187話 薫、さらに財を得る
前回のあらすじ「貝を上手に焼きました~!」
―ギガントオーガシェルフィッシュ討伐から数日後「アオライ王国・ダゴン港 冒険者ギルド」―
「討伐の確認を完了しました」
ギガントオーガシェルフィッシュの討伐から数日後、僕たちはアオライ王国の賢者さんから連絡を受けて、報酬を受け取るためにアオライ王国の冒険者ギルドに訪れた。
「まさか……あの魔獣に穴を開けるなんて……しかもお二人で……改めて召喚魔法の恐ろしさを知りましたよ」
「ははは……」
何と言えば良いだろう……分からないので適当に笑っておく。
「それで、アレはどうして港へ向かっていたんですか?」
「それですが……恐らく魔族の侵攻の際に討伐した魔獣の匂いに釣られたのかと。アレの解体は港近くでやっていまして、その血を洗い流す過程で少しずつ海に放流してるので」
「なるほどね」
「あの後、調べたのですがギガントオーガシェルフィッシュは普段は動かないのです。それこそ何か異常事態が無ければ」
「レイスさんのおっしゃる通りです。ゆえにギガントオーガシェルフィッシュは居場所が分かったら、その周辺を立ち入り禁止にしたりするのが普通なのです」
「今回のような事が再度起きますかね?」
「残念ながら分かりません。倒した魔獣の素材はまだまだありますし……なんせ相手は魔獣ですから」
「……そうですか」
シェムルが連れて来た魔獣の解体は数年単位と聞いている。現在、アオライ王国の解体作業場では他国の解体職員も来てせっせと仕事をこなしているそうだ。
「ただ、しっかりと改善しますよ。賢者に相談したら、アクアゼロという浄化装置を設置する!って言ってくれましたから」
「それは一安心ですね」
魔石を使って初めて作られた直哉たちの発明がグージャンパマの世界の助けになる。何か感慨深いものがあるな。
「ええ。ただこの後が少々困ったことがありまして……」
「この後?」
「実は報酬の件なんですが……魔石をこちらに譲っていただけませんか?貝殻は全てお譲りしますので」
「それはいいですけど……」
「薫。ダメなのです!」
僕が承諾しようとすると、レイスが話に割って入ってくる。
「貝殻を武具に加工しても、脆くて重いために使えず。建築素材にも使えない……いわゆる捨てるのに困る素材なのです!」
「え?堅かったよね?」
「あくまであの厚さだからなのです。薄くすれば薫の鵺で一刀両断なのです」
それを聞いた僕はギルドマスターに疑いの目を向ける。
「あの女王がそう言ってるんですよ……全く、だからこそ結婚出来ないというのに」
ギルドマスターがオルデ女王に対して毒舌を吐く。その表情からも苛立ちを感じとれる。
「本人は美味しい所だけいただいて、捨てるのに困っている貝殻を薫さんに押し付けようとしてるんですよ……全く」
「あのアマ……」
レイスが普段なら使わない言葉を!!ここは何とか丸く収めるとしよう。
「レイス。どうどう……それに別にいいですよ。ただ、解体したら予定している場所まで運んでいただければ」
「いいんですか?」
「ええ」
「その話待ったーー!!!!」
すると、ギルドマスターの部屋の扉が強く放たれる。そこにいるのはアオライ王国の商業ギルドのマスター。
「こんな美味しい話を私抜きで話すなーー!!」
「いや?ワガママ女王のせいで困っているのだが?それに……」
そのまま二人が砕けた口調で話を始める。どうやら親しい間柄なのだろう。
「それで薫さん!今回はどんな美味しい話を!」
「貝殻で石灰を作ろうかと」
「セッカイ?」
僕は二人に石灰の詳しい説明をする。また、それから色々な商品も作る予定だったのでそれも踏まえて話をする。
「……あのクソ女王ーー!!こんな美味しい話をぶち壊しやがってーーーー!!!!」
遂に商業ギルドのマスターが怒りが頂点に達した。これがアニメとかなら、ゴゴゴゴゴゴゴ……とかの擬音がつきそうだ。
「貝殻の運搬作業から継続した仕事を得られたのに~~!!オオオーーーー!!!!」
「落ち着いて下さい。まあ、怒る気持ちは分からなくも無いが……」
「落ち着いていられるか!!これを使えば漆喰なる建築素材!撒けば肥料代わりに、伝染病予防!そんな有益な物を作るための素材を、丸々!全て!しかも無料!これを怒っていられるかーー!!」
さらに商業ギルドのマスターが怒りがアップする。もはや顔が変形し過ぎて悪霊と言われても納得してしまうぐらいだ。
「これが激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームなのです!」
「それ古すぎるから……ということでいいでしょうか?」
「まあ、それならこちらは構わないです。こちらにあっても宝の持ち腐れでしょうから」
「薫さん!今度、新しいギガントオーガシェルフィッシュの貝殻が出たら買っていただけますか!?」
