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191話 隠したい事実に眠る理由

前回のあらすじ「ご都合主義と言えれば楽なのに……」

―説明を始めて数十分後「ショルディア夫人邸宅・庭園」―


(なるほど……異世界では無く同世界の別の惑星か……確かにこちらの常識が今まで通用していた時点で考慮するべきところだったな)


(遺伝子……納得のいく話だな……)


 スマホ越しから2人の声が漏れる。説明中は一言も発さずに聴いてくれていたので、僕としては僕の説明で納得してくらたか心配していたが……心配無用のようだ。


「薫さん。それでこれからはどうするんですか?」


「そうだね……まずは異世界の門を再度調べる必要があるかな?泉たちがすぐにこの違和感に気付けない原因だろうし……どう思う直哉?」


「そうだな。ここですぐに違和感に気付いたのは、あの門を一度も使用してないショルディア夫人だけだ。あの門に仕掛けがあるとみていいだろう。これもお前の祖母の仕業だな」


「うん。お婆ちゃんは過去を完全に消し去ろうとしている。そこにどんな理由があって何を思っていたかは分からないけど……でも、恐らくそこに全ての答えが眠っているんだと思うよ」


「全ての答えですか……?」


「そうです榊さん。実は魔石の事で気になる事があるんです。魔石を使って特定の図と文字を組み合わせて作る魔法陣。そしてクロノスで見つけた魔法陣の解説書から疑問に思ったこと……どうして魔獣の体内から取れた魔石に何故、人の使う言語が通用してしまうのか」


「……薫さんはどんな憶測を?」


「魔石……あれは人工物です。そして魔獣は魔石を造りだすための人工的に作られた家畜だと考えています」


 僕の回答によって木々の擦れる音さえも聞こえるほどの沈黙が生まれる。あの世界は何から何まで自然発生では無く、何者たちかによって造られた箱庭のような物だとしたら……。


(その造りだした者達が何者かは判明してるのか?)


「確かな事はまだです。でも有力なのはコーラル帝国とユグラシル連邦だと思ってます。その者たちが魔獣を創り、魔石採取用の畜産業を行っていた。けれど彼らの文明は何かによって崩壊。それによって管理されていた魔獣は野に解き放たれて、長い年月をかけて様々な進化や分岐を繰り返しつつ数を増やしていった」


(その者達が今もどこかで手を引いているというのは?)


「可能性はあると思います。でも、その両国の名前が出たのはクロノスだけなので……」


「待って。一人いたよ。あのアクヌムも言ってたじゃん。何でそれを知ってる。って」


「薫達の婆ちゃんも知ってたッスよね」


「そういえばそうだったね」


「これって魔物や魔族は把握してるってことだよね?ってことは……ビシャータテア王国付近はコーラル帝国領土なら……魔族の土地ってユグラシル連邦で……」


「ユグラシル連邦と繋がっているかもってことだよね。でも残念ながら色々足りない。まだ情報がね」


 これまでの話は予測であり真実ではない。もし、裏でそれらの国が何かをしてるとしたら……でも、それが現実的では無いのも分かる。


「でも、そうなるとハイテクノロジーを備えた国々があったとして何を企んでるんだろうってことになるのです。もし魔族と繋がってるなら、ただ大型魔獣を引き連れたり、囚人をバケモノに変えたり以外に手はいくらでもあったと思うのです。それこそアダマスのように魔導兵器とか」


「それもそうね……私も実際にスナイパーライフルで仕留めてたけど、予想よりもあっさりし過ぎて肩透かしを食らったわ。でも、その集団にアダマスのような魔導兵器兵といえばいいのかしら。それが同時に進軍したとしたら……」


「……ミリーさんの考えている通り、アオライ王国もビシャータテア王国も滅んでいたと思います」


 そういってユノが紅茶を口にして気分を落ち着かせる。レイスの言う通りで古代の人々と魔族が繋がってるとしたら当然あのアダマス、もしくはそれに類似した兵器の作り方を知っているはずである。そしてその無数のアダマスと同様の兵が、これまでの戦いに出現していたとしたら、防ぐことは到底不可能だろう。


「魔族は古代の人々……古代人としておきましょうか。彼らの事は知っていても繋がっていない。そう判断してよろしいのでは?」


「ショルディア夫人の言う通りで僕もそう思います。四天王二人の戦い方から見ても、とてもそういう風には見えなかったですから」


(……はあ。色々混乱しそうだな。グージャンパマの人々は古代人によってこっちの世界の動植物を遺伝子操作して作られた存在。しかもテラフォーミングして地球に似た環境も整えている。そして魔族はその古代人を知っているが、繋がってはおらず、その技術も継承していない……ってところか)


「凄い。まとめ方が分かりやすかった」


(役立たずで、官僚任せの歴代のお飾り総理とは違うからな?総理に相応しいように社会学や経済学も修学したし、実際に政治家になる前は会社を経営してたしな)


(……次の総理も君のような博識な人だと助かるんだがね)


(こちらも、あの傍若無人な大統領じゃないようにお願いします……)


 何故だろう?この二人の会話を聞いていると、あの人のことかなと分かってしまう。


「……それだけじゃないのです」


 すると、レイスが二人の会話を遮るように話し始める。


(他にも何かあると?)


