燃えている。


「ちょっと!私達の分も作ってよね!!」


 サキもご相伴に預かろうとして防寒具のオーダーをする。


「あれ?カーター?今回の目的って羽じゃなくて涙だよね?」


「涙……というよりは血や唾液でもいいってカシー達は言ってたぞ」


「あ、うん。そこは僕も分かってるんだ……でも、女性陣の会話を聞いていると……ね」


「……確かにそうだよな」


 カーターが腕を前に組んで頷いている。今回の目的は羽じゃなくてある聖獣の体液であるのだが……。


「目指せ!グリフォンの巣!!」


 ということで、泉の叫びの通りで今回のターゲットはグリフォンである。何でグリフォンの体液……何か生々しいからここはグリフォンの涙にするが、それを僕たちが欲しているかと言うと数日前の話になる。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―今より数日前「魔法研究所クロノス・所長室」―


「グリフォンの涙?」


「ええそうよ!」


 カシーさんが興奮気味に答える。顔面ドアップで少ししたら鼻や口が触れてしまうんでは無いかと思えるくらいに近い。用事があるということで呼ばれて来たらいきなりこうなるとは……。


「落ち着け……」


 カーターがカシーさんの脇に腕を入れて後ろへと引き離そうとすると、カシーさんはそれに対してジタバタして抵抗するが、流石に男の力には勝てずに後ろへと引っ張れられていく。


「だって、必要なのよ!!新しい異世界の門(ニューゲート)の作製には!!」


「どういう事なのか説明して欲しいのです。今、使ってる薫の蔵にある魔法陣もちゃんと機能してるのです」


「冷静な判断が出来ないこいつに替わって俺が説明する。あの後、解説書を読み解いた結果からあの異世界の門(ニューゲート)はかなりの精密な位置情報を網羅していないといけないらしくてな……あれで他の場所を設置するには色々手間がかかり過ぎるんだ。具体的にはあっちの世界の位置情報だが」


「どういうこと?」


「異世界の門は通常の転移魔法の失敗から出来た物らしい。しかし彼ら古代人はそれをさら調べていくうちに……お前達の星である地球に繋げる事に成功したそうだ」


 僕たちの星……ショルディア夫人とのお茶会の後、グージャンパマと僕たちの世界は同一世界で距離がかなり離れた別の星という情報がユノから各国の代表、そして賢者たちの所まで流れた。その事実を知った賢者達が改めて解説書を確認すると、古代人の言語で僕たちの世界名はテラリウムと判断していたのだが、どうやらこれは惑星名では無いかと結論に至った。


「ちなみに、発見に至った経緯だけ書かれていて、どこの誰が何をもって研究していたのかは載っていなかったがな」


 ここでも、歴史を語らないというのが徹底されている。でも、どこか抜けている気がする。この前のお茶会で話していた時も、このような感覚はあった。何もかもが中途半端。その時は僕のお婆ちゃんに時間が無かったからと思っていたのだが……。果たしてその考えは正しいのかも怪しく思えてくる。


「まあ、そこは今回はどうでもいい。肝心なのは地球にどうやって座標を決めるかになるのだが……お前の蔵にある魔法陣は古代人の謎の超技術によって正確な座標を打ち込み、そこにこちらの星ではどこに設置してもいいように作られている。あれを再現するのは現状は不可能と判断した。何せこの座標の出し方が全くの不明だからな。そこで、もう一つのパターンであるグリフォンの涙を用いた方法を用いる。これならすぐにでも出来る」


「そのグリフォンの涙が手元にさえあれば……ってことだね」


「ああ。そう……ぎゃふ!!」


「ということで!最高で最善、最速で取って来て欲しいのよ!!」


 どこぞの魔王のセリフに似てる気が……話していたワブーが、興奮したカシーさんの手に潰されている。それをカシーさんは気にせずに僕だけしか見ていない。このままだとワブーが不憫である。


