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180話 所長のお仕事

前回のあらすじ「両方の世界でお金持ちになった」

―ショルディア夫人に出会って翌日「魔導研究所クロノス・所長室」―


「大分さまになってきたね」


 修復が完了した所長室を見回しながら高級そうな椅子に座る僕。ボロボロの扉もキレイな物に交換されて壁紙もキレイに貼りなおされている。大きな木製のデスクワーク、その奥に大きなテーブルとソファがあってそこで数人で話し合うことも出来る。


「ドラマの社長室みたいなのです」


「そこは無難にね……まあ、ここで僕たちが何かする事はほぼ無いんだけどね」


 あくまでここは体裁を整えただけの場所である。実際に僕たちはここにいなくても代理さえ立てることが出来れば問題無かったりする。


 しかし復旧工事が始まってたった3週間程度でここまで直すとは……今も細かい所を直している方々の熱意を感じる。セラさんの話では昼夜問わず夜通しで作業してるとのことらしいが……。


「失礼します」


「どうぞ」


 そんな事を考えていると扉の方から声が聞こえたので僕が返事すると、お掃除ロボットが扉を押して入ってくる。入った直後にそこからセラさんが投影される。


「先ほど動力炉の修理が完了しました。これで仮稼働から本格稼働へ移行できます」


「それじゃあ代表者が集まって一度確認してからにしようか」


「かしこまりました。では連絡しますね」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―15分後―


「それでは本格稼働ということで」


「「「「異議なし」」」」


 ここにいる各代表者の全員が頷く。あまりにも人数が増えてしまったので自衛隊、米軍の各代表者、それと賢者側の代表であるカシーさんたちと直哉の計4人が所長室に集まり本格稼働について了承する。


「ただ……」


「ただ?」


「レーダ関係は大丈夫だろうか……起動することで熱源感知や電磁波などでここの場所が分かる可能性が……」


「やつらにそんな物は無いと思うぞ?もしあったらビシャータテア王国への侵攻で使うはずだろうしな」


「そうね……暗視ゴーグルへの対応もしてなかったわね」


「カシーさんと直哉のその意見には賛成かな。少なくともアクヌム自身もそんな武器を装備してなかったしね」


 そんな機械や魔法があれば、普通にあの戦いで使うはずだろう。そもそも同じ四天王であるシェムルもそんな物を持っていなかった。


「それにあったとしても問題ありません。本格稼働の決定を受けて、すでに予備電源で妨害システムを起動させました」


 流石、セラさん。仕事が早い。というよりそんなシステムが搭載されているなんて……古代にはレーダとかもあったという事だろうか?


「それなら……」


「問題ありませんね」


 自衛隊と米軍の代表もそれを聞いて再了承したので、僕は大きな木製のデスクワークに置いてある館内放送マイクのスイッチを押す。


「これより動力炉を本格稼働します。そのため一度消灯するので注意して下さい」


 僕の言葉を合図に、少しだけ時間を置いてから所長室の灯りが消えて暗闇になる。


「本格稼働まで5秒前…4…3…2…1…稼働!」


 灯りが再度点灯して所長室を照らし出す。


「動力炉……稼働率順調に上昇……問題無いかと」


「まずは一段落だな」


「ええ。それでこの状態になると何が出来るの?」


「施設内にある物がフル活用できます。また、今まで動かしていなかった月の雫(ムーンティア)製造装置、アダマンタイト製造装置が使用できます」


「アダマンタイトか……」


 アダマンタイトはあっちでも作れるとのことだから生産効率が上がる程度で考えるべきだろう。もしかしたらこれはアダマスの修理のために置かれているのかもしれない。


「あれ!?少々お待ちを……情報更新……え?」


 するとセラさんが自分の目の前にあるディスプレイを見て慌てだす。


「何かあったのか?」


「……名称が変更されてアダマンタイト製造装置が特殊金属製造装置へ変更されてます」


「特殊金属?」


「アダマンタイトと同じように特殊な製造方法が必要な金属に与えられる名称なんですが、ミスリル、ヒヒイロカネ、ダマスカス……そして至高の金属とされているオリハルコン」


「「「「オリハルコン!!」」」」


 その名称に全員が驚く。漫画やゲームでお馴染みの金属の王様であるオリハルコンがここで作れるなんて……。


「驚きました。こんな変更されてるなんて……」


「分からなかったの?」


「はい。機械が復旧したので内部のシステムチェックをしていたら判明しました」


「それで使用できるのです?」


「そこは問題ありません。材料さえあればどれも作れます」


「レシピは?」


「少々お待ちください……タブレットに転送しました」


 全員が手元のタブレットを確認するとそこにレシピが映される。


「これは……」


「他の金属のレシピを!」


 カシーさんの言葉を聞いて、セラさんが他の製造できる金属のレシピを全て転送する……いきなりどうしたかというと。


「ミスリル、アダマンタイト、ヒヒイロカネ、ダマスカスを所定の分量で入れてそこに月の雫(ムーンティア)……さらに…………」


「ドラゴンの鱗……」


 それを聞いたカシーさんたちとレイスが難しい顔をする。


「ドラゴンってどこにいるの?」


「あなたがドレイクと戦ったのを覚えている?」


 ドレイク……ワイバーンより小型の空飛ぶトカゲ。ヒパーニャさんたちと戦った魔獣だ。当然だが覚えている。ということは。


「ガルガスタ王国のあのドレイクが逃げた山?」


「ああ。その辺りの山岳地帯、コルテック山脈の中央にあるヴルガート山に住んでいる最強の聖獣だ。それの鱗を要求してるんだから無理だな」


「そんなに強いのか?」


「大昔、どこかの国が戦力を求めてドラゴンの素材に手を出したんだが……魔法使い十数人と兵士100名の部隊でも勝てなかったらしいぞ」


 それを聞いて僕も溜息を吐く。確かにそれは難しいかも……。


「今の魔法はその頃よりかなり強くなったとはいえ難しいかもな」


「うーん。それに関しては後回しだな」


「同意です。それなら他の金属を優先しましょう」


 米軍代表の意見に全員が賛成する。ということでミスリル、アダマンタイト、ヒヒイロカネ、ダマスカスの4つをここの機械で製造していくで決定だろう。これでボルグ火山にミスリルを取りに行く必要が無くなるのは嬉しかったりする。