「はい。私達を創り出した理由が不明なのです」


 レイスのその言葉に全員が驚いた声を上げる。


「レイス。それまだ……」


「ここまで話したら、この件も明かした方がいいのです」


「レイス。それってどういう事っスか?」


「セラさんの言葉なのです。セラさん私達の事を知らなかったのです。本人は故障って言ってたのですが、そもそも、その時代に精霊は存在しなかったかもしれないのです。もしかしたら私達は急遽、何か特別な目的を持って、後で創られた存在なのかもしれないのです」


「でも、確証は無いッスよね?それにその急遽って何なんッスか?」


「……魔法使いなのです。もしかしたら、私達は何かと戦う魔法使いを生み出すために作られた生きた兵器かもしれないのです」


 レイスの声が少しだけ暗くなる。自分達を兵器と言うのだから当然だろう。


「レイス。そんな生きた兵器って……」


「勿論。これは仮説の一つなのです。ただ、他の種族より後に創られた可能性は大いにあるのです」


 レイスがそう言い終えると、そこで会話が途切れる。色々、調べた事を喋ったがこれだけの情報量を整理するのに皆が戸惑っているようだ。


「そうですか……三人ともとんでもないことを調べましたね」


「ショルディア夫人……それは完璧じゃなかったからです。きっとクロノスの時と同じようにお婆ちゃんの準備は不完全なんだと思います。だからこそ異世界の門(ニューゲート)に意識操作系の魔法陣を組み込んでも、このようにほんの些細なきっかけでこの疑問を思いついてしまう。そして、グージャンパマの事を聞いて、かつ異世界の門(ニューゲート)に触れていない人たちなら、どうしてここまでこちらの常識がグージャンパマで通用するのか?と考える人も一人や二人は出て来るはずです。でも、その人たち用の対策は全くと言ってもいいほど何もされていない。これはつまり隠す方法が思いつかずに何も出来なかったということに他ならないと思うんです」


「確かにそうね。その位は予想していてもおかしくないわよね……それで、これからどうするのかしら?」


「引き続きサンプルを回収します。と、いうよりそれしか出来ないんですけどね。クロノスみたいに昔の施設が残ってれば調べられるとは思うんですけど……手がかりも無いですし」


「でも、そうだとしたらやっぱり王様達の協力は必要じゃないのかな。何か古代の手掛かりを知ってるかもしれないし、もし、そんな施設があったら無断で調べるのは怒られそうだし」


「泉の言う通りでそうなんだよね……ただ、この事も話さないといけないし……」


「話してもいいと私は思います。そもそも国を管理する者がそんな事で心が乱れていたらキリが無いです。それに……あそこなら可能性がありますし」


「可能性って?」


「ヴルガート山……つまりドラゴンの棲み処です。あそこはどこの国も調べていないですし、魔族も簡単には入れないと思います。そして……昔にドラゴンの戦いに挑んで、命からがら逃げてきた者達が、神殿を見た!と逸話もあるそうですよ」


「それって……本当なら人がいたって事になるよね」


「ユノの話の通りだとね……って、それっていつかはそこに行かないといけないというフラグなのでは……」


 僕は持っていたティーカップを震わせる。


「だ、大丈夫ですか薫?」


「なんでそんなに怯えてるんッスか?うちらならコテンパンに出来るッスよ!」


「……フィーロ冷静に考えてみてよ。あの魔族も簡単に入れないってことはそれほど面倒な相手だってことだよね?この前のアクヌムより強いかもしれない奴がいるんだよ?」


 あのアクヌムもかなり命を張っている。それこそ氷の針で串刺しになっていたかもしれない。


「……それは」


(お前らに死なれたら困るのはこっちだからな!?流石に無謀は止めてくれよ?)


(私も同意得だ!君たちはこの世界、唯一の魔法使いだ。君たちがいなくなったらこちらからあちらへコンタクトが取れなくなる!)


「私もよ。ユノ姫も同意見のはずよね?」


「当然です。私は薫の婚約者なんですから。あくまでそんな情報があるというだけです」


「っていうことでその件は後にしましょう。それと今度はこちらにも話を通しなさい。必要な経費も出すわ」


「分かりました」


「ああ。これからは堂々とやらせてもらうぞ?」


「ふふっ。お手柔らかにね」


 その後、僕たちは幾つか細かい話をして詳細を詰めていく。


(それじゃあ、必要ならこちらからも連絡するからよろしくな)


(こちらもだ。くれぐれも慎重にな?)


 それからどれくらい時間が経ったのだろうか、ずいぶんと時間を割いてくれた各国の代表からの電話が切れた。


「疲れた~……私、こういう会議は無理!」


「うちもッスね」


「はいはい……お次は、ご褒美のアフタヌーンティーだからゆっくりしょうか」


「「は~~い」」


 お疲れの状態である二人に励ましの声を掛けつつ、僕は机の上に置きっぱなしの報告書を回収するのだった。


「薫?」


「ん。どうしたのユノ?」


「アフタヌーンティーってどんな物か知らないんですが……」


「安心して、今回はそんなかたっ苦しい物じゃないし、僕が教えるから……ね」

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