「え?それは……どうだろう?」
今回、あくまで僕はカーターと話をしていてその中で石灰が欲しいな……よし作ろう!となっただけでそれを継続するかと言うと……。
「なら!継続的に作れるように工房に商店を作りましょう!こちらも出資しますから!」
どんどん僕に近づいてい来る商業ギルドのマスター……女性が男性に対してここまで顔を近づかせるものでは無い。とりあえず僕は商業ギルドのマスターの肩を掴んで少しだけ距離を離す。僕はあくまで小説家なのだ。だから、ここで商売に手を出す気は無い。
「それなら笹木クリエイティブカンパニーの方へ。詳しい作り方に必要な設備とかはあちらの方が詳しいですから」
「分かりました。これで出た売り上げとかはまた後で話しましょう……それでは」
「帰るのか?」
「ええ……なんせアレが大量に捨てられてる場所をしってますから……」
「「「え?」」」
「それでは!!」
そう言って商業ギルドのマスターは足早に帰ってしまうのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
―現在に戻って「薫宅 居間」―
「……ってことで貝殻を手に入れたから、その後はテレビの無人島開拓で見たのを参考にカーターにも手伝ってもらって石灰を手に入れて土に散布。今は発育状況の確認中ってところかな?」
「いやいや!?絶対にそんなまとめ方じゃないですよね!他にツッコミどころ満載じゃないですか!?ようは事業を立ち上げたってことじゃないですか?」
「してないしてない。経営なんてしたことないからさ。直哉たちに丸投げだよ」
「でも利益を得られるんですよね?」
「どうだろう?元々討伐依頼の報酬を貝殻だけでオッケーしちゃったし……今回は特に無いかな?」
「……ええ。ありがとうございます……では」
泉が先ほどからどこかへ電話を掛けていたが、それが終わったようだ。
「泉?こんな深夜に今の件で電話したら迷惑だと思うよ」
「そうなのです?」
「うん。一応、紗江さんに謝ってから訊いたんだけど、薫兄……」
「うん?」
「とりあえず商業ギルドのマスター達の集まりで話題になって、凄い利益を得られそうだって」
「ふーん。それは良かった……」
「で、薫兄達に材料費として金貨100枚を10年間払い続けるだって」
僕はそれを聞いて、持っていたコップを落としそうになってしまった。
「冗談?」
首を横に振って否定する泉。
「農業生産と品質向上に、石灰を使っての洗剤の開発、それとチョークに漆喰と用途が多様で、それでいてすぐに利用できるのは薫兄が倒した物だけなんだって。アオライ王国のギルドマスターのは街道の整備とかで流通させるには2~3年はかかりそうだって」
「そうなんだ……」
「それと薫兄。それを置く為の土地をイスペリアル国に頼んでるんだよね?その土地の使用料も払うって」
「それコンジャク大司教に今日話したばかりなんだけど?」
早い、早過ぎる!!そんな情報もすでに流れてるなんて!
「凄いですね薫さん!これであっちでも大金持ちじゃないですか!!」
「え?そう……だね」
「富、権力、名声……この世の……」
「それ以上は言わないでよユノ」
どこかのアニメのオープニングナレーションを言いそうになったので止めさせる。
「薫さん……何だかんだ財を成してますよね」
「あみちゃん。僕だけじゃないよ?ねえ泉?」
「何のこと?」
「とぼけないでよ。作った服が貴族や冒険者に大うけしてるって聞いたけど?」
「あはは…………はい」
「いくら稼いだの?」
「分からないッスね。数えてないッスから」
「そうなんだよね……受け取ったらアイテムボックスに放り込んでたから……」
そう言って、左手に着けている指輪を見る。
「……数えてみる?」
「大量の金貨って憧れますけど、ご迷惑ですよね?」
雪野ちゃんがこちらを見るので……。
「もちろん」
そんなものをこの居間に出されたら困る。
「それに見たいなら2階にあるのですよ?」
「「え?」」
「アイテムボックスの容量に限界があるからね……不要な金貨は二階の使っていない部屋に置いてあるんだ」
「み、見せてもらっていいですか?」
「いいのです。こっちなのです」
レイスを先頭に3人が部屋を後にする。そして2階から悲鳴が聞こえるのにそう時間はかからなかったのだった。
「私もそうしようかな……でも、盗まれたら困るんだよね……」
「多分、換金しようとしたらすぐ捕まると思うよ?あのデザインの金貨なんてこの世界に無いんだから」
「それよりも消されるのでは?」
「ユノ……恐ろしい事言わないで。ありえるんだから……」
僕はそんな愚かな事をした盗人A(仮)が秘密裏に処理されるのを想像してしまうのだった。
―クエスト「その殻を幻想ごとぶち壊せ!!」クリア!―
報酬:金貨1000枚(10年払い)、貝殻から作った石灰