「レイス……」


「あ、はいなのです」


 僕は鵺を静かに籠手にして、その手でカシーさんの頭に軽くチョップして……。


「雷手」


 カシーさんの頭に触れたまま鵺を帯電させる。その瞬間カシーさんが体を強張らせてその場に倒れる。……よし。目を白目にしてしっかり気絶してるな。女性をこのままというのは哀れなので瞼尾を手で閉じておく。


「ふう……助かった」


「後でフォローをお願いね」


「ああ。分かってる。シーエ達にも頼むとしよう……で、グリフォンの生息地だが、イスペリアル国内にあるニトリル山脈。イスペリアル国の首都から馬で3日ほどの距離がある。流石にお前らをそんな長時間縛る訳にはいかないから、ニトリル山脈に一番近い町に転移魔法陣を設置するから、その準備が終わり次第、グリフォンの涙の採取をお願いしたい」


「オッケー。レイスもいいよね?」


「当然なのです!後、フィーロ達も誘うのです。きっと来ると思うので」


「僕はいいけど……ワブー?」


「構わない。それとカーター達にも同行してもらう。魔法使い3組だから何かあったとしても問題無いだろう」


 僕は後ろで黙って聞いているカーターたちに視線を向けると二人が静かに頷く。


「りょーかい。それじゃあ準備しておくよ」


「ああ。素材自体は数滴もあればいいんだが、今後の事を考えると多めに欲しい。この成果によってグージャンパマと地球の往来の利便性が変わってくる大事なクエストだから気を引き締めていってくれ……準備は一任する」


「うん。分かったよ……それと関係ないんだけど……」


「何だ?」


「二人共、こっちのゲームとかアニメとか見てる?何か会話に似たようなセリフがあったり、キャラの口調に合わせたような感じがするんだけど?」


「ああ。直哉がこんな風に頼むと薫が喜ぶと言ってたからな。少し参考にしたが……本当ならカシーが、おはよう妖狸。アクヌムとの戦いの疲れは取れたかしら?そんなあなたに仕事の依頼よ?と言うところだったんだが」


「あ、いや、気にしなくていいからね?……とりあえずグリフォンの涙の採取クエスト頑張るよ」


―クエスト「空の王者を求めて」―

内容:異世界の門(ニューゲート)の設置に必要なグリフォンの涙を手に入れましょう。他にもグリフォンの素材が手に入る可能性があります。貴重な物なので取れるなら回収しましょう。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―今に戻って「イスペリアル国・ニトリル山脈」―


「……あれ?私達、誰かを暗殺予定なの?」


「ありません!あくまで直哉のいたずらだから!」


「あのゲームッスよね……鞄を投げてよく気絶させてるッス」


「あのホーミング性能をマネしたいのです」


「あれを……!?出来るかな?結構、滅茶苦茶な性能だしな……」


 知らない人からしたら何を言ってるか分からないと思うが、簡単に言うとそのゲームの主人公が投げた何の変哲もない鞄が、相手の頭に当たるまでホーミングし続けるというものだ。


 それを魔法で再現できるかと言われると可能性はある。そもそも僕たちの放つ魔法は、かなり弱いが軌道修正機能がある。それを強化すれば……。


「おーーい。俺達に分かるように話してくれ。さっぱり分からないぞ。なあサキ?」


「え?幸運を祈るわ。もたまにいうゲームの話でしょ?」


「え?俺なのか?この場で変なのって?」


 僕としては、何でこのゲームを異世界にいることが多いサキが知ってるのか疑問なんけど?もしかして泉たちが話したのかな?とりあえず……。


「カーター。分からない人は分からないから気にしないで。それより目的の場所ってまだ先かな?」


「話だと、このニトリル山脈で一番高い山で山脈の名前にもなっているニトリル山の近くだな」


 一番高い山……僕たちの少し前にそびえたつあの山で間違いないだろう。まだ遠いかな?


「どうする?最寄りの町からここまで大分、飛んでるけど一回休む?この距離なら余裕を持って夕方までにはニトリル山の麓に着くと思うんだけど」


「賛成!」


「同じくッス!」


 賛成する泉たち、レイスとカーターたちも同じく休憩したいとのことなので一旦、木々が生えている森の中でも開けている場所を探して、そこに降りて休憩を取るのだった。

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