「うん?この金属は何だ?」


「どうしたの?」


「ミスリルの素材リストの下に別の金属のレシピがあるぞ」


 直哉のその一言に、皆が慌ててそれを確認する。


「ノーネーム?」


「名無し……小さく開発途中の金属と書かれてるな。しかも最重要事項とも……」


「材料は……ミスリルに……それ以外は不明」


 どうやらこの金属も作成は不可能のようだ。しかし最重要事項の金属?オリハルコンよりも凄いって事?


「まあ、いいじゃないのか?それ以外の金属でも十分だろう」


「そうね……」


「仕方……ないか……」


 カシーさんとワブーが渋い顔している。僕も同じで少し納得いかないが、作れない以上これはしょうがないだろう。


 その後、これらのアダマント以外の金属生成をこの施設で実験的に行う事にしてこの話は終わりになるのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―その日の午後「魔導研究所クロノス・実験場」―


「いけ!」


 本格稼働した事で実験場も使えるようになったので、レイスと一緒に来てみると賢者の方々が召喚魔法の練習兼実験場の性能確認をしていた。今はアルマジロみたいな召喚獣が的に向かって体当たりをしている。


「動く的……壊れても直ぐに修復されるなんて至れり尽くせりだな」


「あ、勇者様!!」


 遠くで見ていると獣人の賢者さんたちが気付いてこちらにやってきた。


「お疲れ様です」


「いいえ!ここ術を試すのにすごく便利で、もう楽しくて楽しくて!!」


 そう言う彼女は笑顔で、相棒の精霊もその意見に対して頷いている。


「そういえば、勇者様たちの召喚魔法……えーと。しゅかく?」


「守鶴がどうしたの?」


「あ、はい。それを見せていただきたくて……私達の召喚獣ってビシャータテア王国の人達より性能が劣るんですよ……だから、四天王を倒した召喚獣を見たいんです!!」


「「ああ~~……」」


 僕とレイスは納得してしまう。カシーさんたちとシーエさんたちは泉の入り知恵があり、そこから生まれた召喚獣なのだ。そして共通してゲームやアニメで実際に動いて攻撃するシーンがたくさんあり、泉たちがその映像をスマホを使って何度も見せている。そのためイメージがしやすいという理由があるだろう。


 一方、他の賢者さん達の召喚獣はこの世界のモンスターを参考にしている。そのため攻撃パターンもゲームやアニメのような奇想天外な物になっていないのだ。


じーーーーーーーーっ………


 皆がこちらを見てくる。これはやるしかないだろう。


「レイス?」


「分かったのです」


 僕はアイテムボックスから砂と粉末魔石を取り出して、まずは蝗災を呼び出す。


「じゃあ……いきますよ?」


 僕たちはエンチャントリングによって投影された魔法陣の中に入って召喚魔法の準備をする。


「数千年を生き、数多の妖術を習得せし古狸よ!今、我が呼びかけに応え。かの地より馳せ参じよ!守鶴!」


 そして蝗災が魔石を飲み込んで守鶴が現れる。


「!!」


 人の多さに驚いて僕の後ろに隠れる守鶴。そういえばゲーム内だとこんなキャラだったな……。


「大丈夫だよ……悪い人たちじゃないからね」


 僕は守鶴の頭を撫でてなだめる。


「美人……姉弟」


「いや!それなら兄弟ですからね?」


 チラッと守鶴を見ると、その首を傾げている。


「守鶴……薫の事を女性と思っているのです」


「嘘だっ!!」


 僕たちが呼び出した召喚獣なのにどうして勘違いされるの!?


「まあまあ。落ち着いて……時間もありませんし……」


「う~~……納得いかない!」


「とりあえず砂蛇を呼びましょう薫」


「うん……守鶴。お願い」


 守鶴が錫杖の石突を地面に打ち付けると、4体の砂蛇が現れる。そして砂蛇は出て来た的に向かって突進する。


「薫!」


 レイスの指差す方向にある的が炎の球を作り出し、こちらに攻撃を加えようとしている。


「和芸和傘」


 呼ぶと僕の近くまで傘が飛んできたので、僕はそれを開いて防御する。


「赤城颪……は意味無いか」


 乾燥させる能力なので、乾燥させても変化の少ない物には意味が無い。一応、発動しているけど……。


「こればっかりはしょうがないか……守鶴。源平合戦」


 守鶴がアクヌム時より少ないがたくさんの武者を作り出して、たくさんの的に向かって刀を振って的を破壊する。そして最後に弓を構えた武者が一際小さい的を射抜いて必殺技が終了する。


「!!!!」


 守鶴は可愛らしいジャンプをしながらこちらに手を振って砂に戻っていった。


「……という能力ですが」


「「「「み、水……」」」」


 後ろを振り向くと、賢者さんたちが地面に伏せている……。


「赤城颪……やっぱり恐ろしいのです」


「うん……そうだね」


「みず~~~!!!!」


 その後、僕がアイテムボックスから取り出した飲み物を飲んだ賢者さんたちから、アドバイスを求められたのでそれに対して二人で答えていくのだった。

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